客引きをされるのが苦手な後輩をどうにかしようと、先輩が客引きを避ける方法を考えてくれるお話です。

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 秋葉原歩いてて思い付いたネタです。
 書き終わった後に微妙だからと没にしましたが、どうせ作ったならと投稿しました。


大体こんな客引きの避け方

「昆虫上位存在概念見下し系喫茶店やってまーす!」

 

「ひえっ。あ、あの……」

 

「あーすみません。俺ら用があるんで。ほら行くぞ後輩」

 

 ビルがゴミのように並び立つ都会。

 日差しとコンクリートとビルの反射によって人が住めるような気温ではない中、後輩と呼ばれる人物は街中を歩いていると、突然喫茶店の客引きに話しかけられて驚いてしまう。

 断ろうにも上手く言葉が出ず、一緒に来ていた学校の先輩に腕を引っ張られる形で助けてもらいその場の窮地を脱出する。

 

「相変わらず勧誘断るの苦手だよなお前」

 

「僕は話しかけられるのに慣れてないんだよね。どうにかならない?」

 

「なら一つ良い方法があるぞ」

 

「えっ、なになに。どんなの?」

 

 はぁと溜め息を付く先輩であったが、後輩が人の誘いを断るのが苦手なのはそれなりの付き合いだから理解している。特に知らない相手からの誘いとなれば尚更だ。

 

 今回は自分が居たから良かったが、もし1人だったらどうなっていたか。想像に固くなく、そんな後輩が心配な先輩はある方法を伝授する。

 人からの誘いを断られて、尚且つ話しかけられない方法を。

 

「まずは両手をグーにして、親指を上にするような形でくっつける」

 

「うん」

 

「次に視線を下に向ける」

 

「うん」

 

「最後に頭から布を被れば」

 

「犯人じゃねぇか」

 

 駄目だった。

 これなら問題ない! と思った先輩だったが、明らかに犯罪をやらかして手錠を掛けられた人にしか見えないらしく、後輩は頭に掛けられたタオルを先輩に押し付ける。

 

「これなら話しかけられないぞ」

 

「そら躊躇するだろうね。これから輸送される人を見たら」

 

「輸送? 何言ってんだ。俺は単に勧誘を避ける方法を考えただけなんだが」

 

「じゃあこの格好で何処に連れていくのか答えてくれない?」

 

「俺の口からそれを言うのはちょっと……恥ずかしいじゃねぇか」

 

「ちゃんと言え」

 

「刑務所」

 

「ちゃんと言うな」

 

「どっちだよ」

 

 留置場ではなく刑務所と言う辺り、遠回しにお前は捕まると言っているのか、単にその単語が咄嗟に出てこなかったのか。

 後輩は物腰柔らかい口調を捨て、口悪く先輩に文句を言う。誘いを断る方法を学ぶ代わりに刑務所に入れられるとなれば、あまりにも釣り合いが取れていないのだから、この正しい反応と言えるだろう。

 

「他に何か良い方法は無いの?」

 

「あー、そうだな……」

 

 先輩は辺りを見渡す。

 そして服屋を見つけるや否や脚を進めて入店する。

 外の蒸し暑い空気が纏わりついていた身体が、一瞬にして店内の涼しい空気に当てられ冬のような涼しさとなり、一生この場で過ごしたくなるが、今回は後輩の悩みを晴らしに来たのだ。決して涼みに来たのではない。

 

「服装を変えるのはどうだ?」

 

「服装を?」

 

「ああ。例えば腕にシルバー巻いて頭がヒトデの奴が居たら話しかけたいか?」

 

「それはちょっと……関わりたくないかな」

 

「だろ?」

 

 服装を変える。

 至ってシンプルな方法ではあるが、人は見た目が8割と言う。

 残りの2割はそう簡単には変えられないだろうが、見た目ならば服を変えるだけで簡単に済ませられる。

 そして見た目による第一印象で「怖そうな相手だな」や「関わりたくないな」と思わせられたら、残りの2割の要素によって話しかけられる事はない。つまり実質的に見た目が10割である。

 

「じゃあこれとこれとこれを着ろ」

 

「うん。分かった」

 

 後輩は渡された服を持って更衣室で着替えを始める。

 自分の美的センスに狂いは無いとドヤ顔で後輩が着替え終わるのを待つ事10分。更衣室のカーテンが開かれた。

 

「着替えたよ」

 

「ほい鏡」

 

 先輩は着替え終わった後輩に鏡を見せる。

 黒いニット帽。

 黒いサングラス。

 黒いTシャツ。

 黒いパーカー。

 黒いズボン。

 

 夏にしては暑苦しく、身体を縮ませる薬を扱っている組織に属してそうなコーデとなってしまったが、客引きを避けれると考えれば安いだろう。なお、代償は熱中症の危険性。

 どこからどう見ても怪しい人間の爆誕であるが、この格好を見た後輩の反応は……

 

「不審者じゃねぇか」

 

「これだと勧誘されないぞ」

 

「こんな格好されたら誰も話しかけてこないよ?」

 

 妥当であった。

 着替えてる途中、渡された服が全部黒だった事からどんな格好になるかは想像がついていただろう。それでも先輩ならなんかこう、良い感じの格好になるようなのを選んでくれたかもと、無駄に淡い期待を抱いた結果がこれである。

 

「安心しろ。お前にもちゃんと話しかけてくれる奴は居る」

 

「え、誰?」

 

「警察」

 

「不審者じゃねぇか」

 

 結局この格好は暑く、不審者にしか見えないとの理由で却下となった。

 先輩はブーブー文句を垂れていたが、何を思えばこのお手軽不審者キットが大丈夫だと考えるのか。全くもって理解出来ない。

 

「さっきから文句ばっかだな~」

 

「文句しか出ないよ?」

 

「へへっ。照れるじゃねぇか」

 

「鼓膜破れた?」

 

 試着した服を元の場所に戻し、服屋を後にして外へ出る2人。

 先輩は自身の意見に文句ばかりぶつけてくる後輩に思う所があるようだが、不満以外何も無い意見しか出してないのがそもそもの原因である。

 

「じゃあ先輩だったらどう断るの?」

 

「ん? そうだなぁ……」

 

 ここは先輩としての意地を見せなければ、後輩に呆れられてしまう。

 既に呆れられてるとも知らずに先輩は意気揚々と客引きの元へと自ら脚を進んでいく。

 

「目隠し水着忍者メイド喫茶店やってまーす。いかがですかー!」

 

「聞き取れなかったらもう一度」

 

「目隠し水着忍者メイド喫茶店やってまーす。いかがですかー!」

 

「あ、なんだって?」

 

「喫茶店やってます! いかがですかー!」

 

「大きな声でもう一度」

 

「喫茶店いかがですかー!」

 

「あ? うるせぇなコイツ。お巡りさんこの人です」

 

「え!? いやちょっと待っ……!」

 

 客引きはお巡りさんに連行された。

 自分は何もしてない。助けてくれ。そう叫ぶ客引きを遠い目で眺め、パトカーに乗せられた辺りで先輩はこれが手本だと言うような顔をして後輩と目を合わす。

 

「大体こんな感じだ。参考になったか?」

 

「ならねぇよ」

 

 今後先輩を頼るのは止めよう。

 後輩は心に強く誓い、取り敢えず客引きにあったら全力で警察を呼んで助けてもらう事にした。




【先輩】
 中学2年生。
 後輩に慕われてると思ってる。
 作中の案は本人なりに真面目に考えてる。
 困った時は大体国家権力に頼れば解決すると思ってる。

【後輩】
 中学1年生。
 先輩を慕っていない。
 親しい人以外には人見知りを発揮する。
 困った時は大体国家権力に頼れば解決すると学んだ。

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