マブラヴ グレートパトリオティックウォー 作:Eitoku Inobe
群青色の横向きベレー
縞シャツの波、肩章の海
永久の契りを空と結んだ!
空挺軍 - 無数の勝利!
パラシュートの白い花束で
平和の虹を空にかける
空挺に栄誉を、栄光を!
-”空挺軍 - 空から参上”より抜粋-
エネルギー炉の大爆発、これによるBETA側の被害と人類に与えた衝撃は思いの他大きかった。
エネルギー炉への誘爆によって核爆発以外でも周辺の守備隊は消し飛び、大広間の床は崩落して破壊された床岩が地下に降り注いだ。
これらの被害は守備隊として残っていたBETA、確実に師団以上の規模を吹っ飛ばした。
しかも地面が崩落したことにより新しい地下への入り口が出現し、そこから強襲する形でBETA側の意表を突くことが出来た。
これにより国連軍の狙いは本格的にエネルギー炉狙いとなった、これを誘爆させBETAを道ずれにして兵力を減らす。
使用する弾頭も最低限誘爆に持ち込めるものに限定し、国連軍はハイヴ攻略を進めた。
一方のBETA側もこれ以上のエネルギー炉喪失を防ぐために兵力を残り4基のエネルギー炉に結集させ、超重光線級としての完成を急がせた。
しかしここでBETA側にも資源不足という問題が発生していた。
1984年の攻勢である程度の資源を確保したが超重光線級の幼体と兵力回復に回した結果、不足が目立つようになり、現在ではどうしようもない状態であった。
明らかに損害と資源採掘による戦力回復が間に合っていない、ハイヴ内でも容赦なく核兵器が用いられ、徹底した火力戦に持ち込まれるとBETA側はかなり不利な状況に陥った。
やはり中型、小型のBETAが一切進化しなかったというのが痛い、結局要撃級や戦車級だと撃ち合いが出来ない為物量で押しても接近する前に殲滅されてしまう。
その為戦車級、要撃級の生産量は減らし、戦術機級と超重突撃級の生産を優先していたのだがこれだと取り柄の物量が維持出来ない。
戦車級、要撃級からレーザーを発射する能力付与も考えたが結局これらの個体の出力不足で計画は頓挫した。
これでも改突撃級が完成し肉弾特攻の兵士級と闘士級が出来てからはまだマシになった方だ。
ハイヴという自らのテリトリーにおいてもベルリン・ハイヴは火力不足に悩まされていた。
ともかく今はこのエネルギー炉こと超重光線級の幼体を守らねばならぬ、これに群がる敵を防ぎつつ逆襲すれば逆に一手に国連軍側に打撃を与えるチャンスであった。
その隙に残る資源を集めて1体でも超重光線級を完成させて四方に展開している地上部隊を叩き、暫しの時を稼ぐ。
今のベルリン・ハイヴは奈井江ハイヴの重頭脳級によって重頭脳級レベルの能力が付与されており、地球外の同胞に向けて救援要請を発していた。
これを受け取ったBETAはすぐさま救援を出してくれるだろう、1体でも多くの同胞が地球に落下し根を張れば人類の注意はそちらに向く、敵を散らして反撃の戦力を生み出して逆襲する。
各種BETAの戦闘コンセプトも決まってきた、後は資源と時間さえあれば人類に勝てる。
最早ベルリン・ハイヴは災害に対する対処ではなく、明確な絶滅戦争だと位置付けていた。
この人類なる意思を持った非生命体が滅びるのが先か、このままベルリン・ハイヴ地下にまで押し込まれて討ち死ぬのが先か、その根比である。
追い込まれてもなおベルリン・ハイヴは勝つ気でいた。
「国連軍総司令部はエネルギー炉の破壊に注力し、確実に占領地域を広げろと言ってきています」
ローシク少佐は片手に総司令部から送られてきた命令書を持ちながら参謀や各司令官らに話していた。
「どの道あのエネルギー炉に残られては最奥の頭を潰したところで暫く抵抗される。バックアップを取り除きつつ、本命を叩くのが最適でしょう」
「エネルギー炉の破壊によって第一階層の主力は粗方片付いたとのこと、4つ撃破すれば敵の打撃も相当なります」
参謀達は口々にエネルギー炉を撃破するメリットを話し、国連軍総司令部の命令に同調した。
「しかしエネルギー炉攻略に戦力が集中すればハイヴ全体の攻略が進まなくなる。ある程度の両立は必要だ」
「モイセーエフ大将の言う通り、主力はハイヴ攻略に専念しつつ幾つかの航空師団には引き続きハイヴ全体の攻略を進めさせろ」
「了解」
既にハイヴ攻略が始まって2週間以上が経過している、ダウンフォール作戦全体で言えば1ヶ月が経過していた。
元より長期戦が見込まれているハイヴ攻略戦ではあるが悪戯に長引かせても兵の士気を下げ、国力を無為に疲弊させる。
確実に時間をかけつつ、その上で無駄を省くことが肝要である。
ヤゾフもそれは分かっていたが同時にハイヴ内で敵の反撃を受けぬ為、攻勢能力が弱体化しない程度で敵に複数圧力をかけることも必須だった。
「包囲網の様子はどうだ」
ヤゾフは外周包囲を展開する各野戦軍のの状況を尋ねた。
彼が率いる第1ウクライナ前線からは第3親衛戦車軍と第4親衛戦車軍を包囲網に加えており、その後方には第1親衛軍と第4軍が控えていた。
「各軍からBETAが包囲網突破を図ったという報告はありません。同時にBETAの目撃記録、戦闘記録に関しても斥候と思わしき小型BETAを前線の戦車部隊、自動車化狙撃兵部隊が発見して撃破した程度です」
「どこかに秘密の抜け道があるということか」
「一応各軍がくまなく探しておりますが如何せん1箇所見つけたところで相手は別の箇所に抜け道を掘ればいいので……」
やはり選択権が敵方にあるというのはもどかしいものだ、こちらは常に後手に回らざるを得ず有効な手を打ててもイタチごっこになる。
BETA側の地中移動による後方浸透強襲は地中にいると中々手の打ちようがなく、最後まで厄介な代物だった。
母艦級を用いた大移動をするのならまだ良い、地中の移動音も大きいし複数と言っても展開箇所が絞れるから対処が容易である。
だが小型種による数十、数百カ所の小規模強襲はそれなりに国連軍の負担を増やした、不意遭遇戦であれば戦車級だって少しはマシになる。
今となっては強襲する余力もないBETAであるが、この問題は最後まで残り続けた。
「止めるにはベルリン・ハイヴそのものを堕とさねばならないか……難儀なものだな」
「これでもリヴォフで戦っていた頃よりは大分我々も手慣れてきました。今は前線にいるパイロット達を信じて待つしかありません」
モイセーエフ大将の発言にヤゾフは頷く他なかった、前線司令官としてやるべきことは最早彼らに補給を絶やさず送り続けることと誤った命令を出さぬことだ。
同じ頃情報参謀のラディーギン少将とアニシモフ大佐が裏で何やら話をしていた。
「モスクワの総局からだ、モノガノフ大佐の飛行隊とこっちが持ってる旅団戦術機飛行隊を組み合わせてエネルギー炉攻略に回せということらしい」
「我々にですか?」
「ああ、司令部付の情報参謀はモノガノフ隊のサポートだそうだ」
アニシモフ大佐は命令を聞いて怪訝な表情を浮かべていた。
「お言葉ですがここまで来た以上無理にGRUの戦術機部隊を回さなくてもいずれフレツロフ大佐辺りの部隊が当たると思うのですが……」
「総局としては潜入と工作に優れたGRU戦術機部隊が攻略に最適ということらしい。まあ間違いではない、半分はチェーカーへの対抗心ではあると思うが」
ラディーギン少将は同じ作戦室にいるステクリャル中将を見ながらそう呟いた。
現にYak-41、MiG-23MLらを主力としたKGBスペツナズの戦術機部隊がハイヴで戦っているのは事実だ。
GRUスペツナズの戦術機部隊もハイヴには入っているが基本偵察と一部拠点の制圧が主で後は正規の空軍や防空軍らに任せている。
ここらでGRUの戦術機部隊は強いということを大本営の面々に印象付けたいのだろう。
「既にモノガノフ大佐には伝えている。我々の任務は無人機や各部隊が集めた情報を基にエネルギー炉がある大広間まで突入する最適ルートを生み出し、エネルギー炉破壊用の武装を確保することだ」
「了解、ちなみに同志ヤゾフの許可は?」
「バリィーニキン少将と共に進言した、なんとか前線司令部の作戦指揮内で収まるようにした。誰とも角は立たん」
「分かりました、直ちに取り掛かります」
そう言ってアニシモフ大佐は2名の情報参謀を指で呼びつけ、必要な命令を出した。
ラディーギン少将は後をアニシモフ大佐に任せて自身は作戦室中央のテーブルに設置されているハイヴ攻略戦の戦況図を目にした。
既に一番上のエネルギー炉には誰かが赤ペンでばつ印を書き「撃破」と明記していた。
「リトヴィネンコ中佐、ちょっといいか」
「はい、何用でしょうか」
別部署とはいえ階級が2つ違う先輩の参謀に呼び止められたリトヴィネンコ中佐は即座にラディーギン少将の隣についた。
「第一のエネルギー炉を制圧出来たがここから後何日くらいで次のエネルギー炉攻略に取り掛かれると思う?」
「私の私見ですと持って3日後に取り掛かれるかと。恐らく国連軍は今日中に第二階層に橋頭堡を確保し、明日から本格的に占領地を広げるでしょう。そうなると次のエネルギー炉に到着するのは早くて22日、遅くても23日には守備隊と激突する可能性が高いと見ています。よって3日後、23日が攻略の開始日かと」
「となれば連中の守備兵力が食いつくのは24日以降だな……」
「向こうにどれだけ新型のBETAがいるか分かりませんが仮に第一のエネルギー炉と同じだったと仮定した場合突入は早くて28日でしょうな。遅いと2月に入っても不思議ではありません」
「分かった、助かったよ中佐」
「なんのお役に立ったかは分かりませんが何よりです」
これで後方強襲による突入作戦の日は決まった、ラディーギン少将はすぐに部下の少佐を呼んで命じた。
「モノガノフ大佐に伝えろ、作戦決行日は24、25日のどちらか。BETAの主力が食いついたらその隙を見計らってやると」
「了解…!」
GRUによるハイヴ内での特殊作戦が始まろうとしていた、それも予期せぬ形でKGBや空挺軍らを巻き込んで。
間も無く第二のエネルギー炉にもチェックがかけられようとしていた。
1月24日、第8、第9、第10独立特殊任務旅団隷下の戦術機飛行隊と極東軍管区に属する第14独立特殊任務旅団の飛行隊、合計4個飛行隊によるハイヴの後方強襲作戦が始まった。
結局リトヴィネンコ中佐の予想は早い方が当たり、1月23日には大広間の守備戦力と本格衝突し、24日には一部で国連軍が押し返し始めていた。
エネルギー炉破壊の際に出来た大穴から早期に国連軍が突入したことにより早期に各所に橋頭堡と補給地点が確保され、前線部隊は比較的余裕を持ってBETAと戦えていた。
しかもこの時1月21日には始まっていた別のエネルギー炉での戦闘によって戦術機級らの予備戦力は拘束されており、第一のエネルギー炉周辺で戦っている時よりも余力があった。
この臨時航空連隊の指揮官を務めるのはロディオン・モノガノフ大佐、GRUスペツナズの衛士であり特に腕の立つ影のエースパイロットである。
彼は部下と共に極東軍管区からMiG-31とMiG-25PDSを連れてやってきた、極東戦役から斯衛の変に至るまで使い続けてきた愛機をそのまま持って来たわけだ。
それに対して第1ウクライナ前線に属している飛行隊は基本的にMiG-27である、まだ彼らにはMiG-29やSu-27は配備されていない。
また各飛行隊につき3機は電子戦システムを搭載したSu-24MPが配備されている、主に無人機運用と偵察情報の精査はこの機体が行なっていた。
元々モノガノフ大佐は第10独立特殊任務旅団付飛行隊の指揮官であり、第1ウクライナ前線側のスペツナズ旅団は謂わば古巣であった。
指揮官や衛士らにも戦友や知り合いが多く、即席でありながらかなり統率が取れる部隊となっていた。
「各機、機体の最終チェックを行え。まもなく出撃する」
モノガノフ大佐は自身のMiG-31の武装、燃料、駆動系統を確認して機体が万全であることを認識した。
『100101、いつでも行けます』
『900101行けます』
『800101、全機問題ありません』
「ではモースク1を起動し無人機を先行させろ。これよりハイヴ大広間強行突入を行う。目標はエネルギー炉の破壊、各機私についてこい」
何機かのM-21とシュメリィ-1が先んじて出撃し、その後にモノガノフ大佐らのMiG-31らが続いた。
モノガノフ大佐としては二度目のハイヴ内における特殊作戦である。
数十機の戦術機はM-21らの先導によって遠回りしながらも最も守備のBETAが少ない地点を突き進んだ。
今やBETAの主力は正面で戦う国連軍に集中しており、滅多なことでは主力部隊は回ってこない、背後を突くのには絶好の機会であった。
「戦闘は極力避け、大広間突入を目指す。BETA側が悟る前に攻め上がるぞ」
『大佐、前方1,000メートルにBETA確認。1個中隊規模です!』
「蹴散らすしかない、戦闘隊形!」
レーザーを撃ってこないということは恐らく光線族種、戦術機級の類は存在しない、恐らく戦車級と要撃級が主力の部隊だろう。
案の定現れたのは要撃級と戦車級、これなら問題はない。
「戦闘開始、穴を開ける!」
突撃砲を放ちつつ、S-8ロケット砲などで火力を穴埋めし、可能な限り中央の敵のみ相手をして中隊の隊列を打ち破った。
後続からはMiG-27やMiG-25PDSが続き、同じように突撃砲やロケット砲を放ってBETAを殲滅させた。
この程度の規模であればジャブに等しい、続いても前方から3個中隊規模BETA群が現れたが臆することなく突入した。
時によっては同行するM-21やシュメリィ-1も戦闘に加わった、なんだかんだ突撃砲を4門備え、ロケット砲も装備しているのでモースク1の性能を鑑みれば十分戦えている。
ベルリン・ハイヴは横30キロ、縦2キロの超大型立体地下要塞である、既に2、3個軍相当の打撃を受けている上にそもそも守備兵力が足りていない為エネルギー炉の全方位に兵力は配置出来ても全てが分厚いわけではない。
しかも主力は攻勢をかけている国連軍の戦術機部隊の応戦に忙しい為、即座にモノガノフ隊を強襲出来なかった。
モノガノフ大佐率いるGRUスペツナズ戦術機部隊は破竹の勢いで進み、幾つかの広間を占領して簡易補給所を設置した。
僅かな休憩を挟んで彼らは即座に進撃を再開した、立ち止まっている暇はそれほどないのだ。
『140101、ルート変更を通達する。プランAからプランVに変更、全機に対してルートを再度送信する』
声の主はアニシモフ大佐である、移動中のGRUスペツナズは基本的にウッチにある第1ウクライナ前線司令部から直接指示を受けていた。
「了解、各機ルートが更新され次第移動経路を変更する。私についてこい」
『了解…!』
MiG-31を先頭にGRUスペツナズの戦術機部隊は周囲を警戒しながら移動ルートを変更した。
基本的にこの情報は味方のソ連軍、ワルシャワ条約機構軍にも伝わっていない、精々一部部隊が第二線を築こうとしているとレーダーの中で分かるくらいだ。
しかしソ連の中にはこれを正確に掴んでいる者達がいた、内側の情報を防諜して目を光らせるのが彼らの職務だからだ。
『410001、ルート変更を転送、確認されたし』
『410001、内容を確認した。全機、ルートを変更し先遣隊に続く』
「了解」
12機のYak-41が先行するGRUスペツナズの後に続いて大広間に向けて前進した、彼らこそKGBが持つスペツナズの戦術機部隊である。
海軍の次世代主力機選定試験でお役御免となったYak-41をKGBが引き取り、特殊作戦用として運用し始めたのだ。
指揮官はペルシェンコフ少佐が引き受け、ヴィシェヴォーイ大尉、アサエフ上級中尉らそれなりに戦闘経験のある者が集まっている。
彼らはKGB第3総局が防諜したGRUの案内を基にGRUスペツナズに追随していた、GRUにだけいい格好はさせられない。
基本小型なYak-41ではあるが突撃砲を持ち、空対地ミサイルやロケット砲など十分戦闘可能な武装を揃えていた。
『悪く思うなよ、これも命令だ』
先行するGRUスペツナズ部隊は大広間まで後一歩という地点でついに戦術機級が襲来し、これと交戦になっていた。
数は凡そ15体、恐らく大広間に存在する最後の予備戦力がこちらに回されて来たのだ。
125mm弾や152mm弾をシールドで防ぎ、兵士級を射出しながらレーザーを放って遠距離攻撃を叩き込む戦術機級に対し、GRUスペツナズは果敢に戦った。
「各飛行隊ごとに陽動の隊と攻撃の隊を分けろ!背面装甲なら152mm弾を数発叩き込めば破壊出来る!」
モノガノフ大佐は戦術機級の注意を引きつつ、突撃砲を叩き込んだ。
当然だが弾は全て弾かれ、レーザーと触手が同時に飛んでくる。
超低空を飛行しながらレーザーと触手を回避し、接近した触手は取り出した近接用短刀で切断した。
この間に僚機のMiG-31が2機とも2発ずつR-40R長距離空対空ミサイルを発射し、戦術気球の背中に叩き込んだ。
ミサイル重量466kgにマッハ4.5のスピードが乗ることによりその破壊力は増大し、4発の同時命中によって背面の装甲を完全に砕いた。
即座に振り返った戦術機級が2機のMiG-31に対してレーザーを浴びせかけた為撃破には至らなかったが、その間に接近したモノガノフ大佐が120mm弾を1発叩き込んで戦術機級を仕留めた。
これでようやく1体、撃破出来るとはいえ強敵には違いなかった。
『大佐、ここは我々に任せてください!大佐と10旅の飛行隊は大広間へ!』
第9独立特殊任務旅団付飛行隊長のフェデルコフ少佐がそう進言した。
ここで長居するよりエネルギー炉を叩いた方が恐らく早い。
「…では任せた。シェパロフ隊と私の隊はこのまま最奥に突入する、全機続け!」
後を第8、第9独立特殊任務旅団の戦術機飛行隊に任せ、モノガノフ大佐らは先行して大広間を目指して前進を再開した。
当然何体かの戦術機級は追撃しようとするがその個体には集中的にKh-29空対地ミサイルや250kg爆弾が投下され、装甲が破壊されるなどの被害を負った。
『各機、このまま戦術気球を全て拘束する!絶対にモノガノフ大佐に近づけるな!』
そう言ってフェデルコフ少佐のMiG-27が突撃砲を構えた瞬間、眼前にいた戦術機級の首に閃光のようなものが直撃、刹那戦術機級の頭が宙を舞って地面に落下した。
頭を失った戦術機級はまだ死んではいない、致命打ではあるが当分は動けた。
シールドを構えて周囲を警戒し距離を取っている。
その直後今度は別の個体に同じような閃光が走り肩や首、関節などの非装甲部分が弾け飛んだ。
『レーダーに反応あり!12機の友軍機がこちらに接近中!』
『バカな!?一体どこの部隊だ!』
『広間に到着します!』
後方からの援護射撃と共にまず何機かのYak-41が出現し、手負の戦術機級に対してKh-29空対地ミサイルを発射、非装甲部分に120mm弾などを叩き込んで仕留めた。
こうして何体かの戦術機級を仕留めるとYak-41は先に戦っていたMiG-27を気にする事もなくモノガノフ大佐らを追って通路を突き進んだ。
『このまま前進する、410003戻れ』
「了解」
後方で125mm対物砲を用いて援護射撃をしていたアサエフ上級中尉は機体を動かして移動中の飛行隊に合流した。
フェデルコフ少佐らのMiG-27もその後に続こうとしたがまだ生き残りの戦術機級がいて難しい状態であった。
『大佐!友軍の戦術機がそちらに続いています!』
「なんだと?他は知らぬはずだが……なるほど。放っておけ、このまま大広間に突入する!各員戦闘用意!」
モノガノフ大佐はその部隊が何故ついて来たのか、どの経路でルートを知ったのか瞬時に理解したが最早止めようもない為諦めて大人しく任務に専念することにした。
24機のMiG-31、MiG-25PDS、MiG-27は瞬時に大広間に突入し、レーザー射撃を回避する為に思いっきり低空に移動した。
戦闘隊形を解かず、周囲を警戒しながらエネルギー炉を捕捉し、徐々に接近する。
「爆薬の設置に移れ、このまま敵が発見出来なければっ!?」
刹那、大地が割れ、地中から1体の要塞級が出現した。
その個体も通常の要塞級より少し幅が広く、複数のレーザー発射口と触手の射出機構、そして兵士級の擲弾機構が取り付けられている。
しかも全身の装甲は通常種よりも強化されており、152mm弾も弾きそうな様相であった。
この個体はベルリン・ハイヴが作り出した要塞級の改造モデル、エネルギー炉の防衛に重きを置いた個体であり、火力の投射と触手による範囲攻撃が得意な定点防御型であった。
言ってしまえばベルリンモデルの重要塞級と言ったところだろう、3体に分裂して合体はしないがそれ以上に火力が強化されている。
重要塞級は挨拶と言わんばかりにエネルギー炉周辺を除く全方位にレーザーを照射した。
幸いにも光線級レベルの捕捉機能はなかったが、その分を数と連発力で補っていた。
しかもレーザーの後には触手が出現し、状況によっては兵士級を射出して空中や地上で炸裂させ、対空火器の代わりとした。
「各機戦闘開始!あのデカブツを潰せ!」
レーザー、触手、特攻兵士級を回避しつつモノガノフ大佐のMiG-31はKh-29空対地ミサイルを2発、突撃砲の120mm弾を2発放った。
本体に直撃したミサイルと120mm弾であったが効果は感じられない、やはり本来の弱点を突かないと倒せないようだ。
「各機なるべく敵の結合部を狙え!そこなら攻撃が通るはずだ!」
何機かのMiG-27は命令通りに結合部を狙おうとしたがそこまで行っても触手と兵士級の擲弾が邪魔で攻撃出来ない。
地上にはレーザーが降り注ぎ、安全地帯は一周回ってエネルギー炉の側であった。
『大佐!接近出来ません!』
「援護する!触手はこちらで引き付けるからその隙に火力を叩き込め!!」
『了解!』
モノガノフ大佐は僚機と共に突撃砲を発射して触手を引き付け、僚機のMiG-31が陽動役を請け負っている間に横合いから突撃砲で触手を切り落とした。
その間にレーザーと兵士級の弾幕を掻い潜り、3機のMiG-27が同時にkh-29空対地ミサイルを重要塞級の結合部に叩き込む。
爆発が発生し重要塞級にもダメージが与えられたが致命打にはなっていなかった。
『ダメージは通りましたが全くダメです!』
「一箇所に火力を集中しつつ連続して攻撃を叩き込め!各機火力を左後方の結合部に火力を集中させろ!」
と命令するのは容易いがレーザー、触手、自爆する兵士級によって全く近づけない。
殆ど高射砲の要領で空中爆発して戦術機にダメージを与えようとする兵士級だが常に要塞級から追加が補充される為全く弾切れにならない。
そもそも要塞級とは本来前線の兵員運搬を担当するBETAであり、体内に兵士級を数百体くらい抱えていてもおかしくはない。
レーザーに関しても近くにエネルギー炉がある以上エネルギー切れを起こすことは万に一つもないし、職種も体内に戻せばすぐに復活する。
エネルギー炉の防衛機構としては割と完成され切った存在だ。
別のMiG-27が持っているKh-29空対地ミサイルを全て撃ち込んだがまだ足りない、重要塞級は全く気にしない様子で攻撃を続けた。
『このままじゃあ持たない!』
何機かのM-21が特攻覚悟で手持ちの火力を叩き込んだがその直後に撃破され、その爆風を掻い潜って1機のMiG-27が接近しKh-31空対艦ミサイルを叩き込んだ。
2発しかないKh-31を全て使い尽くしようやく重要塞級から巨大な爆発が発生し、結合部に負担が生じた。
「よし…!このまま火力を叩き込め!ミサイルを使い果たした者は触手を引き付けろ!」
モノガノフ大佐はMiG-31を操り、レーザーを掻い潜りながら発射口に向けてR-60M空対空ミサイルを4発発射した。
放たれた1発ずつのR-60Mが重要塞級のレーザー発射口に直撃し、何箇所かのレーザーを閉ざした。
僚機のMiG-31も同様にR-60Mを発射するがタイミングが悪く、合計8発の空対空ミサイルのうち4発は撃墜されて半分しか命中しなかった。
それでも8門は塞いだ、これは前線で戦う衛士達に取ってみれば大きな負担軽減となった。
しかもそこへ予期せぬ増援が到来する。
遠方から1発の125mm弾が発射され、結合部に打撃を与えた。
それと同時にYak-41が11機ほど襲来し、120mm弾を発射して牽制し、先行するGRUスペツナズに合流した。
『加勢しよう』
「どこの部隊だ?まあいい、あれは要塞級と同じ構造で硬いが結合部が比較的弱点だ。あそこを叩けば撃破の道も見えてくる」
『了解、各機結合部を狙え!』
『了解!』
『了解、援護します』
度々遠方から125mm弾が叩き込まれ、重要塞級の結合部に打撃を与えていく。
流石にこれ以上の攻撃を受けるのは望ましくないのか重要塞級は即座に出力を上げたレーザーを発射して射撃地点に向けてレーザーを叩き込んだ。
爆発が起きて周囲の岩壁が粉砕されるが後方支援として残っていたアサエフ上級中尉のYak-41は無事であった。
爆炎の中からYak-41が出現し、ロケット弾を発射して迫る触手を迎撃しつつ、背面から結合部を狙った。
その間にペルシェンコフ少佐とヴィシェヴォーイ大尉のYak-41が接近してKh-29空対地ミサイルを発射し、ついでに120mm弾も叩き込んだ。
その後方からKh-31を装備したMiG-27が離脱したYak-41が離脱した瞬間にKh-31を叩き込み、ついに4本あるうちの1本の足を潰した。
「よし…!」
『右の後ろ脚を砕きました!』
度重なる爆発が発生してゆっくりと重要塞級の後ろ脚が地面に倒れる。
周囲に砂煙が発生し、周囲を取り囲む砂煙を払うように2、3発ほどレーザーが飛び出し、周辺を薙ぎ払った。
足を一本捥がれたが重要塞級の損害としてはまだ問題ないと言った状態であり、そのまま戦術機級はダメージコントロールを行いつつ足を失う前の火力と同じほどのレーザーを周辺に叩き込んだ。
「一本じゃダメか…!堕とした後ろ脚に火力を集中して本体にダメージを加えろ!私の隊は再び攻撃を開始する、左前足の結合部を叩け!」
『了解!』
『我々も加勢する、各機戦闘再開!』
再び発射されるレーザーや兵士級の擲弾をホバー移動に近い移動方法で躱しつつ、ジャンプに跳躍ユニットの加速をつけて高く飛び立ち、上空へ飛翔した。
無論重要塞級はレーザーを発射しつつ触手を振り回して接近を阻止しようとする。
後続のMiG-25PDSが突撃砲の弾幕射撃によって触手を撃ち落とし、先行しているMiG-31らがその勢いのまま上空を取った。
「撃て!」
MiG-31からR-40R空対空ミサイルやKh-29空対地ミサイルが発射され、全て結合部に突き刺さる。
その後に152mm無反動砲を持ったYak-41が追加で火力を叩き込む。
爆発する煙幕の中をYak-41が飛び抜け、触手の合間を抜けて安全地帯まで離脱した。
彼らもなんだかんだ腕の立つ戦術機乗りである、その上でここまでの頑強性で粘っている重要塞級は恐ろしい代物だった。
恐らく並の部隊なら既に全滅しているだろう。
そんな彼らにしても重要塞級を仕留めるには後一手足りない。
地上から背面の結合部に向けてMiG-25PDSが何機かR-40R空対空ミサイルを発射して結合部に命中させるが砕くにはもう少し火力が必要であった。
かと言ってこれ以上Kh-31を使うわけにはいかない、足を墜したとて重要塞級にはまだ直接的な致命打を与えていない。
残りのKh-31は全て重要塞級を仕留める為に残しておきたい、だがこのままではもう一本砕くことすら難しい。
「各機ミサイルの残弾を確認しろ。チッせめてフェデルコフ隊が戻れば……!」
モノガノフ大佐は悔しそうに歯噛みしていたが彼の願いは比較的に素早く叶うこととなった。
数発の152mm弾が発射され、右後ろ脚の断面に全て着弾した。
爆発と共に更に重要塞級のの肉が抉れ、辺りが焼け焦げている。
そこから一気に数十機のMiG-27が現れ、一気に戦線へ加わった。
『空挺イヴァンとその仲間達!空から参上!』
「誰だ!?」
『なんでここに?』
『誰だ!?』
『誰?』
『第98親衛空挺師団のイヴァン・イヴァーノフ中佐!第1ウクライナ前線司令部の命により馳せ参じた!』
イヴァン・ペトローヴィチ・イヴァーノフ、ソ連空挺軍の中佐で第98親衛空挺師団直属の戦術機部隊長である。
ウィーン・ハイヴ攻略戦の折、フレツロフ大佐らと共に最奥で戦った者の1人だ。
イヴァーノフ中佐のMiG-27は右手に長刀を持ち、左手に突撃砲を持った状態で突撃を敢行した。
その後に彼が率いてきた戦術機飛行隊と第8、第9旅団付のMiG-27が戦線に加わった。
2個飛行隊を抑えていた戦術機級だがこのイヴァーノフ中佐の隊が加わったことにより完全に形成が逆転し、要撃部隊を撃退して彼らはここにきた。
早速脚部の旧結合部に火力を叩き込みつつ、何機かは右前足の切断に乗り出した。
接近してくる触手は全て長刀で切り裂き、関節部に遠方からKh-29空対地ミサイルを発射する。
命中して発生した爆発の中を飛び抜け両足で結合部に立つと破損部分に突撃砲を突っ込み、ゼロ距離射撃を叩き込んだ。
120mm弾と通常弾頭を1カートリッジ分全て叩き込み、即座にその場から離脱する。
これでこれで結合部にはかなり深いところまでダメージが入った。
更に続いたMiG-27が同じようにKh-29空対地ミサイルを全て叩き込み、物量で致命打を与えた。
完全に脆くなった結合部に地上のMiG-25PDSとYak-41らが保有する152mm無反動砲を数発食らって脚部が崩れ落ちた。
左前足が千切れ、前に倒れる。
脚部の結合部からは一気に体液が飛び散り、周辺が紫色に染まった。
「各機!断面に火力を集中しろ!このまま押し切るぞ!」
そう言ってモノガノフ大佐は自機が持つ突撃砲4門を同時に発射し、120mm弾を全て撃ち尽くした。
その上で周りの戦術機は152mm弾や125mm弾を発射し、残っている空対地ミサイルや長距離空対空ミサイルを全て撃った。
終いにはMiG-27が保有するKh-31が両方の断面に叩き込まれ、限界が達していた重要塞級はいよいよ火力に耐え切れなくなり、地面へ斃れ絶命した。
『要塞級の機能停止を確認!』
「今のうちに爆薬を設置しろ。各機は監視要員の無人機のみ残して退避急げ!ここは間も無く吹き飛ぶぞ!」
何機かのSu-24MPとMiG-27が持ってきた爆弾を各所に設置し、起爆タイマーを起動した。
その隙に全ての戦術機はやってきた通路から撤退を開始し、可能な限りハイヴから距離を取った。
エネルギー炉が吹っ飛んだ時の衝撃がどれくらいかは4日前に身を持って知った。
全速力で安全地帯まで飛び、安全地帯のラインを越えても彼らは後方へと急いだ。
そして起爆タイマーが作動し、同時に数カ所から爆発が起きてその衝撃と炎がエネルギー炉に引火して誘爆を誘う。
ベルリン・ハイヴは再び大広間から巨大な爆発に包まれた。
爆発の近くにいるBETAは問答無用で消し炭さえ残らずに消失し、辺りに衝撃波が撒き散らされ、大広間の地面は崩落した。
1985年1月24日、ベルリン・ハイヴ第二のエネルギー炉は再び多数のBETAを巻き込んで消失した。
これが今次戦争におけるスペツナズと空挺軍の最後の大戦果であった。
1月24日、エネルギー炉の消失を受けて再びベルリン・ハイヴの戦線は大きく崩れた。
第二のエネルギー炉消失は特にBETA側に大きな損害を与えた、特にエネルギー炉を守っていた守備隊とモノガノフ大佐らを迎撃しようとしていたBETAが纏めて吹き飛んだ為だ。
しかもこの守備隊は普通に戦っていれば後4、5日は確実に戦線を維持出来る程度には兵力が残っていた、これが纏めて消失したというのは大きい損害である。
エネルギー炉の誘爆が与えた被害はこれだけではない、再び地中崩落が発生しいよいよ第三階層のBETA群にも多大な被害が出た。
これにより生き残った大広間の守備戦力は遅滞戦闘を行いつつ、各所で地下への撤退を開始した。
国連軍は後退するBETAを執拗に追いかけ、各所の広間を制圧して拠点を確保し、24日の夕方には第三階層への橋頭堡を確保した。
着々と国連軍はベルリン・ハイヴの地下深くまで攻め込んでいる、それもまだ兵力に余裕があった月の頭とは比較にならない速さで。
流石にこの状況に対してベルリン・ハイヴも焦りを見せ始めていた、まだ第二階層に残っている第三のエネルギー炉の守備を固めると共に残りの兵力を全て第三階層へと移した。
しかもベルリン・ハイヴはこの時自身の考えた策略が全て外れようとしていることに薄々気づき始めた。
超重光線級を完成させて地上に持ち込むより先に全てのエネルギー炉が破壊される可能性の方が高く、何より肝心の同胞達の加勢が全く来ない。
ベルリン・ハイヴは再三に渡って地球圏への追加戦力を要求していたが返答は常に『余力がなく暫く待たれよ』という内容ばかりで一向に増援が来ない。
火星圏に一大拠点を構築しているBETAだが火星圏からも『先の船団投入で資源なく、派遣は難しい』として全く増援を送らない様子であった。
もしかすると地球圏に残ったBETAは全て他の同胞から見捨てられたのではないか、そんな疑念が湧き始めていたのだ。
ベルリン・ハイヴの予想は的中していた、既にBETAの最高意思決定存在は地球圏に対する進出を完全に打ち切った、単純に採算が合わないからだ。
地球圏には1973年の進出以来何度も、何度も数え切れないほどの船団を送り続けてきた。
そのうち地球内に到達出来た個体も数刻絶たずに消滅し、地球圏との連絡は取れず終いであった。
しかも1981年には地球圏の衛星に展開していた重頭脳級すら消息を絶った、これで地球圏に展開していたBETA群とは完全に連絡が取れなくなっていた。
そして1984年、火星圏のBETAを中心とした大船団による地球進出部隊を展開したが結果はあろうことか全滅、1,200はいた船団が全滅したのだ。
明らかに地球圏1つに対してかける労力に対するメリットが全く見合っていない、そもそも地球圏から資源が送ってこられたことは一度たりとも無かった、メリットすらない星である。
よって意思存在は地球圏進出を取り止め、当面の間地球圏へBETAを送ることを禁じた、ベルリン・ハイヴは見捨てられた。
そのことは地球にいる全ての者が知らない事実であった。
各国の首脳も軍司令官も、前線にいる将兵も、ベルリン・ハイヴですら己が見捨てられたことを悟るだけで完全には知らされていなかった。
ある意味では勝敗は決したとも言える、ただ誰しもがまだ勝てる、まだ負けるかもしれないと思って最後のハイヴ戦に臨んでいた。
それはベルリン・ハイヴの地下から出たところにある簡易整備場で補給と整備を受けているベルグロフ大佐ら”ウリヤノフスク”の海軍航空隊も同様であった。
幾らエネルギー炉を二つ堕としたとはいえまだベルリン・ハイヴ最奥の重頭脳級を仕留めたわけではない、ハイヴ内を完全に制圧するまで油断は出来なかった。
1月25日のベルリンは軽雪が降っていた、天気は薄ら曇りで触れれば溶ける雪がベルリン全体に舞っている。
攻勢が始まった12月14日からベルリンの天気は常に曇りで霧雨や小雨が降っており、気温は12月、1月のドイツらしい低いものだった。
将兵は皆軍用コートを着込み、手袋をつけてしっかり厚着していた。
このようなベルリンの気温、やはり地域によって捉え方はまちまちであった。
例えばNATO軍、WTO軍の大半の国々はこのような雪と寒さには慣れていた、同じヨーロッパということもあるからだろう。
派遣できた日本軍や韓国軍もさほど気にしてはいなかった、冬というのは大体こういうものだと認識ていた。
一方でニュージーランド、オーストラリアのような国々からするとベルリンの冬はかなり寒かったらしく、本国の1月と全然違うと嘆いていた。
当然だが”ウリヤノフスク”の面々はこれくらいの寒さには慣れていた、クリミアだって1月になれば南部の沿岸でも0℃に達する。
ベルグロフ大佐の生まれ故郷である
降り落ちる雪を見ながらふとベルグロフ大佐は昔のことを呟いた。
「子どもの頃、冬になるとソリを持って学校の友達と坂から滑ったものだ。懐かしいよ」
「それ、私もやりましたよ。懐かしい思い出です」
ベルグロフ大佐とミハールキン中佐は笑い合った、娯楽に飢えた子ども達がやる遊びはどこも似たり寄ったりなのかも知れない。
今ではやることといえば雪を眺めながらタバコを吸い、その熱を感じて戦闘の疲れを癒すことだ。
「今もどこかで子ども達は遊んでいるんだろうな」
「でしょうな、そんな子ども達を守るのが我々の役目です」
「そして全ては党と労働者と人民の為に、だな」
「先に全て言われてしまいました」
互いに苦笑を浮かべ再びタバコを吸った、口から溢れるタバコの煙が灰色の空に溶け込んで消えていった。
ふと後ろを振り向くと部下の衛士数人が2チームに分かれて雪玉を作っては投げて雪合戦をしていた。
一体いくつだお前達はと問いかけたくなるような光景だが元気なのはいいことだ、次の出撃する時の体力は残しておいて欲しいが。
「奴らは元気だねえ」
「同志大佐も混じってきたらどうです」
「私これでも今年38歳なんだよ?今更そんなっ」
そう言っていると流れ弾の雪玉がベルグロフ大佐の顔面にぶつかった、大人が握った雪玉なのでちゃんと硬いし、大人が投げた雪玉なのでちゃんと痛い。
「まずいっ連隊長に当たった!」
「逃げよう!」
衛士達はいきなり慌て始めたが時既に遅し、顔の雪を払ったベルグロフ大佐が雪玉を投げながら追いかけてきた。
到底38歳とは思えない光景ではあったが戦いの中で楽しめる時は存分に楽しんでおく必要がある、そうでないといつか戦場から心が帰れなくなる。
尤も帰れなくなるのと戦場が帰してくれないは別問題なのだが。
「大佐ー!全機の整備完了しました!いつでも出撃出来ます!」
「そうかー!直ちに行く!」
持っていた雪玉を投げ捨て、ベルグロフ大佐はミハールキン中佐や他の部下達と共に走り出した。
いつまでも子どもではいられない、ゴーリキーで坂を下っていた少年は今や空母のスキージャンプ台から空へと駆け上がる存在となった。
そして誰かの為に戦いへ向かう存在へとなった、海軍大佐の階級とソ連邦英雄の称号をぶら下げて。
海鳥は再びベルリンの地下へ潜る。
出撃した”ウリヤノフスク”海軍航空隊の戦術機部隊はベルリン・ハイヴに潜り、第三のエネルギー炉攻略に従事した。
こちらの攻略は1月21日辺りから始まっており、容赦のない戦術核弾頭の投入と絶え間ない戦術機の投入によって軍全体の負担を下げ、BETAにこの上ない損害を与えていた。
基本的にBETAの迎撃というのは光線属種、戦術機級や超重突撃級のような上級ユニットを除くと大抵が接近戦を仕掛けてくる。
その為国連軍側としては多少前進してBETAにちょっかいをかけ、後はひたすら火力戦に持ち込めば連隊規模が来ようと旅団規模が来ようと確実に撃退出来た。
これを繰り返すことによって少しずつ前に進みつつ、確実にBETA全体の兵力を削いでいた。
無論BETA側も秘密通路を用いて奇襲攻撃を仕掛けたり、兵士級や闘士級の特攻戦術で迎撃していたが主力が平押しでは結局勝てていない。
本来はこのような事態を防ぐ為にベルリン・ハイヴが要撃級、戦車級の強化プランを考えていたのだがどれも技術的な問題が発生して間に合わなかった。
通路には無数のBETAの死骸が転がっており、広間の奥からは銃声が聞こえる。
その銃声の下で幾百、幾千ものBETAが死んでいた、稀に襲来する戦術機級も善戦はすれど152mm弾や空対地ミサイルの集中射撃を喰らって撃破された。
今もチェコスロバキア人民空軍のMiG-23MFとハンガリー人民空軍のMiG-23MFが発射するロケット弾と突撃砲の弾丸によって一挙に前衛の要撃級と戦車級集団が壊滅した。
そこへTO-55の火炎放射器を取り付けたチェコスロバキア人民空軍のMiG-23MFが現れ、まだ前進してくるBETA集団に対して業火の炎を浴びせかけた。
BETAだって生き物である、焼かれれば死ぬし戦闘不能になる。
火炎放射器を用いたハイヴ内掃討はリヴォフ・ハイヴから続く戦法であり、なんだかんだ最後まで有効な戦い方であった。
後方からは新たな戦術機部隊が到着した、”ウリヤノフスク”の海軍航空隊だ。
Su-27Kを指揮官機含めて27機、MiG-29Kを12機保有するこの航空隊は各飛行隊ごとに分散し、ハイヴの最奥を目指していた。
「各機間も無く前線だ、戦闘に備えろ」
これ以降は友軍はいるがまだBETAとの交戦地域であり呑気に飛行しているだけでは済まない。
上級司令部の命令通りに分かれ道の通路の片方を進み、周辺を警戒しながら警戒要員として展開している小隊規模BETA群を粉砕する。
すると前方から数十体の闘士級と戦車級が一斉に突っ込んできた、恐らく自爆特攻でこちらの戦力を削る気だ。
「各機弾幕を張れ、連中を近づけさせるな」
2門の突撃砲に加えてSu-27Kの両腕に取り付けられたGSh-1-30航空機関砲が弾幕を展開し、接近する戦車級と闘士級を薙ぎ払った。
Su-27、MiG-29は両腕に内蔵型の兵装としてブレードか機関砲を取り付けられる、殆どの衛士は後者を選んでいた。
最も危険な存在を始末するとベルグロフ大佐率いる15機のSu-27Kは更に前線へと突き進んだ。
『大佐、前方4,000メートル地点に友軍を確認。取り残された部隊のようです』
「確認した、友軍を救出しつつ周辺のBETA集団を叩き潰す。各機戦闘開始!」
ベルグロフ大佐の命令を受けて3機ごとの編隊が幾つか先行し、ベルグロフ大佐らの前に出る。
先んじて向かったSu-27Kの編隊は迎撃としてやってくる改突撃級らのレーザーを掻い潜り、Kh-29空対地ミサイルや152mm弾を発射して撃退し、そのまま後続の戦車級らを蹴散らしながら前へ進んだ。
恐らく大隊規模が確実にいたが臆することなく火力を叩き込み、航空爆弾や機関砲の弾幕射撃で数を減らした。
改突撃級も先行する友軍機を追撃していると後から来たベルグロフ大佐のSu-27Kから放たれた2発の120mm弾を非装甲部に喰らって爆散した。
吹き飛ぶ改突撃級の肉片を潜り抜け、周辺のBETAに火力を叩き込む。
粗方BETAを撃滅するとベルグロフ大佐は飛行隊長に退路の確保を命じ、何機かのSu-27Kと共に友軍が孤立している広間へ向かった。
「こちら”ウリヤノフスク”海軍航空隊、救援に来た、状況を報告せよ」
一気に広間に突入し確認出来る敵に対して突撃砲とS-8ロケット砲を撃ち込んだ。
『こちらはソ連防空軍戦術機飛行隊、助かった!広間の制圧後に後方をBETA群の強襲を受け撤退が困難な状況、4機撃墜され残存機3機は中破!』
「離脱を支援する、損傷機は損傷箇所を報告せよ」
孤立していた部隊はソ連防空軍の戦術機部隊でありMiG-25PDSを装備していた。
うち3機は確かに脚部や腕部を破壊されており、片腕で突撃砲を持ってBETAと戦っていた。
『うち2機は問題なく飛べます、1機は跳躍ユニットを片方やられてますが支えてやれば入り口までジャンプ出来ます』
「よし、持ってる兵装の残りで敵を殲滅しろ。通路にはこっちの部隊が確保しているから臆さず行け」
『了解!』
MiG-25PDSは手持ちの突撃砲とロケット弾を全て撃ち尽くし、持っていた空対地ミサイルも全て発射して降りてくる改突撃級らを撃破した。
これで広間に残るBETAは殆どいなくなり脱出の隙が出来た。
その間に何機かのSu-27Kが反対側の通路から展開しようとするBETAにロケット弾と突撃砲弾を浴びせ、侵入を阻止した。
「今だ!」
ベルグロフ大佐の合図によりMiG-25PDSが一斉にジャンプし、損傷機を優先して広間から離脱させた。
通路内ではまだ飛行隊長率いるSu-27KとBETAが交戦中であったが後は残敵を掃討するだけという程度であった。
『先に行け!離脱するんだ!』
『すまない!』
Su-27Kの援護を受けながら残存するMiG-25PDSは戦線から離脱した。
その間にベルグロフ大佐らは反対側の通路に展開するBETAを撃滅し、広間周辺の安全を確保した。
暫くすると通路で戦っていたSu-27Kらも合流し、飛行隊の機体が全て揃った。
『友軍機は無事に戦線を脱しました』
「そうか、よかった」
『しかし後方のBETAは一体何処から現れたのでしょうか。報告においてもあそこにBETAがいるということは何も』
ミハールキン中佐は疑問を投げかけた。
「隠し通路だろうな、怪しいとすればあの二股の道か」
ハイヴ内に秘密の地下通路が存在することは度々ある、それが原因で最奥にまで辿り着いたケースだって報告されている。
そのデータは当然モースク1にも入っており、ベルグロフ大佐が動かすSu-27Kはモースク1のサポートシステム搭載型であった。
突然コックピットモニターに反応が現れ、何もないとろころをロックして危険であると指し示していた。
戦術機のコックピットモニターは頭部やサブカメラと連動しており、計画当初のプランとは違って網膜に直接映像を焼き付ける方法は取っていない。
焼き付けるとしてもターゲティングシステムやサポートなどが表示されるだけであり、直接的な映像はコックピットのモニターに映っていた。
それに近年は顎につけるヘッドギアにヘッドマウントディスプレイを装着した方が安上がりだということでこちらの方を多く取られていた。
ベルグロフ大佐も同様にヘッドギアにヘッドマウントディスプレイを装着し、そこに高度やターゲティングシステムなどが表示されている。
今回の謎のロックオンはこのディスプレイにもモニターにも映っていた。
「どういうことだ…?」
怪訝に思いつつもベルグロフ大佐は長刀を持ち出してロックされた箇所を突いてみた。
『大佐…?』
するとガシャンという音と共に周辺が一気に崩れ、広間に新たな道が生まれた。
『おお…!よく気がつきましたね』
「いや機体が勝手に……さてはモースクか…?」
ベルグロフ大佐は謎の行動の正体に気がついたが今は気にするタイミングではないので通信を繋げて上級司令部に連絡を取った。
「950001ベルグロフ大佐より司令部へ、新たなハイヴ内通路を発見した。これより調査を敢行する為追加の増援を要請する」
『了解、そちらに増援を送る。しばし待たれよ』
「了解、各機今のうちに弾倉を交換しておけ。また潜ることになりそうだ」
増援として”ウリヤノフスク”海軍航空隊の他飛行隊とアメリカ海軍の”エンタープライズ”から出撃した第11空母航空団の戦術機飛行隊が合流し、一行は秘密通路から地下へと向かった。
度々BETAの襲来を受け、幾つかの広間を制圧、そのまま大広間まで向かった。
しかしハイヴから丁度1キロ地点で彼らも戦術機級の強襲を受けた、数は37体でうち13体は騎兵型であった。
応戦する戦術機はF/A-18、F-14、MiG-29K、Su-27K、性能としては申し分ないが1対1で勝てる相手ではなかった。
今も2機のSu-27Kが左腕をもがれ、1機のF/A-18が足を切断された。
『クソッ!』
「損傷機は退避しろ!」
ベルグロフ大佐はその辺に落ちていた152mm無反動砲を拾って戦術機級の背中にほぼゼロ距離で数発叩き込んだ。
2発の近距離射撃で背面装甲が破れ、その後の3発が致命打となった。
1体の戦術機級が倒され、周辺の戦術機級はこの個体は危険であると3体ほどが襲い掛かってきた。
そこへKh-31空対艦ミサイルを搭載したMiG-29Kが2機同時にミサイルを発射し、3体を纏めて始末した。
『ご無事ですか!』
「命拾いしたよ!」
別の箇所ではSu-27Kが手持ちのKh-31空対艦ミサイルを全て騎兵型に向かって発射した。
うち1発は騎兵型の胴体に直撃して一撃で仕留め、うち1発は騎兵型のシールドをその左手ごと吹っ飛ばした。
左手を失った騎兵型はランスで損傷部をカバーしようとしたがその前にF-14が高速接近して損傷箇所に120mm弾を撃ち込んで致命傷を与えた。
別の場所では何機かのSu-27KとMiG-29Kが3、4体の戦術機級を引き付けている間にF/A-18が3機ほどその背後からAGM-65マーヴェリックを叩き込んだ。
一度に6発のマーヴェリックを背中から喰らった戦術機級は流石に耐えられずに爆散した。
残り2体の戦術機級は互いに背中を合わせてシールドを構え完璧な防御隊形を取ったが、固まった所に別方面からやってきたF/A-18がGBU-24を叩き込んで打撃を与えた。
爆発の衝撃と熱で一部の装甲が破損し、非装甲部にはかなりのダメージを受けた。
装甲が剥がれた地点にF-14がAIM-54フェニックスを叩き込み、2体の戦術機級を仕留めた。
低空を高速で飛行しながらベルグロフ大佐のSu-27Kが戦術機級が振るった長刀と触手を避け、腕のGSh-1-30航空機関砲を触手に叩き込んで千切った。
一時的に近接装備を1つ失い、後ろからミハールキン中佐のSu-27Kが現れて長刀で戦術機級の左腕を切断し、断面に突撃砲の120mm弾を叩き込んだ。
2発の120mm弾でBETAの左上半身が首ごと吹き飛んで動かなくなった。
「これで10体…!」
『大佐!アメリカ軍の飛行隊と共に先に大広間へ向かってください!』
副連隊長のオスマノフ中佐がそう進言し、ベルグロフ大佐は迷ったが部下を信じてオスマノフ中佐の意見を取り入れた。
「……分かった、第2飛行隊は私と共に大広間へ向かう。第11空母航空団、そちらも続かれたし」
『了解、ブラックナイト、サイドワインダーズはベルグロフ大佐に続け。残りはここで戦術機級を抑えろ!』
「かたじけない、では各機私とミハールキン中佐に続け!」
『我々でエネルギー炉を爆破するぞ!続け!』
2機のSu-27Kが先んじて戦術気球の妨害を振り切り、通路の奥へと駆けた。
その後に無数のSu-27KとF-14、F/A-18が続き、大広間へと向かった。
これ以上の進撃を防がんと迫っていた改突撃級や要撃級、戦車級を鎧袖一触と言わんばかりに蹴散らし、ベルグロフ大佐らもエネルギー炉のある大広間まで到達した。
「各機警戒しろ!話だと何かしらデカブツが出てくるって話だ……!」
最奥には必ず守備戦力の要として何かしらの個体がいる、それがいつ襲い掛かってくるかは分からない。
だがついに”
「母艦級!?」
『いえ、母艦級よりも小さい!恐らく母艦級をベースにした戦闘ユニットです!』
この個体の系譜はどちらかといえばザグレブ・ハイヴから出てきた装甲母艦級に近い、全長は180メートルと母艦級の1/10であったが母艦級より安価で戦闘に向いている。
顔面からはレーザーが照射され、全身の射出機構からは体内に貯めてある兵士級を出して特攻させることが出来た。
このせいで大広間に突入した戦術機部隊は攻撃どころか接近することすら難しかった。
後に軽母艦級と呼ばれるこの個体は火力と俊敏性を活かして大広間内を荒らし周り、定期的にレーザーを照射してエネルギー炉を守った。
「これじゃあ全く近づけん!」
軽母艦級はレーザーを照射した後即座に移動しながら兵士級を射出して空中でG元素爆発を起こし誰も近づけなかった。
レーザーも高火力かつ1発が長いものが同時に数十秒間照射される、しかもレーザーが動く為周辺の壁が一気に抉れた。
『ベルグロフ大佐殿!このままじゃあ全滅だ!』
「分かっています…!だが撃つ手があるはず……」
ベルグロフ大佐は考えた、丁度そのタイミングで軽母艦級のレーザー照射が開始した。
ふとベルグロフ大佐は照射後に次のレーザー照射が始まるまでの時間を数えた。
1回のレーザー照射から次の照射に至るまでの間は36秒、丁度重光線級のレーザー照射のクールタイムと同じ秒数だ。
これで確証が持てた、軽母艦級は36秒間レーザーを撃っていないのではなくレーザーを撃てないのだ。
であれば一撃入れられるチャンスはある。
「一か八かやってみるか……ミハールキン中佐、私がやられたら指揮は頼むぞ」
『大佐…?何を言っているんですか…!?』
レーザー照射が始まり、また数十秒間火力が投射され続ける。
その間にベルグロフ大佐のSu-27Kは可能な限り低空から距離を詰め、レーザー照射が終わると飛び上がって丁度軽母艦級の顔面が見える位置にまで達した。
既にターゲットロックはしてある、ベルグロフ大佐はミサイル発射のスイッチを押して機体に搭載されている2発のKh-31空対艦ミサイルを軽母艦級の顔面に叩き込んだ。
Kh-31は直撃し、見事に軽母艦級の顔面を砕いて周辺部ごと吹き飛ばす。
周辺の装甲が顔面を覆い隠してそのまま地中に戻るがあれでは当分の間レーザーは撃てないだろう、1つ火力の投射能力を潰した。
「これでレーザーは封じた!後は連結部の非装甲部を叩け、これしか打ち倒せる方法はない!」
『了解!』
暫くすると以前よりも不規則な動きのまま軽母艦級は姿を現して再び暴れ出した。
兵士級の爆発を掻い潜りながら各海軍戦術機は軽母艦級と対峙した。
3機のF-14が同時にAIM-54フェニックスを発射し、5発ほど非装甲部に命中させる。
爆発と同時に周辺に体液が飛び散り、1箇所だけ兵士級の射出機構が潰れて動かなくなていた。
その間に回り込んだ2機のF/A-18もマーヴェリックを4発撃ち込んでダメージを入れ、別の箇所ではSu-27K2機がKh-31空対艦ミサイルを叩き込んで特に大きなダメージを与えていた。
未だにかなりの速さで動き、兵士級をばら撒いてくる軽母艦級だが速力に関しては顔面を破壊されたタイミングから相当遅くないっている。
それでも戦闘能力は依然として存在し、今も尻尾を天井に叩きつけて無理やり岩石を降らせてきた。
『なんてタフなやつだ!』
「だがダメージは通ってる、このままいけば倒せるぞ!」
『大佐、我々の侵入方向より増援接近中!日本海軍のF-14Jです!』
「来てくれたのか!?」
ベルグロフ大佐の発言通り12機の青い機体色に日の丸が描かれたF-14Jが大広間内に突入してきた。
これで”出雲”、”エンタープライズ”、”ウリヤノフスク”、前の事変で共に戦った三隻の空母艦載機部隊が再び同じ場所に集ったことになる。
現れたF-14Jは軽母艦級を見るなり残っていたAIM-154スーパーフェニックスを全て軽母艦級に叩き込んだ。
炸裂するクラスターミサイルが装甲部、非装甲部問わず軽母艦級にダメージを与え、今までで比較的一番いい打撃となった。
『こちら”出雲”海軍航空隊!前の戦の礼、斯衛軍に変わってお返しする!』
更なる攻撃を喰らって動きが鈍くなったところにF-14JはAIM-54やAGM-65マーヴェリックなどを叩き込んで追加ダメージを与えた。
「助かった!各機、これが最後だと思って撃ち尽くせ!」
『了解!』
兵士級の爆発を掻い潜りながら、或いは爆発する前に突撃砲とGSh-1-30機関砲で叩き落としながらSu-27Kは軽母艦級に接近し、持っている空対地ミサイルとロケット弾、突撃砲の120mm弾を全て叩き込んだ。
これが何箇所かで同時に発生し、ついには限界が達したのか移動した際に地面に当たった軽母艦級の半身が千切れた。
相当のダメージだったのか大量の体液を吐き散らしながら見る見る内に動きが鈍っていく。
そこへKh-31空対艦ミサイルを持ったSu-27KとAGM-84ハープーン空対艦ミサイルを持ったF/A-18が同時に千切れた軽母艦級の断面に向けて対艦ミサイルを発射した。
4発分の空対艦ミサイルを喰らった軽母艦級はそのまま体の殆どが爆散、軽母艦級は死んだ。
最後、トドメと言わんばかりにベルグロフ大佐のSu-27Kが軽母艦級の首元に長刀を突き刺し、確実に息の根を止めた。
「我々の……勝ちだ」
ソ連海軍、アメリカ海軍、日本海軍、ハイヴ内で海軍航空隊が手にした大戦果である。
1月25日、ベルリン・ハイヴに存在する第三のエネルギー炉は消滅した。
残りは後2つ、人類の刃は着々とベルリン・ハイヴの最奥に差し迫っていた。
つづく