瓦礫と化した廃病棟の屋上で、烈火とイグニスの戦いが始まった。
音なき熱圧が空間を切り裂く。
イグニスの異能《灼鎖(しゃくさ)》――
熱の密度を鎖のように固定・操作し、視認困難な高温線で対象を拘束・断裂する、超精密熱制御能力。
「動きを止めた瞬間、縛り殺されるぞ。注意しろ、八神!」
シアが叫ぶ。
「わかってる……!」
烈火は左右にステップを刻みながら、全身に熱を集めていく。
異能《圧縮熱(ヒートコンプレッション)》、一点集中――拳に込める。
「焦熱《バーニング・フィスト》!!」
放たれた拳が、空気を引き裂き、一直線にイグニスへ迫る――が。
「甘い」
イグニスの足元が一瞬にして溶け、烈火の拳が空を切った。
直後、烈火の背後に伸びた熱鎖が脚を絡める。
「っく……!」
烈火の足首が爆ぜるような熱に焼かれ、バランスを崩す。
だがその瞬間を読んでいたかのように、鷹人の投げた閃光弾が空を割った。
「烈火、目ぇ閉じろッ!」
閃光がイグニスの視覚を奪い、烈火はすかさず距離を取る。
「……連携か。想定内だ」
目を細めながらも、イグニスは熱鎖で視界を防御しながら距離を詰める。
だが、次の瞬間――
「断つ!」
ユウトが地面を掌で打ち抜いた。
《構造断裂》が走る。屋上の床が歪み、熱の拠点ごと構造を切断する。
「足場、崩した……! 今だ、烈火!」
「おう!!」
烈火の両手が、白く光るほどの熱を帯びる。
「喰らえぇッ!! 《焔撃連衝・改》ッッ!!」
四発連続の灼熱拳がイグニスを打つ。
空気が悲鳴を上げ、瓦礫が焼き弾ける。
だが――その中央に、黒煙に包まれながらもなお立つ影。
「防いだ、のかよ……!」
イグニスの拘束服が焦げて裂け、肌の一部が焼けていた。
「解析完了。君の《熱》は、衝撃依存型だ。次は当たらない」
「ちっ……!」
イグニスは口元に手を当てた。そこから、金属のような小さな筒――“投与カプセル”を噛み砕く。
「制御補助剤《FZ-β》、投与完了。出力制限、解除」
その瞬間、彼の全身から――異質な“熱”が、吹き出した。
「これは……!?」
「こいつ、さっきまでの熱とは違う……温度じゃねぇ、圧だ!」
烈火の膝が自然に沈む。
押し寄せる“密度”。まるで重力のような圧熱。
「これが……《赫焉-II》の完成形だ。
君たち《旧赫焉》の限界を超える、設計された灼熱」
イグニスの周囲の空間が歪みはじめる。
「熱を力とする君に、“熱の領域”を与えたらどうなるか。
見せてあげよう、八神烈火――“君の終焉”を」
烈火の足元の空間が灼け、次の一撃が迫る――!
次回:
第16話「赫焉vs赫焉」
“自然覚醒”と“人工制御”、ふたつの赫焉因子の真っ向激突――
烈火は、燃え尽きずに“己の炎”を貫けるのか。
そしてイグニスの語る、“赫焉-II”の真実とは。