赫焉の記憶   作:Reivalt

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赫焉計画、再起動

静寂が支配する廃棄区画。その中心に、冷たく横たわる実験体の亡骸があった。

 

誰もが息を呑み、言葉を失っていた。烈火は拳を握りしめ、わずかに震える指先を押し殺すように握りしめた。彼の目は、閉じたままの実験体の顔を見つめていた。

 

「……これが、俺たちの“前”の存在……か」

 

ユウトが呟く。彼の声には感情の色が希薄だったが、その裏には、深く沈んだ憂いがあった。

「E-01──赫焉計画、最初の被験体。僕たちは、その失敗の果てに生まれた存在だ」

 

「じゃあこいつは……俺たちの“兄”みたいなもんか?」

鷹人が冗談めかした声を出すが、その目はどこか曇っていた。

 

「兄というより……犠牲だ」

名瀬シアが静かに言った。「存在を消され、記録すら闇に葬られた。E-01は“実在しない失敗作”として、ここに捨てられてたのよ」

 

烈火は歯を食いしばった。

 

「ふざけんなよ……! 生きてたかもしれない人間を、こんな……!」

 

怒りが噴き出す。だが、それを制したのはユウトだった。

 

「烈火。怒りをぶつけても、何も変わらない。大事なのは、ここから何を知り、どう動くかだ」

 

その言葉に、烈火は拳を震わせながらも、頷いた。

 

「……そうだな。すまん」

 

その時、実験体の安置台の奥にあった端末がひとりでに起動し、画面にノイズ混じりの映像が浮かび上がった。

 

「映像データ……自動起動装置?」

 

ユウトが解析を始め、すぐに再生が始まる。映像には、かつての研究施設の一角、E-01と思しき少年と、白衣を着た研究者が映っていた。

 

『被験体E-01、異能発現率98.6%。圧倒的な安定性……だが、情緒の異常な抑圧反応が確認される』

 

『──今日も話しかけたけど、返事はなかった』

 

『笑わない。泣かない。怒らない。……それでも、彼は“人間”だった』

 

途切れながらも残されたその記録に、赫焉班の面々は凍り付く。

 

『私たちは、彼を道具として扱った。そして──』

 

映像が暗転し、次の瞬間、今度は別のロゴが浮かび上がった。

 

「赫焉計画:再起動指令受領」

 

「……再起動?」

シアが眉をひそめる。

 

「まさか……E-01の死をトリガーに、計画の続行を命じたってこと?」

ユウトが言い、背後の通信機器が一斉に光を放つ。管制本部からの連絡だった。

 

《こちら本部。コードレッド発令。区域S-7にて異常エネルギー反応を検知。全隊、至急対応せよ》

 

「異常反応……!」

 

烈火が端末を握る。画面には、“封鎖区画S-7”と表示されていた。

 

「まさか、もう“次”が……!」

 

その場にいた全員が息を呑んだ。

 

「行こう、みんな」

 

烈火の言葉に、全員が頷いた。迷いはない。怒りも、哀しみも、すべてを炎に変えて。

 

そして、彼らは再び戦場へと駆け出す。

 

赫焉計画は終わっていなかった。

 

いや──

 

今、まさに“始まった”のだ。

 




次回:
第29話「赫焉班、再臨」
“赫焉計画”の再起動を告げる不穏な報せ。封鎖区画S-7にて観測された異常なエネルギー反応に、烈火たちは即時出撃を決意する。
かつて彼らが初めて手を取り戦った場所──《焰牙テスト区域》。
そこに再び立つ赫焉班の面々に待ち受けていたのは、蘇る過去か、それとも新たなる脅威か。
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