人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
【いるはずがないのだ!!ここにいるはずがない!!】
【超越したというのか!?死を!普遍の真理を!!何故、どうやっ───】
【…まさか】
【まさか、まさか、まさか!?貴様か!?貴様が!?ありえん、ありえん!!あり得てはならない!!】
【貴様は過去を!!【死】すらも超えようというのか!?そんな事が許されるものかァァァァァァ!!】
その時
【ヒ──────】
アダムが、捉えるはずのない此方を見据えており、
その風貌は。
【ヒィッ───】
青筋を浮かべ。絶対零度の殺意に満ちた。
憤懣の相に染まっていた。
【ヒィィイィイィイィイィイッ!?ば、化け物…!】
【この!化け物めぇえぇっ──────!!】
『あの時以来の、全力の本気で──!アダム先生を護りますッ!』
高らかに盾を構え、周囲にユメは絶対防御領域を展開し最強クラスの生徒三人を相手取る。
それぞれネルの影は立体的3次元強襲を、ヒナは圧倒的な弾幕による超絶制圧を、ツルギは電撃的吶喊をユメに仕掛ける。
『やらせない…!絶対に!』
オシリスの権能、かつての神々の王たる神秘はアビドス…
否。キヴォトス最高の堅牢さとして顕現した。ユメという少女を象り。
「これは──!」
アダムをして、それは感嘆たる永久防御機関であった。まず防護壁が全てを阻み、防ぎ切る。
その衝撃は、なんとエネルギーとしてシールドに吸収され、範囲内の全てに活力として与えられ再分配される。アダムの受けた倒壊の掠り傷が、またたく間に治癒される。
そして、範囲内の人間の神秘と生命力がシールド防護壁の強度に変換され、完璧な防護をさらに盤石にする。
攻撃すればするほど、防御と回復が一体となり味方を守護し強化し、回復する。
最強クラスの生徒が束になっても、微塵も揺らがぬ神の領域。
防御、防護のスキルとしての窮極が…
ホシノと双璧を成す、最高戦力の姿が此処にあった。
〜
【おのれぇえっ!!大人しくセトもろとも死んでいれば良かったものをぉ!!】
【だが、だがしかしだ!!貴様に刻まれたセトの憤怒、けして安くはあるまい!!】
【わかる、解るぞぉ…!貴様の身を蝕む神の怒りが!!オシリスとは、セトに八つ裂きにされた神の名だ!!】
【冥府が貴様の似合いの地だ!さぁ殺せ殺せ!!黄昏のオシリスを殺せェ!!】
【やはり最後は、死が全てを呑み込むのだァ!!】
〜
『か、ふっ───!!』
防護していたユメが、突如として苦しげに血を吐くのをアダムは見た。
「ユメ!?」
アダムの声に、ユメは振り向き笑う。
『だ、大丈夫ですよぉ〜!ちょっと、張り切りすぎちゃったたけで…』
だが、その吐血と共にアダムはユメの身体を蝕むように風と雷が起こるを見定めた。
「ホシノの言っていた、セトとの相打ち…その神秘が爪痕となって残っているのか…!」
かつてアビドスを護るため、ユメはセトと真っ向から戦い、相打ちにて退けた。
セトは退けられたが、致死の相性たるユメもその生は終わった。
魂にすら、アビドスのセトは食い込みユメを縛っている。
【【【!!】】】
強度が揺らいだ防護。拮抗を許す程彼女たちは甘くない。
即座にヒビが、空間を覆っていく。
『かふっ、けふっ─────!!あああああっ─────!!』
それでも。
それでもユメは、盾を護る手を緩めない、手放さない。
『あああああっ─────!!』
普段の柔らかな女神のような物腰とは、想像すら付かない。
「ユメ……!」
今度こそ。
今度こそと、ユメは奮い立つ。
『何も──』
「!」
『何も、護れなかったんですっ……!!私、私はっ…!!』
ユメは、血を吐くように。
いや、魂を引き裂くように叫んだ。
〜
『理解してください、ユメさん。あなたの望む方法でのアビドス再建は、もう不可能なのです』
『私は、あなたとは違うやり方でアビドスを再建させる。その為には必要なのです。奇跡を現実に落とし込める超常の存在』
『そう──超人が。私は必ず、それになってみせる…!』
私が不甲斐ないから。
〜
『いつもいつも夢みたいな事ばかり言って、少しは現実を見たらどうなんですか!』
『もう無理なんですよ!!砂祭りも、アビドスの復活も何もかも!!』
『そんなの夢物語だなんて、先輩が一番解ってるんじゃないですか!!』
私が頼りないから。
〜
『アビドス高校…?あれ、無くなったって話だろ?』
『それが、生徒会長を押し付けられた生徒が一生懸命足掻いてるんだって』
『…馬鹿みたい。砂漠になって、生徒もいなくなって。何ができるっていうの?』
『───砂祭り、見たかったのに…』
私が、弱いから。
私が、私が、私が、私が─────
〜
【【【【【アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーッッッ!!!!】】】】】
とても怖い神様が来た時も、無我夢中で戦ったけれど。
一生懸命、戦ったけれど。どうしようもできなくて。
何も、護れなくて。
『先輩!先輩、先輩!!』
あぁ、ごめんね。ホシノちゃん。
『こんなのってないですよ…!なんで…!!』
ごめんね、ごめんなさい。ホシノちゃん。
何も護れなくて、ごめんね。
何もできなくて、ごめんね。
ホシノちゃんが泣いている。
あぁ、きっと私に付いてきた事を悔やんでいるんだ。
私が、夢物語ばかり追いかけるどうしようもない先輩だったから。
ホシノちゃんは、私を責めているんだ。
ごめんね、ごめんね。
ごめんなさい。ごめんなさい。
何もできなくて、何も護れなくて……。
……──生まれてきて、ごめんなさい…。
〜
『あああ、あああああっ──────!!』
胸に沸き起こる絶望を振り払うように、三人の生徒と拮抗するユメ。
だが、胸に打ち込まれた絶望という楔はとてつもなく大きい。
びしり、びしりと。
『あぁ、ああっ…!!』
ユメの心のように、小さく小さく、ヒビ割れていく。
『ひっ、ひっく──ひっ……!!』
また護れない?
また護れないの?
ようやく見つけてくれた『先生』を。
私を生徒にしてくれた、先生を。
また…
私は、護れないの…?
〜
【イーッヒヒヒヒッ!!いいぞ!いいぞぉ梔子ユメェ!!】
【何も護れなかった!!お前は何も、何も出来なかったのだ!!】
【何がオシリスだ、何が冥府の神だ!!あらゆる負債を押し付けられたゴミ溜めの分際で笑わせる!!】
【さぁ押し潰せ!!役立たずの影ども!!それくらい、は──】
【──何を】
【何を、何をしている!?やめろ、近づくな!!】
【オシリスに近付くな、アダム・カドモン──!!】
〜
「───すまなかった。ユメ」
その時。
優しく、暖かく、力強い手が。ユメに添えられた。
「誰もが君に助けを求めた。誰もが君に救いを求めた」
そっと添えられた手。
力強く感じる、逞しい温もり。
「だが───誰もが『君の救いにはなろうとしなかった』。当然だ。君も皆も、成長途中の子供なのだから」
『ぁ───』
初めて、ユメは味わった。
自分がやらなきゃ。自分が護らなきゃ。自分がなんとかしなきな。
ずっとそうやって奮ってきた。
でも、駄目だった。何も護れなかった。
「もう、誰かの為に何かを成そうとしなくていい」
もういいんだと、優しく言葉をかけてもらえた。
なんとかしろ、どうにかしろ、やってみせろ、できるでしょ?
心を刺す言葉とは、まるで違う。
「君は、私が救う。私が君の、夜明けとなってみせる」
挫けそうな心が、暖かく浮かぶように。
「教えてくれ、ユメ」
君は───
君は、誰かに、どうしてもらいたい?
『─────っ!』
ユメは、言葉を積もらせた。
ずっとずっと胸にしまっていた言葉。
なんとかしなきゃ、どうにかしなきゃ、やってみせなきゃ、できなくちゃ。
ずっとずっと、口にするのは許されなかった言葉。
『───────けて』
この言葉を、口にするのは許されなかった。
皆が助けて欲しいから。皆を助けてあげたいから。
『たす、けて────』
逃げちゃだめ。負けちゃだめ。私がなんとかしなきゃ。
私が、私が、私が、私が。
助けて─────。
『助けて……!』
助けて、助けて…!
たった一回でいいの。たった一度でいいの。
それだけで、私はきっと救われる。
たった一度だけでいい。
だから、どうか────。
『───私を、助けて!!アダム先生───!!』
涙を浮かべ、喉を震わせ、みっともなく。
でも、ずっとずっと言えなかった、言いたかった言葉。
それを。
「────────当然だ!!」
長い長い黄昏を越えて。
掴み取ることの出来る『大人』が、現れたのだ。
「行くぞ、ユメ!」
アダムは自らの手を、ユメの背中に叩きつける。
『ひゃいっ!?』
ばるんと揺れるイシスの恵みに目をくれず、アダムはユメを助ける最適解をもたらす。
「私の生徒から、毒牙を抜いてもらうぞ!戦神よ!!」
それは、ユメの身体に巣食うセトの呪い。
剥き出しの神秘を…
人の身で、受け止めたのだ。
〜
【できるわけがないっ!!できるわけが、できるわけがないっ!!】
【神秘だぞ!?テクスチャのない、剥き出しの神性だぞ!?人の器が納められるわけがないっ!!】
【できるわけがないのだ!!できるわけがない、できるわけが!!】
【できる、わけが……!!】
〜
「嵐の神、セトの欠片よ…!!」
ユメから引き抜いた、剥き出しの神秘。
人の身に受ければ五体が引き裂かれ、八つ裂きとなる神の怒り。
人は死ぬ。当然の帰結。
だが、それはあくまで人の範疇。
人でありながら、人を究めしものに果たして通る道理か?
───否。神に挑むは人の究極。
であるならば。神を下すは──
「我が意に従い、鎮まるがいい───!!」
人の、『究極』であるのだ。
『あ、あっ…!』
ユメの身体が軽く、羽根のごとく羽ばたくように煌めく。
『あ、アダム先生…!?』
彼の身体に、雷撃と嵐が逆巻く。
「ネルとヒナ、ツルギをアロナ抜きで相手取るのだ。これくらいはしなくてはな」
彼は今──セトの神秘を従えたのだ。
「行くぞ、ユメ!君を、私が助ける!」
『──はい、アダム先生!』
悪夢を祓う──
嵐と生命が、並び立った
【…嘘だ】
【こんな、こんなことはあり得ない…こんな、こんな…】
【バグだ…バグだろ、これ?そうだ、そうに決まってる。リセット、リセットしなくちゃ】
──────見つけた。
地下生活者【ひっ!?】
────見つけた、見つけた、見つけた。
見つけた─────!…
地下生活者【お、お前は…!?】
セリカ【見つけた、見つけた…!見つけたァァァァァァァァァァァァッ!!】
【ひぃいっ!!け…【血河のセクメト】!?】
セリカ【殺してやる殺してやる殺してやる!!殺してやるゥウゥウゥウゥウゥウッ!!!】
【ひぃいぃいぃいぃいぃいぃい─────!?】