赫焉の記憶   作:Reivalt

32 / 47
赫焉班、再臨

再び、その地に足を踏み入れる――。

 

灰色の空の下、赫焉班はかつての任務地、旧施設跡へと降り立っていた。封鎖域からの一時的な退避、そして急ぎ整えられた装備と共に、彼らは“計画の中心”へと帰還する。

 

「戻ってきたな……」

 

先頭に立つ八神烈火が低く呟いた。かつて、己の出生と向き合ったこの場所。その扉の先に、答えと仇と、そして闇が待っている。

 

「空気が……違う」

 

鷹人が警戒するように周囲を見渡す。施設全体が微かに軋む音を立て、風もないのに空気がざらついている。

 

「異能の残滓……それに、魔素が混じってる。誰かが――起こしてる」

 

静かに語るシアの表情はいつになく険しい。既にこの地は“再起動”していた。

 

「それでも、進むんだろ?」

 

榊ユウトの言葉に、烈火は迷わず頷いた。

 

「……ああ。赫焉計画を、終わらせるためにな」

 

彼の拳が微かに熱を帯びる。《圧縮熱》がその意志に呼応するかのように、温度が上昇していく。

 

施設内は異様な静けさに包まれていた。灯りは消え、しかし通電はしており、誰かがここで“動いている”ことを物語る。

 

「こっちだ。B区画の先、地下フロア……再起動の痕跡が集中してる」

 

索敵用の小型ドローンを操作する鷹人の目が鋭く光る。赫焉班は無言でそれに従い、廊下を駆ける。

 

と、その時だった。

 

「接触、右からくる!」

 

警告と同時に、天井を突き破るようにして、奇形の異能体が襲いかかってきた。腕の関節は逆に曲がり、顔は潰れて目も口も存在しない。

 

「――ッ、来るなああッ!」

 

烈火の拳が火を纏い、異能体を吹き飛ばす。その熱波に焼かれても、なお異能体は動きを止めない。

 

「再生速度が早すぎる……普通の異能体じゃない!」

 

「違う、“造られた”やつだ。B-Ωの時みたいに!」

 

再び現れる異能体たち。数は少ないが、どれも再生能力と身体強化が極限まで調整されている。即ち、“戦闘用”にデザインされた試作品。

 

「援護する! 全方位に展開!」

 

榊ユウトが手を広げると、床に触れていたパネルの接合部が一斉に崩壊し、異能体の足元を引き裂く。

 

「砕け散れ」

 

冷淡な声と共に、異能体の上半身が一瞬で断裂する。

 

「烈火、今のうちに!」

 

「任せろ!」

 

烈火が駆け、施設奥へと突破する。その後ろを赫焉班の面々が続いた。

 

地下区画――。そこはかつて、烈火たちが眠っていた“檻”だった。

 

今はその全てのポッドが開いており、内部は空。だが、それ以上に注目すべきは――中央に立つ“人影”だった。

 

「……よく来たな、“E-07”」

 

低く、嗄れた声。その声の主は、白衣を羽織った男――《赫焉計画》主任研究員、《鳴神ハク》。

 

「貴様……!」

 

「怒るな。お前たちはすべて、我々の“希望”だったのだから」

 

その笑みは、歪みきっていた。常識も倫理も崩壊した者の、それだった。

 

「今から始まる。赫焉の焰が、再び世界を焼き尽くす」

 

男の背後で、何かが“脈動”を始める。巨大なチューブに繋がれた実験体。皮膚の下を蠢く光。新たな《実験体》が、覚醒しようとしていた。

 

「止めさせてもらう……お前たちが犯した罪を、ここで終わらせる!」

 

烈火が叫び、赫焉班が一斉に構える。

 

再び、戦いが始まる。

 

だがそれは、全ての序章に過ぎなかった――。

 




次回:
第30話「赫焉の檻、再び」
再起動された《赫焉計画》。
赫焉班の前に立ちはだかるのは、かつて彼らと同じように生まれ、
しかし異なる“道”を選ばされた存在――新たなる実験体。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。