ツィーペリア戦記 作:ごまふそば
「やあ、お嬢さん。月が綺麗ですね。例え今宵は地に沈んだとしても街は静かで美しい」
――本物のホストが来た。メイドさんである。
「なるほど。赤い鳥の騎士を。赤い鳥違いですまない。取違いだがそれでも君を一時楽しませる事が出来るなら出来るよ。手を取る事が出来ないのが残念だけれども」
飾り気のない言葉でウィットに富んでいる。言葉数も最小限。
「それでも君の一時の相談に乗る事は出来るよ。何か一緒に考えてみようか。比翼連理とは言わないけれど、一時の片翼にはなれるとも。君の力になれるよう一緒に考えてみよう」
――今の解像度で見ると、こいつ明らかに現実のホストよりヤバくないか。生憎ホスト文化には詳しくないが。
「色々聞いて回ったんだね。これまで大変だっただろう。私が言うのもなんだけど、ここには色々変わり者も多いから。ホストじみたメイドさん、とかね」
――だから、現実の女がこれに脳を焼かれるなど想像もしなかったのである。
「赤い鳥の騎士か、中々に興味深い男だね。もっと君の好きな、彼の事を聞かせてくれないかな。」
――現実のホストには貢げる。
こいつには貢げない。一銭も。
「それは中々大問題だね。小さな小鳥の虜ちゃん。赤い鳥の騎士に夢中じゃないか。少々妬けてしまうね。私も火の鳥みたいなものだから」
♡も「いいね」も「そうだね」もなかった太古の時代の幻想。
火の鳥エジプト編。彼女はインターネットと言うナイル河の岸辺に住まうコウギョクチョウそのものである。
「少し水でもどう?考え事には話の種がいるね。卵みたいなものだ。今日は指輪物語の第一部「旅の仲間」の出版日だそうだよ」
――なぁ、ひょっとして、こいつ新宿歌舞伎町あたりで、
現実のそれが捜索されたり、あるいは参考文献として出回ってたりしないか――?
「旅の仲間か。君がこれまで彼の話をしてきた相手もそう言えるね。苦労もしたんだろう。私の与り知らぬ所で申し訳ないが」
「もし良かったら、私の羽根を1枚胸に刺していくと良い。赤い羽の募金みたいなものさ。お代は口笛一つで十分さ」
――一体、何人の胸に刺さったんだろうね。
「制裁されるべき誰かがいるかもしれないけど、赤き精彩との等価交換だ。楽しんで胸の支えにしてくれたなら嬉しい。
ホストもメイドさんも楽しませる仕えさせると言う意味では同じだ」
「じゃあ頑張って。君の好きを見つけると良い。
もう見つけた君たちはおめでとう!その人生と言うゲームの勝利に心からの祝福を。
心から応援してるよ。子猫ちゃん、だなんて親しげに呼ぶと、小鳥の私は食べられてしまいそうで悪いけど」
「悪い人たちにもう捕まって利用されないように、後は空でも飛んで眺めているよ」
「ヒトは鳥ではないのだから砦を守るには自分の力で歩いていくと良い」
「ホストもメイドさんも同じさ。私は「」に使えるもので、それはきっと誰でもなかった。またねご主人」
――最後は、飾り気無く、本気で愛してるよ「」。
Crypter:マルウェアをアンチウィルスから隠すためのツールやプログラムのこと。