今回は若干時間が進み、士郎が司波家に居候させてもらうことになった所から話が始まります。
泉の精霊が授けた加護や恩恵がよく出てくると思います。その力は達也たちにも効果があり
、遠坂に少し教えてもらった宝石魔術もちらりと。
これがあったから士郎は司波家に居候させてもらうことになった所などを書いていければなと思います。
では!
「・・・。」
カタカタと高速でタイピングする音が響く中、士郎はCAD調整のための台の上で意識を集中していた。
ピ、と最後の文字列が打ち込まれると、それまでウィンドウをつぶさに見ていた達也が顔を上げた。
「OK。もういいぞ士郎」
達也の一声に集中を解く士郎。
「それで、どうだ?」
「心配しなくても無事CADは完成だ。ただ・・・」
士郎との突然の邂逅からしばらく。色々な事柄を経て、士郎は無事、達也と深雪に信頼されるまでになっていた。
「お前の魔法の才能には驚かされる。BS魔法師かと思えば、膨大な魔法演算領域まで有している。・・・俺とは大違いだな」
「いや、俺にできるのは本来、達也の言うBS魔法だけだ。その他に才能なんてないよ。それでも達也の言う“他の魔法を使う余地”があるのならそれは後付けされたものだ」
士郎は首を振って言った。
「後付け?何か心当たりがあるのか?」
自分のように人工魔法演算領域なのだろうか?と考える達也。だが、彼から返って来たのは達也の想像を超えるものだった。
「俺が妖精郷・・・アヴァロンから来たことは話したよな?実は来る時、そこに住まう泉の精霊に強力な加護と恩恵をもらったんだ」
「泉の・・・精霊?」
疑わしいものを見るような目で達也は呟いた。
「ああ。俺は元々たった一つのことしかできない欠陥を抱えた魔術師だ。ただ、泉の精霊が頑張ってくれたようでな・・・自分でも何ができるのかわからないが、他の魔術が使えそうな気がするんだ」
衛宮士郎に許された魔術は一つだけ。それは最初から分かっていたこと。だがそこに過剰な加護により新たな可能性が生まれていた。
「スピリチュアルな存在だと思うが・・・その加護と恩恵は具体的に何を授かったんだ?」
「多分だけど・・・“水”にまつわることは大抵できると思う」
何せ泉の精霊が授けたのだ。恐らくは水に関することだろう。セイバーも泉の精霊の加護で水上を歩くことができるのだから、自分もそうだろう。
「水・・・か。それなら派生で氷系統も行けそうだな。サイオン保有量も莫大だし、本当に大抵のことはできそうだな」
サイオン保有量。これは後から達也の簡易検査で判明したことだが、士郎の世界でいう魔力量が大幅に増大していることが分かった。それというのも、まるで巨大な肺で呼吸するかのように常にサイオンを漲らせている、と達也に言われたからだ。
(まさか魔力炉心まで植え付けられるとはな)
これについては一つ仮説が士郎の中では立てられていた。それは、
「とりあえず無系統魔法は組み込んでおいた。これは才能に左右されない系統だから大丈夫だろう。今の話を聞くに・・・発散系統の魔法も行けそうだが、これは習熟してからの方がいいだろう。まずはCADに慣れることから始めよう」
「ありがとう。あやふやな感覚で悪いな」
士郎の言葉に達也はフッと笑って、
「お前の存在そのものがあやふやなのだから今更だ。まぁ今後は俺がお前の調子を見て調整するから、違和感や酔いのような症状が出たら教えてくれ」
「わかった」
手厚いサポートが約束されたようなので士郎は一安心した。なにせ、魔術のことなら基本理論を学んだが、この世界の技術体系化された魔法理論は全くと言っていいほど無知なのだから。
「そういえば例の物は手に入ったか?」
士郎の問いに達也は頷いて返事をした。
「ああ。お前の言う通り、中サイズの宝石をいくつか購入した。これだけで“宝石魔術”とやらができるのか?」
「もちろんだ。あと必要なのは魔力を抽出したもの・・・大体は術者の血液になるんだが、それを使って宝石の中で魔力を流転させるのが基本だな」
士郎の言葉に達也は首を傾げた。
「魔力・・・恐らくサイオンのことなんだろうが、そんなことが本当に可能なのか?もし可能なら、魔法の難問とされる事象をあざけ笑うことになりそうなんだが・・・」
「そうなのか?魔術師からしたらここの魔法のほうがよっぽど現実離れしてるけどな。ま、百聞は一見に如かず。俺が達也に返せるせめてのもの物だ。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
「そうか。まぁ期待半分で見分することにするよ。しかしなんだな。魔術とやらに触れるようになってからBS魔法の概念が根底から覆りそうだ」
そう言って肩をすくめる達也。だが、彼も本来は分解と再成のみが扱えるBS魔法師だ。もちろんのこと、彼には人工魔法演算領域があるのでBS魔法しか使えないわけではないが。BS魔法にはひとかたならぬ思いがあるのだろう。
「お兄様、士郎、昼食ができましたよ」
「わかった。まずはここまでだな。とりあえずCADを渡すから失くすなよ」
「おう。それじゃお互い、未知の領域に手を伸ばすってことで、よろしくな」
達也と士郎はお互い頷くことでその場は終了となった。
「さて、深雪はどのくらい腕を上げたかな?」
「元々深雪は料理が上手いぞ」
「達也のそれはシスコンが入ってるから当てにできないな。まぁ、出してもらったもので嫌なものは出されたこともないけど」
「ふふ、士郎の腕前の前には私程度では霞んでしまいますものね」
まだ不慣れな頃、士郎は居候させてもらう対価として何かできないかと悩んだ結果、何度か二人に料理を振舞った。その料理は絶品で達也と深雪が絶句したほどだ。
家庭料理でここまで上等な味に仕上げるのかと当初は思ったものだが、今では深雪も奮起して士郎に率先して料理教室を開いてもらったりしている。
「じゃあ答え合わせだな。いただきます」
「いただきます」
「はい。召し上がれ」
今日はエビフライ定食のようだ。果たしてその味は・・・
「うん。美味しいよ深雪」
「ありがとうございます、お兄様!先生は・・・」
問われた先生はというと、
「・・・うん。タルタルソースは自家製だな?ちょうどいい塩味だ。美味しいぞ。揚げ方、上手になったな深雪」
その言葉にぱあっと笑顔で恥ずかしそうにもじもじする深雪。
「ありがとうございます!今日は会心の出来だと感じたんです!」
「ああ。揚げ方が上手くなったのか。確かに衣の感じがいつもと違うな」
「まぁ。お兄様ったら・・・うふふっ」
サクサクとしっかりと、だが軽妙な衣に達也は十分に絶品だと口にする。
「本当にちょっとしたことで変わるんですね。これからもお兄様に美味しいものを食べていただく為にも先生、よろしくお願いしますね?」
「ああ。深雪は筋がいいからな。教える側としても楽しいよ。任された」
ふふっと上機嫌に笑う深雪に達也も満足げだ。
「食べながら聞いてくれ。午後は
「はいっお兄様」
「魔法学か。これがまた難しいんだよな・・・」
苦い表情の士郎。どうにもこの世界の魔法は理論やらが難しくて難航しているのだ。
「深雪と一緒に第一高を受験するんだ。嫌でも頭に叩き込んでくれ」
「わかってるよ。正直頭がパンクしそうだけど・・・なんとかやってみるさ」
幸い、勉強のコツは押さえているので何とか士郎も間に合わせるつもりだった。
「夜は九重先生のところですね?」
「ああ。今日は士郎も連れていく。その腕前試させてもらうぞ」
「了解。まぁ、鍛錬は休まずしてきたつもりだからな。その九重先生と会うのが楽しみだよ」
士郎はアヴァロンでもアルトリアと鍛錬していたので相当な腕前になっていることを、達也と深雪が知るのはこの時からすでに決まっていたのだった。
そして夜
「いくぞ」
「はい」
「おう」
達也は深雪と士郎を伴って九重八雲の元へと出向いた。
(忍術使いって言ってたよな)
ふと達也に事前に聞いた情報を思い返す。
(どんな経験を積めるのか楽しみだ)
士郎はそんなことを思っていたのだが、いざ寺へと足を踏み入れると、
「・・・妙だな」
「お兄様?」
(歓迎されてない感じだな。達也たちの先生ともなれば実力を推し量ってくるか)
「殺気だっている。九重先生は留守なのか?」
「いいや。いるとも」
「先生!」
広く取られた庭に一人の坊主頭の人物がいた。
「達也君・・・一体
「最近、家に居候させてる衛宮士郎です。功名な九重八雲先生がなにをそんなに殺気立っているんですか?」
その言葉に九重八雲は困ったように坊主頭を搔き、
「そこにいるのがその衛宮君だね?こんな寂れた坊主寺へようこそ」
「丁寧なあいさつ、痛みいります。衛宮士郎です。今日はよろしくお願いします」
一礼して士郎も丁寧にあいさつをする。その姿に苦笑を堪えながら、
「まずは中で話をしようか。私が思わず警戒してしまったのもその時話そう。まぁ、一緒に鍛錬すれば嫌でも思い知ることになるだろうけどね」
「「?」」
「・・・。」
とりあえず中に案内されることに。未だ警戒されているが、まずは中に案内された。
「では、茶でも入れるとしよう。あまりのんびりもしていられないが、まずはもてなしたいからね。ちょっとまっておくれよ」
「あの、達也たちの鍛錬に影響が出るなら謹んでお断りを。今日は修練に来たんですから」
士郎がそう進言するとやはり困ったように、
「いやぁ・・・こりゃ口でも敵いそうに無いなぁ・・・でもま、初めての来訪だしおもてなしさせておくれよ」
「そういうことなら・・・」
「士郎。九重先生がここまで言っているのだから私たちに遠慮しなくてもいいのよ」
「深雪の言う通りだ。俺たちに遠慮することはない。今日はそれも織り込み済みだ」
「達也・・・深雪・・・」
自分のことを受け入れてくれる二人に深く感謝する士郎だった。
「ぐは!」
地面に叩き付けられる音とともに達也の苦悶の声が響いた。
「一本!・・・私が危惧した通りだねぇ・・・彼には私も敵いそうにない」
「まさか・・・士郎がこんなに強いなんて・・・」
「深雪君。恐らく体術だけで言うなら国内で五本の指に入るよ彼は。私の忍術を駆使しても勝てるかどうか・・・何せ彼には魔法もあるのだしね。しかし見事だ。柔術に太極拳、八極拳、古武術、カポエラなどのマイナーな体術まで・・・隅々まで網羅した彼の力量は計り知れない」
「ふぅ。大丈夫か?達也」
「あ、ああ。お手本のような一撃だったから初見でも受け身が取れた。それほどダメージはない」
そう言って立ち上がる達也。
「中々だな達也。その年齢でここまで動ける奴は早々いない」
「嫌味だな・・・ここまで圧倒的な実力差を見せつけられると自分が嫌になる」
「それは俺もだよ。ここまでたどり着くのも苦労したんだからな」
パンパンと埃を払って士郎は言った。
「士郎、お前いくつになるんだ?」
「純粋な年齢のことか?んー・・・」
アヴァロンに到達してからは肉体年齢が止まっていた。現在は達也たちに合わせるためなのか若返っている。
「29歳くらいかな。アヴァロンではそこで肉体年齢が止まっていたから実際の年齢はそこから数えてない」
経験としては50前後のような気もするしもっといっているかもしれない。
「士郎は身長がお兄様より高いから大人びた印象を受けますね」
「これでも肉体年齢が若返ってるからな。俺が達也くらいの時は・・・普通の男子だったと思うぞ」
「肉体年齢の若返り、か。本当に規格外の奴だ」
「達也も十分規格外さ。さ、もう一本いくか?」
「ああ。少なくともお前の縮地はものにしたい」
「達也君にもいい鍛錬相手になっているようだねぇ。私もがんばらないと」
「先生は最初から士郎がとても強いと分かっておいでだったんですか?」
深雪の言葉に八雲は苦笑気味に、
「違和感なく、何かがするりと山に入ったのは知覚できたよ。これはなんだ、と迎えに行ってみれば自然と意識を同化したとんでもない存在がいたからねぇ・・・その佇まいだけで、彼は格上だと思い知らされたよ」
八雲がたらりと汗を流す、その視線の先にはまたもやすごいスピードで吹き飛ばされる達也の姿。
「お兄様・・・」
いいところに入ったのか、ゲホ!ゴホ!と咳き込む達也。
「今のは危なかったな・・・本気で打ち込まれてたら肋骨が折れていたかもしれない」
「そうだな。まぁ、達也には自己修復術式があるから何とかなるだろうけど」
「それを知っていて、手加減してるのか?」
そんな達也の言葉に、
「当たり前だろう?だって深雪が悲しむ。俺のこれは必要に迫れれた時のためのものだ。自ら進んで戦いなんか起こしたら正義の味方失格だろう?」
肩をすくめる士郎に達也は苦笑を浮かべて、
「そうだった。そんな絵空事を本気で追いかけてるんだったなお前は」
士郎の手を借りて再び立ち上がる達也。
「う・・・」
「しばらく麻痺効果がある。深雪のところで休んで来い」
「ああ・・・」
士郎に肩を借りて深雪の待つところまで行く。
「お兄様!」
「すまない深雪」
申し訳なさそうにいう達也に深雪は首を振って、
「いいんです・・・!お兄様が無事なら深雪は・・・深雪は・・・!」
「・・・なんだか俺が悪役みたいだな」
何とも言えない兄妹のやり取りに苦笑しつつ達也を座らせる。
パチパチ。という拍手とともに八雲がやってきた。
「やぁ、いいものを見せてもらったよ。達也君は体術だけなら私に引けを取らない。その彼がこんなに圧倒されるなら・・・私も危ういだろうね」
「ご謙遜を。貴方にはまだ隠し玉がある。俺も手加減できるかどうか・・・」
うんうん、と八雲も頷いている。
「私も負けてはいられないな。私とも一手どうかな」
「・・・。」
急な申し出に士郎は少し考えた。
(恐らく強化までは使わされるな)
現状、達也たちに投影は見せていない。恐らく達也が警戒するからだ。
彼らの味方である以上、それは望ましくない。
だというのに、
「達也君。よく見ておくんだよ。彼の強さの片鱗をね」
「わかりました」
「・・・。」
これである。意地でも投影は使わないと彼は決心するのだった。
「では、いくよ」
士郎に比べればまだまだ甘い縮地から戦闘は始まった。
思考が加速し、映像がゆっくりになる中士郎は焦らず、弾き、受け流し、カウンターを見舞った。
それをどの程度繰り返したか九重八雲はついに忍術に手を出した。
「――――」
ボッボッボと火の玉が無数に表れる。いわゆる火遁の術なのだろうが、その原動力は魔力だと見当はついている。
――――
「!!!」
「お兄様?」
「サイオンが・・・」
達也は何かに気づいたようだが士郎は構わず、
「はっ!」
強化された四肢にて炎を消し去る。そして、炎を囮に背後に回っていた八雲を攻撃モーションに入る前に蹴り飛ばした。
「ゴッホゴッホ・・・防いでこの威力かぁ・・・本気なら腕ごとやられていたねぇ・・・」
「大丈夫ですか?」
そっと手を差し伸べる士郎。その手を取って八雲は立ち上がった。
「通常とは並々ならぬ力を感じた。魔法を使ったのかい?」
「ええまぁ。身体強化の魔術を少し。傷はありませんか?」
「もちろんだとも。これでも早々にやられはしないと思っていたけど・・・そうか。身体強化魔法か。BS魔法でもポピュラーな術だね。衛宮君はBS魔法師なのかな?」
「まぁ・・・通常の魔法も使えますがそちらはまだ勉強中でして」
強化や投影は感覚的に使えるがまだこちらの魔法は扱えていない。サイオン・・・魔法力は十分にあるのであとはCADの扱いと魔法発動の感覚を掴むだけだと思うのだが。
(魔力炉心のおかげで俺の魔術もけた外れに強化されているが・・・この世界でやっていくためには通常の魔法も習得しなければならないな)
まだまだこの世界に馴染むには時間がかかりそうだと士郎は思うのだった。
その後達也と鍛錬し、八雲と鍛錬し、いずれも士郎の実力の前にたたき伏せられる結果となった。
「いやぁ私もいい鍛錬になったよ。また来てほしい」
「ええ。俺もいい経験を積ませてもらいました」
そう言って士郎は踵を返した。
「達也。先に降りて待ってるぞ」
「わかった」
お互い多くは語らず見送った。
(強化は使ったがさて・・・)
警戒されるだろうな、と思いながら士郎は山を下りた。
――――interlude――――
「参ったねぇ。あれだけの手練れ早々いないよ」
「先生でも敵わないとは・・・予想外でした」
「達也君」
八雲は真剣な顔で、
「彼には気を付けるんだよ」
「・・・はい」
含みを持たせてそう言った。
達也もそれを理解した上で頷いた。
「お兄様・・・」
「深雪?」
心配そうに達也の傍に来る深雪。
「士郎は・・・私達を害する存在なのでしょうか・・・?私にはそう思えないのですが・・・」
「そんなことは無い・・・と思う。士郎は何というか、表裏のない奴だと思う」
「士郎は私達の味方だって言ってましたけど・・・」
「これだけ内情を知られているんだ、敵にはしたくないな」
(お兄様はこう言ってますけど・・・いざとなったら・・・)
士郎に身寄りはいない。つまり
(そんなことになりませんように)
深雪も存外今の生活が気に入っている。
なにより、士郎の魔法にとても興味を惹かれているのは達也なのだ。
兄弟愛しか感じられなくなった兄だが、だからと言って友達ができてはいけないというわけではない。
現状、すべてを理解した上で良い付き合いをしてくれている士郎に感謝している。
「差し当たってはあの体術をものにしないとな」
「無理はいけないよ。あれは年月をかけた極地。変に真似してもそこそこのものにしかならないだろうからね」
「年月か・・・29歳で年齢が止まっていると言っていたが・・・」
「まぁ、それではお兄さんではなく、おじ様、でしょうか?」
クスクスと笑う深雪。当の本人はというと、
「ぶぇっくしょい!・・・ズズ。そんなに冷えてないと思うんだが・・・」
盛大なくしゃみをしていた。
「まぁともかく、今回の身体強化魔法以外にも何か隠しているだろうから気を付けるんだよ」
「はい」
――――interlude out――――
「ここは・・・」
「えっと・・・こうか?」
「そう!そうなるとここは・・・」
九重八雲と邂逅した夜から翌朝、士郎は中学校が休みということもあり、深雪に魔法学を教えてもらっていた。
「ここは・・・」
ガチャ。
「お兄様!」
「ただいま。深雪、士郎」
「ああお帰り。今日は何か発見があったか?」
「いいや。だが、期待半分の実験が始められそうだ」
そう言って達也は高級そうな箱を取り出した。
「お兄様、それは?」
「士郎に頼まれていた宝石だ」
「やっと届いたのか」
士郎は肩を解すように動かすと立ち上がって宝石を検分し始めた。
「ルビーにサファイア、トパーズか。純度もいいし、いい触媒になりそうだ」
「触媒・・・?」
「深雪には言ってなかったな。俺の魔術の師が宝石魔術の使い手でな。少し教わったんだよ」
「宝石魔術?」
「恐らくBS魔法の一種だ。準備するのはこれだけでいいのか?」
「ああ、注射器は後々問題になるだろうから俺の魔術で準備する。すぐにやるか?」
「いや、血を使うということだったから食事をしてからのほうがいいだろう。食欲がなくなりそうだ」
「それもそうか。じゃあ夕食後時間を置いてだな」
「?なにか危ない儀式でもするのでしょうか・・・」
頭にクエスチョンマークを浮かべる深雪に達也と士郎は苦笑して、
「ま、その時わかるよ」
とだけ言うのだった。
夕食を終え、食休みしていると、
「士郎。危険はないんだな?」
と達也が聞いてきた。
「心配ない大魔法を発動させるには粒が小さすぎるし、暴発することはまずない。魔力を流転させるだけだからな」
「あの、血を媒介に使うといっていましたが注射器などはどこから・・・」
「二人の前では初めて使うな」
――――
「!!!」
「注射器が何もない所から!?」
初めて士郎の投影を見た二人はびっくりまなこでその現象をみた。中でも驚いたのは達也で、
(馬鹿な・・・サイオンがイデアを経由せずエイドスに置き換わった・・・!?)
士郎の投影は元が魔力なのにもかかわらず時間が経っても霧散しない。それが信じられないのだ。
「投影って言ってな。一時的に魔力で代用品を作り出す魔術なんだが・・・俺のは特別性で本来短時間しか維持できないものがそうじゃなくなる」
「たった一つのことしかできないと言っていたな。それがその投影なのか?」
「いや、これはそのたった一つのことから零れ落ちた、いわばおまけだ。俺の能力は別にある」
「それを教えてくれと言っても教えてはくれないんだろう?」
「達也達なら悪用はしないと思うけど・・・この力のせいで追っ手を差し向けられていたからな・・・まだ秘密ってことで。それより宝石魔術、やってみるか」
そう言って士郎は投影した注射器である程度自分の血を採取し、
――――
と唱えて採取した血をルビーに垂らす。すると、
「これは・・・」
「ルビーからサイオンが感じられます!」
興味深く見る達也に興奮気味の深雪。
「これでこのルビーに魔力・・・サイオンが宿った。ルビーの自然霊は火の特性を持つ。発動させれば見合った炎を出すことができるだろう」
士郎は残りのサファイアとトパーズにも採取した血を流し魔力を込めた。
「サファイアは水。トパーズは土。それぞれ発動すればその効果を得られる。それに、魔力媒体としても使えるからそのまま経口摂取しても問題ない。胃で溶けて魔力・・・サイオンか?それを補充できる」
「にわかに信じがたいな・・・だが、確かにサイオンが宿っている。これは・・・」
「これは“魔法式の保存”になるのではないですか!?」
「ああ。厳密には違うが代替可能な物になるだろうな」
深刻そうな顔をする達也に士郎は首をかしげて、
「なにかいい効果があったか?」
「ああ。いいものをもらった」
「ええ!魔法の三大難問、“重力制御型熱核融合炉”に使えるかもしれません!」
深雪の言葉にさらに士郎は首をかしげて、
「重力制御型熱核融合炉・・・?つまり、魔法で核融合しようって話か?」
「そうだ。俺は・・・俺達魔法師は兵器として運用されるべく誕生した。だが、俺は別の可能性を信じたい。現代魔法で、重力制御型熱核融合炉が実現すれば俺達魔法師は兵器としての側面から解放される・・・そう信じているんだ」
どこかまっすぐに遠くを見据える達也に、士郎はフッと笑って、
「達也たちの力になれたなら何よりだ。あ、一応言っておくけど、魔力媒体じゃなく純粋な魔術として発動させた場合は宝石を消費してしまうから注意してくれ」
「消費?無くなってしまうのですか?」
「ああ。例えばルビーなら発火させたらルビーも消費されてしまう。だから魔力媒体として使うことをお勧めするよ」
「サイオンが保存できるなら魔法式の保存も現実味を帯びてくるゆっくり研究させてもらうとしよう」
「そうか。まぁ役立ってよかったよ」
そう言ってふぅっと注射器を消す士郎。
「!!?」
「士郎!?今のは・・・」
「ん?あれは俺の魔力で作られたものだから消すのも自在だぞ」
「・・・お前のBS魔法も大概だな」
「これだけが特技だからな。まぁいずれ俺の魔術を披露する時が来るだろうさ」
そう言って肩をすくめた士郎だった。
後にこれが、重力制御型熱核融合炉のプロトタイプへと生かされるのが、士郎には予想もできないことだった。
はい。ここまでです。士郎はなんやかんやあって兄妹の愛の巣にお邪魔させてもらうことになりました(笑)
士郎の実力は英霊エミヤを超えています。長年の鍛錬と泉の精霊の加護と恩恵によってかなりブーストされていますので。
次回は一高の試験及び入学かな。魔法学、ちゃんと頭に入っているといいんですが。それでは!