この話は企画・シナリオ『TYPE-MOON』様、開発運営『ディライトワークス』様によるスマートフォン専用ロールプレイングゲーム『Fate/Grand Order』に出てくるキャラクター、「オルガマリー・アニムスフィア」を中心とした二次創作SSです(話の中心なだけで出てこないけど!)。
 独自解釈・独自設定が多量に含まれている為、それでも構わない、むしろドンと来い!
 と言って下さる心の広い方以外は閲覧しない事を強くお勧めします。

ここで掲載してました
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9919708

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オルガマリーのSS

ダ・ヴィンチ

「どうしたんだい、暗い顔して? 君がそういう顔をしているのは珍しいね」

 

ぐだお

「ダヴィンチちゃん」

 

ダ・ヴィンチ

「新所長が来る事になったら多くのスタッフはこのカルデアから去る事になるし、君も例外じゃあない」

 

ダ・ヴィンチ

「暗い気持ちになるのも解らなくはないけど――」

 

ぐだお

「いえ、違うんです」

 

ぐだお

「それはもう決まった事ですし、考えたって仕方ないと思っています」

 

ぐだお

「ただ皆バタバタとしているので少しでも役に立てないかと思ってカルデア内の掃除を手伝っていたんです」

 

ぐだお

「そしたら、これを見付けてしまって……」

 

ダ・ヴィンチ

「写真? ああ、これは前所長か……」

 

ダ・ヴィンチ

「彼女の事を思い出していたのかい?」

 

ぐだお

「はい。自分にせめてもう少し何か出来る事はなかったのかなって思って」

 

ダ・ヴィンチ

「ふむ。まるで自分が何もしてあげられなかったなかったみたいに言うんだね」

 

ぐだお

「実際何も出来ませんでしたし……」

 

ダ・ヴィンチ

「ふむ。なるほど……」

 

ダ・ヴィンチ

「そうやって暗い顔して突っ立ってるだけじゃ気が滅入るだけだろう」

 

ダ・ヴィンチ

「どうだい。暫く私の工房で所長の事について話さないかい?」

 

ダ・ヴィンチ

「願いの叶え方を間違えてしまった悲しい少女の話でもさ」

 

  ○   ○

 

ダ・ヴィンチ

「準備をするからそこに座って待っていてくれるかい?」

 

ダ・ヴィンチ

「コーヒーと紅茶、どっちを飲む?」

 

ぐだお

「じゃあ紅茶で」

 

ぐだお

「……」

 

ダ・ヴィンチ

「やあ、お待たせしたね。砂糖とミルクは好みで入れてほしい」

 

ぐだお

「ありがとうございます」

 

ぐだお

「それで、あの。願いを間違えてしまったとはどういう――」

 

ダ・ヴィンチ

「願い自体は別に間違えてないさ」

 

ダ・ヴィンチ

「ただその叶え方を彼女は間違えてしまった」

 

ぐだお

「ふむ」

 

ダ・ヴィンチ

「あまり付き合いのなかった君は気付いたかどうか解らないが」

 

ダ・ヴィンチ

「彼女は才能や血統というものを酷く重視し、誇示した」

 

ダ・ヴィンチ

「他人に対してもそうだが、自分に対してもそうだった」

 

ダ・ヴィンチ

「口癖のように、カルデアの所長なのだから当然よ。当たり前でしょ、アニムスフィアなのよ」

 

ダ・ヴィンチ

「ばかり言っていたよ」

 

ぐだお

「ああ、何か想像出来ます」

 

ダ・ヴィンチ

「けれどね」

 

ダ・ヴィンチ

「所長として、あるいはアニムスフィアとして見られようとしている限り、彼女は彼女が願ったように認められる事も褒められる事も決してないんだ」

 

ダ・ヴィンチ

「所長やアニムスフィアとして見るってのはね。その辺にある郵便ポストを見るのと同じような物の見方だからね」

 

ぐだお

「郵便ポスト、ですか……」

 

ダ・ヴィンチ

「そうさ。例えば郵便ポストを見てだよ」

 

ダ・ヴィンチ

「暑い中いつも休まず手紙を受け取ってくれてありがとう。そう声を掛ける人間が居るかい?」

 

ぐだお

「子どもとかなら居るかもしれませんけど」

 

ダ・ヴィンチ

「うん。子どもや変わり者は置いといて、まず居ないね」

 

ダ・ヴィンチ

「逆に衝撃や経年劣化などで歪んでしまい、手紙が入らなくなってしまっていたとしようか」

 

ダ・ヴィンチ

「そうしたら逆に、何だこの役立たずはって悪態を吐く人は何人も居るだろうね」

 

ダ・ヴィンチ

「ポストなんだからポストの仕事は出来ていて当たり前。逆にその当たり前の仕事が出来ていないなら非難される」

 

ダ・ヴィンチ

「ここまでは解るかい?」

 

ぐだお

「はい」

 

ダ・ヴィンチ

「よろしい。では話を続けるね」

 

ダ・ヴィンチ

「それじゃあポストが凄いって褒められたり認められたりするにはどうすればいいかという話になるのだけど」

 

ダ・ヴィンチ

「例えば何か前までのポストにはなかった便利な新機能とかが追加されたポストが出てきたらどうだろう」

 

ダ・ヴィンチ

「それが可能かどうかは置いといて、切手を貼ってくれたり住所を書いてくれる便利機能が付いたポストだ」

 

ぐだお

「それは凄いですね」

 

ダ・ヴィンチ

「だろう? おそらく出た当初は誰もが凄いとそのポストに感嘆の声を上げるだろう」

 

ダ・ヴィンチ

「このポストって単語をさ。そのまま所長って単語に置き換えて考えればいい」

 

ダ・ヴィンチ

「カルデアの所長としての仕事や責務を当たり前のようにこなせていたかと言えば」

 

ダ・ヴィンチ

「申し訳ないが彼女はまだまだ未熟だったとしか言えない」

 

ダ・ヴィンチ

「それじゃあ悪態を吐かれる事はあっても、認められないのは当然だ」

 

ダ・ヴィンチ

「そして新しい機能の追加。所長に置き換えて考えるならカルデアの発展や進化かな」

 

ダ・ヴィンチ

「そういう偉業を成し遂げている筈もない」

 

ダ・ヴィンチ

「それじゃあ褒められる道理もないね」

 

ダ・ヴィンチ

「言っている事は解るかい?」

 

ぐだお

「解ります、けど――」

 

ぐだお

「いや、でも、それは何かおかしいです」

 

ぐだお

「確かに言っている事は正しく聞こえます」

 

ぐだお

「どう反論していいかも解らないです」

 

ぐだお

「けど、それは何か認めたくありません」

 

ダ・ヴィンチ

「大丈夫だよ。君のその気持ちは間違ってない」

 

ダ・ヴィンチ

「ただ、そここそが彼女の間違いだったんだから」

 

   ○   ○

 

ぐだお

「そここそが所長が間違い?」

 

ダ・ヴィンチ

「ああ、そうさ。逆に言えばそこ以外彼女に間違いと言える間違いはなかったんじゃないかとさえ思うよ」

 

ダ・ヴィンチ

「またポストに例えて話そうか」

 

ダ・ヴィンチ

「そうだね。手紙が入らない事はないが少し受け取り口が固くなってきている」

 

ダ・ヴィンチ

「見た目は所々、塗装が剥げていてボロボロ」

 

ダ・ヴィンチ

「そんなポストを想像してほしい」

 

ぐだお

「はい」

 

ダ・ヴィンチ

「さっきの物の見方をした場合、決してこのポストは褒められる事はない」

 

ダ・ヴィンチ

「むしろ使い難いポストだと非難される物だろう」

 

ダ・ヴィンチ

「けれど物の見方を変えてみたらどうか?」

 

ぐだお

「見方、ですか?」

 

ダ・ヴィンチ

「そう」

 

ダ・ヴィンチ

「このポストはその地区には一つしかないポストで、道路の傍にあるから何回かバイクに衝突されている」

 

ダ・ヴィンチ

「大雨で水に沈んだり、地震で根元が歪んだ事もある」

 

ダ・ヴィンチ

「けどそれでも壊れる事無く立ち続け、その度に修復されて今日までその役割を果たし続けてきた」

 

ダ・ヴィンチ

「そんなポストだって言われたらどうだい?」

 

ぐだお

「立派なポストですね」

 

ダ・ヴィンチ

「ああ、そうさ。立派なポストだ」

 

ダ・ヴィンチ

「ポストという役割として見ていた場合、ただの有象無象のポストでしかない」

 

ダ・ヴィンチ

「むしろ薄汚れただけの駄目なポストであるかもしれない」

 

ダ・ヴィンチ

「だけどね。そのポスト単体だけを見詰めてやれば」

 

ダ・ヴィンチ

「評価というのはここまで大きく変わるものなんだ」

 

ダ・ヴィンチ

「さて、またポストと所長を入れ替えて考えてみようか」

 

ダ・ヴィンチ

「彼女は決して手際や要領が良い所長ではなかった」

 

ダ・ヴィンチ

「その上、レイシフトの適正もない」

 

ダ・ヴィンチ

「カルデアの所長、という役割で見れば決してあの時点での彼女は認められないだろう」

 

ダ・ヴィンチ

「だが所長という仕事をこなす一人の少女として見たらどうだ?」

 

ダ・ヴィンチ

「まだ若く他にやりたい事や楽しみたい事があったかもしれない」

 

ダ・ヴィンチ

「けれど彼女はそれら一切を投げ捨て、ただカルデアの為だけに尽くしていた」

 

ダ・ヴィンチ

「誰からも認めてもらえてない。褒められてもない」

 

ダ・ヴィンチ

「それを解っていながら、それでも使命感か。責任感か」

 

ダ・ヴィンチ

「それともその先にこそ、自分が認められる道があると思っていたのか」

 

ダ・ヴィンチ

「そこまでは解らないし解ったように私が語る事でもない」

 

ダ・ヴィンチ

「けれど、それでも彼女や重責や業務から決して逃げ出そうとせず戦い続けた」

 

ダ・ヴィンチ

「それは本来なら褒められて然るべき事だった」

 

ぐだお

「そんなに頑張ってたのに、どうして彼女は誰からも褒められないなんて事に……」

 

ダ・ヴィンチ

「そここそが彼女が間違えていたからだよ」

 

ダ・ヴィンチ

「いいかい、彼女は誰からも認めてもらえなかった。褒められなかったって言っていたけれど」

 

ダ・ヴィンチ

「悲しい事はね。その誰からも、の中に自分自身すら含まれていた事なんだ」

 

ぐだお

「自分自身も?」

 

ダ・ヴィンチ

「ああ、そうさ」

 

ダ・ヴィンチ

「最初に言ったが、彼女自身が口癖のように言ってた言葉さ」

 

ダ・ヴィンチ

「カルデアの所長なんだから、アニムスフィアなんだから当然ってね」

 

ダ・ヴィンチ

「そりゃ所長なんだから所長の仕事をするのは当然だし、アニムスフィアだから優秀な魔術回路を継いでいるのは当然さ」

 

ダ・ヴィンチ

「だけどね。その所長という職務を未熟なりにこなせるのも、様々な魔術を行使出来るのも当然かっていえば決してそうではないんだ」

 

ダ・ヴィンチ

「そこにオルガマリーという一個人の練磨と苦労があって初めて、それらはなせるんだ」

 

ぐだお

「なるほど」

 

ダ・ヴィンチ

「そこ等辺を一緒に考えてしまっていた事が解る話が丁度君と彼女の間にはある」

 

ダ・ヴィンチ

「居眠りしていた君を問答無用で引っぱたき、色々と言ったそうだが」

 

ダ・ヴィンチ

「その注意内容を思い出して欲しい」

 

ダ・ヴィンチ

「彼女は君自身がどんな努力や行動をしたかより、才能にばかり拘っていた筈だ」

 

ダ・ヴィンチ

「けど仮に、そうだね――」

 

ダ・ヴィンチ

「素晴らしいレイシフトの素養があるのに、そんな態度では宝の持ち腐れね」

 

ダ・ヴィンチ

「優れた素養も本人の努力次第で塵芥に。逆にたとえ素養で劣っていても努力を怠らず知識と知恵を振り絞ればそれなりの成果は出るものよ。栄えあるカルデアの一員なら自覚と向上心を持ちなさい」

 

ダ・ヴィンチ

「と才能よりも何よりも本人の努力や功績を認める内容で注意するような人物であれば、何人かは彼女を妬んだり悪態を吐いただろう」

 

ダ・ヴィンチ

「それでもこのカルデア、才能もあるが同時に技術を積み上げてきた努力を知る者の多いこの場所なら」

 

ダ・ヴィンチ

「多くの者が彼女の想いとそれまでの努力に気付き、敬意を持って接する事になっていただろうね」

 

ダ・ヴィンチ

「さすがに最初の印象も大きく左右される部分でもあるからそうだね」

 

ダ・ヴィンチ

「スタッフ達への最初の挨拶をそうだね――」

 

ダ・ヴィンチ

「父の後を継ぎこそしましたが、まだまだ私は至らない部分が多く、不満がある方が多いと思います。そんな私を信じて付いてきて欲しいとは言えません。私自身、自分がどこまで出来るか解っていませんので」

 

ダ・ヴィンチ

「ですがこのカルデアが機能しなくなれば、世界は文字通り滅亡する事さえあり得ます。ですからどうか、未熟な私に力を貸して頂けませんか」

 

ダ・ヴィンチ

「もしこんな形で、彼女が意地も見栄も張らず、自分自身の力と立場を認めて受け入れ、素直に挨拶をしていればきっとほとんどのスタッフが彼女を認め褒めてくれただろうね」

 

ぐだお

「どこの世界の所長!?」

 

ダ・ヴィンチ

「そんなに驚く事かい? まあ確かに彼女の刺々しい態度から考えると想像し難いかもしれない」

 

ダ・ヴィンチ

「けれどね、彼女自身が誰よりも自覚していた筈さ」

 

ダ・ヴィンチ

「自分じゃまだまだ未熟、このカルデアの長が務まるほどの力はないってね」

 

ダ・ヴィンチ

「それを自覚していながら自分を未熟だと認められないからこそ、彼女は強い態度を取るしかなかった訳だしね」

 

ぐだお

「確かにそうなのかもしれません」

 

ダ・ヴィンチ

「納得出来たのなら、そんな自分を認めて身の丈にあった態度を取る綺麗なオルガマリー所長とスタッフの関係でも想像してみるといい」

 

ダ・ヴィンチ

「きっと職員達の多くは口を揃えて言ったんじゃないかな」

 

ダ・ヴィンチ

「『確かに前の所長に比べたらまだまだ頼りなくはあるけど、物凄く頑張っているよね』、とね」

 

ダ・ヴィンチ

「これも想像出来ないかい?」

 

ぐだお

「……いえ」

 

ダ・ヴィンチ

「不思議な話だろう?」

 

ダ・ヴィンチ

「別に彼女の魔力回路が強くなった訳でも、カルデアを発展させた訳でもない」

 

ダ・ヴィンチ

「レイシフト適性が増えたという訳でもない」

 

ダ・ヴィンチ

「ただ態度が違うだけだ」

 

ダ・ヴィンチ

「持って生まれた才能も現在の能力も、なし得た功績も何一つ変わってない」

 

ダ・ヴィンチ

「けれど、たった一つ。態度さえ違っていれば彼女が本当に欲しかったものは手に入っていたんだ」

 

ぐだお

「そう、なのかもしれません」

 

ダ・ヴィンチ

「だから私は言うのさ」

 

ダ・ヴィンチ

「彼女は、オルガマリーという少女は。努力の仕方を、その方向だけを間違えてしまった」

 

ダ・ヴィンチ

「カルデアの所長としてでなく、自分自身や努力を見て欲しいのなら」

 

ダ・ヴィンチ

「本人こそが誰よりも自分とその努力を見詰め、認めないといけなかった」

 

ダ・ヴィンチ

「背伸びも虚勢も張らない自分。所長として見れば決して優秀とは言えない」

 

ダ・ヴィンチ

「けれど責任感と努力ならば他人に誇ってもいいくらいに頑張っていた自分を」

 

ダ・ヴィンチ

「彼女自身が誰よりも肯定してやらないといけなかった」

 

ダ・ヴィンチ

「勿論、努力していたという良い側面だけでなく未熟だったという足りてない部分も含めてね」

 

ダ・ヴィンチ

「それだけで彼女の願いは叶っていただろう」

 

ぐだお

「どうして……」

 

ぐだお

「そこまで解っていたならどうして伝えてあげなかったんですか」

 

ダ・ヴィンチ

「簡単な話さ」

 

ダ・ヴィンチ

「一番はそこまで解っていなかったからだよ」

 

ぐだお

「それはどういう――」

 

ダ・ヴィンチ

「私はね。どこぞの探偵みたいに普段から他人にそこまで興味がある訳ではないんだ」

 

ダ・ヴィンチ

「酷い話だが、カルデアが機能していれば所長自身の事なんて割とどうでもよかったのさ」

 

ぐだお

「本当に酷い話だ……」

 

ダ・ヴィンチ

「仕方ない。私は彼女のお守りや導き手としてカルデアに居た訳ではないからね」

 

ダ・ヴィンチ

「私はサーヴァント。仕える者でしかないのさ。求められていない役割までこなす必要はない」

 

ぐだお

「確かにそうなのかもしれないけど……」

 

ダ・ヴィンチ

「まあそんなのは建前で、私は私自身が興味さえ持てば何でも調べたり作ったりしたくなるんだけどね」

 

ダ・ヴィンチ

「逆にそもそも興味がもてない事は全然駄目」

 

ダ・ヴィンチ

「そして悲しいかな。私は彼女にさほど興味を持てなかったんだよね」

 

ぐだお

「ひどい」

 

ダ・ヴィンチ

「うむ。我ながら酷いとは思う」

 

ダ・ヴィンチ

「だが興味を持つかどうかは私自身の感性や直感なのでどうしようもない」

 

ぐだお

「けど、それじゃあ今はどうして?」

 

ダ・ヴィンチ

「それを君が聞くのかい?」

 

ダ・ヴィンチ

「暗い顔をしている君に興味が湧いた。君の表情を明るくするにはどうすればいいのだろうと思った」

 

ダ・ヴィンチ

「だから思い出して一生懸命考えているだけだよ」

 

ぐだお

「……」

 

ダ・ヴィンチ

「意外だね。私にこういう言葉を言われても君は照れるんだね」

 

ぐだお

「そりゃあダヴィンチちゃんは変わった所はありますけど、美人ですし」

 

ダ・ヴィンチ

「ふふ。いいんだよ、もっと褒めてくれて」

 

ぐだお

「と、とにかく話を戻してですね……」

 

ダ・ヴィンチ

「おっと。君が珍しく私の容姿を褒めるものだから少し脱線しまったよ」

 

ダ・ヴィンチ

「もう少し君の照れた姿を見ていたい気もするが話を戻そうか」

 

   ○   ○

 

ダ・ヴィンチ

「確かに彼女は誰にも認められる事も、褒められる事もなくカルデアスに飲み込まれてしまった」

 

ダ・ヴィンチ

「私がもう少し気に掛けていれば結末は違っていただろう」

 

ダ・ヴィンチ

「けれどね、私は彼女の間違いを過去に正す機会がなくてよかったと今になったら思うんだ」

 

ぐだお

「ダ・ヴィンチちゃん!?」

 

ダ・ヴィンチ

「ああ、誤解しないでくれたまえよ。彼女が努力や苦労を認められず、空回りし続けてほしいって意味じゃあない」

 

ダ・ヴィンチ

「もし彼女がそうやって多くのスタッフに認められているような所長であったなら、あの事件は起きなくなるだろうと思ってね」

 

ぐだお

「あの事件?」

 

ダ・ヴィンチ

「最初の爆発事件さ。多くのスタッフとマスターが倒れ、君がレイシフトに赴く切っ掛けとなった事件だ」

 

ぐだお

「あの事件が起きないのなら良い事なんじゃ……」

 

ダ・ヴィンチ

「問題はね、そう単純じゃないんだ」

 

ダ・ヴィンチ

「あの事件自体はね。似たような事件が必ず起きる」

 

ダ・ヴィンチ

「ゲーティアが気の遠くなるような時間から入念に準備していた計画だ。起きない訳がないんだよ」

 

ダ・ヴィンチ

「今回みたいに一斉に全滅させられるような事件じゃなく、少しずつ暗殺だろうと何だろうと」

 

ダ・ヴィンチ

「必ずカルデアを停止させる、あるいはマスター候補達を根絶やしにする事件は必ず起きてしまう」

 

ダ・ヴィンチ

「今回、ああいう形で起きたのはね。所長がレフに頼りっきりだったからさ」

 

ダ・ヴィンチ

「いいかい。どれだけ周到に計画を練って、どれだけ手回しをしていたとしてもね」

 

ダ・ヴィンチ

「もし所長とスタッフの間にお互い任せきりにならない、正しい信頼関係があったのなら。あの時とは比べ物にならないほど何度も何度も厳重なチェックが各所で行われていただろう」

 

ダ・ヴィンチ

「不慮の事故や事件に備え、リスク回避の為にマスターを一斉に集めず分けたかもしれない」

 

ダ・ヴィンチ

「何せ人類滅亡の危機なんだ。どれだけ用心に用心を重ねても足りないなんて事はない」

 

ダ・ヴィンチ

「しかし、そんな事になったらゲーティア側に取ってはさ。やり難い訳だ」

 

ダ・ヴィンチ

「責任者である所長がレフ一人に頼りきりになる。あの状態がやりやすかったからこそゲーティア達は所長に何もしなかった」

 

ダ・ヴィンチ

「逆に言うなら、もし所長がスタッフ達を信頼し、信頼されるようになっていたなら」

 

ダ・ヴィンチ

「彼女は計画の障害になると判断され早々に殺されてしまっていただろう」

 

ダ・ヴィンチ

「つまりあの状態こそが一番彼女が長生き出来る道だったと言えるんだ」

 

ぐだお

「そんなのってない……」

 

ぐだお

「ツンケンしたままじゃ誰にも認めてもらえない」

 

ぐだお

「認めてもらえるようになったら殺される」

 

ぐだお

「そんなのって」

 

ぐだお

「あまりにも救いがなさ過ぎる……」

 

ダ・ヴィンチ

「救い、か……」

 

ダ・ヴィンチ

「……救いなら。あったさ」

 

ダ・ヴィンチ

「救いなんて言うにはちっぽけで決して君は認めないかもしれない」

 

ダ・ヴィンチ

「けれど間違いなく救いはあったよ」

 

ぐだお

「そんなの信じられません」

 

ぐだお

「今でも覚えています」

 

ぐだお

「カルデアスに飲み込まれた時の彼女の表情と叫びを」

 

ぐだお

「少しでも救いがあった人がああいう事を最後に言うとは思えません」

 

ダ・ヴィンチ

「ああ、そうだろう」

 

ダ・ヴィンチ

「彼女はカルデアスに飲み込まれる時、ようやく自身の願いを口にした」

 

ダ・ヴィンチ

「虚勢も張らず建前で本心を隠す事もなく」

 

ダ・ヴィンチ

「ただ認められたかった。褒められたかったという心の底からの願いをさ」

 

ダ・ヴィンチ

「もし本当の意味で彼女が救われたというなら、そういう相手に出会い、その実感を得た時」

 

ダ・ヴィンチ

「その願いが叶った時だけだろう」

 

ダ・ヴィンチ

「けれどその願いはね。誰かが手を差し伸べたから。あるいは彼女が何かを成したから」

 

ダ・ヴィンチ

「そんな形で、ある日突然叶う系統の願いじゃないんだ」

 

ダ・ヴィンチ

「彼女の事を所長としてじゃなく一個人として見ている相手が居て、同時に彼女がその相手の事を認めて心を許し」

 

ダ・ヴィンチ

「そして彼女の傍にその相手が居続ける事で初めていつか実感出来る日が来る」

 

ダ・ヴィンチ

「そういう系統の願いだ」

 

ぐだお

「せめてそういう相手が居たなら……」

 

ダ・ヴィンチ

「居たんだよ。たった一人だけ、それら全てを満たした人物が」

 

ダ・ヴィンチ

「褒めこそしなかったかもしれない」

 

ダ・ヴィンチ

「けれど確かにその人物だけが彼女の事を見ていた」

 

ダ・ヴィンチ

「偉大なカルデアの所長という役割でなく、優秀な魔術回路を持つアニムスフィアの血族という才能でもなく」

 

ダ・ヴィンチ

「ただオルガマリー・アニムスフィアという一人の少女の事を見ていた」

 

ダ・ヴィンチ

「虚勢を張っているだけの、か弱い娘として彼女の事を見ていた」

 

ダ・ヴィンチ

「誰も近寄らなくなったような彼女に、からかったり冗談を言ったり普通の娘のように接し続けた」

 

ダ・ヴィンチ

「そして彼女も最初こそ何の功績もなければ、秀でた才能も無いその人物を決して認めなかったが」

 

ダ・ヴィンチ

「その人物自身を間近で見続ける事で、ようやくその人間を認め始めていたよ」

 

ぐだお

「そんな人が居たんですか……」

 

ダ・ヴィンチ

「ああ、居たんだよ。一人だけ」

 

ダ・ヴィンチ

「カルデアという組織の偉大さも崇高さも一切知らず、人理焼却の深刻さも全く解らない」

 

ダ・ヴィンチ

「レイシフトの凄さどころか、そもそもレイシフトが何かもよく解ってない」

 

ダ・ヴィンチ

「大事な会議では居眠りする始末」

 

ダ・ヴィンチ

「そんな立場も事態も何もかも解っていなかったからこそ」

 

ダ・ヴィンチ

「目の前に居た少女を等身大のままで見れた人物が一人だけ居たんじゃないかい?」

 

ぐだお

「それって――」

 

ダ・ヴィンチ

「さすがにここまで言えば解るみたいだね」

 

ダ・ヴィンチ

「そうさ。君だよ」

 

ダ・ヴィンチ

「彼女は最後の最後になって、彼女が望んでいたものに」

 

ダ・ヴィンチ

「自分という存在を認めてくれる相手に出会えていたのさ」

 

ぐだお

「でも、そんなの……」

 

ぐだお

「本人が気付いてないなら何の意味もないじゃないですか……」

 

ダ・ヴィンチ

「かもしれない」

 

ダ・ヴィンチ

「けどね。酷な事を言うようだけど」

 

ダ・ヴィンチ

「救ってやろうってのがある意味ではおこがましくもあるのさ」

 

ダ・ヴィンチ

「人、一人の人生だよ」

 

ダ・ヴィンチ

「それをぽっと出の人間がひょいっと手を差し伸べただけで救えてしまう」

 

ダ・ヴィンチ

「そんなに彼女の人生、価値観、積み重ねてきた想いってのは安くて軽いものかい?」

 

ダ・ヴィンチ

「それこそ彼女を馬鹿にしているというものさ」

 

ダ・ヴィンチ

「所長としては決して完璧とは言い難かったかもしれない」

 

ダ・ヴィンチ

「アニムスフィアとしてまだ何も成してなかったかもしれない」

 

ダ・ヴィンチ

「けれどね。彼女は彼女なりに頑張っていた」

 

ダ・ヴィンチ

「そして一度だって彼女は責任から逃げようとはしなかった」

 

ダ・ヴィンチ

「思い出してみたらいい」

 

ダ・ヴィンチ

「君は、ちょっと普通とは違うから想像し難いかもしれないけれど」

 

ダ・ヴィンチ

「突然レイシフトして化け物だらけの場所に放り出されたんだ」

 

ダ・ヴィンチ

「それこそ凡百の人間なら、私がどうしてこんな目に。私は何も悪くないのに」

 

ダ・ヴィンチ

「そうやって現実を見ようとせず逃げ出したがっても、何もおかしくはないのさ」

 

ダ・ヴィンチ

「けれど彼女は誰よりも現実を理解し、絶望的な状況だと解っていたからこそ怯えこそした」

 

ダ・ヴィンチ

「それでも決して現実からは目を背けようとしなかった」

 

ダ・ヴィンチ

「マスター達の冷凍保存の件に関してもそうさ」

 

ダ・ヴィンチ

「それこそ自己保身しか考えないような人間なら」

 

ダ・ヴィンチ

「そんな事をして私の立場はどうなる。お前らに責任が取れるのか」

 

ダ・ヴィンチ

「と怒鳴り付け、決して冷凍保存なんて認めずマスター達を見殺しにして」

 

ダ・ヴィンチ

「もはや何の意味もないと言っても過言じゃなくなった将来の出世や立場の為に保身に走っただろう」

 

ダ・ヴィンチ

「けど彼女は迷わず冷凍保存を決意し、言ったね」

 

ダ・ヴィンチ

「生きてくれさえいればいくらでも申し開きは出来るって」

 

ダ・ヴィンチ

「彼女は事故だから自分に責任がないなんて一瞬も考えてなかった」

 

ダ・ヴィンチ

「不覚にもそこで初めて知ったよ」

 

ダ・ヴィンチ

「彼女が所長として、責任者として。誰よりも誇りと自覚を持っていた事をね」

 

ぐだお

「ダ・ヴィンチちゃん……」

 

ダ・ヴィンチ

「そんな彼女の何もかも無視して」

 

ダ・ヴィンチ

「哀れで救いのない人生だったね」

 

ダ・ヴィンチ

「なんて私には到底言えないよ」

 

ぐだお

「……」

 

ダ・ヴィンチ

「それこそ彼女の間違いはね。さっきも言った通り。自分自身さえ、自分の成功も失敗も努力も禄に認めていなかった事だけなんだ」

 

ダ・ヴィンチ

「カルデアの所長なんだから。アニムスフィアなんだから」

 

ダ・ヴィンチ

「出来て当然。出来なかったら自分が悪い」

 

ダ・ヴィンチ

「そんな言葉で他人も、自分自身さえも誤魔化して」

 

ダ・ヴィンチ

「それなのに自分自身の頑張りや努力を見て褒めて欲しい、なんて言われたって無理な話なのさ」

 

ダ・ヴィンチ

「もし私が彼女に対して憐れむ事があるなら一つだけだよ」

 

ダ・ヴィンチ

「今もこうして彼女の事を思い、悲しんでくれる君が居る」

 

ダ・ヴィンチ

「レフに対して人理焼却側の手先じゃなく、真っ先に所長の仇と叫んだ君の姿」

 

ダ・ヴィンチ

「その事を知らない事くらいさ。憐れむ事があるならね」

 

ぐだお

「慰めてくれてます?」

 

ダ・ヴィンチ

「そういう面がある事は否定しないけど、全て本心だよ」

 

ダ・ヴィンチ

「カルデアの所長としてしか彼女を見ず、カルデアの所長以上には彼女の事を必要としなかった」

 

ダ・ヴィンチ

「そんな私やスタッフ達が今更どうこう言っても本当に今更が過ぎる」

 

ダ・ヴィンチ

「けど君だけはそうじゃない」

 

ダ・ヴィンチ

「まあだからこそ悲しんだり寂しがるのも仕方ないとは思うけど」

 

ダ・ヴィンチ

「それでも所長の件に関してはさ、君だけはもう少し胸を張っていて欲しいと思うんだよ」

 

   ○   ○

ダ・ヴィンチ

「ところで話は変わるんだが」

 

ダ・ヴィンチ

「一つ真面目に気になったのだけれど」

 

ダ・ヴィンチ

「違うというのは解り切っているけど聞いてみたいな」

 

ダ・ヴィンチ

「君はマゾヒストだったりするのかい」

 

ぐだお

「……違います」

 

ダ・ヴィンチ

「しかしそうでないなら君の所長への態度は中々に理解し難いものがある」

 

ダ・ヴィンチ

「君と所長との付き合いは驚くほどに短い」

 

ダ・ヴィンチ

「しかも出会いは最悪と言っていい印象だった筈さ」

 

ダ・ヴィンチ

「おまけに嫌味など言われて詰られこそしたが、ほとんど優しくされてもいない」

 

ダ・ヴィンチ

「それなのに君がそこまで彼女の事を悼む理由はなんだい?」

 

ダ・ヴィンチ

「こういう言い方もどうかとは思うが」

 

ダ・ヴィンチ

「異性として惹かれる部分でもあったのかなって思ってね」

 

ぐだお

「違います」

 

ダ・ヴィンチ

「バッサリ言ったね。それはそれでどうかと思うが」

 

ぐだお

「女性として魅力がなかったのかって言ったら綺麗な人だったとは思いますけど」

 

ダ・ヴィンチ

「けど、なんだい?」

 

ぐだお

「多分、そういうんじゃないと思います」

 

ダ・ヴィンチ

「ふむ」

 

ぐだお

「ただ、どうしても忘れられないだけなんです」

 

ぐだお

「カルデアスに飲み込まれていった時の表情」

 

ぐだお

「誰にも褒めてもらえてないって叫んだあの声が」

 

ダ・ヴィンチ

「トラウマみたいなものか」

 

ぐだお

「かもしれません」

 

ダ・ヴィンチ

「もし、仮にもしだよ。あの日のあの瞬間に戻れたとして」

 

ダ・ヴィンチ

「君はまた所長に手を伸ばすのかい?」

 

ダ・ヴィンチ

「助ける事なんて出来ない。一緒になって無駄死にするだけ」

 

ダ・ヴィンチ

「それが解っていても、また手を伸ばすのかい」

 

ぐだお

「……それは」

 

ダ・ヴィンチ

「よく考えて欲しい」

 

ダ・ヴィンチ

「今度こそマシュの止める手が間に合わないかもしれない」

 

ダ・ヴィンチ

「そうしたら君はただ所長と共にカルデアスに飲み込まれるだけ」

 

ダ・ヴィンチ

「犠牲者が一人増え、最後のマスターを失い人類は滅びる」

 

ダ・ヴィンチ

「それが解っていても君は所長に手を伸ばすと思うかい?」

 

ぐだお

「多分、伸ばしちゃうんじゃないかと思います」

 

ダ・ヴィンチ

「ほう」

 

ぐだお

「今更って言われそうですけど人理焼却とか実はよく解ってないんです」

 

ぐだお

「解ってないというよりも、実感が湧かないって言った方が正しいと思います」

 

ぐだお

「戦ったのはマシュやサーヴァント、色々考えてくれたのはロマンやダ・ヴィンチちゃん。レイシフトだってスタッフ達皆の協力があって出来た事です」

 

ぐだお

「自分が何かをしたっていう印象があんまりないかな」

 

ダ・ヴィンチ

「そこは誇ってくれたまえよ」

 

ダ・ヴィンチ

「私を含めスタッフ達の誰もが認めている」

 

ダ・ヴィンチ

「君こそが自ら死地に赴き、あらゆる困難を潜り抜け、世界を救った立役者だとね」

 

ぐだお

「それはありがとうございます」

 

ダ・ヴィンチ

「いや、お礼を言うのはこちらの方なのだけどね」

 

ぐだお

「でも、それを差し引いてもそんな大それた事をしたって実感がないんですよ」

 

ぐだお

「ただ目の前で泣いている人、起きている事件、助ける求める声」

 

ぐだお

「そういうのを見捨てられなくて首を突っ込んで、死なないように頑張っていたら。いつの間にか少しずつ何かが進んでいって」

 

ぐだお

「そういうのを繰り返してたら、気付いたら人類が救われていた」

 

ぐだお

「そんな風にしか思えなくて」

 

ぐだお

「いつも目の前の事で精一杯で、人類を救おうなんて思った事は一度もなかったので」

 

ダ・ヴィンチ

「つまりまた目の前で所長が困っていたら、何も考えず自分は手を伸ばしてしまうって言いたいのかい」

 

ぐだお

「そうですね」

 

ダ・ヴィンチ

「その結果、人類が滅亡してしまってもかい?」

 

ぐだお

「救えちゃった今回が出来過ぎだっただけで、多分本当ならどっかで死んでたのが普通だと思うので」

 

ぐだお

「そのどっかで死んだのが所長の時になるってだけかなあって」

 

ダ・ヴィンチ

「なるほどね」

 

ダ・ヴィンチ

「でもそうなっても所長はきっと君に感謝なんてしないよ」

 

ダ・ヴィンチ

「馬鹿なの!? アナタ状況解ってる!? アナタが死んだら人類が終わるのよ!?」

 

ダ・ヴィンチ

「とか、そんな事言うだけだと思うよ」

 

ぐだお

「確かに言いそう……」

 

ダ・ヴィンチ

「それで君はいいのかい? それでも手を伸ばすのかい?」

 

ぐだお

「うん。やっぱり手が届く場所に居るのなら見捨てられないだろうなって思うので」

 

ぐだお

「それに何もかも後悔したり絶望して叫んでるよりは、そうやって悪態でも付いてくれた方がまだ嬉しいかなあ」

 

ダ・ヴィンチ

「なるほど」

 

ダ・ヴィンチ

「人類の救世主になる為に生きるよりも、ただ目の前の少女の絶望を払う為だけに死ぬ、か」

 

ダ・ヴィンチ

「ふふ。そこまで言ってもらえるとは少し羨ましく思うね」

 

ダ・ヴィンチ

「けど、うん。大体思っていたとおりというかそれ以上の言葉が聞けたよ」

 

ぐだお

「思っていたとおり?」

 

ダ・ヴィンチ

「理解し難いとは言ったけれど、全く理解出来ないとも予想出来ないとも言ってないさ」

 

ダ・ヴィンチ

「どうしても君の口から彼女への本心を聞いておきたくてね」

 

ダ・ヴィンチ

「うん」

 

ダ・ヴィンチ

「本当に彼女に対して憐れむ事は一つだけかな……」

 

ぐだお

「ダヴィンチちゃん?」

 

ダ・ヴィンチ

「この音声を聞けてない事だけは本当に勿体ないと思うよ」

 

ぐだお

「レコーダー!?」

 

ダ・ヴィンチ

「何の為に工房に連れて来たと思っているんだい? 今の会話を録るために決まってるじゃないか」

 

ぐだお

「ちょっ。消してください」

 

ダ・ヴィンチ

「はっはっは。それは出来ない」

 

ダ・ヴィンチ

「一見普通のレコーダーに見えるが、上書きどころか消去すら出来ない。録音と再生しか出来ない特注品さ」

 

ダ・ヴィンチ

「しかもよほどの魔力でもぶつけなきゃ傷一つ付かない耐久性まである」

 

ぐだお

「酷い。何でこんな事を……」

 

ダ・ヴィンチ

「いつか彼女に聞いてもらう為さ」

 

ダ・ヴィンチ

「彼女の霊基はカルデアスに飲み込まれてしまった。消滅してしまったのか、それとも漂い続けいるのか。現在の状態は解らない」

 

ダ・ヴィンチ

「けどね、解らないって事はまだ残っている可能性もあるし、残っているならどうにかすれば救出出来るかもしれない」

 

ダ・ヴィンチ

「その時に聞かせたい言葉の一つや二つ、用意しておきたいと思ってね」

 

ぐだお

「言ってくれたらこんな隠し録りなんてしなくても協力したのに……」

 

ダ・ヴィンチ

「そうしたら本音を話してはくれないだろう?」

 

ダ・ヴィンチ

「私は彼女に本心から彼女の事を思っている相手の言葉を残したかったのさ」

 

ぐだお

「ダヴィンチちゃん……」

 

ダ・ヴィンチ

「ふふ、ようやくいつもの表情に戻ってきたね」

 

ダ・ヴィンチ

「それじゃあそろそろ手伝いに戻るといい。もしかしたらスタッフの誰かが探しているかもしれないしね」

 

ぐだお

「はい、ありがとうございました」

 

ダ・ヴィンチ

「どういたしまして」

 


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