「付喪神の囁き~大内義隆、歴史を紡ぐ~」   作:三浦左衛門丞

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こんにちは、紀理です。

今回は少しだけ寄り道ね。第7話と第8話の間にあったお話。

いつも、よしたかくんの側で彼を支える、まつゑさんと小四郎くん。
二人がどんな想いを胸に秘めているのか、その心の内を、私が少しだけ皆さんにお見せしますね。

(今回は、いつもと少しだけ視点を変えてお届けします)


閑話:母と小さな防人

 夜のしじまが東向御殿(ひがしむきごてん)を包んでいた。

灯りを落とした寝所には、健やかな寝息だけが満ちている。几帳(きちょう)の奥、柔らかな寝具の上で、亀童丸は穏やかに眠っていた。

 

 枕元に、乳母のまつゑと息子の小四郎が寄り添うように座している。

 

「……小四郎、稽古(けいこ)はしっかりできてますか」

 

 寝息に紛れるほどの小声でまつゑが問う。八つになったばかりの少年は、母の隣で小さな背筋をまっすぐに伸ばした。

 

「はい、母上。滞りなく」

「結構です。武家の(たしな)み、一時も忘れてはなりませぬよ」

 

 言葉を受け、小四郎はこくりと頷く。だが瞳には、子どもらしい焦がれの色が浮かんでいた。

 

「兄上様は、今頃、京で武功を挙げておられるでしょうか。私も、早く……」

 

 兄の内藤家の当主(とうしゅ)興盛(おきもり)は、主君・大内義興(おおうちよしおき)に従い、遠い都で戦のさなかにいる。華やぎに心惹かれるのも無理はない。だが、とまつゑは思う。

 

「興盛様は内藤の当主として、表の道を歩むお方。あなたの役目は違います。焦ってはなりませぬ」

 

 まつゑの声は穏やかだが揺るがない。視線を眠る亀童丸へ戻す。乳母としての慈しみに満ちた眼差しに、切実な光が宿る。

 

「若様は、本当にお可愛らしい寝顔でございますね」

 

 ひと刹那(せつな)、声は母そのもの。すぐに息を整え、隣の息子へ語りかけた。低く、真剣で、夜気に紛れる響き。

 

「小四郎。あなたは、このお方をただお守りすれば良いのではありません」

「……はい」

 

「若様は大内のお血筋であると同時に、我ら内藤の血も濃く引くお方。かつて、あなたの亡き父上・弘春(ひろはる)様の兄君、弘矩(ひろのり)様が無念の死を遂げられたことは知っていますね」

「はい。亀童丸様の、祖父にあたる方……」

 

 小四郎の声が悔しさを(にじ)ませて震える。まつゑは、少年の小さな肩にそっと手を置いた。

 

「怨んではなりませぬ。若様がお生まれになったことで、すべては変わりました。健やかにご成長あそばし、やがて立派な大内家当主となられること――それこそが内藤の安泰を取り戻し、過去の無念をそそぐ唯一の道なのです」

 

 まつゑの言葉は、まるで祈りのようだった。視線の先で、大内の世継ぎにして内藤の未来をも一身に背負う希望が、かすかな寝息を立てている。

その光へ、まつゑはすべてを()けていた。

 

「あなたの役目は、家の希望を守る防人(さきもり)となり、若様の御心(みこころ)に寄り添うこと。お考えを誰よりも深く汲み取り、手足となって動きなさい。わかりますね」

 

 母の言葉に、小四郎はしばし黙した。小さな頭の奥で何かが定まっていく。まつゑは静かに答えを待つ。

 

 やがて小四郎は顔を上げた。瞳から、兄への憧憬(しょうけい)も子どもらしい焦りも消え、澄んだ決意だけが残っていた。

 

「はい。この小四郎、亀童丸様の防人となり、お仕え申し上げます」

 

 まつゑはわずかに目を見開く。与えた使命を、息子が己の意志として引き受けた瞬間だった。彼女は深く、優しく頷いた。

 

「……頼みましたよ、小四郎」

 

 その声は、母としての愛情と、同志への信頼に満ちていた。

 

「はい」

 

 まだ誰にも知られぬ、小さな防人が自ら立てた最初の誓いだった。

 




現在は週1ペース金曜日での更新を予定しています。
裏で資料調べや構成を進めており、時代背景や物語に深みを持たせる準備中です。

執筆の裏話や進捗状況はNOTEにも書いていますので、
制作過程やChatGPTに興味がある方はぜひ覗いてみてください。
朗読版も用意しました。VOICEVOXで読み上げた音声を、Noteの記事内に埋め込んでいます。

https://note.com/miura_saemonjo/n/n1dbde4b0bb2b

※AIツール(ChatGPT)を執筆の補助に使いながら、自分の構想をもとに書いています。AIの可能性などを模索し、比較などもしています。
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