ああ、ああ、なんて愚かだったんだ。
「飲めるなら、別に水だって構わない」、だって?
水すら与えられないことなんか、珍しくもなんともないことなのに。
なんて傲慢だったんだ、私は……────
恐れるあまりに、観測してしまった。
絶望すると解っていて、確定させてしまった。
シュレディンガーの箱を開けるべきではなかった。
可能性を、未来を、消してしまった。
ああ……ああ……聖杯よ……
狂ったこの地の聖杯よ……
本心から願う。
この地に……娘の……安息を……────
ひょおぉおぉぉぉォォッ……
街の灯りを眼下に、夜の帳に包まれた空で、その街の彩りでも、空にあるべき星のそれでもない、光を引く存在が、風を割いて迫っていく。
ガキ、ガキィンッ!!
バチバチバチバチッ!!
金属と、──── 光でできた刃、それがぶつかる。光でできた刃が、激しく火花を散らす。
弾かれるように間合いが開いた瞬間、
「少し変わった姿じゃが、この剣戟、まさしくセイバーじゃな!?」
と、東洋風の藍色のシャツにショートパンツの上から、鈍い鉄色の鎧に身を包んでいる、槍を手にした者が言う。
東洋でも中国と日本の折衷、それに肩当てあたりは西洋のテイストも漂う鎧の、胸の部分が大きく膨らんでいることは、整った顔立ちとともに、一見、女性であるように見えるが ────
「召喚のときは戸惑いもしましたが!」
その相手が、高く澄んだ声で言いながら、刃が光の粒子でできた剣を瞬時に構え直し、光る
「私がセイバー!! なんの問題もありません!! 毟り取った衣笠です!」
なんというか、その上からでも女性の肢体が把握できる白と青の鎧は、伝統的な鎧と言うより、アニメの巨大ロボット兵器の装甲を思わせる。
「それを言うなら、『昔取った杵柄』であろう!?」
見た目の麗しさとは裏腹に、どこか年嵩を感じさせる口調で言いつつ、槍使いの振るう、剣のように穂先の長い槍が、セイバーと呼ばれた、金髪にロボット風鎧の女性剣士の、
激しく光を散らし、鍔迫り合いになりかけたかと思ったところで、先ほどとは異なり、槍使いがその穂先を滑らせるようにぶつかり合う力を逃がし、“セイバー”の脇をすり抜けるようにして、セイバーの背後で間合いを取る。
「!」
シャッ
「うおっと!?」
瞬時に自身の身体の前後を入れ替えつつ、攻撃を仕掛けようとしていた槍使いが、それに気づいて驚いき、既のところで交わす。
それは、セイバーが握っているのと同じ、刀身が光の粒子でできた剣だが、手持ち用のそれとしては若干異質だ。
「セイバーでありながら、飛び道具も備わっておるとはな!」
槍使いが躱した、投擲用の剣は、ブーメランのような軌道を描いて、セイバーのもとに戻る。それは、光を放っている脇楯の一方だった。元通りに、セイバーの腰元に戻り、装着される。
「そう言うそちらは、ランサーかと思いましたが、今の機動力、ライダーですね!?」
間合いを取ったまま、隙を作らずビームサーベルを構える。高度差も発生していて、街の繁栄の灯りを背負っていた。
「如何にも! じゃが、真名までは解らぬであろう!?」
ライダー、と呼ばれた槍使いも、また構えを整えた状態で、セイバーの問いかけを肯定しつつ、問い返すように言った。
「ええ、
「正に!」
セイバーは、緊張した面持ち、鋭い視線を向けたまま問い返したが、ランサーは、構えつつも、
お互い、相手の実力を知って、生半可な攻撃は効かないと知り、仕掛けるタイミング、あるいは相手がそうする瞬間を、狙いすましていた。
──…………ッ
ライダーの眉がぴくん、と動く。セイバーは、仕掛けるフェイントにしようと、動きを感じさせないようにゆっくりと、
それに気づいたライダーが、対応しようと仕掛けかけた瞬間、
ピリリリリリ……ピリリリリリ……
と、セイバーの鎧の中から、電子音が鳴りはじめた。
「は、はい!?」
セイバーは、構えを崩さずも、ビームブーメランに伸ばしかけた手を一旦止めて、Bluetooth後方互換の機器間通信でスマートフォンと接続された鎧の、ヘッドプロテクターに内蔵されたスピーカー・マイクで、通話をつなげる。
『もう配信始まっちゃうよー!!』
ライダーの場所にまで聞こえるほどの、女性、というか、明らかな少女の声が聞こえてきた。どこか責めるような口調で、言葉を張り上げている。
「す、すみません、ですが……」
ライダーに対する、如何にも闘士、戦士、と言った様子の
『なに!? またどっかでドジこいた? それともキャッチがしつこいとか!?』
「そ、そうではありませんが」
責めるような通話相手の口調に、オロオロとするセイバーの意識は、明らかにライダーから離れてしまっていた。
だが、ライダーは、好機とばかりにセイバーに仕掛ける……──── こともなく、自らも身体の緊張を解いて、
「ははッ、カッカッカ」
そう言って笑い声をあげながら、ひょい、と槍を肩に背負った。
「ちょうどよい。まだ、“戦争”は正式には始まっておらぬ。ここはお互い、お開きといこうではないか! それでよいであろう?」
「えっと……」
ライダーの提案に、セイバーが答えようとするが、
『ちょっとー! 今の声どういうことー!? まだ7騎揃ってないのに、どっかとやり合ってるんじゃないでしょーね! ルーラーにバレたら、アタシ達失格だよ、失格!! 解ってる!?』
と、セイバーの言葉を遮って、通話越しの少女の声が、マシンガンのように響いてきた。
「そう言うわけだ、勝負預けた。ここには女房もおらぬしな。じっくりと決着をつける場があることを期待しておるぞ」
そう言って、ライダーは、セイバーのそれに比べて鈍く微かな光を曳きながら、別の街区の方へと飛び去っていった。
「あ、待て!」
反射的に、セイバーはライダーを追いかけかけるが、
『いいから帰ってこーい!! さもないと、ハイレグ衣装で配信に出すぞ!!』
と、少女の声が、それを許さなかった。
────────…………
「ま、今の程度だったらお目溢しも可能かな?」
巨大な交差点の中央に建つ、小さな塔の上に、2人の人影があった。
1人は、ギリシャ神話のそれとして描かれる、肌もあらわな衣装を身につけた……──── 女性らしいしなやかな体型でありながら、胸郭だけが男性で、その上に僅かな乳房があるという、不思議な身体を持つ、 ──── 女性。
その彼女が、その言葉を呟くように言っていた。
「秩序を歪めるのは、私の主義ではないが。まぁ、今回はそれでもいいだろう」
もう1人が、淡々とした口調でそう言った。
黒に近い紺のジャケットに、タートルネックの白いシャツと、先程の女性に比べると、より近代的な服装をしているが、明らかに現代のトレンドではない。
その服の上からでも、豊かな乳房の膨らみが確認でき、女性の肢体をしていることは確かだったが、ただ ──── 顔があまりに整いすぎていて、そのせいで返って、女性なのか男性なのか判然としなくなる、そのような姿をしていた。
また、明らかな白人人種の特徴を持つことを考慮したとしても、彼女の肌は、「血色が悪い」、そう表現されそうな色をしている。
「ほっ」
胸郭が男性の女性は、そう言って、黒いブラトップで胸郭に張り付く乳房を隠した胸を実際に撫で下ろしながら、そう言った。
「なんだ、今の反応は?」
紺ジャケットの女性が、引っかかったように問いかける。
「いや、かなり杓子定規そうだなと思ったからさ。お仕置き程度はするものかと」
「確かに、私は秩序を重んじているが、過度の懲罰が本末転倒になることも、
胸郭が男性の女性の言葉に、紺ジャケットの女性は、まずそこまで答えて、フーッ、とため息を
「それに、
「そっか」
紺ジャケットの女性の吐露に、胸郭が男性の女性は、そう言って、両手を頭の後ろに当てる。
「ボクは、ここの聖杯には何度か喚ばれているからね。ただ、いつもルーラーじゃなく、参加してみたい気もするけど」
そう言って、苦笑した。
────この地の聖杯の異常により、
・この地の聖杯戦争においては、身体か精神の少なくともいずれかが女性である英霊しか、
・精神のみが女性である英霊の姿は、麗しい(もしくは、可愛らしい)姿をした、
・英霊の適正に対して、
・バーサーカーの狂化がマイルドかつ本人がある程度コントロールができ、理性的なコミュニケーションをすることができます(時限的に完全な狂化状態となることも可能です)。
・バーサーカーとイレギュラークラス以外のサーヴァントは、マスターを守る「盾」と、戦闘以外にも使える「変哲のない」副武装(例:投擲槍)を持って現れます(バーサーカーやイレギュラークラスは必ず持ってこないというわけではありません)。
・マスターに対しての願望器としての機能はありますが、「(本来の願い)と、ついでに(自身のサーヴァント)を受肉させる」という願いしか叶えてくれません。
・創作の人物が召喚される事もあります。ただし、創作枠からは裏宇宙世紀のバーサーカー、超未来の妹ルーラー、永遠の美貌のアサシンは、別クラス召喚も含めて出入り禁止です(これは聖杯自身しか知りません)。
・無用の殺戮は強く戒めます。
・ルールの厳格化の為、参加者以外に、2体の
・正々堂々、楽しく
セイバー(誰だかバレバレとか言うな)
https://x.com/kaonohito2/status/1951296729460122069
ライダー
https://x.com/kaonohito2/status/1951297797694554565
紺ジャケットのルーラー
https://x.com/kaonohito2/status/1951298047448875308
男性の胸郭の女性ルーラー
https://x.com/kaonohito2/status/1951298448999018795
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