厄ネタ×二乗は一周回って厄ネタではない(白目) 作:ハゲチャビン
初めは、黒いジャンヌ達の作戦の合図かと警戒した。
だが、彼女の困惑する表情を見てその考えは捨てた。
次に、『笑う死体の山』と護衛役として展開していた『溶ける愛』の様子がおかしい事に気が付いた。
目の前のデカいドラゴン相手には見せなかった、何処か緊張しているような、警戒しているような様子。
じゃあ何なのか考えていた時、空が変わっていることに気が付いた。
空を雲が覆い尽くしたかと思えば、一筋の光がある一点――俺達のすぐ近くで降りた。
その降りた地点を見て、俺は固まった。
人がいる。
死者が蠢き、炎と巨体が暴れまわり魔術が飛び交う戦場で、人が、それも複数人。
ありえざる状況に重ねる様にありえないことが、いや
仮面だ。全員が見覚えのある仮面をつけている。
鳥を模した仮面。はるか昔、ペスト医師がつけていたとされる仮面を意匠は違えど全員がそれで顔を覆い、白いローブを纏っている。
何かの間違いであってほしかった。この悪い予感は外れて欲しかった。
けど残念なことに、この悪い予感は的中することが殆どだ。今回もその例にもれなかったようだ。本当に残念なことに。
その集団が一斉に左右に分かれた。
その奥、差し込む一筋の光の中心に、
翼の生えた胎児。誰が見てもソレについての姿を語るなら恐らくそう答えるだろう。
もしかしたら、眠るように目を瞑るソイツの頭に浮かぶ輪っかを見れば、天使だと答える人もいるかもしれない。
『――文目君、アレを知っているのかい?』
「ええ……良く知っています。嫌になる程」
Dr.ロマニから通信が入る。
俺はその問いに黒いジャンヌと『白夜』とその配下――使徒の集団から目を離さずに答えた。
そう、俺はそれを知っている。アレはそんな神聖な存在じゃない。
今率いているアブノーマリティ達の一つで、その中でも規格外とされている2体の片割れ。
沈まぬ太陽の名を冠し、絶望と殺戮を振りまくアブノーマリティ。
分類番号、T-03-46『白夜』。リスクレベル、AREPH。
正確に言えば、『まだ』その状態に至っていないというのが、正しいが殆ど似たようなものだ。アレがあそこまで変異を遂げているという事はもう、手遅れだという事だ。
「Dr.ロマニ、逃走を試みます」
『……そうだね。こちらのレーダーもあの集団が現れてから殆ど使い物にならなくなった。そこが見えない以上、寧ろ君達に逃げろと伝えたいくらいだ』
おーけー。じゃあ、
「全員聞けェッ!!」
ありったけの大声で俺は告げる。
「戦ってる場合じゃねぇ! わき目もふらずに逃げろ! とにかく逃げろ!! 何が何でも逃げろ!!」
黒いジャンヌ達も、突然の乱入者に固まっている今がチャンスだ。
俺達も、黒いジャンヌの勢力も、一人でも『祝福』されようものならあいつが覚醒する。
それに巻き込まれる前に、全員で逃走する。
『笑う死体の山』と『溶ける愛』が影に戻り、藤丸達もリヨンの街の門へ走りだした。
俺は――アイツ等の最後尾を走りながら後ろを警戒する。
黒いジャンヌが騎乗しているデカいドラゴンが、使徒の一人が持っている剣によって容易く切り裂かれていた。
それがリヨンの街で見た最後の景色だった。
『それで、あの集団は一体何だったんだい?』
逃走を始めて暫く。
ワイバーンによる追撃を退けつつ、リヨンから離れた場所でDr.ロマニは白夜の事を聞いてきた。
「俺も気になった。文目があんなに焦る所初めて見た」
「そんなに危険な存在なのですか?」
藤丸とキリエライトからもリクエストが来たので、詳細に答える。と言っても、考察云々を抜いた本当に知っている事だけを全部。
他の連中は兎も角、『白夜』についてだけは嘘偽りなく答えた方がいい。
「……あの白夜という存在は、主ではない。のですね」
一通り説明し終えるとジャンヌ・ダルクがぽつりと呟く。その言葉に含まれる感情が何なのか、心を読めない俺には分からない。
分からない以上、刺激しないように言葉を選ぶ――なんてことはしない。
「貴女の言う『神』がどういうものかは分かりませんが……少なくとも許しを与え、教え導くタマではないのは確かです」
そうですかと、それっきりで彼女は沈黙した。
で、だ。
次の手を打たなきゃいけないんだが、何か案を探らなきゃならないが……何も思いつかん!!
まだ『白夜』ショックの混乱が抜け切れていないせいで頭が回らん。
というかなんでアイツ此処にいるん? アイツに聖杯盗られたら不味くない? その前に聖杯確保してトンズラするか? いや簡単にいかないだろうし、聖杯確保の為に戦っている間に漁夫の利を取られかねない。
かといって戦力を増強するためにあちこち奔走しまわったところで時間かかるしその間に聖杯を確保されてもアウト。
う――――ん。
う――――――ん。
う――――――――ん。
歩きながら考えても案が出てくることは無く、途中で見つけた放棄された砦で休息を取ることになった。
「考え事かい?」
砦についても彼是無い知恵を絞る俺の横に座る影が一人。
自己紹介以降、全く接点の無かったアマデウスである。
「……ええ、まあ、そうですね」
どうにも嫌われているのは分かったし、変に不和を齎すわけにも行かないのでお互いに干渉せずを貫いていたが……珍しいな。
尤も、当の本人は俺のことなどお構いなしで自分の爪を磨くのに集中しているようだが。
「あの……なにか?」
戸惑う俺に、アマデウスは口を開く。
「本っ当に認めたくはないが、君は僕と同じ――人間のクズだ」
いきなりディスられた。
え、嫌っているとはいえそこまで言われる? 傷つくわぁ~……。
「誰かを愛し、愛した人が人生の分岐点になった」
……何の話だ? 俺は生まれてこの方好きになった人も好きになってくれた人もいたことが無いんだが……自分で言ってて悲しくなってきたな。
「自覚が無いようだけどそんな事僕の知ったこっちゃない。好きに語らせてもらうさ……さて、愛してくれた人との離別を経験した君は、他の事などどうでもよくなった。違うかい?」
いや全然? そうなったとしても他にも大事なものがあると思うんだ、が…………俺にとって大事な物ってなんだ――
――あのね、夢があるの――
ッ………! なんだ、今の?
「そんな君は誰も頼ることなく孤独に生きていたんだろうけど、今は君を想ってくれている人は少なくともいるんだから、頼るなりなんなりしてみるといいさ」
じゃ、僕はこれで。
そう言ってアマデウスはさっさと自分の部屋に戻った。
一人残された俺は彼の残した言葉を反芻し、その意味をあれこれ考えながら一人過ごした結果、見事に寝不足に陥ることとなったのだ。
あんなに前回煽ったのにまだ本番ではないんだ。申し訳ない。
こういうつなぎの話の技量が良作か駄作かを分けるんだなぁ……。
アマデウス……マリーにお願いされた結果先輩としてガラになくアドバイス。クズの嗅覚ならぬ聴覚で「あ、コイツ同類だ」と確信した模様。それはそれとして嫌な音をまき散らすので嫌がらせに寝不足になるように気になることを意味深にばら撒いて帰った。
文目扶朗……まだ自覚が無い。気が付くのは何時になるやら。
今後の展開次第ですが、その時が来たら主人公にE.G.Oを付けていいか否か。
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『武装』主人公も戦力を付けるべき
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『非武装』そのままの方がおもしr、輝く