──戦場は、突如として凍りつき、そして燃えた。
赫焉の力と虚氷の力が交差したとき、周囲にいた《融合型Aクラス》の兵装異能体たちの一体が、爆ぜるように崩壊した。
「はっ、やるじゃねぇか、“兄弟”!」
鷹人が叫びながら、その隙を縫ってもう一体に回り込み、電磁式ブレードを抜き放つ。
「シア、右側! ユウト、上を!」
「わかってるわ。……あんたの指示って、意外と的確」
「当然!」
空中を舞うシアの砲撃が着弾。爆煙の中、ユウトが高速で駆け抜け、敵の関節部に寸分違わぬ斬撃を叩き込んだ。
「次はどれだ……!」
烈火の目がギラリと光る。
だが、敵はそれだけではなかった。
中央に立つ銀髪の男──《封環機構》の指揮官と名乗った男が、ゆっくりと歩み出てくる。
「実に素晴らしい。君たちはやはり“計画”の最終段階に必要だ。E-07、そしてE-09……君たちには特別な“鍵”が眠っている」
「ふざけるな……!」
烈火は叫ぶ。
「俺たちは誰の道具にもならねえって言ってんだ!」
「理解しているとも。しかし……我々の計画は“世界の再編”を目的としている。異能と魔導の融合こそが、新たな人類の可能性なのだよ」
「そのために何人を殺した……!? 何人を“実験体”にした!?」
シアの声が鋭く響く。
指揮官はそれに対し、感情のない声で答えた。
「犠牲は常に伴う。我々は“選ばれた者”だ。——君たちと同じように、な」
「……!」
烈火の拳が再び赤熱を帯びたその時だった。
突如、上空から巨大な輸送機のような影が現れ、複数の機械兵が展開されてくる。
「補強部隊かよ!」
鷹人が舌打ちする。
「このままじゃ多勢に無勢だ!」
ユウトが即座に判断を下す。
「撤退するぞ。目標は一時生存。烈火、エイス、道を作れ!」
「わかってる!」
烈火はエイスと背中を合わせるように並び立つ。
「いけるか?」
「うん、やれる」
エイスの目が強く、まっすぐに前を向いていた。もはや“実験体”の頃の恐れはない。
烈火が手を突き出す。
「行くぞ……“赫焉砲・圧縮開放”!」
その瞬間、爆音と共に直線的な火炎の奔流が敵部隊を薙ぎ払う。
続けて、エイスの声が重なる。
「“虚氷結界・開環式”!」
冷気が一瞬で広がり、倒壊しかけたビルの間に氷の橋を生み出した。
「今だ、行け!」
一同が跳び移り、氷の足場を駆け抜けていく。
振り返る烈火の視界には、銀髪の男がなおも静かに立ち尽くしていた。
——あいつ……何者だ。
ただの上層部の人間じゃない。まるで、こっちの動きを全て読んでいたかのように……
その予感は、的中していた。
輸送機に戻った銀髪の男は、部下の報告を聞きながら、独りごちるように呟いた。
「“赫焉”と“虚氷”……やはりあの二つは対となる鍵。これで“門”を開ける準備が整った」
「……門?」
隣にいた部下が訊ねる。
男は、初めて薄く笑った。
「世界を再構築するための、“原初の門”。この星の真の核——《根源機構(エイドス)》へと至る扉だよ」
そしてその笑みは、どこか悲しげで、歪んでいた。
「……僕たちは、もう“引き返せない”んだ。あの灼けた空を見てしまった時点で」
輸送機は、静かに夜の空へ消えていった。
──一方その頃、烈火たちはようやく味方の回収機と合流し、安全圏に辿り着いていた。
激戦の余韻がまだ冷めぬ中で、烈火は黙って空を見上げていた。
「烈火」
ユウトが隣に座り、言った。
「敵はおそらく、俺たち以上に“赫焉”という存在を理解している。これから、さらに危険な展開になる」
「……わかってる」
烈火の拳が、再び赤く燃え上がる。
「だけど……もう逃げない。俺は、最後まで戦う。この力が、“誰かのため”じゃなく、自分の意思であるって証明するまで」
ユウトは、小さく頷いた。
「それが、お前の“選択”か」
そして——
今、彼らは新たな戦いの影に向かって、歩き出す。
次回:
第43話「根源機構(エイドス)」
“赫焉”と“虚氷”——ふたつの異能が繋ぐのは、過去か、それとも未来か。
銀髪の男が語った“門”とは何なのか。
次なる任務は、禁じられた地へと向かう——。