赫焉の記憶   作:Reivalt

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赫焉の影

 C.A.L.E.本部、極秘作戦会議室。

 

 モニターに映し出された衛星画像を前に、烈火たちは黙って立っていた。

 

 廃棄された旧国家研究所の地下区域。正式には“封鎖済み”とされていたが、数日前から未知の異能反応が断続的に観測されているという。

 

 「この反応は、“設計された能力”に近い波形を持っている。

 おそらく《旧赫焉計画》に関連する因子を持つ個体……あるいは、それに準ずる存在だ」

 

 風間が低い声で言った。

 

 「つまり……また、“俺たちと同じような”奴がいるってことか」

 

 烈火の言葉に、ユウトも無言で頷いた。

 

 「任務内容は単純だ。異能体の所在確認と排除。必要なら回収も検討する。

 だが――警告しておく。これは“作戦”であると同時に、“選別”だ」

 

 「選別?」

 

 名瀬シアが眉をひそめた。

 

 「君たち《赫焉班》が、今後本当に実戦部隊として使えるか。

 “本当に選ばれた存在”なのか。上層部が見極めようとしている」

 

 鷹人が思わず舌打ちした。

 

 「なんだよそれ……こっちは命懸けで戦ってんのに、まだ“試す”つもりかよ」

 

 「そういう場所だ。C.A.L.E.はな」

 

 風間は冷徹な口調で言い放った。

 

 「だが、俺は見ている。お前たちが“火に飲まれるのか”“火を灯す側になるのか”をな」

 

 作戦は翌朝、開始された。

 

 移動手段は、都市管制下の無人輸送ポッド。

 降下地点は、旧研究所が存在する南ブロックの地下第27区画。

 

 暗く、湿気を含んだ空気。所々に崩落した天井と、赤錆びた鋼材。

 “何か”が潜んでいる気配が、明らかに辺りを包んでいた。

 

 「烈火、右奥の通路。微弱な熱反応がある」

 

 「了解。鷹人、後方警戒頼む。シアとユウトは俺に続け」

 

 《赫焉班》初の実戦任務は、緊張のまま静かに進行していった。

 

 そのとき――

 

 「待て。……音が消えた」

 

 ユウトが足を止めた。周囲の空気が、一瞬にして“無音”に変わる。

 

 「異能圧……いや、フィールド封鎖か……!」

 

 次の瞬間、天井が爆裂した。

 

 上から降ってきたのは、全身に異能増幅装置を埋め込まれた巨大な影――

 

 「……これ、異能体じゃねぇ。人間……!? 改造兵だと……!?」

 

 烈火の動きが止まる。

 

 その個体は、腕に赫焉のマークを刻み、異能を強制活性化された“実験体”だった。

 

 「……うそだろ」

 

 鷹人が呻いた。

 

 敵は、赫焉因子を移植された“別の被験体”。つまり、烈火たちと同類の存在――

 いや、“捨てられた側”だ。

 

 敵の目が烈火に向いた。

 

 その口が、かすかに開いた。

 

 「……E-07……お前だけ、生き残ったのか」

 

 その声は、機械に歪んでいたが――どこか、懐かしさを孕んでいた。

 

 「まさか……知り合いか?」

 

 「……わかんねぇ。でも、俺は――戦うしかねぇ!」

 

 烈火の右手が、燃え上がる。

 

 目の前に立つのは、“過去の罪”が形を持って現れた姿。

 

 赫焉の影。それは、烈火自身の“影”でもあった。




次回:
第12話「影に抗う」
異能因子を強制注入された“捨てられた被験体”との戦闘が始まる。
烈火は自分と同じ“赫焉の火”を宿す者に、どう向き合うのか――
そして、戦いの最中に告げられた“真実”が、烈火の心を揺らす。
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