情報提供は拒否させていただきます   作:犀来菊

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今日も、朝の点呼が始まる。

ふぁ〜っと大きな欠伸をしながら横を見ると、隣にいる四葉も同じく欠伸してた。

「眠いの?珍しいじゃん」

そう声をかけると、

「そっちこそ」

と返された。……たしかに。

ふと隣の教場の方に目をやると、顔に絆創膏やガーゼを貼った降谷零と松田陣平の姿が見えた。

……隣の教場だったんだ、あの2人。

あーあ、やっぱり原作通り殴り合いしたのか。
バレてなかったからよかったけど、もし教官に気づかれてたら、こっちの教場まで巻き込まれてたかも。
ホント、勘弁してほしい。

そんなことをぼーっと考えていたら、腕をツンツンと突かれた。

「ニ知華、点呼、点呼!」

小声で教えてくれたのは四葉だった。

「あ、そうだった。ありがと!」

私は前に出て、声を張る。

「集合! 三列縦隊! 日朝点呼、番号!!」

「1!」「2!」「3!」……と、点呼が始まる。

ちなみに私がこの声かけをしてるのは、班長になったから。
……なったというより、なってしまったが正しい。

教官に指名されて、拒否権なんてなかった。

リーダーシップとか、そういうの正直ない方だから、ちゃんと務まってるかは自分でも不安だけど……
教官から何も言われてないってことは、一応ちゃんとやれてる、のかな?


あの5人組とは知り合いたくなかった

点呼が終わってからの朝ラン。

 

いやー、走ると毎回お腹空くんだよなあ……。

組織で鍛えられてるから走るのは全然平気なんだけど、体が燃費悪いというか……。

 

チラッと横を見ると、四葉が今にも死にそうな顔で走ってた。

 

「がんばろ、四葉!」

 

「な、なんでそん……な余裕そうなの……」

 

……なんか、ごめん。

 

⸻

 

午後は射撃訓練。

 

さて、これはちょっと悩むな。

“銃を触るの初めて”って体なのに、全弾ど真ん中に当てたら、完全におかしい人認定される。

かといって外しすぎるのも逆に怪しいし。あと単位落としたくない。

 

……うん。二発だけ真ん中に当てて、あとはズラすくらいがちょうどいいか。

 

結果は……完璧! 想定通りに撃てて満足。

 

⸻

 

夜。自室で自主勉中。

 

真面目に勉強してたら、スマホに通知が来た。

見てみると、兄さんからのメールだった。

別に直接話に来てくれてもいいのに。

 

メールを確認しようとした時、部屋のドアがノックされた。

返事をすると入ってきたのは四葉だった。

 

「来週の日曜日、一知華の班の友達とご飯どうってさ!ごめん、聞き忘れてた」

 

「たった今、同じ内容が兄さんからきたよ」

 

「あ、そう。で、どう?ニ知華が行くなら行こうかなって思ってるんだけど」

 

「もちろん!行くつもり!」

 

兄さんの班の友人気になるし。兄さんがあんなにいい人なんだから友人だっていい人に決まってる。

 

メールにも是非行きたいと返事をしておく。

 

「せっかくだから一緒に勉強していい?」

 

「うん!やろやろ!」

 

 

勉強もそこそこ進み、2人で一息つく。

 

「……ニ知華、頭良くなったね」

 

「でしょ〜警察学校入る為にも頑張ったし」

 

正直あまり努力はしてないけど。

組織に言われたから入るか〜的なスタンスで行ったし。

 

前世は頭は中の下ってところだったから、四葉は驚いただろうな。

まあ、言えば、それほど成長したってことでしょ。誇りに思っとこう。

 

 

 

____________

 

 

日は経ち、兄さん達とご飯の日。

といっても居酒屋だから飲み会的な感じかな。

 

集合場所は正門前。

四葉と一緒に向かっていると、門の近くに人影が見えてきた。

まだ10分前なのに……いい人達だな。

 

来ている私達に気がついたのか、兄さんが手を振ってくれる。

少し小走りにそっちに向かう。

 

「ごめん、待たせちゃって」

 

「全然大丈夫!で、こいつらが俺と同じ班で友達の…」

 

……なーんか見覚えのある5人。

 

右から見て、

金髪褐色肌のイケメン、

猫目のイケメン、

背の高いワイルド系の男性、

襟足の長いチャラそうなイケメン、

癖っ毛の柄の悪そうなイケメン。

 

いや、まさか…まさかね?

 

「降谷零だ。よろしく」

 

「オレは諸伏景光。ゼロ…零とは幼馴染なんだ」

 

「伊達航だ!よろしくな!」

 

「萩原研二!よろしく!2人とも可愛いね!」

 

「……松田陣平だ」

 

陣平ちゃん〜もっと愛想よくしなきゃ!と話す萩原研二。

 

 

完全に警察学校組ですね!!!ありがとうございました!!!

 

ここまできたらヤケクソになるのも無理はないと思う。

 

もう、どこまで私の平穏な潜入生活を壊してくるんだこの世界……。いやまあ、潜入の時点で平穏ではないけども。

 

隣の四葉を見ると、顎に手を当て、

「降谷零…松田陣平……え、主要キャラじゃん」などと呟いてる。

てか、今まで気づいてなかったんかい。

 

「で、こっちが俺の妹と幼馴染の…」

 

「妹の小野寺ニ知華です」

 

「櫻井紫月。2人からは四葉って言われてる。よろしく!」

 

軽くお辞儀をして挨拶をする。

 

目的地の店までかるく話しながら歩く。

 

「にしても…2人、ほんとに似てるな。遠目から見たら間違えそうだ」

 

「ホントそれ!背の高さも一緒ぐらいだし」

 

降谷君と四葉が話し出す。

 

兄さんとってそんなに似てるかな?

そう兄さんと顔を見合わせて首を傾げる。

 

「動きも見事にシンクロしてるね」

 

私の隣から顔を覗かせてきたのは諸伏君。

思ったより顔近くてびっくりした。

諸伏君は前世では推しだったから、実在してるのがとても嬉しく感じる。

推しと一緒に飲み会…尊すぎて今にもぶっ倒れそう。

 

そんな気持ちを抑えながら、店へと着いた。

 

 

飲み始めてからも、相変わらず質問ばかりされた。

合コンみたいだなと思ったりした。

私は自分の事を話すより、相手の話を聞く方が好きだし、得意だからちょっと緊張した。

 

酔ってボロが出たらどうしようと心配したりしたけど、私酔いにくいんだった。最近飲んでなかったから忘れてた。いらない心配だった。

 

みんなの酔いも回ってきた頃、今まであまり話しかけてこなかった松田君が、私と四葉に声をかけてきた。

 

「お前らのこと、どっかで見たことある気がすんだよな……」

 

みんな、ほんの一瞬静かになった後、萩原君が口を開く。

 

「陣平ちゃん、急にナンパしてどうしたの?」

 

「ちげぇよ!テレビとか新聞とかそういうやつでだよ!」

 

「ニ知華は分からないけど、四葉はそういうの乗ったことあるよな、確か」

 

兄さんの言葉に思わず、そうなの?!と声が出る。

 

「んー?えー……あ、あったか」

 

「おっ、なんなんだそれ?」

 

伊達君を筆頭に、みんなも興味津々。

もちろん私も気になる!

 

「って言ってもそんな凄いやつじゃないよ。百人一首だよ、百人一首。ね、凄いイメージとか沸かないでしょ?」

 

「そんなことないと思うぞ」

 

「そうだよ!自信持って!」

 

降谷君の優しいフォローに、私も思わず頷いた。

その百人一首について、詳しく聞いてみると、結構すごかった。

 

中学生の頃、カルタ部の友人から急遽試合に出てくれと頼まれ、それ引き受けた四葉は持ち前の記憶能力、フォトグラフィックメモリーの力を存分に発揮。

結果はもちろん圧勝。

 

高校ではカルタ部に入り、一年生ではもう、高校生の全国百人一首大会で優勝を果たしていた。

テレビやマスコミの取材もあったらしい。一応断っていたみたいだけど、完全に映らないことはできなかったんだろう。

 

「ま、今じゃ全然やってないけど」

 

「あれ?2年前ぐらいに大会出て優勝してなかったか?」

 

「あー…皐月杯だったかな」

 

「ゴフッ」

 

四葉と兄さんの会話を聞いて思わずお酒を吹き出しそうになった。

今、皐月杯って言った??

 

「大丈夫?」

 

「あ、うん大丈夫、大丈夫」

 

諸伏君の優しい言葉が身に染みる。

でも今はそれどころじゃない。

 

皐月杯って確か、コナンの映画、『から紅の恋歌』に出てきた大会名だったはず。

四葉もしかして気づいてない??

後で聞いてみよ。

 

「で、ニ知華はなんかやってたの?」

 

「ううん、特には」

 

って、嘘ついてしまった。

 

本当は、柔道の大会で何回か優勝してる。結構有名なやつだったかも。

でもなんとなく咄嗟に言いたくなくて、つい誤魔化した。まあ、掘られたら面倒だし、これでいいや。

 

「ホントに〜?」

 

「ほんとだって!よくいるからこんな顔。人違いじゃない?」

 

「よくいる……?どこが??

なかなかいないよニ知華レベルの顔!ね、そうだよね!!」

 

四葉が全力でみんなに同意を求めた。そしてみんながうんうん頷く。やめて恥ずかしい!

…いや、嬉しいけど!!でもやめて!

 

 

 

そんなこんなであっという間にお開きの時間になった。

といっても帰る方向はみんな一緒。

警察学校の寮だし。

 

かなり酔った四葉に肩を貸しながらゆっくりと歩いて帰る。

途中から四葉は完全に寝落ちしたから、背負うことにした。

 

にしても、軽いな……ちゃんと食べてるのかな。

 

「ニ知華、変わろうか?」

 

後ろから兄さんが声をかけてきた。

 

「大丈夫。四葉軽いし」

 

「そうか……辛くなったらいつでも言ってくれ。まだ距離あるし」

 

そう言った兄さんはなんだか残念そう。

…前々から思ってたけど、兄さんって……

 

「咲良ちゃん、もしかして紫月ちゃんのこと好き?」

 

言いかけた私より先に、萩原君がストレートに聞いた。

兄さんは一瞬固まって、次の瞬間、ボォっと火が出そうなぐらいに顔が真っ赤になる。

 

「いや、そのー…………」

 

「……分かりやすすぎるよ」

 

諸伏君のポツリとした一言にさらに顔を赤くする兄さん。どこまで顔赤くなるのか気になってきた。

 

…まったくしょうがないなぁ。

 

「ちょっと疲れてきちゃった。兄さんよろしく!」

 

そう言って、半ば強引に四葉を兄さんの背中にバトンタッチ。

慌てている兄さんをなだめつつ、無事に背負わせることに成功。

 

よしよし、頑張れ、恋する兄さん。

 

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