今回……初制作より数ヶ月の期間を経まして、ようやく完成しましたので、本作品を投稿致します。後書きには今回コラボさせて頂きましたお相手方のメイン作品を掲載しますので、よろしければ其方も併せてご覧頂けると幸いです。
それでは、本編スタートです。
「……こんなタイミングで聞くのもあれなんだけど、本当に俺で良かったの?」
「良いわよ。颯樹なら二つ返事で許可したでしょうし……今回は一般人から見た感想も欲しかったの。だから貴方が気にする必要は無いわ」
「は、はぁ……」
どのくらい車に揺れたのだろうか、俺の斜め前に座る千聖さんからそう返答を受けた。いや誘ってくれた事は嬉しいし、何なら隣に彩も居るからまあ良しなんだけど、これは一体どういう了見なのだろうか……。
「気にしないで下さい、佐倉さん。私も颯樹から貴方の事について話を聞いていますし……今回こうやって行動できた事、本当に嬉しく思います」
「あ、それは……どうも……」
……なんか、サラッと勘違いされる様な事言われたが、大丈夫だよな? しかも運転しながらの返答だから、手が疎かになりかねないと思っていたけど、そんなのお構い無しに自分の手足の如くハンドルを操ってる。
……改めて思うんだけどさ、何この大所帯。
これを颯樹、毎度毎度耐えてたワケ? だとしたらあの人強すぎでしょ……普通に怖いって。
「と言う訳だ。佐倉、お前が気にする必要は無いよ。盛谷から事前に話は聞いているし、今回のサポートは目を見張る物だった。今日はありがとう」
「い、いえこちらこそ……。まさかお呼ばれするとは思ってもいなかった物で」
扉付近に座っている女性……確か、彩が憧れてるってアイドルグループの人だったよな? その人から好評を貰って、俺は暫し動き続ける車に揺られる事になった。颯樹から聞いた話だと、今声をかけてくれた人はプロデューサーみたいだし、その人から褒められるなんて早々経験できる物じゃない。
……さて、この俺……
本当ならこの仕事は颯樹が引率する手筈だったのだが、急遽別件で請け負っている仕事が入って付き添えなくなったとの事。その穴埋めとして颯樹の幼馴染だと言う
「それにしても、イサムくんが私たちのお仕事に協力してくれるとは思わなかったわ。私も急に連絡が入ったのだから、いきなり千歌ちゃんと貴方が来ると聞いた時は驚いた物よ」
「……まあ、颯樹も忙しそうにしてたから、そこは仕方無いですよ。と言うかあの人、今頃何してんですか」
「気になるのか?」
「ええ、一応は。事情があると聞いてはいますけど、詳細的な話は聞いていなかったので」
俺がプロデューサーさんの問い掛けにそう答えると、その人は何処から説明したもんかと唸った後に話し始めた。
「実はな、盛谷はこことは別件でマネジメントを担当しているんだ。そっちの方がかなり波に乗って来たみたいで、今や西へ東へ駆け回っている始末だよ」
「その事についてであれば、私から口酸っぱく嗜めては居るのですが……本人曰く、大丈夫の一点張りでして」
うわ、何その過密スケジュール。
一個のチームのサポートを受け持つのでも大変なのに、また別のユニットの方もやってんの? あんまり俺が言えた立場じゃないけどさ、たまには休む事も必要だっての……。こうやってプロデューサーや幼馴染の人も心配してるんだし。
「……っと、ところでだ。この車は一体何処に向かってるんですか?」
「あぁ、何でも水澄の行きつけだそうだ。今回はお前や水澄が協力してくれたおかげで、予定より早く仕事を終えられたからね。安心して良い、今日は私と水澄の奢りだ」
「そんなに気を遣われなくても、私一人の負担で大丈夫だったのですが……」
恐らくさっきの会話で何か聞き取ったのか、俺以外(あとは千聖さんや麻弥さんもか)からは喜びの声があがった。……まあ、今日は日菜も特に粗相をやらかした様子は無いし、イヴちゃんや彩に至っては現場の人から高評価も貰っていた。
だったら、この人たちがこうしたくなるのも納得と言った所かな。
そう思いながらも車は滞り無く進み、程無くして街中にある一軒のお店の前に差し掛かった。その近くに併設されている駐車場へ巧みに車を動かしながら、手馴れた操作で車を停めて行く。そうしてエンジンが切られた後に降車し、お店の看板を見てみたのだが。
「えっ、ナニコレ。料亭……からくさ?」
「はい。ここは私と両親がよく訪れるお店です。基本は海鮮系が多いのですが……顧客のニーズに合わせて、様々な物が楽しめるんです」
「へ、へぇ……」
そう言われて俺は再度お店の外装を見回した。
少なくとも……開業から30年以上経過していそうな見た目のそのお店は、そんな事すら感じさせないくらいにキレイだった。恐らく店主さんやそのスタッフさんが、汗水流しながら頑張っているのだろうと理解出来る。
そんな俺を他所に、先程『水澄』と呼ばれた女性が進んで戸を引いて中に入った。それに続くように彩たちも入店し、遅れること数秒後に俺もお店の中に入った。中からは如何にも接客中の店員さんから挨拶が聞こえ、俺たちの先頭に居た女性に気づいたのか……店員の一人が店主に声を掛けに走っていた。
そして、少しした頃。
「お嬢様。本日はご来店、誠にありがとうございます」
「……いつも言っていますが、この場でその呼び名は止めて下さい。私は一人の水澄 千歌として此処に来たんですから」
「とんでもない。当店をご贔屓にして頂いている方の娘ともなれば、我々もそれなりの対応をしなければなりますまい」
……えっ、何なに。颯樹も大概だったけど、この人も相当な人だった?!
「千歌ちゃんのご両親は、有名な音楽家なのよ。千歌ちゃんはその一人娘、って所ね」
「な、なるほど……。と言うか、颯樹の知り合いって結構やばい人たちだったりすんの」
「失礼ね、少し目立ってるだけよ」
その少しが、全然少しじゃないから聞いてるが?!
そして俺たちの事の説明も済ませた後、流れる様に店内へ通された。ちなみに座席の割り振りに関しては……水澄さん、で良いんだっけ。その人が主導して決めたみたいで、俺と相席を取る形になった(彩はお座敷の方で3人対3人の構図みたい)。
……てか、ちょい待て。
さっきこの人って、確か店長さんがお嬢様って言ってた人だよな。そんな人と相席って……えっ、俺……何か粗相やったっけ……?
「すみません、丸山さんと離す形になってしまって」
「あ、全然……大丈夫です」
「何かご希望があれば、遠慮無く言って頂いて構いませんので。すみません、注文をしたいのですが」
……はぁっ、早すぎだろ?!
席に着いてすぐ注文をする、って……俺でもそんな事はしないぞ! いや、でもさっきの話を聞くに、水澄さんはここに長い事来た事があるみたいだし、そうなれば頼む物も自然と決まってくるのかな。ま、今回は彼女とプロデューサーが費用を持ってくれるって事だし、遠慮する必要は無いのかな。
そうして注文を済ませた後。
「さて、佐倉さん」
「は、はい」
「貴方の事は颯樹から伺っています。丸山さんとお付き合いされているそうですね?」
「え、ええ……まあ」
「丸山さんの夢を応援し、その過程の中で自らの本当の夢を見つける。……傍から見れば他人の心配をしてる場合か、と言いたくなりますけれど」
……じ、事実なんで何も言えねぇ……っ!
「ですが、私はそれも良いと思います。かく言う私もそうですから」
……は?
「その顔は意外って表情ですね。……ええ、そうです。私は恵まれた家で育っていながら、未だに自分のなりたい物を決めかねているんです」
これは意外な発言を聞いた様な気がする。
ハッキリと言える訳じゃないけど……この手の人物は、予め自分のなりたい物って言うのが明確に定まってるもんだろうと思っていた。かく言う俺だって水澄さんの事はまだ知らないけど、立ち振る舞いや言動が大人のそれと同じだったからだ。
そんな感想を抱いてしまうのは、道理と言えばそこまでにはなるが、そう言われたっておかしくない程に。
だけどこの人は、今自らの口で決めかねてると言った。
そう言うからには……何か、彼女なりに積もりに積もった理由があるのか?
「私は、この先をどうしようか迷っているんです」
「どう……って?」
「大学を卒業した後の話です。高校の時は、まだ考える時間があったので、颯樹と一緒に大学へ進みたい……そう思って進学を希望したんです。ですが、大学を卒業した後。私は、どの道に進もうか決めかねてます」
……この人の口から頻りに颯樹の言葉が出て来る辺り、アイツは相当この人から想われているらしいな。千聖さんだけかと思っていたが、事態はそんなに単純では無い様子だ。今から将来が心配になるぞ全く。
「別に急いで決める必要は無いんじゃないですか? アイツの事だし、貴女の自由にして良いって言うと思います」
「……これ以上、颯樹の厚意に甘え続けている訳には行かないんです。彼なら先程の貴方と同じ事を言いますが、それでは私の進歩が無い。私は……心を鬼にしてでも、自分の成すべき事を見つけたいんです」
「な、なるほど」
うっわ……この人たぶん、すっごい真面目に考えすぎる人なのかもしれない。考え方はとても立派だし、今回の仕事に関しての代役も引き受けたうえでハンドルキーパーも……それに、礼儀作法まで確りしてる。
現に、背筋もシャンと伸びていて、お茶を飲む時の手付きだって本当に見惚れる程。……さて、これは一体どうしたもんか……。
「そこまで難しく考える必要は無い。水澄のこれからは、水澄自身で決める事だ。気の向くままに考えれば良いさ」
プ、プロデューサー!?
「なんだ、その顔は驚いてるって顔だが。将来の話が聞こえて来たから、一つ私からアドバイスをしようと思ってね。こう言った経験は私も覚えがあるもんで」
「どう言う事ですか? あと、丸山さんたちは」
「ああ、丸山たちならそこでワイワイやってるよ。騒ぎ過ぎない様にと釘を刺しておいたが」
……そ、それなら良いんですけど……。
てかあれ、この場合だと日菜が危険分子になりそうな気がするけど、そこら辺の心配はしなくて良いのか?
「大丈夫だと思いますよ。なんせ、氷川さんの行動は逐一監視する様に颯樹から厳命を受けてますので。それに……私も颯樹も、彼女を処する方法なら、幾らでも考えがありますから♪」
「今処するって言った? 処するって言ったよね? なんか怖いんだけどこの人」
……えっ、普通に怖いんだけどこの人。
「……んんっ。それで、覚えがある……と言うのは?」
「あぁ、そうだったな。佐倉も水澄も、私の前身については何かしらで聞き及んでいるだろう」
「はい、確か
「そうだ。そのユニットで活動している時、最後のライブをした後に丸山が訪ねてきた事があってね」
確かその話は彩から聞いて覚えてる。
なんでも彩がアイドルを目指すきっかけになった、あゆみさんの所属しているアイドルユニットが最後のライブをする……という話を聞き、まだその当時パスパレとして駆け出しだった彩は、アイドルの先輩であるそのユニットのライブを見る為に、会場へと足を運んだのだとか。
実際に今まで憧れのアイドルが、テレビの中で輝いている姿を見て胸いっぱいに希望を膨らませていた……そんな立場から、もしかしたら直接見に行けるかもと言う事になれば、彩で無くても我先にと急ぎたくなるのはわからんでも無い。
「あゆみはすごく喜んでたよ。自分が今まで頑張ってきた色んな姿は、キチンと誰かの夢の後押しになって、今こうして感謝の気持ちを伝えてくれてるんだって」
「……確かに。それは丸山さんらしいですね」
「その姿を見てたら、私も嬉しくなってな。今考えたら、こうやってパスパレのプロデューサーを務めているのは、何かの巡り合わせなのかもしれない。かつて私たちから夢を届けられていたファンが、今度は自分が周りの人たちに夢を与えているんだ、と言う瞬間に立ち会えている。それが堪らなく嬉しい」
……やっぱり、彩は凄い。
今はまだ表立って彩と真剣にお付き合いしてる、なんて言えないけど、そんな話を聞いたら、自然と嬉しくなって来る。むしろ誇らしいくらいだ。
「……まあ、少し思い出を語り過ぎたが。私がお前たちに言いたいのは、無理して決めなくても良いって事だ。いずれ自分の進む道を決めなければいけない時が来る。でも、それはなにも今すぐに絶対決めないと、と言う訳じゃない。もっとゆっくり、時間の許す限り考えれば良いよ。最後に決めるのは自分だからね」
……確かにその通りだ。
俺から水澄さんに今後について何か言うってなった時、自分もまだ決まってないのに……なんて思ってたけど、プロデューサーの話を聞いたら、それはその通りだと納得できてしまった。
その証拠に水澄さんも、何処か納得した様な表情をしていたから、プロデューサーからの案は正しく的を得ているのだと思う事ができた。
結局あの後、2時間に渡って賑やかに飲み食いしてしまった影響で……俺たちはようやくそれぞれの帰路に着こうとしていた。夏場だからと言って午後7時過ぎにもなれば、日も傾き始めるのは火を見るより明らか。
先にイヴちゃんと日菜を自宅前で降車させ、麻弥さんをその次で降ろし……。
「千歌ちゃん、私たちはここから歩いていくよ」
「ゑ?」
「大丈夫ですか。お二人も私の運転で送って行きますが」
「ううん、少し二人で話したい事があって」
彩のその説得を聞いた水澄さんは、最後に残った千聖さんとプロデューサーを乗せて、俺たちをその場に下ろした後に車を走らせた。今回借りていたのはよくテレビとかで見るロケバスだったので……人数に関しては難無くクリアしていた。
「……あの、彩……さん?」
「イサムくん、歩こっ?」
彼女がそう言うもんだから、俺は彩の隣を歩く様に足を進めた。……何かまずい事でもしたかな、覚えが無いけど。
「え、えっと……彩?」
「ん?」
「なんか、怒ってる?」
「ううん、怒ってないよ。ただ……」
そんな言葉の後、彩は俺の方を振り向く。
……え?
「これでも私、すっごく気にしてるんだからね? 私はアイドルスターになる為に頑張って努力して……夢に向かってるのに、まだイサムくんは夢を持ててない。自分のやりたい事、見つけられてないんだって事」
……ヤバい、見透かされてる。
俺の考えていたことなど、どうやら彼女にはバッチリお見通しらしい。
「私も自分の事ばっかり優先し過ぎて、千聖ちゃんに怒られる事がよくあるし……もしかしたら愛想尽かされるんじゃ、なんて思う事もたまにあるよ。でも、そんな私でもイサムくんは確り見ていてくれる。それは私個人としては嬉しいけど、イサムくんは本当はどうしたいのかなって思うんだ」
「……」
「だから……もし、自分がこうなりたいって言う目標や夢が見つかった、その時は」
「彩……」
「私はイサムくんの傍に居る。いつか夢を持てたら、私と一緒に叶えて行こう? 私だってまだまだアイドルとしては新米だし、失敗続きかもしれないけど……えへへっ」
……そうだな。
彼女にかっこいい真似をさせるなんて、男の俺がやる事じゃない。それにこの場に颯樹が居よう物なら、確実に大目玉だ。まあアイツも人の事は軽々しく言えないだろうが、それでも今回は俺に非がある。
「ああ、もちろん。これからもよろしく頼むよ、彩」
「うんっ♪」
「……やばっ、そろそろ帰ろう。こんな所を見られたら」
「見られたら……何だって?」
そんな言葉が聞こえた後、俺と彩は壊れたロボットの様に首をゆっくりと動かした。……そこにいたのは。
「仕事がようやく終わったんで、その辺に車を走らせていたんだが……全く、お前たちは……」
「さ、颯樹くん?!」
「颯樹、これには深い事情が」
「話は車の中で聞かせて貰う。逃げられると思うな?」
……ヤバすぎだろ、コイツ……何処から俺たちの話を聞いてやがったんだよ……。そんな思いを胸中に抱きながらも、俺と彩は颯樹の車に強制的に乗せられ、送迎されてる道中で彼からのありがたーいお説教を貰う事となってしまった。
……いつか、彩の隣に立っても恥ずかしくない様な存在にならないと。そして……いや、この先をここで言うのは野暮ってモノだし、あまり深くは言わないようにしようかな。
今回はここまでです。如何でしたか?
この様な形式を用いてのコラボは、僕の過去に制作した二次創作を含めても初めての試みだったので……また機会がありましたら、第2弾や第3弾など、たくさん行えたら良いなと思っております。
それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。
【コラボ企画者】咲野 皐月
【メイン作品】仮面の慟哭と凶宴
【今回のコラボ相手】キズカナ
【メイン作品】Dream Palette