赫焉の記憶   作:Reivalt

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赫焉の檻、再び

目の前の鉄扉が、重苦しい音と共に開いた。

 

「……ここが、“中枢”か」

 

烈火の声が低く響く。そこは、かつて《赫焉計画》が最も機密性をもって行われていた主実験フロアだった。コンクリート剥き出しの無機質な空間には、異様な静寂が漂う。

 

室内には、まるで病室のように仕切られた隔離ブースが並び、その多くがガラス越しに中を覗ける構造になっていた。ベッド、拘束具、点滴装置。どれも使用された形跡を色濃く残している。

 

「――生々しいな。まるで昨日まで使ってたみたいだぜ……」

 

鷹人が呻くように言った。その眼が捕らえた先、ひとつのブース内に、誰かが立っていた。

 

「待て、動くな。識別信号が……おい、烈火、こいつ……!」

 

榊の警告と同時に、ブース内の人影がこちらに顔を向けた。

 

黒髪に無表情な眼差し。白衣のような服装。しかしその両腕には、明らかに人間離れした装甲が埋め込まれている。

 

「“実験体G-04”。……識別コード確認。C.A.L.E.所属の実行部隊、赫焉班。対処対象とする」

 

声が、冷たく響いた。

 

「“対処”だと……? お前も実験体じゃないのか!?」

 

烈火が一歩前に出て叫ぶ。

 

だが、その問いに答える者はいない。G-04――名を持たぬ実験体は、淡々と戦闘態勢に移行していた。

 

「侵入者排除。命令、継続」

 

次の瞬間、彼の両腕から鋼鉄の刃が展開され、赫焉班へと突進してくる。

 

「構造断裂――展開」

 

榊の声と共に、床面が波打つように変形し、G-04の動きを封じようとする。しかし、その動きをものともせず、G-04は跳躍して避けた。

 

「連携、いくぞ!」

 

烈火の拳が赤熱を帯びて閃光を放つ。圧縮熱を込めた一撃が放たれるが、G-04はその一撃すら受け流すように斬撃で迎撃した。

 

金属が弾け、火花が走る。

 

「こいつ……俺たちと同じ“造られた異能”……いや、それ以上か」

 

シアが背後から射撃の構えを取る。

 

「烈火、正面は任せた。私が援護する」

 

「了解!」

 

連携が動き出す。鷹人は背後の空間にドローンを展開し、視界連結を起動。G-04の死角と行動パターンを即座に解析する。

 

「弱点……あるな。動きは正確だが、決まりきってる。“機械的”なんだ」

 

「それってつまり、“感情がない”ってことか……」

 

烈火が呟く。

 

「だったら、俺たちが見せてやるよ――“意志”の火をな!」

 

再び正面から突っ込む烈火。今度はあえて防御を崩し、G-04の斬撃を受けるような姿勢で誘導する。

 

「“解放形態・焦熱連撃”!」

 

身体から溢れ出した熱気が爆発するように広がり、G-04の左腕を吹き飛ばす。

 

「……損傷、軽微。再構築開始」

 

断面から再生のような動きが始まり、瞬く間に義肢が再生されていく。

 

「チッ、再生持ちかよ!」

 

「でも、完全じゃない。さっきの一撃、効いてた」

 

シアの目が鋭く光る。

 

「撃つ、今度こそ仕留めるわよ」

 

彼女の異能が高エネルギーを収束し、G-04の胸部に直撃。弾ける閃光と共に、装甲が砕けた。

 

G-04はようやく、その動きを止めた。

 

「システム……停止。任務……失敗」

 

機械のような声を最後に、G-04は崩れ落ちた。

 

静寂が戻る。

 

「はぁ……終わったか……?」

 

「いや、ここはまだ“入口”だ。おそらく、もっと深部に本命がいる」

 

榊が冷たく言い放つ。

 

烈火はその場にしゃがみ込み、G-04の顔を見つめた。表情のないその顔――けれど、どこか、自分と似ている気がした。

 

「同じだったんだな。名前も知らず、命令だけに従って……」

 

「だが、お前はもう違う」

 

背後からシアが静かに言った。

 

「烈火、お前には“仲間”がいる。意思がある」

 

「……ああ、だから、止まるわけにはいかない。ここから、俺たちの戦いを終わらせるために進むんだ」

 

赫焉班は再び歩き出す。

 

閉ざされていた檻の中にあった過去を砕き、

未来へとつながる光を信じて――。

 




次回:
第31話「赫焉計画、原点」
辿り着いた中枢の奥――そこには《赫焉計画》の始まりを告げる“記録”が眠っていた。
烈火たちは、過去を記録した映像と文書から“Eシリーズ”の真実に直面する。
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