【オーバーロード】食事処もふキッチン【異世界編】 作:野神 汰月
それでは特別編開店です☆
クリスマスの合同パーティで地雷踏み抜いたたっち・みーとウルベルトはカワサキを宥めつつ、先ほどまでたっち・みーが食べていたローストビーフについて尋ねる。
「先ほど頂いたローストビーフなんですが、食べたこともないくらい美味しかったんです。あれ何のお肉だったんですか?」
「ああ、あれな。もふキチさんが用意してくれた
それを聞いたたっち・みーとウルベルトが思いっきり噴き出す。
「もふキチさんなんてもんを…」
「でも本当に美味しかったんですよ…多分二度と食べられませんから今のうちに食べたほうがいいですよ、ウルベルトさん」
「ああ、そうするわ……マジでうめぇ!!」
一切れ、ソースを少しだけつけて食べたそれはしっとりしつつ肉汁があふれ出すとんでもなく極上の味だった。言葉にならないとはこのことだろう。
カワサキ自身、味見で食べたら言葉を失うほどだった。滅多に…というか絶対エリクサー症候群(もったいなくて最後まで使えない事をさす)で二度と調理することも食べることもできないだろう。
「(後で秘密にしてモモンガさんに食べさせてやろう…んでネタばらししてどんな反応するか楽しみだ)」
そんなことを考えてるカワサキに、他には何を作ったのか、どんな材料を使ったのかを問いだし始めるたっち・みーとウルベルトだった。
―――
ポテトサラダを攻略(?)した茶釜とキャッチは今度はトマトのカプレーゼに取り掛かろうとしていた。
「なんかすごくおしゃれな料理だね?」
「うんそうだね。赤と白、そして緑の彩色が綺麗」
二人はそう言ってカクテルグラスに綺麗に飾られたカプレーゼを手にする。
「赤いのはトマトで白いのは…チーズかな?それとバジルがとってもきれい」
「これもちょっと食べるのもったいないね」
だが二人は「それでも!!」とどこかの前身サイコフレームでできてるモビルスーツに乗ることになった少年のようにフォークでトマトとチーズを刺す。
心の中でいただきます!ッと言ってから口に含んだ瞬間、二人は言葉を失った。
まず初めにオリーブオイルの香りとトマトの酸味が来る。その後にかめばミルキーなモッツァレラチーズの濃厚な旨味と甘みが加わり、そこに最後にバジルの香りが広がる。
それが混然一体となり、二人は至福の時を味わった。そりゃそうなるだろう。滅多に使われない食材のオンパレードなのだから。しかもそれがカワサキの手で作られてるとなれば、同じ制作者だが先ほどのポテトサラダなんかもう頭の中から消えてるだろう。
「―――すごく美味しかったね」
「うん、だけど……」
茶釜の感想に頷くキャッチだが「それでもやっぱりお爺ちゃんのご飯の方が好きだなぁ」と言うのだった。
―――
その頃ヘロヘロはというと、一人前菜よりさきにピザとパイポットビーフシチューを食べていた。
ピザはマルゲリータに始まりシーフード、ミートミックスなど多岐にわたる。
パイポットビーフシチューは濃厚な味と香りで楽しませてくれるし、パイの食感もさくさくからしっとりと変わっていき面白い。この場はそんなに冷えていないが、冷めない工夫というところにもヘロヘロは感心していた。
最近もふキチの店で働くことになったので、自分も料理を覚えようとしているところだ。アームスヴァルトニル湖にいる間は職業関係なく調理ができるらしい。
ただ学者肌なヘロヘロは普通の人とは違った考え方をするのでまずは食べてみてそこからどうするかを考えるらしい。そこにカワサキがようやく立ち直ったのかやってきた。
「えっと、ヘロヘロさん…だよな?」
「はい、私がへロヘロですぅ。カワサキさんでしたね、はじめましてぇ」
ブラック企業勤めで身体がレッドゾーンまっしぐらだったヘロヘロしか知らないカワサキは、元気なのに何となく間延びしたその口調は健在なんだなと驚いた。
「あんたのとこはブラック企業じゃなかったのか?」
「あぁ。そうですねぇ、もふキチさんがいなければそうなってたかもしれませんねぇ」
カワサキの問いかけに、簡単に返答を返すヘロヘロ。その答えにカワサキはやはり自分たちがいた
もふキチの言う通り並行世界とは面白いものだと思った。個人的に言うなら残りそうなのはヘロヘロではなく別の誰かだっただろう。YGGDRASILLにログインしても作業してばかりで会社とやってることが同じで意味を見出せなくなり彼は引退したんだと思っている。ブラック企業勤めもあったろうがそこが原因な気がする。
「ピザとパイポットビーフシチュー、美味いか」
さっきからピザとパイポットビーフシチューばかり食べてるヘロヘロにカワサキは訊ねる。
「えぇ、大変美味しくいただいてますよぉ。私たちの現実世界では多少は食糧事情がよかったので冷食ではありますが食べたことはあったんですぅ。でも、やはり手作りとは全然違いますねぇ…おっと、作っていただいたご本人にこのようなこと失礼でしたねぇ…申し訳ないです」
「いや、いいさ。俺もそうやって何かを食べ比べて自分の料理に反映させることはある。あんた最近もふキチさんのところで働いてるんだろ?だからそうなのかと思ってた」
「いやはや、お恥ずかしいはなしで…私だけやることが全くないんですよねぇ。種族上仕方ないことではあるんですが。そこをまたもふキチさんに拾われた形でして」
そう言いながらもヘロヘロは食事を続ける。彼の種族的にいくら食べても満腹にはならないのだろう…。
そこから二人はしばしの間料理のあれこれを語り合い、少したってからカワサキは別のテーブルへと向かった。
―――
二人のモモンガは一緒に行動をすることにし、まずはメインであるチキンレッグに向かう。
カワサキの方のモモンガ(ガッちゃん)はもふキチの所のモモンガであるモンちゃんに問いかけた。
「あれ、こういう立食パーティの場合前菜から順に回っていくものじゃないんですか?」
「え…?あ、ああ成程。これは身内同士のパーティなんですからそんなマナーがちがちですることはないでしょう?しもべたちがいるわけでもないんですし」
モンちゃんは父親が料理人だったし、ガッちゃんと違い高校まで出てそれなりの会社に勤めていたためそういうマナーがある事は知っていた。だが今は同じアインズ・ウール・ゴウンというギルドのメンバーだけの気安いパーティなのだから気にしたら負けだとガッちゃんに言った。
「モンちゃんさんは博識なんですね…。もしかして高学歴ですか?」
「さんはいいですって…。確かに両親の遺産と意思で高校までは出ました。おかげでそれなりの規模の会社に勤めてましたからこういったパーティ内のマナーについても少々覚えがあります」
「いいですね…私は小学生の頃両親が他界してしまったので小学校卒業後すぐ働きに出ないといけませんでした…」
これがもふキチの言っていた並行世界線上の差異か、とモンちゃんは心の中で呟く。
もふキチ曰、モンちゃんもガッちゃんも母親は同じだと言っていたが…。気になってモンちゃんはガッちゃんに尋ねてみることにした。
「あの、失礼なんですがガッちゃんのお母様のお名前伺っても?」
そう尋ねるとガッちゃんは「千尋です。確か旧姓は如月だったはずですよ」とさらっと返してきた。
確定だ…。そう思ったらガっちゃんは―――。
「実は前にもふキチさんにもそれ聞かれたんですよ。そしたら、もふキチさんは「お前さんも儂の孫じゃよ」って言ってくださいました」
「まだお爺ちゃんって呼べてないんですけどね」と照れながら言うガッちゃんはモンちゃんに「(ああ、これがお爺ちゃんの言う可愛い骸骨ってことか)」と自分と同じ存在なのに心の中で身もだえしたとかしないとか。
「それにしてもこのチキンレッグ、噛み応えもあって美味しいですね」
「そうですね、以前食べたのより少しスパイシーですが…ん、美味しいです」
少し会話が長引いたがお目当てのチキンレッグを頬張り感想を言いあう二人のモモンガ。以前よりスパイシーだといったのはガッちゃんである。
何の肉なんだろうと二人で考えてるそこに、カワサキがやってきた。
「ようお二人さん、どうだい?俺の自信作のチキンレッグは」
「とても美味しいですよ、噛み応えあって。このちょっと固いのとスパイシーな味がいいですね。肉汁もすごいですし」
「美味しいですけど、カワサキさん今度はなに使ったんです?」
「ん?コカトリスの腿肉」
そうあっさり答えるカワサキにガッちゃんが噴き出す。
「またそうやって!S級ほどじゃないですが貴重な食材を―――」
「まてまて!今回の食材は全部もふキチさん提供だぜ?うちの在庫は一個も使ってないぞ!」
いつも勝手に貴重な食材を使ってしまうカワサキに説教が始まろうとしたが、カワサキがそう言って「…そういえばそうでしたね。すみません」とガッちゃんは謝るのだった。
「いや、まあいつも勝手に食材使っちまう俺も悪いからいいんだけどさ…。それよりモモ…ンガさんは二人いるから、ガッちゃん。あっちに俺の渾身作のローストビーフあるんだけどよ、食ってみないか?」
そうカワサキに誘われて、ガッちゃんはローストビーフが置いてあるテーブルに向かい、食べて言葉をなくし、「何の肉だと思う?」と聞かれたがわからず正解を言われて盛大にむせるのだった。
ということで合同クリスマス会の裏事情でした。
混沌の魔法使い様、全然入れられてなくてごめんなさい…。
それではまた次回お会いしましょう。See you next story,バイバイ☆
もふキッチンを
-
定期で配信する
-
不定期でもいいから書きあがったら即うp