泉に最新ゲーム機を落としてしまった少年と、落とした最新ゲーム機を中々返してくれない女神様のお話です。

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 投稿してから思ったけど、金の斧銀の斧の二次創作じゃなくてオリジナル扱いで良かったのかな。
 キャラや時代背景はオリジナルと言えど、一応はパロディだし……。


泉から現れる系の女神様

「ようやく手に入った最新ゲーム機! 早く家に帰って遊びまくるぞ~!」

 

 休日の昼下がり。

 抽選でしか手に入らない希少で人気なゲーム機を当選させた少年は、1分1秒でも早く遊ぼうと両手にゲーム機を抱えて家へと急ぎます。

 

「あっ」

 

 しかしそんな少年に不幸が訪れます。

 足元を見ていなかったあまり、小石に躓いて転んでしまいました。

 そして両手に抱えていたゲーム機は少年の手を離れ、近くの泉へと大きな水しぶきを上げてドボンと落ちてしまいました。

 

 少年は先ほどの嬉しさは何処へ行ったのやら。

 表情が笑顔から悲しみへと変わっていきます。

 

 悲しみから溢れた涙が泉にポトリと一滴垂れ落ちます。すると突如として泉が光り始めました。

 

「な、なに!?」

 

「迷える子羊よ」

 

「え、なに。誰」

 

 少年の涙に答えたのか。泉の底から女神が現れました。

 昔話として語り継がれている「金の斧銀の斧」と同じような状況に少年の思考は固まり、その場で呆然となります。

 

「貴方が落としたのはこの金の斧ですか? それとも銀の斧ですか?」

 

「いや、俺が落としたのはゲーム機なんだけど。斧なんて触った事もないけど」

 

「正直者の貴方にはこの2つの斧をあげましょう」

 

「いやちょっ待っ……!」

 

「それでは迷える子羊よ。貴方の人生に幸あれ」

 

 人の話を聞けよ。

 自分の言葉を最後まで聞かずに泉へと帰った女神に少年はそう呟きましたが、既にその場から消えてしまっている女神には届きません。

 

「迷える子羊よ」

 

 なので少年はもう一度呼び出しました。

 女神から授かった(無理矢理渡された)銀の斧を泉に落とすと、先ほどと同じように女神から泉の底から現れました。

 

「貴方が落としたのはこの金の斧ですか? それとも銀の斧ですか?」

 

「さっきゲーム機だと言ったけど?」

 

「貴方は嘘つきですね。斧は1本もあげません」

 

「元から要らないよ」

 

 少年は銀の斧を没収されてしまいました。

 しかし少年は落ち込む事はありません。何故なら銀の斧なんて要らないから。本当に欲しい(返して)のは自分の落とした最新ゲーム機なのだから。

 

「それでは迷える子羊よ。貴方の人生に不幸あれ」

 

「ゲーム機無くなった時点で既に不幸だよ?」

 

 再び女神は泉の底へと消えていきました。

 少年の手元に残るのは金の斧が1本のみ。

 他に泉へと落とせそうな、亡くしても良い持ち物は無い。これが最後のチャンスだと意気込むと、少年は金の斧を精一杯の力で泉へと投げ込みました。

 

「迷える子羊よ」

 

「斧は要らないからね」

 

「貴方が泉にぶち混みやがったのは、この金の斧ですか? それともこの最新ゲーム機が丁度買える分のお金ですか?」

 

 頭に小さいタンコブを作りながら再三現れた女神。

 今回は今までと違い、その手に持つのは金の斧と最新のゲーム機が丁度買えるお金。少年はほんの一瞬だけお金に眼が眩みましたが、ふとある疑問が浮かび上がりました。

 

「ねぇ女神様」

 

「はい。なんですか、迷える子羊よ」

 

「売った?」

 

「売ってないですね」

 

 少年は女神を疑いました。

 しかし女神は少年の疑いの目を一切気にせず、そんな事実は知らないと純粋そうな眼をして答えます。

 

「いや明らかに売ったよね。俺の落としたゲーム機を売ったお金だよねそれ」

 

「臨時収入です」

 

「売った?」

 

「売ってないですね」

 

 少年は再度女神を疑いました。

 しかし女神は少年の睨む目を一切気にせず、明日の夕飯を考えるような気にしてなそうな眼をして答えます。

 

「ねぇ女神様。俺が最初に落とした最新ゲーム機、返してくれない?」

 

「正直者の貴方には最新のゲームをあげましょう」

 

「あげるじゃなくて返す、だけどね」

 

 そういうと女神は一度泉の中へと潜り、金の斧とお金を置いてから最近のゲームを両手に抱えて少年の前へ現れました。

 

「迷える子羊よ。貴方の人生に」

 

「ちょっと待て女神様」

 

「どうしました?」

 

 女神は少年に「貴方の人生に幸あれ」と言おうとしましたが、少年の声に呼び止められて首から下まで沈んだ身体を泉の上まで上昇させます。

 

「これ蹴鞠用の玉なんだけど。平安時代の遊び道具なんだけど」

 

「最新のゲームですよ?」

 

「知識をアップデートしてくれ女神様」

 

 どうやら女神と少年の間で「最新」の知識に違いがあったようです。

 女神からすれば蹴鞠こそが最新でしたが、少年からすれば小さな画面をピコピコする機械こそが最新のゲームです。時の流れとは早いものですね。

 

「女神様。今が何時代を言ってみてくれ」

 

「縄文」

 

「戻らないでくれ女神様」

 

 少年は女神の「最新」がいつなのか気になり、今が何時代か質問してみれば平安よりも前の時代である「縄文」と返ってきました。マンモスは既に全滅しています。

 

「今は令和なんだよ女神様。令和の最新ゲーム機を渡してくれよ女神様」

 

「文句が多い子羊ですね」

 

「自分の胸に手を当てて文句を言われる理由を考えてくれ女神様」

 

「セクハラですか?」

 

「なんでそこだけ現代知識がアップデート出来てるんだよ女神様」

 

 縄文や平安の時代にセクハラと言う言葉は存在していません。

 女神は自分の胸を隠すような姿勢を取りますが、少年からすれば女神に興味はありません。そんな事よりも早くゲームを返して欲しいと考えています。

 

「迷える子羊よ。最新のゲームとはピコピコの事ですか?」

 

「ピコピコって……うん。まぁ、合ってるけど」

 

 結局、最新のゲーム機とやらが何か分からなかった女神は少年に説明を求めます。

 そしてピコピコのゲームとなれば、最近泉に落ちてきた物があると思い到り、再度泉の中へと潜り、落ちてきたゲーム機を両手に抱えた状態で外へ全身を出して少年に見せます。

 

「迷える子羊よ。貴方が落としたのはこの最新ゲーム機ですか?」

 

「あ、そうそう! それだよ女神様」

 

 どうやら正解だったようです。

 少年は今すぐにでもゲームをしたいと、女神の持つゲーム機に向かって手を伸ばしますが、女神が少年の手が届かないようにゲーム機を自身の頭上まで持ち上げます。

 

「これは名無しで持ち主が不明なので私が預かります。返してほしい場合はフリマアプリを開いてください」

 

「売ろうとしてる?」

 

「してないですね」

 

 少年は再三女神を疑いました。

 しかし女神は少年の言葉に首を傾げ、配送料は別途料金ですと言いたげな瞳をして答えます。

 

「自分の持ち物には名前を書くべきだと教わらなかったのですか?」

 

「ぐっ。それは、その……あっ! でも女神様。名前が無い場合は警察に届けた方が良いんじゃないかな?」

 

「確かに一理ありますね。では迷える子羊よ、寄り道せずに警察に届けてください。私はこの泉から出れませんので」

 

 自分の物に名前を書くのは学校で習う大切な事ですが、買ったばかりで家に持ち帰る途中だった少年にそれを言われても困るばかり。

 

 少年はどうにかしてゲーム機を返してもらえないか考え、落とし物は警察に届けるべきだと言う発想に至りました。

 そして女神は泉から出られないので、代わりに警察に届けて欲しいとゲーム機を少年に預けました。

 

「それでは迷える子羊よ。貴方の人生に幸あれ」

 

 女神は泉の中に戻っていきました。

 その場に残るのは少年と最新ゲーム機のみ。

 それ以外にこの場に居る人と見ている人も居ません。

 

「よし、帰るか」

 

 女神から最新ゲームを預かった(返された)少年は寄り道せずに家へと帰りました。

 そうして紆余曲折ありながらも、最新ゲーム機を手にいれた少年は平和な日々を過ごすのでした。




 子ども(小学生辺り)に受けそうなネタで一本作ってみるか~と言うわけで作りました。
 結果的に子どもに受けなさそうな内容(時代ネタやセクハラネタ)になりました。この辺りは言葉や歴史を知らなければ分からないですからね……。

 特にセクハラはともかくとして、歴史に関しては小1とかのまだ習ってなさそうな年齢だと何の話か分からないでしょうし。

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