ツィーペリア戦記   作:ごまふそば

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将来の事は分からない。生来の事はよく分かる。

これは無自覚な呪いにより愛するものまでをその贄とした、
一人の愚かな男の半生の回顧録にして懺悔禄である。


――どこかの下町、うらぶれた酒場にて。

 

何処にでもある酒場。かつては黄金の如く輝けたが今はうらぶれている。

 

 

「あぁ、赤い鳥の騎士?スラムで見たよ」

 

 

よっぱらいが、ひとりごちた。

 

 

「一目で分かる。ありゃ狂人だね」

 

しかし、その目は楽しそうで。

 

「人も亜人も関係なしに、楽しそうにぶん殴ってたね」

 

 

何かを思い返すかのように笑う。

 

「騎士なのに剣じゃないのかって…?」

 

記憶も曖昧のようで。

 

「さあ……俺が見た時は少なくとも拳だったね。

 素手だったか、ガントレットだかまでは返り血塗れで良く覚えちゃいないが」

 

けれど、懐かしいと言うしみじみとした感情は本物で。

 

「あいつ強い奴も弱い奴もお構いなしで暴力を振るいやがる。

 人も、亜人も、魔物もお構いなしだ」

 

けどだからこそ面白い。と被りを振って。

 

「あの…悪目立ちするギラギラした鎧で、

 返り血ばかり浴びてるから赤い鳥の騎士って異名が付いたんだったっけ?

 悪い。よく覚えてねえや」

 

ポリポリと頭を掻いた。

 

「まぁ良く知らないし知りたくもないが、狂人なのは確かだ。イカレてるよ」

 

うんうんと納得したかのように頷き。

 

「で、お嬢ちゃんは何だってあんな狂人を探してるんだ?」

 

下種な勘ぐり。酒場の住人らしい酒臭い吐息が広がる。

 

 

「ふうん……個人的な理由で興味があり調べている、と……」

 

 

興味があるのは人間で、生業などには興味がなさそうで。

 

「おっ、へへっ。口止め料かありがてぇなぁこりゃ一週間は酒代には困らねえわ」

 

僅かなお代にバカみたいに喜んで。

 

「まぁアンタも相当な変わりもんだなあ。

 不思議な雰囲気と言うか、なんと言うか失礼だが、あの騎士の親族か何かで?

 ふーん、まだ違うのか。じゃあ俺の勘違いか。失礼したな」

 

勘が鋭いが、至極愚かで。

 

「それで赤い鳥の騎士が何処にいるかって?

 俺はスラムで一度見たっきりだから全然知らねえなあ……。

 役に立たなくて悪いなお嬢ちゃん」

 

物覚えが悪く、学びが弱い。ポリポリと頭を掻きフケも飛び

 

「ああ、でもアイツのファンだって変わり者のお嬢ちゃんが下町の教会にいたなぁ……」

 

ぼんやりとした記憶をひっくり返すと存外、宝の山であったりする。

 

「おっ、追加報酬まで。ヘヘ悪いね。寿命が3日伸びた思いだわ」

 

しめしめと、安い駄賃で命を賭ける。長生きしない人種のそれ。

 

 

何処にでもいる。何処にでもいない。酒場の住人酔っぱらいのただの一幕。

 

通り過ぎるは人と人。

 

暫し雑踏の中に消える人影を見送ると、思い返したように。

 

「おーい、マスター。いつものー。馬尿とか出してくんじゃねーぞお」

 

下町のかつて冒険者で満ちた酒場らしい下品な、何時かの定番だったであろう訳の分からぬ冗句を飛ばして。

客もまばらな空虚に来た。

 

「ったくノリ悪ぃな」

 

ブツブツとボヤき一人ごちる。

 

誰でもあり、誰でもない、胡乱な酔っぱらいの、たわ言であった。

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