赫焉の記憶   作:Reivalt

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根源機構

「……この地図、見覚えあるか?」

 

訓練施設《C.A.L.E.》の一室。

作戦室に集められた烈火たち赫焉班は、投影された地図を食い入るように見つめていた。

 

「ここ……昔、俺が連れて行かれた施設だ」

 

烈火の目が細くなる。

 

「正式名称は『第零試験領域』。通称、エイドス領域」

 

指し示された場所は、世界地図からは抹消された禁忌のエリアだった。人工衛星ですら撮影を禁じられており、国家レベルでも“存在しない場所”とされていた。

 

風間教官が、腕を組みながら言う。

 

「今回の任務は、そこに潜伏している《封環機構》のコアを探り出し、その動向を確実に把握することだ」

 

「……直接潰すわけじゃないのか?」

 

鷹人が不満げに問いかける。

 

風間は首を横に振った。

 

「敵はあくまで“鍵を集めている”。つまり……あいつらが何かを“開けよう”としているのは確かだ。だがそれが何なのかは、まだわからない。……それを突き止めることが最優先になる」

 

「“鍵”って……俺たちのことだろ」

 

烈火が苦く笑う。

 

「《赫焉》と《虚氷》……両方揃って、何かを開く。そう言ってた」

 

「だとしたら、私たちが動くしかないわね」

 

シアが鋭く言う。

 

エイスも、黙って頷いた。

 

「……ここまで来たんだ。逃げる理由も、隠れる理由もない。だったら、前に進むだけだ」

 

その言葉に、全員が静かに呼吸を整える。

 

風間は言った。

 

「ただし、今回の作戦は“上層部非承認”だ。俺の裁量で動く、非公式任務になる。つまり——誰にも、援軍も後ろ盾もない。……生きて帰れる保証もない」

 

「構わないさ」

 

烈火は、迷いなく言い切った。

 

「どうせ、過去からは逃げられねえ。だったら、正面からぶん殴ってやる。それが俺のやり方だ」

 

「まったく、お前らしいぜ……兄弟」

 

鷹人が笑いながら拳をぶつけた。

 

輸送機に乗り込み、彼らは《エイドス領域》へと向かった。

かつて“異能”が初めて発見されたという禁忌の地。

 

上空には常に霧が渦巻き、気象衛星すら観測できない“特異地帯”。

 

そしてその内部には、膨大な量の異能残滓(ザンシ)が漂っているという。

 

「異能残滓ってのは……昔使われた異能の痕跡か?」

 

烈火が尋ねると、シアが答える。

 

「正確には“意識”の残りカス。異能を使った人間の記憶や思念が、場所に焼き付くの。時間が経てば消えるけど、ここみたいな特殊な地帯では、半永久的に残ることもあるわ」

 

「ってことは……?」

 

「下手すりゃ、幻覚や精神攻撃を受けるってこと」

 

「マジかよ……!」

 

鷹人が苦笑する。

 

だが、気圧が一気に下がったその瞬間——

 

機体の外に、“何か”が映った。

 

「……あれは?」

 

ユウトが低く言う。

 

視線の先には、白く巨大な構造物が霧の中から浮かび上がっていた。かつての実験施設の遺構——第零研究棟。

 

「着陸する。全員、武装確認!」

 

風間の号令と共に、輸送機がゆっくりと降下していく。

 

だが、その時だった。

 

突如、通信機に割り込むように、どこか懐かしい“声”が流れ込んできた。

 

『E-07、E-09……ようこそ。君たちの帰還を歓迎する。さあ、元の場所へ還ろう』

 

その声に、烈火とエイスは同時に凍りつく。

 

「この声……!」

 

「……あの時の、“実験官”……!」

 

かつて彼らに“力”を与えた者。そして、彼らを“異能兵器”として育てようとした存在。

 

「奴も……まだ生きていたのか……!」

 

機体が着陸した瞬間、周囲に展開するドローン群と異能兵装体が襲いかかってきた。

 

「来るぞ! 迎撃!」

 

風間が叫び、烈火が火炎の拳を叩きつけた。

 

「行くぞ、全員……終わらせに!」

 

赫焉班の戦いは、ついに最深部へと突入する。

 

その先に待つのは、“根源”か、それとも“絶望”か——。




第44話「実験官の記憶」

かつて烈火とエイスに異能を与えた存在──“実験官”との再会。
語られる過去、失われた日々、そして“赫焉”誕生の真実。
運命の輪は、静かに回り始める。
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