今回は一科生と二科生の対立に巻き込まれる士郎を描こうかなと思います。
泉の精霊のおかげで前代未聞の優等生入りを果たした士郎。どこまで投影なしで行けるのか必見です。
では!
「おはよう!司波さん!」
「おはようございます」
達也たちと教室が分かれてから士郎と深雪は同じ1-Aの教室にやってきていた。
「おはよう深雪」
「あ、あの・・・おはよう!」
同じクラスの光井ほのかと北山雫が挨拶してくる。
「ええ、おはよう」
「士郎もおはよう」
「おう。おはよう雫。光井さんもおはよう」
「ええっと・・・おはよう」
雫は物怖じせず士郎にあいさつし、ほのかはどこか控えめに挨拶した。
“例のウィード絡みだ”“なんでウィードなんかとつるむのかしら”
そんな声が聞こえてくる。
(最初の試験結果が良かっただけでよくもまぁここまで自信過剰になれるもんだ)
成績はよかったのかもしれないが、それはあくまで初めの試験でのこと。これからはわからないし、二科生にだって一科生に負けない生徒がたくさんいる。
そのことに都合よく蓋をし、二科生二科生と蔑むのはいかがなものか。
ともあれこのまま深雪の傍にいてはよくないことになると踏み、
「それじゃあ深雪、俺の席こっちだから」
「え、ええ・・・」
たくさんのあいさつに足を止めていた深雪を雫とほのかに任せ、士郎は自分の席へと向かってしまった。
「気を使ってくれたんだよね」
「ええ・・・お兄様や私たちと仲良くしているから“ウィード絡み”何て呼ばれてしまって・・・」
「まだちょっと怖いけど・・・士郎さんは立派な人だと思う!」
「まだ怖がってたんだ。士郎、ほのかに何もしてないのに可哀そう」
はぁ、とため息を吐く雫にあはは・・・と苦笑する深雪。
「ほのかは何をそんなに怯えてるの?」
「・・・。」
しずくに問われたほのかはきゅっと手を握り、
「剣・・・」
「「剣?」」
「うん・・・士郎さんが魔法を発動するとき、鋭い刀剣の匂い?みたいなものを感じて・・・」
「剣・・・」
(お兄様に話しておくべきかしら・・・)
あの鋭い兄が士郎の扱うBS魔法を身体強化だけだとは思っていないだろう。
ほのかの証言はその秘密を解き明かすものになるのではないだろうか?
キーンコーン・・・
「雫、ほのか、予鈴よ席に着きましょう」
「うん」
「う、うん」
朝のHR後、
「森崎、衛宮、第三演習室で模擬戦の準備をしなさい」
「は?模擬戦?」
突然降ってわいた戦闘に士郎は思わず聞き返した。
「先生、なぜ衛宮と模擬戦なんですか?」
森崎駿が先生へと問いかけた。
「風紀委員の教師陣推薦枠がお前と衛宮で割れている。だから、実力で決めてもらおうということになった」
「そういうことなら・・・ウィード絡みにはない格の違いを見せてやりますよ・・・!」
「衛宮。お前もいいな?」
「・・・はぁ。了解しました」
結果、士郎は断ることが出来なかった。
――――interlude――――
「ということです、お兄様」
「剣、か。今時、剣術部や剣道部でもない限り刀剣に触れることなんてないと思うんだが・・・」
「ほのかはそれが士郎の魔法から感じる、と」
ふむ。と達也は考える。
「士郎は本来BS魔法師だ。剣にまつわる何かがあるのかもしれない。警戒するに越したことはないだろう」
(お兄様はやはり、警戒を緩めてはいないのね)
それもまた自分のためだと考えるとなんだかうれしくなる深雪だった。
――――interlude out――――
第三演習室にて
「風紀委員長の渡辺摩利だ。今日は教師推薦枠の二人の実力を測る。ルールは相手を死に至らしめる術式、並びに回復不能な障害を与える術式は禁止とする。直接攻撃は相手に捻挫以上の負傷を与えないこと。武器を使用することは禁止。素手による攻撃は許可する。結果は、相手が負けを認めるか、審判が続行不可と判じるまでにする。ルール違反は私が力づくで処理するから覚悟しろ。以上だ」
摩利の説明が終わった。今回は見学と称し、生徒会長の七草真由美と服部刑部、市原鈴音がいた。
しかし、士郎はどうしようか迷っていた。
(取り押さえるのは簡単だ。でも捻挫未満か・・・)
やるのなら縮地で後ろに回り延髄に一撃といったところだが・・・
ここは魔法科高校。それでは芸がない。
(うーん。まぁいいか。べつに風紀委員になりたいわけじゃないし)
方針は決まった。
森崎のほうは、
(魔法師同士の戦いはどちらが魔法を先に展開できるかにかかっている。僕の“クイックドロウ”なら・・・!)
「では・・・始め!」
ヒュッ、トス
勝負は一瞬だった。予想通り士郎が縮地で背後に移動。延髄に軽く一撃を入れたことで終わりを告げた。
「なっ・・・」
「何ですか・・・!?今の」
「森崎君は・・・」
うつぶせにばったりと倒れていた。
「ふう。委員長。これでいいですか?」
「あ、ああ。勝者、衛宮士郎!」
その宣言を聞いた服部が異議を申し立てる。
「今のスピードは肉体の限界を超えている!自己加速術式をあらかじめ仕込んでおいたんだろう!?」
「いえ?純粋な体術ですが」
「ハンゾー君。それはありませんよ。だって魔法式も、サイオンの乱れさえも感じなかったんですから。最後に森崎君の意識を奪ったのも体術ですか?」
真由美の言葉に士郎は素直にうなずいた。
「今回俺は森崎の魔法を解析する魔術と、害意のある魔法を無効化する体質を利用しただけです」
「魔法を解析・・・?森崎がクイックドロウの使い手だと知らなかったのか?」
「あれは“クイックドロウ”というんですね。俺は
「それにしたって単一魔法でもアルファベット3万字以上ある!それを・・・」
「それは俺の魔法特性というか・・・魔法無効化と合わせて特殊能力としか」
いきり立つ服部に士郎は肩をすくめることで返事をした。
「ねぇ」
「はい?」
それまで黙って聞いていた真由美が口を開いた。
「なんで魔法を使わなかったの?」
率直な意見に士郎は、
「使わなかったのではなく
「なぜですか?衛宮君は一科生でしょう?魔法が使えないとは思えないのだけど・・・」
「簡単ですよ」
その時摩利や真由美たちはうすら寒いものを感じた。
「俺の魔術は殺傷力が高いからですよ」
そう言った。
帰り道。結局士郎は風紀委員とされてしまったが、何はともあれその日は帰宅することが許された。
「士郎。風紀委員に入ったんだってな」
達也の言葉にガクリと肩を落として、
「言わないでくれ・・・俺は平和な学園生活を送りたいんだ」
「名誉なことじゃねぇか。CADの携帯も使用も許可されるんだろ?」
そんなことをいうの西城レオンハルト。気さくなタイプで士郎ともすぐに打ち解けた。
「一応取り締まりの範囲ならな。それ以外だと強烈な制限がかかったり重い罰則がある」
私利私欲の使用は認めないということだ。
「司波さん」
「ちょっと話を聞いてくれないかな」
「いえ・・・私は・・・」
深雪は達也の背中に隠れるように動いた。
「深雪は、今日は達也と帰るんだ。また今度にしてくれないか?」
森崎を筆頭に1-Aの生徒が数人呼び止めた。
それを士郎が次回にするように促す。
「なによウィード絡みのくせに」
「司波さんは僕たちといるべきなんだウィードの君たちにはもったいない」
「ウィード、ウィードってぇ、それ禁止用語じゃねぇの?」
「お昼の時といい、いい加減諦めたらどうなんですか?深雪さんはお兄さんと帰るといっているんです!」
「僕たちは司波さんにちょっと時間をもらいたいだけだ!」
「ウィードが私たちに指図しないで!」
「・・・。」
士郎はいい加減頭に来ていた。同じ一年生なのだから所詮はドングリの背比べだと士郎は思っている。
(それをウィードウィードと。何様のつもりだ?)
そうこうしているうちにお互いエスカレートし森崎が模擬戦で見たCADを構え、魔法を発動しようとした。
その瞬間、
ゾワッ
「「「!!?」」」
身も凍るような殺気にそこにいたすべての生徒が動きを止めた。
「森崎だったな・・・今魔法で攻撃しようとしたな?」
「そ、それが何だっていうんだ!僕はこいつらウィードに「俺が風紀委員だということを知っていてやっているんだな?」!?」
士郎の冷たい殺気に思わずたじろぐ生徒たち。
「お兄様・・・」
「大丈夫だ」
そう深雪に答えながらも達也は戦慄していた。
(恐ろしい殺気だ。耐性のある俺でも一瞬硬直した)
硬直は解けたが冷たく、鋭い殺気の前に誰もが制止を余儀なくされた。
そこに、
「やめなさい!」
「風紀委員長の渡辺摩利だ。今、魔法で不適切な行動があったように見えたが・・・衛宮、状況を報告しろ」
その言葉に士郎は殺気を収め、
「1-Aの森崎駿、他二名が攻撃目的の魔法を行使しようとしていました」
「そうか。では事情を聴く。森崎駿以下1-Aの生徒は私についてきなさい。1-E諸君については衛宮、お前が証言しろ」
「了解しました。・・・悪いなみんな。先に帰っていてくれ」
「それはいいけど・・・」
何とも言えない表情をするエリカの頭をなでて、
「ここは俺の顔に免じて、な?」
「・・・ッ!美少女の頭を気安く撫でるな!」
ゴン!
とエリカは士郎の向う脛を蹴り飛ばしたのだが、士郎は大して痛がる様子もなく。
「悪かった悪かった。じゃ、達也、深雪、後でな」
そう言って士郎は摩利や真由美と共に去っていった。
――――interlude――――
「ふう・・・今でも肌がひりつくぜ。あんな殺気は初めてだ」
あの事件の後達也たちはカフェで一息ついていた。
「そうね・・・剣を握って長いのかも。あんなに殺気をコントロールするなんて・・・」
「エリカ。なぜ士郎が剣を握って長いと感じたんだ?」
「確かに・・・鋭い、鋭利な刃物のようなオーラでしたけど・・・」
達也と美月の言葉にエリカは、
「あいつの手・・・何度も剣だこが潰れた
「剣士ねぇ・・・でもあいつ剣なんか持ち歩いてないぜ?CADも汎用型だったしよ」
レオも首をかしげるように言った。
「でも、美月も鋭利なオーラを見たのよね?」
深雪が問うと美月は少しおびえた様子で、
「うん・・・それに不思議な感覚だったんだけど・・・まるで剣をいくつも身にまとっているかのような不思議なオーラが見えたの」
「・・・。」
「お兄様・・・」
「大丈夫だ。少なくともあいつは敵じゃない」
(いや、敵にしたくない・・・か)
士郎には魔法を無効化する能力が備わっている。それは達也の切り札も例外ではない。
いざとなれば実力行使をして負けるのは自分だと、達也は思っていた。
「それにしても、今回は士郎さんに助けられてしまいましたね」
「士郎がいたから私たちお咎めなしだったからね」
「その点は感謝しないとな。余計なことに巻き込まれずに済んだんだ」
「でも・・・士郎さんには悪いことをしました・・・」
「えー。あいつが自分からしたことなんだからありがたがっとけばいいんじゃない?」
「そうはいかねぇだろ。今回のは大きな借りだ。俺たちまで連行されてたらこうしてお茶する時間もなかったわけだしよ」
レオがそう言うが達也は、
「あいつは特に借りだなんて思ってないと思うぞ」
「ふふ、そうですね。それに甘え続けるのもいけないと思いますが士郎のことですから」
「やけに親密よね。前の学校からの同級生とか?」
「いや、ごく最近なんだが家庭の事情で家に居候させてるんだ」
「へぇ・・・二人の愛の巣に飛び込んだお邪魔虫ってわけ」
「エ、エリカちゃん・・・」
あんまりな言い方に美月が咎めようとするが・・・
「まぁ。士郎が一人増えたくらいで私とお兄様の中に変わりはありませんもの」
「おいおいそりゃ兄妹の会話じゃないぜ!?」
慌ててレオが割って入るが、
「そんなことないわ。私とお兄様の仲は絶対よ」
「「ウガッ」」
ゴツン。
エリカとレオは揃ってテーブルに頭を打った。
「深雪そこまでな。一部冗談だと思ってない人もいるから」
達也の言葉に、
「・・・え?冗談・・・え!?」
「まぁこれが美月の持ち味よね」
「このバカップル兄妹に突っ込み入れようとした俺がバカだったわ・・・」
そんな風に平和な空気を楽しむ皆だった。
――――interlude out――――
「では、実際に攻撃目的の魔法を発動しようとした森崎以下二名には厳重注意とする。次はないから覚悟しろ」
「はいッ・・・」
森崎が歯噛みをしながら返事をする。
「衛宮1-Eの生徒に攻撃の意思はなかったんだな?」
「森崎達がウィードウィードと貶めたので危険な状況でしたが、彼らは一切手を出していません」
「そうか。ではここまでとする!解散!」
「ふぅ・・・」
「衛宮、付き合わせて悪かったな」
「いえ、一応俺も風紀委員ですから。ただ・・・」
士郎は心底あきれた風に、
「ウィードだ、ブルームだってもう少しどうにかなりませんかね。ここまで差別化が激しいと勉学にも影響が出るでしょうに」
「そうだな・・・今回のようにいざこざになることも多い。だが教職員魔法師には限りがある。どうしてもカリキュラムで差がつく」
「教師がいないとき、二科生はどうしているんですか?」
士郎の問いに、
「そうだな・・・実技の自主練習や教師の残していった課題の習熟、あとは本当にそのまま自習となることもあるようだ」
摩利のその返答に士郎はあちゃー、と頭を抱えた。
「そりゃ差がつくわけだ。悩みをヒアリングして実際に解決に導くのが完全に欠けてるじゃないか・・・」
士郎はどうにものっぴきならない状態であることを悩んだ。
「生徒会長の真由美もそこを問題視しているようなんだがな・・・根本的な解決方法には至らなくてな」
うぬぬ・・・と悩む士郎だが、解決には長い年月がかかるだろうと無理やり納得して、
「じゃあ俺は帰りますね」
「ああ。今日は無理だったが今度は風紀委員会本部を案内しよう。ご苦労だった」
そう言って士郎は懲罰室を後にする。
「くあ~・・・だいぶ遅くなっちまったな。何か買って帰るか」
深雪がせっせと晩御飯を作っているだろうことを予想して、達也からもらっているお小遣いで追加食材を買っていくことにする。
そして買い物を終え、
「ただいまー」
「おかえりなさい、士郎」
エプロン姿の深雪に出迎えられた。
「ただいま、深雪。達也はまた地下か?」
「ええ。CADのプログラムに勤しんでおられるわ。何か買ってきたの?」
買い物袋を見て深雪が言う。
「ああ。晩飯の足しになればいいなって。晩飯作ってる最中だろう?俺も手伝うよ」
「お願いします。今日の献立は――――」
深雪に晩御飯の献立を聞き深雪とともにキッチンに入りところどころアドバイスしながら献立を完成させていく。
完成間近というところで達也がプログラミング室から上がってきた。
「お兄様!晩御飯ができますよ」
「ああ。たぶんそうじゃないかって思ったんだ。・・・士郎、お帰り。今日は助かった」
「ただいま。大したことはしていないさ。それより、今日も深雪の力作だぞ。運ぶからテーブルに着いてくれ」
大人しくソファに座って目頭を揉む達也。
「また根を詰めていたんだろう」
「いや、そこまで根は詰めていない。そういえば士郎」
「なんだ?」
深雪と一緒に作った晩御飯を食べながら達也は聞いた。
「お前は剣術を嗜むのか?」
「・・・。」
士郎は食べながら黙った。
「士郎・・・やっぱり言いづらいことなの・・・?」
心配げな深雪の表情に白旗を挙げた士郎はコクリと頷いた。
「そんな顔されちゃあな。ああ。我流だけど剣を扱うよ」
「剣はどこにあるんだ?一応危険物の所在は明らかにしときたいんだが・・・」
「達也と深雪に嘘はつかない約束だからな。教えてもいいけど・・・折角、深雪が達也のために作った力作を汚したくない。食べ終わったらでいいか?」
「そういうことなら・・・」
「うふふ、士郎ったら・・・」
ということでまずは晩御飯を楽しむことに。
「深雪。学校は楽しいか?」
「はい、お兄様!でも・・・」
「どうした深雪」
表情に陰りを見せる深雪に士郎は問いかける。
「その・・・お兄様の実力が、そのお力が評価されないことが深雪は悲しいです・・・」
「深雪・・・」
「んー・・・深雪、一つ聞いてもいいか?」
「は、はい」
士郎は一つ考えて、
「確か新入生総代に選ばれた生徒は通年して生徒会役委員になるんだよな?深雪にも話が持ち掛けられているんじゃないか?」
「そうね・・・生徒会長からそんな話をされたわ」
「士郎、まさか」
達也はまた厄介ごとが、という顔をしている。
「生徒会役員として達也を推したらどうだ?」
「それは名案だわ!」
「・・・。」
ぱあっと表情を明るくする深雪に仏頂面になってしまう達也。
「なんだ?二人で生徒会やればいいじゃないか」
「俺は二科生だぞ。生徒会は一科生が中心になってやっている。俺が入るのは反感を買うだろう」
「しかしお兄様・・・」
「深雪。俺はお前が俺の代わりに怒ってくれるだけで十分だ。それ以上は・・・」
「まぁまぁ。正直、達也が言うように生徒会に入れる可能性は低い。でも、何事もやってみないとだぞ」
「そうですよね!」
「はぁ・・・」
妹がすっかりやる気になってしまっていることにため息を吐いて食事を続ける達也だった。
食事を終えて、達也はもう一度晩御飯の時の話をした。
「・・・投影の話はしたよな?」
「あの注射器をサイオンを使って具現化したBS魔法だな」
「ああ。根本的な話なんだが、魔術師にも色々いてな。基本は何らかの方法で五大元素を操るのが主なんだが・・・」
――――
「!(またイデアを経由せずエイドスに置き換わった)」
達也はこのイデアを経由しない士郎の魔術に何か興味心が沸いた。
「これは・・・短剣?」
短剣にしては分厚く、刀身の大きい白と黒のそれを見て口から出たのがその言葉だった。
「そうだ。夫婦剣・干将・莫耶。俺のメイン武装だ。俺の属性はな、剣だ。火でも土でもなく後付けされた水ですらない。ただひたすらに剣にまつわることだけできる欠陥魔術師だ」
「・・・。」
「あの・・・投影という魔法もですか?」
「ああ。俺は基本的に一つのことしかできないのは話したよな?投影も解析も身体強化・・・厳密に言えば“強化”だな。それも一つの魔術から零れ落ちたものなんだ」
「剣なら何でも作れるのか?」
達也の言葉に、
「いや、一度
また一対の干将・莫耶を作り出して言う士郎。
「触ってみてもいいか?」
「いいぞ。万が一のために刃は潰してある。うっかり切ることもないから安心してくれ」
恐る恐る達也と深雪が、持ってみたり、コンコンと叩いてみたりする。
「美しいですね」
「ああ、機能美ってやつかな。一つの完成形に思える」
「それは宝具だからかもしれないな」
「宝・・・具?」
「そう。強い概念を持ったいわゆる伝説の武具ってやつだ」
「そんなものまで作り出せるのか?」
達也にしては驚いたようで目を見開いている。
「言っただろう?俺の属性は剣だ。剣に関することなら大抵は可能だ。・・・まぁ他のことも応用の範囲、あの注射器とかだな。ならできる」
「そういえばあの注射器は何処へしまったのですか?変に処分するといらぬ誤解を生むと・・・」
深雪の疑問に答えたのは達也だった。
「深雪。これは士郎のサイオンで構成された情報体だ。作ることができるなら・・・」
正解、とでもいうように深雪の触っていた莫耶が風景に溶けるように消えた。
「!?」
「サイオンを束ねて作り出せるなら、その情報体を解いてサイオンに還元することもできる。そうだな?」
「流石、達也だな。その通りこうして消すこともできる。まぁ本来は世界の元に戻そうという性質に抗えなくなって消えるのが普通だけど、俺の場合は剣なら壊れたりしない限り消えたりはしない」
「この剣は伝説の武具だと言っていたな。何か特別な力でもあるのか?」
達也もこの剣がサイオンから作り出された情報体だと知って解析を試みるが、なにやら強い力で妨害されているのだった。
「干将・莫耶は互いに引き合う特性を持つんだ。達也、白剣の方をしっかり持っててくれ」
そう言って士郎は黒剣の方をもって離れる。すると・・・
「引っ張られるな」
引っ張られる。それもなかなか強い力でだ。
「この通りだ。宝具にもランクがあってだな・・・これはCランクの宝具だからこの程度の力しか持たないがもっと上級になると伝説や逸話通りの力を発揮するぞ」
「Cランクだかどうだか知らないが、これはもう物質に魔法式を保存しているのと同じじゃないか」
「どういうことだ?」
「あのな。物質・・・この際伝説の武器でもいい。それを最初の起動だけで後は自動で内包された行動を行えるということは内包された魔法式が自動で働くということだ」
「ああ・・・まぁ干将・莫耶だから達也の眼鏡に叶ったっていう面もあるな。他のはそうもいかないことが多いぞ」
「そうなのか・・・とにもかくにも、士郎。お前に会えたことは幸運だったよ」
「まぁ最初に消し飛ばされかけたけどな?」
「それはお前が悪い」
「お兄様・・・」
はっはっは!と笑ってその夜は過ぎていったのであった。
今回はここまでです。森崎君には風紀委員から退いてもらいました。だって士郎活躍させたいしね!森崎君は挫折してから輝く人だと思うので勝負も一瞬で。
やっと出てきました干将・莫耶。ただし今回はお兄様の目を輝かせる目的で。この子らの出番はもうちょっと後です。まだ本格的な戦闘にならないからね!
というわけで次回お会いしましょう、では!