施設の最奥に響く、機械の駆動音。
赫焉班が“ヒカル”を救出した直後、地下全体が不気味な振動に包まれ始めた。
「……今の音、何だ?」
烈火が眉をひそめる。
「起動信号だ。ここの中枢――《赫焉観測炉》が、稼働を始めた」
ユウトが呟いた。
彼の手元の端末には、既に“封鎖解除”の表示が点滅している。
「これ、まさか……わざと“起動”させた?」
「いや。ヒカルを解放したことで、想定外の干渉が起きた。
……誰かが、俺たちの動きを“監視”していた可能性がある」
「監視……!」
烈火が奥歯を噛みしめる。
誰かが、裏で“仕組んでいた”。
この場所を、赫焉班に見つけさせ、そして“開けさせた”。
「……まさか、これが“第二段階”ってやつか」
呟いたのは鷹人だった。
「最初から、俺たちがここに来ることまで計算済み。
で、俺たちが“鍵”だったってわけかよ……!」
重く閉ざされていた扉が、自動で開く。
先に広がるのは、無数の管と中枢装置が並ぶ広大な空間。
そこには、かつてこの施設で行われていた“全記録”が保管されていた。
「これが……《赫焉計画》の、記憶……?」
シアが、震える声で呟く。
巨大な装置の中央――
無数のホログラムが浮かび上がり、“実験記録”が映し出されていく。
『E-07、安定性確認。異能発現レベルB。身体能力A。精神耐性C。』
『E-05、異能特化型。接触応答に不安定反応あり。暴走率高。』
『B-Ωβ体、融合段階での劣化進行。再実験保留。次段階へ以降……』
「……俺たちの名前が……」
烈火が呟く。
E-07――それは、烈火自身のコード。
そしてE-05は、シア。
“番号で管理された存在”として扱われた、自分たちの“生まれ”。
「これが、《赫焉計画》の核か……!」
ユウトが記録に手を伸ばすと――
突如、天井からレーザーが降り注いだ。
警報とともに、空間全体が“防衛モード”に切り替わる。
「ッ……閉じ込められた……!」
だが、その瞬間――
「アクセス権、確認。
コード:E-00――認証完了」
機械音声が響く。
そして映し出されたのは、全身を黒い外套で包んだ人物の姿。
フードの奥、赤い眼だけが光る。
『……ご機嫌よう、E-07。……よくここまで辿り着いたな』
烈火の体に、電流のような戦慄が走る。
「……お前が、“火ノ目”か……!」
フードの男――火ノ目は、ゆっくりと笑った。
『俺は君たちの“父”でもあり、“観測者”でもある。
君たちがどれほど“人間としての意思”を保てるのか――
その可能性を観察することが、私の使命だったのだよ』
「ふざけんな……!」
烈火が拳を握りしめる。
だが火ノ目は動じない。
『次に会う時、君はもう……“烈火”ではいられなくなる。
観測は、最終段階に入る。君たちには――
“赫焉計画”そのものを終わらせる義務がある』
通信が切れる。
そして空間の壁に、“次の座標”が示される。
「次……行くのか?」
鷹人が問う。
烈火は短く答えた。
「ああ。
俺たちは、もう後戻りできねぇ。
“赫焉”に選ばれたなら――
最後まで、見届ける義務がある」
次なる舞台へ、赫焉班は進む。
それは、“始まりの場所”へと繋がる旅路だった。
次回:
第22話「赫焉の残火」
示された座標は、烈火の“過去”と重なる地。
かつて家族を失い、すべてが始まった場所――
そこで赫焉班が目にするのは、ただの追憶か、あるいは新たな闇か。