がんばり屋さんな彼女は学校の人気者だけど、何故か僕のことが好きらしい。
しかも、ご両親の都合で同居生活をすることになってしまった! その結果、
ぬるま湯のような僕たちの関係にも変化が訪れて……?
誰か聞いてほしい。
かわいすぎる、僕の幼馴染についての話を。
ただの惚気だけど、それほど天乃川ほのかという少女は魅力的だ。
すばらしく美人で、文武両道を地でいく学校の人気者。
けれど愛嬌もあって、幼馴染という関係からか僕には特に親しく接してくれる。
てれてしまって本人には言えないけど、僕は彼女が大好きなのだ。
僕とほのかちゃんの家は隣同士で、親も仲がよく、その縁で知り合った。
はじめて会った時はあんまりにも可愛くて呆然としてしまったくらいだ。
幼心に胸の高鳴りを覚えた。つまりは一目惚れだったんだろう。
馴れ初めというにはちょっと僕だけ盛り上がり過ぎているかも。
染まった頬の赤さが恥ずかしくて、僕はもじもじしてばかりだった。
にもかかわらず、彼女は優しく僕の手を取ってくれた。
軟らかい掌の感触。にっこりと笑うほのかちゃんに僕は完全にやられていた。
「禁断の関係だね。クラスの皆には内緒のラブロマンス」
ささやくように彼女は言う。実際、僕と彼女の関係は公表できない。
れん愛的な意味で彼女を好きな男子は多く、僕は嫉妬されることもある。
「ていうか、バレたら僕の命がヤバイよ」
「いつも一緒のベッドで寝るくらいイチャイチャラブな同棲中だもんね」
「るーむめいと! ルームメイトとか、同居とかくらいにしてください」
彼女の言う通り、実は僕とほのかちゃんは今、同じ家に住んでいるのだ。
「女の子からのアピールに対して冷静過ぎない? ぜんぜん襲ってくれないし」
「は、反応し辛いよ、それ……」
お隣に住んでいる、ほのかちゃんのご両親は両方とも出張らしい。
かえってくるのは二か月後。不安だと言われ、僕は天野川家で寝泊まりしている。
しばらく、という約束なんだけどほのかちゃんはすごく喜んでいる。
いい子なんだよなぁ。ただ、ちょっとだけ嫉妬深いところもあったりする。
この前、僕がクラスの女の子を見て可愛いなぁって言ったら。すっごく睨まれた。
ので、それ以来下手なことは言わないようにしている。
「まあ、君が照れ屋さんなのは知ってるけど。もっと積極的になってほしいなぁ」
「まじめな話、僕達恋人ってわけじゃないし」
「だからぁ、私はいつでもおっけーだよ、って言ってるの!」
と、そんな風にほのかちゃんは頬を膨らませている。
僕も、彼女が好きだけど。幼馴染の関係が心地良すぎて一歩が踏み出せない。
はっきりしないといけないのは分かってるんだけど。
「こんな話、ほのかちゃんファンクラブの会員に知られたら大変なことなるなぁ」
「ろくにこっちの話を聞かないもんね、あの人たち」
さらっと流してるけど、学校にファンクラブあるって相当だよ?
れんあい思考なほのかちゃんは、一緒に住んでるうちに関係を進めたいらしい。
ていうか、なんなら肉体関係を結ぼうと画策しておられる。
しかし、僕としてはそこまでは考えていない。
まだ学生、清いお付き合いというものがあるだろう。
うん、まあ、なんというか。そもそも恋人じゃないんだけど。
「早めに皆の前で言っちゃおうか? 私たち、恋人になりましたって」
「くっ、僕を脅す気!? じゃあ、これでっ」
「逃がさないよー」
げっ、回り込まれてしまった。
なし崩しで腕を組まれ、そのまま引きずるように帰路につく。
「いっしょにお家に帰りましょうねー」
とほほ。結局今日も捕まってしまった。
「だめだよ、逃げちゃ」
「めんどうなことになるんだけどな、こういうの他の人に見られたら」
「だったら“僕たち付き合ってまーす”って言えばいいじゃん」
「いえるわけないでしょ。事実と著しい相違があります」
「たいへんだよ、慣れとかないと。結婚の挨拶だってあるのに」
「いや、僕の話聞いてる?」
「許可はとってるよ? あなたのご両親から」
しまった、父母共に篭絡済みのようです。
ていうか、昔からうちの親はほのかちゃんびいきだ。
「くそう、僕の親なのにほのかちゃんの味方をするのが簡単に想像できる……」
「だって私、いい子だもーん。いいお嫁さんにだってなるよ?」
さえない僕に、こんな風に好意を示してくれる女の子は他にいない。
いったいどうして、彼女は僕をここまで想ってくれるんだろう。
「骨身にしみてるよ、それは。……でもさ、なんで僕にそこまで?」
「がんばり屋さん、優しくてあったかい。長所ならいくつでもあげられるよ?」
肉親だってここまで僕を愛してくれないかもしれない。
がんがん攻めてくるほのかちゃんに、自分が情けなくなる。
壊れるのが怖い、幼馴染みとしていられなくなるが。
れんあい関係を避けていたのは結局そういうことだ。
ただ、僕だって彼女の傍にずっといたいと思っているのだ。
「僕、そんな大した男じゃないよ」
「はぁ。自分のことは見えないものなのかなぁ?」
「君の過大評価が過ぎるだけかと」
がしっ、とほのかちゃんは僕の肩を掴み、まっすぐに瞳を見る。
「好きだよ。あなたが信じてくれるまで、何度だって言ってあげる」
きっと、かなり恥ずかしいんだろう。頬が真っ赤だった。
でも目を逸らしたりしない。
すごいと素直に思う。いままで逃げて来た僕だから余計に。
「ほのかちゃん……ぼ、僕は」
のどが渇く。緊張で汗が流れる。
かおなんて、カノジョ以上に真っ赤に違いない。
様子を伺うようなほのかちゃんの瞳に、僕は気合いを入れ直す。
「もう、これ以上は隠していられないよ」
「うん……。教えて? あなたのキモチ」
「逃げ回ってばかりでゴメン。僕は君が好きだ。子供の頃から、ずっと」
げんかいだったんだ、結局。
なにも持ってない自分が恥ずかしくて、告白できないでいた。
いっしょにいたいと思いながら一歩を踏み出せずにいた。
かのじょに甘えてばかりの情けない男。それが僕だった。
「らしくなかったかな、こういうの?」
くすりとほのかちゃんが微笑み、耐えきれなかったのか僕に抱き着く。
「さいっこーに嬉しい! 待ってたんだよ、ずっと。その言葉を」
りんとした姿はどこにもない。子供の頃のように無邪気に喜んでくれた。
「は、恥ずかしいよほのかちゃん!?」
「ずっといっしょ! これからは、ずっと一緒だからね!」
しっかりとほのかちゃんを抱き締める。
てのひらに伝わる彼女の温度に、僕は泣きそうなくらいの喜びを感じた。
もう誤魔化せはしない。
うもれていた想いを改めて確認する。
やっぱり彼女のことが好きだ。昔から、この初恋を僕は抱えてきた。
だからきっと、僕はこれからもほのかちゃんと一緒にいたいと願うのだ。
あ い し て い ま す あ な た の こ と を
い
し
て
い
ま
す
あ
な
た
の
こ
と
を