もしも綾小路清隆がCクラスの生徒だったら   作:A-damame

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改善点等お待ちしております。
いざ書こうとすると龍園って難しいですね。


二話

 

 

 学校二日目、授業は初日ということもあって、殆どが勉強方針や用意しておくべきものなどの説明だけで終わるものだった。

 今日改めてクラス全体の様子を見たところ、Cクラスはどうやら素行の悪い、所謂不良のような生徒が多いように感じた。

 これが、うちのクラスにそういった人間が固まっているのかどうか、また、固まっていたとしてそれが偶然なのか意図的なのか未だ定かではないが。

 ただ、多いというだけでクラスの全員がそうなわけではなく、椎名やオレを始めとした比較的大人しい生徒や、女子のグループなどもいる。

 

 不良といえば、昨日コンビニで口論しているところを見かけた赤髪の男はDクラスの生徒だと言っていた。

 クラス分けやポイントについて疑問点がないわけではないし他クラスを少し覗いてみるくらいはしてもいいかもしれないな。

 

 そんな事を考えていたら昼休みになっていた。

 午前中の授業は、Cクラスの面子の特徴もあるのだろうが、初回の授業なのにも関わらず早々に居眠り、私語などをする生徒が見られた。

 意外だったのは、先生たちがそれらを意図的に見逃しているように見えることだ。いくら高校生で義務教育ではないとしても志望先に100%応える国立高校の在り方としては疑問に思わなくもない。

 

「綾小路くん、もしよろしければ一緒にご飯を食べませんか?」

 

 現状この学校で唯一の友人である椎名ひよりが今日もオレを孤独から救ってくれるようだ。

 当然了承し、二人で食堂へ向かった。

 

 昼休み多くの人が利用する食堂は、昼休みが始まってから少し遅れても十分に席を確保できるほど広い。

 注文は機械から食券を購入しカウンターに食券を渡すスタイル。当然初めてだ。

 いざ券売機の前に立つと、また妙なメニューがあることに気がついた。

 

 「山菜定食…0円…」

 

 「また無料の商品ですね。コンビニにも無料の商品が置かれていましたが」

 

 コンビニといい本当に需要があるのかと思い、辺りを見渡してみると意外なことにちらほらと山菜定食らしきものを食べている人がいた。

 

 「節約でしょうか?」

 

 もしこれらが全員倹約家なのであれば、よほど家庭科の授業が手厚い学校なんだろうな。

 

 券売機の前にずっと立ち止まっているわけにもいかないのでオレはカレー、椎名はうどんを購入し料理を受け取って席に着く。

 お互い元々そこまで話すのが好きなタイプでもないため、必然的に食事中は静かになりがちだ。

 黙々とカレーを掬っているとスピーカーから校内放送が流れてきた。

 

 「本日、午後5時より、第一体育館にて、部活動説明会を開催いたします。部活動に興味がある生徒は、放課後、第一体育館に集合してください。繰り返します。本日、──」

 

 

 「椎名はなにか興味のある部活動はあるのか?」

 

 正直、入学前は自由の時間が減ってしまうためあまり入る気がなかった部活動だが、友人と、椎名となら楽しくやれるんじゃないかと思う自分もいる。

 それに部活動で繋がりができれば新しい友人もできるかもしれないしな。

 

 「そうですね…。まだはっきりとは決められていませんが、文化部に興味を引くものがあればといった感じです。お恥ずかしながら運動は苦手なので」

 

 「よければ放課後、一緒に部活動説明会に行ってみないか?オレも部活動には少し興味があるんだ」

 

 「ぜひ行きましょう!図書館はこれからいくらでも行けますが、部活動説明会は今日しかありませんからね」

 

 無事誘いを受け入れてくれたことに安堵しつつ、オレ達は昼食を片付け、教室へと戻るのだった。

 

 

 

▽△▽△

 

 

 

 放課後、オレと椎名は体育館へとやって来た。

 

 「思っていたよりも人が多いですね」

 

 オレ達が到着する頃には既に100人以上の1年生が説明会の開始を待っていた。

 

 「なにか興味を引く部はあったか?」

 

 先ほどもらった、各部活動の詳細が書かれたパンフレットを見ながら聞いてみる。

 

 「文学部は無いようですね…。この中なら茶道部に興味があります。お茶もお菓子も、落ち着いた雰囲気も好きですし。綾小路くんは何かありましたか?」

 

 「そうだな…。オレも挙げるとするなら茶道部だな。実は昔少しやった事があるんだ」

 

 「そうだったんですね!でしたら、一緒に入部してみませんか?私は未経験者なので、経験者の方が近くにいれば心強いのですが。そこまで忙しい部活でもありませんし、読書の時間も十分にとれると思います」

 

 思いの外熱心に誘われてしまったな。

 だがこれも、椎名と良好な関係が築けていると思えば悪くない。

 橘という女子生徒が司会を務める説明会を聞きながら、今後について話していると、ふと、場の雰囲気が変わったように感じた。

 どうやら今壇上に立っている眼鏡をかけた黒髪の男が最後の一人のようだ。男は1年生に野次を飛ばされながらも無言でこちらを見下ろしていた。

 最初は笑い声も多かった体育館が困惑と共に次第に静まり返り、緊張感が場を満たし始めた頃、ようやく男は声を発した。

 

 「私は、生徒会会長を務めている、堀北学といいます。生徒会もまた、上級生の卒業に伴い、1年生から立候補者を募ることになっています。特別、立候補に資格はいりませんが、もしも生徒会への立候補を考えている者がいるのなら、部活動への所属は避けて頂くようお願いします。生徒会と部活動の掛け持ちは、原則受け付けておりません。」

 

 男の言葉には、場を支配する力があるように感じた。

 その立ち振る舞いから男が余程の傑物であることが伺えた。

 生徒会は忙しいだろうし入りたくないが、それはそれとしてあの男には興味が湧いたな。

 

 「それから───私たち生徒会は、甘い考えによる立候補を望まない。そのような人間は当選することはおろか、学校に汚点を残すことになるだろう。我が校の生徒会には、規律を変えるだけの権利と使命が、学校側に認められ、期待されている。そのことを理解できる者のみ、歓迎しよう」

 

 そう言うと、堀北は壇上を降り、間もなくして説明会は終了した。、堀北が壇上にいる間、1年生たちは一言も声を発することが出来ずにいた。

 

 入部の受付が始まり、茶道部に向かおうとすると、前方から青髪のショートボブの女生徒が近づいてきた。

 

 「おや、伊吹さんも部活動説明会に来ていたんですね。入部したい部活動はありましたか?」

 

 どうやら目の前の女生徒と椎名は面識があるようだ。

 

 「別に、暇つぶしで来ただけ。」

 

 伊吹という名前はクラス分けの際にあったような気がする。

 伊吹(みお)だったか。自分の名前の近くにあったから何となく覚えていた。

 

 「伊吹さんとは席が近くて、昨日少しお喋りしたんです。」

 

 伊吹は今オレの存在に気づいたようで、やや不機嫌そうな顔で(元々そういう顔なのかもしれないが)オレを見ている。

 

 「こいつは?あんたの彼氏だったりするの?」

 

 「彼は綾小路清隆くん、趣味の合うお友達です。」

 

 「綾小路清隆だ。せっかく同じクラスになったんだ、」

 冗談めかして聞いてきたように見えたので不機嫌な訳では無さそうだ。

 それにしても、やはり、男女が二人きりでいるとそういうふうに見られるものなのだろうか。

 

 元々そこまで興味はなかったのだろう、伊吹は適当な返事をして帰ってしまった。

 思わぬ出会いがあったが、その後、二人で茶道部の入部手続きを済ませた。

 

 「おや?あの人、どうかしたのでしょうか」

 

 体育館の出入り口の側に青い顔をして立っている黒髪ロングの女生徒がいた。

 

 「おい、大丈夫か?」

 

 問いかけても応答がない。意識を失いっている訳ではないはずだが。

 仕方がないので肩を揺すろうと手を伸ばすと──

 

 「…っ!! 誰!?」

 

 伸ばした手が叩き落された、痛い。

 

 「…いや、あんたの顔色があまりに悪かったから声をかけたんだ。改めて聞くが、大丈夫か?」

 

 「え、ええ。大丈夫よ。心配ありがとう」

 

 それだけ言うと彼女は青い顔のまま逃げるように体育館から出ていってしまった。

 

 

 

▽△▽△

 

 

 

 入学から3週間ほど経った。この3週間は、プールでオレの体を見た伊吹に武道をやっていたのではという疑いをかけられたり、椎名と図書館に行って静かな時間を過ごしたり、入部した茶道部で期待のエース(?)に任命されたりするなど、そこそこ濃密な日々を送った。

 また、この3週間、数名の不良生徒がある日突然怪我をしてくるといった出来事もあった。隣の席の龍園もまたその一人で、とても偶然できた傷には見えない。喧嘩でもしたのだろうか?

 

 そんなことをぼんやり考え、気付けば授業は3時間目。

 

 「今日は月末ということで小テストを行います。成績表には影響しませんが、カンニングは厳禁です」

 

 坂上先生はそう言うと、テスト用紙を配り出した。

 問題は1問5点の全20問、国数英理社から満遍なく出題されており、17問目までの問題は、中学生でも余裕で解けるような問題しか無かった。

 しかし、最後の3問に関しては、明らかに難易度が跳ね上がり、本来は高校1年生よりも先の知識を使って解くような問題になっていた。

 入試の点数は点数が高すぎると目立ってしまうため、全て50点に揃えたが、流石にこの内容だと50点は低すぎるかもしれないな。

 それにしても、このテストで学校側は一体何を測るつもりなんだろうか。学力を測るにしてはこのテストはあまりにも不適切だ。

 それに、坂上先生の「成績表"には"影響しない」という言葉、妙に違和感を覚える言い回しだ。

 Sシステムの説明の際も不思議な言い回しをしていた記憶があるし、生徒に何かを気づかせたい思惑があるのかもしれないな。

 結局、入試と同じように50点だけとって、後は適当に間違えておくことにした。

 

 

 

▽△▽△

 

 

 

 そして5月1日、つまり、初のポイント配給日だ。

 残高は寝る前より49000ポイント増えていた。

 やはりと言うべきか、10万ポイントは貰えなかったな。

 念の為、椎名に何ポイント振り込まれたか聞いてみたが、オレと同じ49000ポイントだった。

 

 始業時間になると、坂上先生は一呼吸おいて、話し始めた。

 「これより、朝のホームルームを始めますが、その前に、何か質問のある生徒は居ますか?───はい、時透さん」

 

 「今日支給されたポイントが少なかったんすけどなんかトラブルでもあったんすか?5万ポイントくらいしか増えてないんすけど」

 

 「まず、質問に答えますが、ポイントは全クラス、問題なく振り込まれたことが確認できています。続いて、支給されたポイントの額が少ないとのことですが、それにはこの学校のシステムが関係しています」

 

 坂上先生は1枚の紙を黒板に広げた。

 そこには、AクラスからDクラスの名前とその横に数字が表示されていた。

 オレ達Cクラスは490、Aクラスは940、Bクラスは650、Dクラスは0だった。

 察するに、これがクラス毎の成績、ということだろうか。随分と綺麗なものだ。

 坂上先生は説明を続ける。

 

 「これは、クラスポイントという、クラスの実力を表す数値です。入学時、全クラスが平等に1000ポイント保有し、遅刻、私語、居眠りといった、学生として不適切な行動によって減少します。そして、毎月振り込まれるポイントは、クラスポイントを100倍した値になります。」

 

 「は!?毎月10万ポイントくれるんじゃなかったのかよ!!」

 

 生徒の1人が抗議の声を上げる。

 

 「私は先月、皆さんに10万ポイントが振り込まれたこと、ポイントは毎月1日に振り込まれること、この二点を説明しましたが、『毎月10万ポイントが振り込まれる』とは一言も言っていませんよ」

 

 多くの生徒が怒りの声を上げ、抗議する中、龍園は薄く浮かべていた笑みを深めるのみだった。

 

 坂上先生は生徒たちの声を聞き流しながら、クラス編成は優秀な生徒から順にAクラスからDクラスに分けられていることや、クラスポイントの値によってクラスが入れ替わること、この学校の売りである、生徒の希望する進路に100%応えるというのは、卒業時に、Aクラスに所属する生徒にしか適用されないことなど衝撃的な事実を説明した。

 一通り説明し終えると、坂上先生は新しい紙を黒板に広げた。

 どうやらこの前のテストの順位のようだ。

 下から5番目の生徒の名前の上で赤い線が引かれている。

 

 「これは、先日行われた小テストの結果です。この赤い線よりも下の生徒は今回赤点になります。今回は何もありませんが、定期テストで赤点を取ると退学になってしまうので注意してください」

 

 今度は、怒りよりも驚愕といった声が上がった。

 1拍置いて、感情が追いついてきたのか再び怒りだす生徒たち。

 確かに、希望の進路に進めると思っていた生徒たちにとっては酷い裏切りだし、赤点が一切許されないというのは、あの難易度のテストで平均点が60点台のこのクラスでは負担になる人も多いだろう。

 坂上先生はそんな生徒の叫びに耳を傾けることなく、最後に生徒達を激励すると、教室を出ていってしまった。

 

 

 

▽△▽△

 

 

 

 その日の、帰りのホームルームが終わってすぐのことだった。

 徐ろに、隣の席から立ち上がり、教卓へ向かう龍園、それを合図に山田アルベルトという体格の良いハーフの生徒や、石崎など数名がそれに続いた。

 龍園は困惑する生徒たちに対して、まさに傲岸不遜といったふうに言った。

 

 「俺がこのクラスの王だ。俺がお前らをAクラスまで連れて行ってやる。その代わり、お前らは俺の手足になって働いてもらう」

 

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