マブラヴ グレートパトリオティックウォー   作:Eitoku Inobe

103 / 108
我らは大いなる飛翔を果たす
新たな時代の魔術師だ
鷲の如く飛ぶ飛行士たちは
青き空の支配者だ
-”我らは大いなる飛翔を果たす”より抜粋-


死神と天使との舞踏会 ダウンフォール作戦⑦

「クソッ!」

 

フレツロフ大佐のMiG-29は超戦術機級が振り回す巨大なレーザーブレードを回避し、左腕から機関砲レベルのレートで発射されるレーザー弾を避けた。

 

距離を取れば超戦術機級が操る浮遊砲台がレーザーを撃って追撃してくる。

 

これが明らかに数十基以上あり、撃墜してもすぐに追加が来る。

 

これなら攻撃は殆ど通じないし一撃で機体の半分が吹き飛ばされる攻撃を繰り出してくる超戦術機級の側にいた方がマシだ。

 

即座にモースク1が操作するM-21が突撃砲で何基かの浮遊砲台を破壊し、フレツロフ機を助けた。

 

一時的にオールレンジ攻撃を回避すると今度は超戦術機級が重光線級レベルのレーザーを2発放った。

 

なんとか回避に成功したがレーザーが直撃した箇所は大地が割れ、破片が飛び散り、周辺は溶解していた。

 

背中から触手を出してレーザーを放ち、フレツロフ大佐のMiG-29を追い詰める。

 

だが彼もここまでやってきた技量とソ連軍の全てを結集したモースク1がいる、即座にレーザーを回避してアフターバーナーを吹かせて触手に接近した。

 

そのまま長刀を振り回して何本かの触手を切断して超戦術機級の戦闘能力を削いだ。

 

時間稼ぎを行う為に超戦術機級は重レーザーを発射してフレツロフ大佐の接近を阻止し、触手を体内に戻した。

 

「なんだあの個体!?出力が他の戦術機級と段違いだ!」

 

"全身の重装甲がエネルギータンクの代わりになっている。それに頭脳級から直接エネルギーを供給している。出力が絶える訳がない"

 

「まずはあっちを潰さなきゃいけないか……」

 

超戦術機級(Super Fighter-class)はサイズとしては通常の戦術機とほぼ同じであるが、背中には禍々しい羽のようなものが生えており、装甲は他の個体より明らかに分厚い。

 

それでありながらラザフォード場の大出力によって戦術機級以上の機動力と浮遊力を有しており、両腕にはかぎ爪のようなものが大口径のレーザー発射口を備えていた。

 

しかも一番厄介なのが今の超戦術機級にはベルリン・ハイヴの重頭脳級のデータが全てインプットされており、浮遊砲台を遠隔でコントロール出来る。

 

つまり超戦術機級は単なる強力な個体ではなく、重頭脳級が自ら戦う為に拵えた専用の鎧のようなものだ。

 

「モースク、なんとかお前の機体で重頭脳級を潰せないか。新種は俺が抑える」

 

"了解、そちらにもサポートをつけよう"

 

ハイヴ内に侵入した何機かのシュメリィ-1とM-21がMiG-29の側に現れ、戦闘態勢を取った。

 

まずフレツロフ大佐のMiG-29が先行し突撃砲で牽制しつつ、迫る浮遊砲台をS-8ロケット砲と突撃砲で破壊した。

 

この浮遊砲台は光線級を戦車級の肉体に融合させ、ラザフォード場で浮けるようにしたものだ。

 

故に強力ではあるが突撃砲でも撃破出来るし、その分量産性が高い。

 

背後からのレーザー射撃もラーニングを重ねたモースク1の攻撃予測にフレツロフ大佐の技量を合わせてなんとか回避していた。

 

これも先に最奥に突入して散った戦士達のお陰だ、彼らの犠牲は無駄ではなかった。

 

遠距離攻撃では埒が明かないと考えた超戦術機級はレーザーブレードを振り回し、接近戦に持ち込んだ。

 

このレーザーブレードも本来の長刀と刃の長さは同じなれど、太さは比べ物にならない。

 

正に大剣という言葉が相応しく直撃した壁は刃の跡を鮮明に残し、衝撃が周囲に走った。

 

その間に背後を取ったM-21が2発のKh-66空対地ミサイルを発射した、無論放たれたミサイルは防御のラザフォード場に弾かれて消失したが注意を向けさせるには十分であった。

 

M-21が持ってきた戦術機級の長刀を手に取ったMiG-29が刃の先端を超戦術機級のラザフォード場に押し当てた。

 

しかし出力が強大で先に長刀の方が限界が来て徐々に刃が削れていった。

 

押し切れないと分かるとフレツロフ大佐は長刀を捨てて急いで距離を取った。

 

その間も浮遊砲台による追撃を受けたが地面に置いておいた突撃砲を手に取って何基か撃墜し、自身の長刀を手に取って更に2基切断した。

 

他のM-21と共闘しながら超戦術機級の注意を引き付け、別で動くM-21に攻撃が行かないようにした。

 

「なんだって俺が無人機なんかの囮をしなきゃいけないんだ!」

 

”エネルギー源を断つ為だ”

 

「分かってるよ!」

 

腕部のGSh-30-1を用いて弾幕を展開し、迫る浮遊砲台を仕留めて可能な限り相手の火力を引き下げた。

 

とは言っても即座に浮遊砲台は追加が来る為1基、2基撃墜した程度では対して変化はないのだが。

 

超戦術機級の戦闘能力を一気に引き下げる為にはまずラザフォード場の展開を破壊し、その上で武装の詰まった手足か背中の羽を破壊しなければならない。

 

触手や浮遊砲台はいくら破壊しても即座に再生するか追加が来る為焼け石に水だ。

 

何よりこちらの攻撃が全く通じないのが度し難い、何十機もの戦術機が挑んでは撃墜される訳だ。

 

無数の浮遊砲台は作業中の無人機らにも強襲を仕掛けた、迎撃のM-21や何故かどこからともなくやってくるQF-4やプレデターが応戦するも半数は撃墜された。

 

「このままじゃ持たんぞ!」

 

”気をつけろ、敵に動きがある”

 

警報が鳴り響き、コックピットモニターに映る超戦術機級は突如両腕を中心に出し、謎の構えを取った。

 

この時超戦術機級はラザフォード場の展開状況を変更し、両腕の鉤爪を基点に正面へ集中展開していた。

 

そのまま出力を高め超戦術機級はフレツロフ大佐に向かって突進を仕掛けた。

 

ラザフォード場の重力場を真正面から受けた機体は当然ただでは済まない、辛うじてフレツロフ大佐のMiG-29は突進を回避したが後ろにいたM-21とQF-4は破壊された。

 

フィールドを再展開して防御モードに変更し、レーザー弾幕射撃を今度はフレツロフ大佐に叩き込んだ。

 

「クソッ!なんでもアリじゃねえか!」

 

ほぼ無限に近いエネルギーを供給している超戦術機級はエネルギー切れに全く気にする様子もなく、今度はレーザーブレードの刃を凄まじい勢いで飛ばしてきた。

 

最奥の壁の至る所に十字型の斬撃痕が残り、回避が遅れたM-21の足を切断し、その後ろから浮遊砲台がトドメを刺した。

 

フレツロフ大佐は斬撃と斬撃による岩壁の破片を回避しながらホバー移動に近しい形で地上を高速で浮遊し、脚部のロケット弾で浮遊砲台を破壊した。

 

「おい!まだ終わらないのか!作業!」

 

”間も無く起爆する”

 

モースク1がそういうと重頭脳級周辺で幾つかの爆発が起きた、そのことに気がついた超戦術機級は重頭脳級周辺にいた全てのM-21とQF-4を撃破し、取り付いていた無人機を全て追い払った。

 

だがこれも全て囮であるということを重頭脳級は知らない。

 

モースク1はこの時フレツロフ大佐に離脱要請を出し、彼と何機かのQF-4、M-21は一旦離脱した。

 

迎撃しようかと思った矢先超戦術機級はある方向から1発の砲弾が重頭脳級に発射されたことに気がついた。

 

即座に浮遊砲台を回して砲弾を放ったM-21を撃墜したが既に砲弾は重頭脳級に突き刺さり、”核爆発を起こした”。

 

あの程度の爆発では確かに重頭脳級は仕留められない、だが152mmとはいえ核砲弾を喰らえば重頭脳級だって無傷では済まない。

 

即座に超戦術機級は可能な限りのエネルギーを蓄えつつ最大出力のラザフォード場を展開し、核爆発とそれによって巻き起こる誘爆に耐えようとした。

 

核爆発によってベルリン・ハイヴの重頭脳級は凄まじいエネルギーを撒き散らして炸裂し、最奥を全て巻き込むほどの爆発と衝撃が大広間中に炸裂した。

 

数十秒経った後全てのエネルギーが放出されて辺りは何事もなかったかのように平静を取り戻した。

 

超戦術機級はラザフォード場を解除し即座に離脱させていた浮遊砲台を周辺に飛ばして離脱したMiG-29らを探した。

 

あれだけの爆発が起きてもラザフォード場を最大出力で展開していた超戦術機級にはなんのダメージもなく、全く問題ない様子で周囲を歩いていた。

 

かつて自身であった重頭脳級の残骸を目にし、破壊された断面を指でなぞる。

 

今更かつての肉体を失ったからなんだというのだ、最早やがて朽ちるのだから遅かれ早かれ訪れる未来だ。

 

この時点でベルリン・ハイヴのエネルギー炉は全て消失し、ハイヴとしては死んだ。

 

だがまだ重頭脳級は残っている、全てに恨みを抱いて、この事態を引き起こしたたった1人の衛士を絶対に仕留めると覚悟を決めて。

 

後方へ離脱したフレツロフ大佐を確認した超戦術機級はまず浮遊砲台を先行させ、その後本体を引き連れて自身も仕留めに向かった。

 

何をしてもあれだけは絶対に生かして帰さない、道連れにしてでも仕留める。

 

今まで大使命を果たさんとしていたベルリン・ハイヴであったがここに来て初めてたった1人に執着を見せた。

 

それも当たり前かも知れない、自身の経験と技術の粋を集めて作り上げた超戦術機級、これと戦って無事でいた上に共闘して裏を掻いて重頭脳級すら破壊した。

 

屈辱だった、当然だが憤りを覚えたし、意地でも下してやりたくなった。

 

ベルリン・ハイヴが覚える感情は憤怒、屈辱、どれも怒りや妬みばかりだ。

 

恐らくこの時フレツロフ大佐は初めてBETAから恨みを買った個人となった、そんなことは通知らず後方の無人補給所で燃料補給とロケット弾、弾薬の補給を行っていた。

 

跳躍ユニットに十分燃料を入れ、燃料タンクからホースを外して蓋を閉めると、置いておいた突撃砲を手に取り、戦闘態勢に移行した。

 

「さてと、あの爆発で野郎は死んでるかな」

 

”生きている、真っ直ぐこちらに向かっている”

 

「あークソ、なんでだよ」

 

この簡易補給所は戦闘をするには狭すぎる、フレツロフ大佐は急いで更に後方へ退き、後ろの広い空間へ向かった。

 

当然だがこの間にもフレツロフ大佐の下には何基かの浮遊砲台が現れ、レーザーを放ちながら追撃してきた。

 

「野郎なんたってこんな便利なもんばかり作りやがって!!」

 

レーザーを避けながら両手の突撃砲2門と両腕のGSh-30-1機関砲で弾幕を展開して3、4基を破壊した。

 

これで少しは楽になるかと思ったら即座に超戦術機級が現れ、まず重レーザーを発射した後に接近してレーザーブレードを振り回してきた。

 

もう少し通路が狭かったら即死だった、辛うじてレーザーも斬撃も避けたフレツロフ大佐はそのまま全速力で広めの空間に突入しその広間で超戦術機級と対峙した。

 

「モースク、うちの連隊は、誰か援護に来られるか?」

 

”未だ全機戦闘中、救援は90%の確率で来ない”

 

「だよなぁ……とにかくシールドを引き剥がす。その後連中にもう一度大火力を叩き込んでやる」

 

フレツロフ大佐は長刀と125mm対物砲に持ち替え、超戦術機級と向き合い、殺し合う。

 

周りにはモースク1が引き連れてきた無人機と超戦術機級が操作する浮遊砲台がいる。

 

この戦いの終わりは近い。

 

 

 

 

同じ頃ハイヴ内では第306独立親衛戦闘航空連隊の面々が戦術機級と死闘を繰り広げていた。

 

まず先に足止めに入ったオルゼルスキー少佐とシュペーギン少佐の飛行隊、24機あるMiG-29のうち8機が損傷したがそれでも戦い続けていた。

 

その上でなんとか1体の騎兵型と4体の戦術機級を仕留め、確実に数は減らしている。

 

それでも戦場を荒らし回る改騎兵型が中々に厄介で、こちらはまだ装甲すら破れていなかった。

 

『まず戦術機級を仕留めろ!306307は騎兵型の方へ!』

 

『了解!』

 

3機のMiG-29はうち1機を別の隊に回し、編隊長とウィングメイトの片割れで戦術機級と対峙した。

 

シールドを構えて防御を取り、右手からレーザーを放ちながら接近を食い止めようとするが隊長機が兵装担架の突撃砲2門と左手の125mm対物砲を放って戦術機級を攻撃する。

 

その間に回り込んだウィングメイトのMiG-29が左肩部に向けて120mm弾を発射した。

 

防御が一瞬遅れた戦術機級の左肩、特に非装甲部に爆発の衝撃波と破片が直撃し、損傷して体液を流していた。

 

これにより戦術機級はシールドを持とうにも重さがネックとなり、やむを得ずシールドを捨てた。

 

代わりに両腕から触手を出して範囲攻撃を繰り出し、接近を食い止めようとするが逆に遠方から火力を投射した。

 

特に効いたのが隊長機が損傷した左肩に向けて近接用短刀を投擲し、見事に当てたことだ。

 

命中した刃が更にダメージを深め、戦術機級の左腕をほぼ無力化する。

 

触手の動きも鈍くなり今がチャンスとばかりにウィングメイトのMiG-29が触手を回避して首元に125mm対物砲のHEAT弾を叩き込んだ。

 

首が吹き飛んだのとほぼ同時にウィングメイトがKh-29空対地ミサイルを発射し、それに合わせて隊長機もKh-29空対地ミサイルを2発放って戦術気球を撃破した。

 

『仕留めた…!』

 

弾薬と体力を相当消費するがなんとか彼らでも戦術機級は仕留められる、問題はこれだけ打ち倒してもまだ6体ほど残っているということだ。

 

しかも1体が改騎兵型というのが一番の問題である、四本の腕からレーザーを放ち、長刀を振るって暴れ回っている。

 

損傷した8機のうち4機は改騎兵型に長刀を振り下ろされて腕を堕とされた。

 

オルゼルスキー少佐と彼の編隊は優先して改騎兵型と戦い、なんとか足止めしていた。

 

接近すると前の両腕で何度も斬撃を叩き込み、不意打ちで触手を射出してオルゼルスキー少佐の機体を追い回す。

 

少し距離が空くと今度は両腕のレーザーで追撃し、下がっても近づいても相手に攻撃を与え続けた。

 

相手に休む暇を与えず攻撃を叩き込むのが優れた戦い方である。

 

オルゼルスキー少佐が正面で改戦術機級の注意を引いている間に彼の僚機が背後からKh-29空対地ミサイル2発と120mm弾2発を叩き込んだ。

 

しかし改騎兵型は即座に小型シールドを後方へ向け、ミサイルと砲弾を全て防いだ。

 

『防がれた!』

 

『離脱する!』

 

改騎兵型は即座に後ろ脚と後ろ腕から触手を飛ばして2機のMiG-29を追撃する、しかも腕の触手は長刀付きで振りの攻撃範囲がとても広い。

 

以前は連隊全隊で戦ったから勝てた改騎兵型であるが、やはり3機だと引き付けておくことすら難しい。

 

改騎兵型の強みは多脚にして複腕、最低でも6機の戦術機と戦って圧倒出来るほどの性能を誇っている。

 

元々大広間のエネルギー炉を守っていた個体でもあるのだから多対一は手慣れたものであった。

 

『このまま抑える、シュペーギン!そっちはどうだ!』

 

『もう1体潰しました!合流します!』

 

シュペーギン少佐は僚機と共に足を刎ねて態勢が崩れた戦術機級に152mm無反動砲と125mm対物砲を集中投入して仕留めていた。

 

これで戦術機級は残り5体にまで減った。

 

『いや残りの戦術機級を全部潰せ、奴らをこっちに近づけるな!』

 

『了解!』

 

改騎兵型も厄介だが残りの騎兵型1体と戦術機級3体も十分な強敵だ、今改騎兵型と戦術機級を合流させずに分断出来ているだけでかなりのアドバンテージがある。

 

だが改騎兵型は単体で騎兵型の2、3倍ほどの戦闘能力がある、今も触手によって戦闘中であった1機のMiG-29が足を損傷した。

 

『チッ!助けに行けるだけ機体が持つかな…!』

 

オルゼルスキー少佐らが戦っている通路の奥ではデルーギン中佐と部下のMiG-29が戦術機級と戦っていた。

 

元々8体いた戦術機級であるがうち1体をフレツロフ大佐らを先に行かせるために撃破し、9対7の状況で戦術機級と対峙した。

 

一応2機は戦術機級より数が多いが本来は3対1で応戦するのが望ましい相手であり、数としては全く足りていなかった。

 

それでも各々の技量を合わせてなんとか場を持たせ、デルーギン中佐が遊撃的に動いて戦術機級にダメージを与えた。

 

その甲斐あってかなんとか7体いた戦術機級のうち4体を撃破し、残り2体を9機で袋叩きにしていた。

 

あるMiG-29が腕に取り付けたKh-29空対地ミサイルを発射し戦術機級はそれをシールドで受け止めた、だが側面から突如現れたデルーギン中佐のMiG-29が長刀で左腕を切断した。

 

シールドが失われるとデルーギン機が左足の関節部に120mm弾を撃ち込んで足を破壊し、戦術機級を転倒させた。

 

最後の足掻きで触手に長刀をつけて射出したがデルーギン中佐の僚機が長刀で切断し、ゼロ距離射撃で胴体に125mm無反動砲を3発撃ち込んで仕留めた。

 

残り1体は152mm無反動砲を集中的に叩き込んでまずシールドを破壊し、隊長機2機が近接戦に持ち込んで両手を刎ね、そのまま4機のMiG-29が戦術機級を串刺しにした。

 

トドメとしてデルーギン中佐が長刀で倒れた戦術機級の首を刎ね、確実に修復不可能な致命傷を与えた。

 

「……倒したか、各編隊ごとに残弾を報告しろ。損傷があればすぐに言え」

 

今の所デルーギン中佐のMiG-29は先に行ったブリツェンスキー中佐とルヴィロヴァ大尉の救援に向かってそのままフレツロフ大佐の手助けが出来る程度には弾薬が残っている。

 

次々と各編隊から残弾の報告が入ってくる、皆よく考えて戦ってくれたお陰かまだもう二、三戦戦える状態であった。

 

後はもうやることは決まっている。

 

「各機に伝達、我々はこのまま先に進んだチェバトフ大尉の編隊と合流し、全力を挙げてフレツロフ大佐を助ける。もう一度戦場へ行くぞ!」

 

デルーギン中佐が部下の士気を挙げた瞬間、8体の戦術機級が出てきた隠し通路から再び4体の戦術機級が雪崩のように現れた。

 

全員が一斉に戦闘状態に入り、戦術機級の側も破損したシールドや長刀を構えて双方戦闘が始まった。

 

『戦術機級4!損傷してます!』

 

「敗残兵が迷い込んできたか!邪魔だ、全員始末しろ!」

 

折れた長刀を振り回す戦術機級に対してデルーギン中佐は即座に120mm弾を撃ち込み、ダメージを負った後に長刀で非装甲部をなぞるように胴を切断した。

 

偶々戦闘から逃れて引き下がってきた戦術機級とかち合ったデルーギン中佐と第1飛行隊は暫く同じところで足止めを喰らっていた。

 

この後もデルーギン中佐の隊は戦車級や要撃級の敗残兵部隊と出会し、更に足止めを喰らうことになる。

 

フレツロフ大佐はまだ暫く1人で戦うことは確定していた。

 

 

 

 

第306独立親衛戦闘航空連隊の本隊からそれなりに離れた場所でフレツロフ大佐は超戦術機級と戦っていた。

 

度々発射されるレーザー弾の弾幕や大出力レーザーと触手、浮遊砲台から放たれる多角的な射撃を全て避けながら超戦術機級に接近する。

 

接近すれば超戦術機級は腕部のレーザーブレードで斬撃を繰り出してくる、度々接近したから分かったことだがあのレーザーブレードは任意で収縮して刃を短くしたり、逆に出力を上げてレーザー弾とほぼ同じ状態にも出来るらしい。

 

つまり接近したとてレーザーブレードの大きい刃が超近距離戦でネックになることはない訳だ、むしろ出力を最小にしてパイルバンカーのように運用も出来る。

 

逆に引き下がれば凡ゆるレーザー兵器で遠距離戦で執拗な攻撃を繰り出し、常時展開されるラザフォード場の影響で攻撃も通らない。

 

背中の羽も合わさってその姿はまるで鎌を持たぬ死神のようであった、正直鎌よりも伸縮自在のレーザーブレードの方が恐ろしい。

 

しかも中身は元重頭脳級だからか稀に戦車級や僅かに要撃級を召喚して嫌がらせをしてくる、小隊規模ではあるがこれが本当に厄介だった。

 

「本当にこんな奴どうにか出来んのかよ!」

 

”最奥のエネルギー源を絶ったことで奴の稼働時間も無限ではなくなった。最悪1日2日戦えば先に向こうがエネルギー切れを迎える”

 

「その前に俺が死ぬよ!!」

 

確かに理論上はこのまま奴が思いのまま暴れて疲れ果てるのを待てば勝てるだろう、だがその前に確実にフレツロフ大佐とMiG-29の方が先に限界が来る。

 

こういうのを机上の空論というのだがそれをモースク1が理解しているかどうか、無論モースク1もより現実的な策は知っている。

 

メデツィーニン中佐が過去2回の突入失敗を元に立案した作戦はこうだ、まず連隊ないし何機かの戦術機が最奥に突入して超戦術機級と戦闘を行う。

 

1隊は浮遊砲台の迎撃に務めもう1隊は超戦術機級と戦う、その間に可能であれば重頭脳級を破壊してエネルギー源を断つ。

 

その上で2隊は協働しながら超戦術機級のラザフォード場展開装置を発見してまずこれを破壊、その次にソ連軍が何ヶ所かに設置してある核爆弾の広間に誘い込み、これを起爆。

 

そこで倒せれば万々歳、それでもなお生きているのなら地上に引き摺り出して砲火力で始末するか、再び核爆弾の広間に誘い込むか。

 

難しい戦い方ではあるが確実に超戦術機級にダメージを与えられる戦い方ではあった。

 

問題は各隊が陽動に努めているので超戦術機級と戦うのがフレツロフ大佐とモースク1が操る無人機群だけということだ。

 

一応これでもモースク1の腕はソ連軍の凡ゆる衛士のデータを詰め込んだかなり高いものであるが如何せん動かす機体がMiG-21bisやF-4である為戦闘能力には限界がある。

 

今も回避し切れずに2機のM-21が四方八方からレーザー射撃を喰らって爆散した、マーヴェリックを発射したQF-4はその後にレーザーブレードで真っ二つにされている。

 

この時気になるのがモースク1が西側の無人機であるQF-4やRQ-1プレデターを連れてきているのかがよく分からないことだ、そもそもQF-4やプレデターはJUASの管轄である。

 

実態はモースク1がJUASの指揮統制ネットワークに介入して一部機体の指揮権を貸与という形で持ってきたものなのだが、状況が状況であるが故にフレツロフ大佐は詳しく聞かなかったしモースク1も喋らなかった。

 

実際プレデターやQF-4は戦力の増強として本当に役に立っている、仮に無人機であっても戦術機や攻撃能力を持った航空機は1機でも多い方がいい。

 

今も避け切れなかった浮遊砲台と触手のレーザーをQF-4が身代わりとなって庇ってくれた、悔しいがモースク1がいなかったら確実に100回くらいは死んでいる。

 

それでもムカつくからフレツロフ大佐はモースク1をなるべく粗雑に扱った。

 

「それでシールドの発生源は発見出来たか!?」

 

”まだ特定中、もう暫く耐えろ”

 

「もう十分耐えてるだろ!畜生!」

 

ベルリン・ハイヴの最奥に到達してからかなりの時間戦っている、にも関わらずまだ超戦術機級の本体に一撃も入れられてない。

 

ひたすらレーザー射撃を回避して浮遊砲台を撃墜しつつ触手を切断し、超戦術機級の注意を引く為に接近して効かないのを承知で突撃砲の弾丸を撃ち込んだ。

 

そのお陰か超戦術機級はフレツロフ大佐にずっと張り付いていた、少なくとも彼はそう思っていた。

 

実際は既に超戦術機級はフレツロフ大佐を何がなんでも倒すと決めており、実はフレツロフ大佐は何もしなくても超戦術機級は彼を狙って襲いに来る。

 

戦術機級は両腕のレーザーブレードを振り回して大広間を駆け回り広範囲に攻撃を叩き込み、全てが外れるとブレードを収納して触手と浮遊砲台の攻撃に切り替えた。

 

超戦術機級の攻撃は一撃一撃が即死級であり、それが広範囲に渡って展開される。

 

気を抜いていたら仕留められるし、緊張の糸で体が雁字搦めになっているような感覚だ。

 

だがここでようやく攻略の糸口が掴めた。

 

”目標の発生地点を特定、ターゲティングシステムに設定しロック”

 

「あれか!」

 

モニターには超戦術機級の複数箇所にターゲットロックが設定された、調べた限りではどうも両肩と両足に1基、胸部と背部に1基の合計6基のラザフォード場発生装置が取り付けられている。

 

超戦術機級は複数箇所のラザフォード場発声装置を駆使して全身にラザフォード場を纏い、凡ゆる攻撃を弾き続けていた。

 

背面の発生装置は超戦術機級の推進機器も備えているようで、とりわけ他の発生装置よりも大型だった。

 

恐らく一番守りが硬いのは背中の発生装置であろう、次点で胸部の発声装置、両肩両足は破る方法さえあれば突破出来る可能性が高い。

 

”撃破用に装備を持ってきた”

 

新たに入ってきたM-21が地面に戦術機級が運用していた長刀を突き刺して置いた。

 

フレツロフ大佐は両手に持っていた突撃砲と長刀を捨て、戦術機級用の長刀を手にした。

 

「相変わらず重い!」

 

”MiG-29では剣として扱うのは難しいだろう、目標に刺突を加えて破壊しろ”

 

「ああ、サポートを頼むぞ…!」

 

”任せてくれ”

 

凡ゆる攻撃予測がモニターに表示され、フレツロフ大佐はある程度確認しつつ長刀を構えた。

 

超戦術機級は触手からレーザーを放ってMiG-29を追い立て、無理やり接近戦に持ち込んだ。

 

右手のレーザーブレードを起動して大きく横一線にブレードを振り翳した。

 

本来ならレーザーブレードの直撃でMiG-29の胴体は真っ二つどころか上半身が消滅して頭と足だけになっているはずだった。

 

それが寸前で姿勢を低くしてレーザーブレードを回避し、丁度発声装置に命中するように長刀の刃を押し当てた。

 

暫くラザフォード場と長刀のコーティングが激突し、やがて刃がフィールドの中をすり抜けて肩の発生装置を切断した。

 

初めて超戦術機級の本体にダメージを入れた瞬間だった。

 

フレツロフ大佐は即座に機体を旋回させて右へ回り込み、間髪入れずに今度は右肩か右足の発生装置に狙いを定めた。

 

無論相手がラザフォード場発生装置狙いだと分かった超戦術機級は接近を拒否する為に触手と浮遊砲台を優先してMiG-29に差し向けた。

 

凄まじいレーザー弾幕を回避しながら戦術機級の長刀を機体全身を使うようにして振るい、何本か触手を落とす。

 

浮遊砲台は兵装担架の突撃砲で迎撃し、時にS-8ロケット砲を発射した。

 

その間にモースク1が操るQF-4とM-21はラザフォード場が展開出来なくなった左肩に火力を集中した。

 

一応胸部から発生される正面のラザフォード場と背面のラザフォード場と左足のラザフォード場がある為まだ攻撃は防げる。

 

それでも一部の120mm弾やKh-66空対地ミサイルは僅かな隙間を抜けて本体に命中していた。

 

無論1発2発の空対地ミサイルで傷がつく装甲ではない、しかし煩わしい攻撃は確実に思考をフレツロフ大佐と二分していた。

 

それ故に気づけなかったのだ、もしかしたら本体へ攻撃出来る個体が1体だけではないことを。

 

フレツロフ大佐は意を決して再び発生装置攻撃に乗り出した。

 

超戦術機級はレーザーの弾幕射撃で接近させないよう距離を保ったが狙いは攻撃を自身に集めることであった。

 

突如広間の中にフレツロフ大佐と同じ戦術機級の長刀を手にしたM-21が突っ込んできたのだ。

 

M-21はそのまま真っ直ぐ超戦術機級の右肩に吶喊し、長刀による刺突攻撃を繰り出した。

 

接近に気づいた超戦術機級は触手数本と浮遊砲台を回してM-21に火力を集中した。

 

両脚がもげ、左の跳躍ユニットも破壊され、左肩も頭部も吹き飛ばされて、最後は胴体にもレーザーを喰らったが残りの跳躍ユニットで速度を加算し撃墜される前に長刀の先端をラザフォード場発生装置に押し当てた。

 

M-21の爆発が最後の一押しとなって超戦術機級の右肩に長刀が突き刺さった、これで右肩からもラザフォード場を展開出来なくなった。

 

この衝撃が大きく、超戦術機級は一瞬だけフレツロフ大佐を見失った。

 

だがそれが致命打となった、アフターバーナーを吹かしたMiG-29が長刀を突きつけて真正面から胸部の発生装置に向けて刺突を繰り出す。

 

暫くラザフォード場と長刀の干渉で周囲に歪みが生じ、再び超戦術機級の意識はフレツロフ大佐の方へ向かった。

 

このまま仕留めてやろうとレーザーブレードを展開しつつ出力を落としてそのまま突き刺そうとした。

 

だがそうなる前に長刀はラザフォード場を突破して胸部の発生装置に先端が突き刺さり、耐久値の限界が来て刃が粉々に砕けた。

 

「緊急離脱!」

 

フレツロフ大佐のMiG-29は即座に長刀を捨てて跳躍ユニットを逆方向に噴射して一気にその場を離れる。

 

レーザーブレードは地面に突き刺さり、そのまま拳を地面に叩きつけた。

 

迫り来る触手と浮遊砲台のレーザーを回避しながらフレツロフ大佐は突撃砲と長刀を拾って戦闘態勢を整えた。

 

「半分も破壊してやったんだ!もう十分だろう!」

 

”防御用シールドの出力は最大値より65%低下している。現在の状態なら核攻撃も有効な攻撃方法になると考えられる”

 

「野郎を核の広間まで案内してやる!」

 

正面にラザフォード場を失った超戦術機級に125mm無反動砲のHEAT弾を2発叩き込んで注意を引き、次の広間まで引き付けた。

 

無論これに超戦術機級も呼応した、浮遊砲台を先行させ、その後から自身も向かった。

 

ラザフォード場発生装置を敵に破壊されるとは思っても見なかった、まさかこんなことになるとは、また1つ敗北感を覚えた。

 

それと同時にベルリン・ハイヴには思うところがあった、途中で右肩に長刀を突き刺した戦術機のことだ。

 

あの機体には恐らく”人(・)類(・)”という生命に近い存在は乗っていない、遠方から操作されている。

 

だが地球に降り立った時に人類がそのような技術を持っていたか、というよりあそこまで高い水準だったか疑問が残る。

 

あのMiG-29の周りにいた戦術機も全て無人、だがとてもあの数の規模をあの技量で動かせるとは到底思えない。

 

我ら頭脳級のような存在がいなければ。

 

そこでベルリン・ハイヴはある仮説を思いついた、ベルリン・ハイヴはフレツロフ大佐の隣に潜む存在を察した。

 

どこかしらの頭脳級が知らぬ間に奪われたか、もしくは頭脳級を模倣した何かを人類が作った、そうとしか考えられない。

 

そしてそんな存在を扱うあの機体と操縦者、余計に執着心を呼ぶ。

 

同胞を弄び、己を愚弄する存在だとベルリン・ハイヴはフレツロフ大佐を決定付けた。

 

必ず討ち倒さねば、せめて道連れにしなければ。

 

着々とベルリン・ハイヴはフレツロフ大佐に絡みつこうとしていた。

 

 

 

 

最奥側の通路では未だに改戦術機級とルヴィロヴァ大尉らが戦っていた。

 

なんとか3体いる戦術機級のうち2体は撃破したが、残り1体である改戦術機級には致命打を与えられていない。

 

攻防一体の改戦術機級は超戦術機級に比べると異次元の強さというわけではないが、その堅実な戦いぶりがルヴィロヴァ大尉達を苦戦させていた。

 

閉所においても触手によるレーザー射撃は火力増強の面で十分な役割を果たしており、改戦術機級本体は近接戦に集中出来た。

 

数本の触手によるレーザー射撃を回避しながらルヴィロヴァ大尉がGSh-6-30機関砲で全て破壊し、ブリツェンスキー中佐の後方支援を伴ってチェバトフ大尉の編隊が突撃を敢行した。

 

腕部から繰り出されるKh-29空対地ミサイルを左肩の小型シールドと脚部を覆う増加装甲によって防ぎ、接近する3機のMiG-29に斬撃を浴びせた。

 

装甲の合間を狙って繰り出される長刀の刃を薙刀の一振りでへし折り、一歩退いて薙刀による突きを繰り出した。

 

うち1機が最初の一撃を手持ちのシールドで防ぎ、僚機が120mm弾と手持ちの125mm弾を叩き込むが今度は右の小型シールドで防がれ、そのまま改戦術機級が大地を蹴ってタックルを仕掛けた。

 

回避が遅れたシールド持ちのMiG-29は後ろに下がったが改戦術機級の突撃を受けてしまい、完全に左腕が破損した。

 

『大丈夫か!?』

 

『左腕はもう動きませんが機体は無事です!戦えます!』

 

衛士は無傷、MiG-29も左腕以外はほぼ完璧に動く為戦争は出来たが、近接戦は難しい状態だった。

 

『下がって援護しろ!』

 

『私が代わりに出る、ルヴィロヴァ大尉、援護を頼む』

 

「了解…!」

 

ルヴィロヴァ大尉は改戦術機級と距離を取りながら触手をGSh-6-30機関砲で一掃し、改戦術機級には120㎜弾を叩き込んだ。

 

120mm弾は改戦術機級に着弾する前に炸裂して散弾になった。

 

散弾を喰らった改戦術機級は僅かに損傷し、防御の構えに移行するのが少し遅れた。

 

その隙に長刀を持ったブリツェンスキー中佐のMiG-29とチェバトフ大尉とウィングメイトのMiG-29が接近して近距離から120mm弾を叩き込もうとした。

 

まずブリツェンスキー中佐が長刀による斬撃を繰り出したが改戦術機級が右手で受け止め、その間に脚部の関節に向けられた突撃砲を薙刀で真っ二つにした。

 

『なんだと!?』

 

ブリツェンスキー中佐は即座に長刀を手放して突撃砲に持ち替え、120mm弾と突撃砲弾を叩き込みながら後ろに下がった。

 

改戦術機級は左手に持っていた長刀を手放して雑に地面に突き刺し、左手の切り傷を即座に回復させて薙刀を両手で持ち、反撃に出た。

 

攻勢は失敗したとしてチェバトフ大尉とウィングメイトもその場を離脱しようとしたが、背後から近接刀を取り出しチェバトフ機は右腕を、ウィングメイトは左足を切断されて右の太ももにも一撃だけ刺突を喰らった。

 

即座にルヴィロヴァ大尉がKh-29を叩き込んで改戦術機級を後ろに押し留めたが、その間にチェバトフ大尉の編隊は全ての機体が損傷機になってしまった。

 

『大丈夫か!?損傷度合いは!?』

 

『私の機体は右手が全損、部下は両足が動きません』

 

『跳躍ユニットは全機まだ動くな?』

 

『はい!』

 

ブリツェンスキー中佐は少し考えた、このまま彼らを戦わせても悪戯に改戦術機級の脅威に晒すだけだ。

 

友軍が一気に3機も減るのは中々心苦しいが仕方あるまい。

 

『チェバトフ大尉は僚機を連れて離脱しろ。離脱経路は作戦失敗時のものを使え、あそこなら確実に友軍の待つ補給所に戻れる』

 

『了解…!同志中佐と大尉の戦果を期待しています!』

 

3機はお互いに肩を組んでその場を脱した、時には勇気ある撤退も必要なことだ。

 

『さて大尉、我々2人だけになった訳だが……やれるか……?』

 

「勿論、全ては中佐の為、共に大佐を助けに行きましょう」

 

『援護を頼む、私が接近戦をどうにかする』

 

ブリツェンスキー中佐は機体のアンカーを射出して地面に突き刺さった長刀を手にし、手元まで引き寄せた。

 

一方の改戦術機級は完全に左手の損傷とルヴィロヴァ大尉に受けた散弾の破片傷を修復し、触手を全て射出して迎撃態勢を取った。

 

双方に並々ならぬ緊張が走る、ルヴィロヴァ大尉は額から零れ落ちる汗をぬぐい、操縦桿を握り締めた。

 

ここで死ぬわけには行かない、メデツィーニン中佐が待っている。

 

彼と生涯を添い遂げると遠い昔に決めたのだ、高々BETA1体に阻まれるわけには行かない。

 

改戦術機級は先に仕掛けた、触手を飛ばしてレーザーを放ち、ルヴィロヴァ大尉とブリツェンスキー中佐はお互いに回避しながらそれぞれの持ち場についた。

 

ルヴィロヴァ大尉は突撃砲とGSh-6-30機関砲で触手を迎撃し、突撃するブリツェンスキー中佐の負担を軽減する。

 

代わりにブリツェンスキー中佐は接近戦に持ち込んで、超至近距離で斬撃を振り、突撃砲を浴びせた。

 

通路という弊所故なんとか薙刀による大振りな斬撃は封じているがその分執拗に個を狙う技量の高い一撃が叩き込まれる。

 

斬撃を回避しながらブリツェンスキー中佐は反撃のタイミングを待った。

 

突きの一撃を避けると即座に足払いをするように薙刀が振られ、それも避けると刃が振り上がってくる。

 

この一連の動作を的確に繰り出しつつ時に触手や腕部のレーザーで意表をついた攻撃を合わせ、ブリツェンスキー中佐から反撃の機会を奪った。

 

であればこちらも相応の反撃をするまで。

 

「中佐!」

 

『分かった!』

 

ルヴィロヴァ大尉のMiG-29からKh-29空対地ミサイルが2発発射され、改戦術機級は即座に左肩の小型シールドでミサイルを防いだ。

 

その一瞬だけ攻撃の流れが打ち砕かれ、そこにブリツェンスキー中佐が上手く漬け込んだ。

 

まず改戦術機級の顔面に120mm弾を直射し、その次に左手に近接短刀を投擲した。

 

丁度左手の非装甲部に短刀が突き刺さり、左手が薙刀の持ち手から離れた。

 

更にMiG-29の足蹴りで右手から薙刀を落とし、改戦術機級の両手から一時的に武器を奪った。

 

『貰った!』

 

即座にKh-29空対地ミサイルと3門の突撃砲から120mm弾を肩と股関節、足の関節に叩き込もうとした。

 

だが改戦術機級は自らの弱点を知っている、即座に両肩の小型シールドと脚部の増加装甲を用いて攻撃を全て防いだ。

 

即座にまだ動く右手を背中の兵装担架もどきに添えて長刀を取り出し、爆発の煙を切り裂くように斬撃を繰り出した。

 

寸前でブリツェンスキー中佐の機体は横にズレて斬撃を回避し、背後から120mmの散弾を叩き込む。

 

破片が右肩の非装甲部と背面の付け根にダメージを与えたが切断するほどの威力ではなかった。

 

両腕の触手と背面の触手が今度はブリツェンスキー中佐を狙い、刺突とレーザー射撃を繰り出す。

 

『ええい!クソッ!大尉気をつけろ!そっちに向かったぞ!』

 

「分かってます…!」

 

改戦術機級の狙いはルヴィロヴァ大尉に変わった、手に突き刺さったままの短刀を引き抜いて投げ捨てると左手の傷口は速やかに塞がった。

 

神経系に近しい信号伝達回路も復活し、改戦術機級は左手にも近接刀を持って二刀流の構えを取った。

 

左手の刃がやや短い近接刀は逆手に持って反撃と防御を兼ね備え、右手の長刀は左腕の装甲と小型シールドの合間から出すことによって刺突と斬撃の双方に対応している。

 

ルヴィロヴァ大尉に切断された触手が回復するとブリツェンスキー中佐の方へ向かい、足止めの態勢が整ったところで一挙に改戦術機級の攻勢が始まった。

 

まず右手のレーザー弾を数発放って相手を牽制し、動きが鈍ったところを素早い大地の蹴りで接近し近接戦に持ち込む。

 

初撃の刺突は回避されたが即座に長刀を右に振り払って次の攻撃を打ち込んだ。

 

近距離で胴体部にシールド機関砲が撃ち込まれるがまだ装甲が破れるほどのものではない、冷静に左手の近接刀で機関砲を切断して破壊した。

 

爆発する機関砲とシールドの連結を解除し、機関砲を改戦術機級に投げつけた。

 

爆発を真正面から打ち破って改戦術機級は二本の刃で次々と斬撃を繰り出し、ルヴィロヴァ大尉に反撃するチャンスを奪った。

 

ブリツェンスキー中佐すら今までまるで反撃出来ずにいたのだ、ルヴィロヴァ大尉だって当然苦戦する。

 

「チッ!次から次へと!しつこい!」

 

長刀の刺突によって刃が左手のシールドを貫通したがこれで良い、むしろ刃を押し込んで絶対に抜けない体勢にし、シールドに取り付けられている爆発反応装甲の自爆システムを作動させた。

 

一斉に複数の爆発反応装甲が吹き飛びダメージとしてはそれほど高くはないが改戦術機級の動きを一瞬止めた。

 

その隙を狙ってルヴィロヴァ大尉は即座に長刀を手に取り改戦術機級に接近戦を仕掛けた。

 

まず左手の120mm弾で改戦術機級の小型シールドを片方吹き飛ばし、次に長刀の斬撃で左手の人差し指から小指までを切断した。

 

これにより左手から近接刀が溢れ落ち、断面からは身体の体液が一気に溢れ出した。

 

基本的にBETAに痛覚はない、あったとしても反応は薄い、特に戦闘用の改戦術機級ならなおのことだ。

 

改戦術機級は即座に長刀で切り上げ、ルヴィロヴァ大尉のMiG-29を撃破しようとした。

 

だが即座に上空に逃げられてそのまま背後を取られ、今度は背面についている兵装担架もどきを切断しようとした。

 

「貰った!」

 

それが罠とも知らずに。

 

まだ射出していなかった2本の触手がMiG-29の肩に突き刺さり、そのまま投げ回そうとした。

 

寸前でルヴィロヴァ大尉が触手を切断したからそこまでには至らなかったが、一瞬防御が崩れて改戦術機級のタックルを機体の右側面にもろに喰らってしまった。

 

「うわぁあああ!!」

 

『大尉!!』

 

機体の警報がけたたましく鳴り響き、凄まじい衝撃がルヴィロヴァ大尉の肉体を襲う。

 

そんな中でも彼女は跳躍ユニットを操作して衝撃を相殺し、可能な限り受け身を取った。

 

それでも機体の右手と右足、右跳躍ユニットは破損、肩部のロケットポッドが爆散した影響でMiG-29の右肩は抉れていた。

 

これでも機体の全てが破損するよりは圧倒的にマシな状態だ、まだ左足と左の跳躍ユニットは生きている。

 

ルヴィロヴァ大尉も軽く頭を打つ程度の怪我で済んでいた、まだ意識がある彼女は即座に左手の突撃砲を構えて戦闘態勢を取った。

 

『大尉!!離脱しろ!!聞こえているか!?私はいいから離脱するんだ!!』

 

ブリツェンスキー中佐はほぼ全ての触手と戦っていた為応援には中々駆けつけられなかった。

 

「……あぁ……中佐……」

 

離脱しようとする前に左手に持っていた突撃砲に突如改戦術機級の近接刀が刺さった。

 

左指を全て回復させた改戦術機級が投げつけたものだ。

 

改戦術機級はルヴィロヴァ大尉の前に現れて両手で長刀を握り締め、彼女の前に構えた。

 

これでは逃げられそうにない、どうやら自分はここで終わりらしいと諦めた、愛する人の立てた作戦で死ぬのだから本望ですらある。

 

元々ルヴィロヴァ大尉には父親がいなかった、父は航空事故で死んだ、母とも僅かに過ごした記憶はあるがある日を境に捨てられた。

 

それから父方の親戚の家で大尉は育てられた、悪い人達ではなかったが彼女の心の中にはどこか虚無の部分があった。

 

その虚無を埋めてくれるのがメデツィーニン中佐だった、彼だけが虚心に満ちた器を満たし、世界に色を取り戻してくれた。

 

何をやっていても心ここに在らずだったルヴィロヴァ大尉であったがメデツィーニン中佐と共にいる時だけは本当に充実した気持ちになった。

 

たった数年のうちにメデツィーニン中佐は彼女の全てになり、中佐の為なら死ぬことだって厭わなくなった。

 

だからこの結末も別に悪くなかった、欲を言えば後100年は添い遂げたかったが。

 

改戦術機級の刃は振り下ろされようとしていた、今となってはブリツェンスキー中佐も間に合わない。

 

だから”彼(・)が(・)来(・)た(・)”。

 

突如通路から1本の長刀が改戦術機級の肩に直撃し、刃が振り下ろされずに地面に突き刺さった。

 

刺さった長刀はそのまま柄についたアンカーが引っ張って持ち主の下に戻り、遠方から125mm対物砲と2門の突撃砲から120mm弾が放たれた。

 

改戦術機級は左肩の傷口を押さえながら小型シールドで攻撃を防ぎ、一旦後ろへ退き下がった。

 

『待たせたな大尉!!』

 

「……中佐……?」

 

モニターを見ると通路の奥から1機のMiG-29が現れ、損傷したルヴィロヴァ大尉のMiG-29の前に着陸した。

 

第306独立親衛戦闘航空連隊には3機ほど予備のMiG-29が装備されていた、そのうちの1機がこれである。

 

そして操縦する衛士はその声の主の通り、メデツィーニン中佐であった。

 

「もう大丈夫だ!よくやってくれたな…!後は……私に任せろ……!」

 

メデツィーニン中佐のMiG-29は長刀と突撃砲を構え、改戦術機級と向き合った。

 

『しかし……』

 

「これでも連隊長殿の戦友なもんでね。モースク、全ての攻撃パターンを提示、まずルヴィロヴァ大尉がやってくれた右腕を潰して一挙に攻めかかる!」

 

”了解”

 

モースク1に命令を出して触手の攻撃を提示し、それに合わせてメデツィーニン中佐はルヴィロヴァ大尉の代わりに攻勢に打って出た。

 

『参謀長!?なんでここに!』

 

「いいから、私が攻め出したら隙を見て背後をつけ、いいな?」

 

『了解…!』

 

「では行こうか!」

 

まず改戦術機級のレーザー射撃を全て回避し、左右に流れながら改戦術機級に接近した。

 

触手の何本かがメデツィーニン中佐のMiG-29に迫るが突撃砲とS-8ロケット弾で叩き潰し、壁を蹴って距離を縮めた。

 

改戦術機級の斬撃を回避すると長刀を振るうと見せかけて125mm対物砲を右肩に突きつけ、ほぼゼロ距離でHEAT弾を2、3発叩き込んだ。

 

小型シールドを失い、最初の数発で装甲が破れ、そのまま右肩が爆散する。

 

右腕を丸ごと失った改戦術機級は即座に触手を振り分けてメデツィーニン中佐の接近を阻止した。

 

レーザーの集中射撃をモースク1の攻撃予測を読みながら全て回避し、そのまま触手を引き付ける。

 

モースク1は攻撃予測を行いつつ失われたメデツィーニン中佐の右目の代わりとなった、彼が対処し切れない右側の攻撃はモースク1が対応している。

 

今度は攻撃が半分になったブリツェンスキー中佐の番だ。

 

突撃砲とZU-23-2機関砲で触手をズタズタに引き裂き、隙間を縫って背面の付け根にKh-29空対地ミサイルを撃ち込んだ。

 

左側の跳躍ユニット擬きが吹き飛び、これで触手が半分以上使えなくなった。

 

この隙を逃さずメデツィーニン中佐は命令を出す。

 

「デルーギン!」

 

遠方から125mm対物砲のHEAT弾が発射され、防御が疎かになっていた左足の関節を撃ち抜いた。

 

左足が砕けて潰れ、改戦術機級の体勢が崩れた。

 

デルーギン中佐は遠方にいるMiG-29のコックピットの中でこれ以上にない笑みを浮かべていた。

 

足が千切れ落ちるのとほぼ同時期にメデツィーニン中佐は斬撃を繰り出して触手を切断し、そのまま長刀の一振りで改戦術機級の首を落とした。

 

少し上空に飛ぶとメデツィーニン中佐は上から改戦術機級を見下ろし、付け根と首の非装甲部にありったけのKh-29空対地ミサイルを叩き込んだ。

 

ミサイルが全て命中すると改戦術機級は爆散し、完全に死んだ。

 

メデツィーニン中佐のMiG-29は着陸し、周辺を警戒しながらルヴィロヴァ大尉の下にまで戻って離脱の準備を始めた。

 

「ガハァッ!!ハァッ……ハァッ……ハァッ……」

 

久々の長時間操縦と戦闘で肉体に凄まじい負荷が掛かり、メデツィーニン中佐は吐血し全身の古傷が傷んだ。

 

持ってきた痛み止めを服用し、なんとか痛みを抑えて損傷したルヴィロヴァ大尉のMiG-29を拾い上げた。

 

「このまま離脱するぞ……一旦下がって補給を受け、奴を助けに行く……!」

 

身体が痛むからといってまだ戦いを辞めるわけにはいかない。

 

まだ戦友(フレツロフ)が戦っているのだから。

 

 

 

 

 

長刀の斬撃とS-8ロケット弾で2基の浮遊砲台を撃墜し、続いて本体に120mm弾を叩き込んだ。

 

「こいつも弾切れか!」

 

残弾がなくなった左足のS-8ロケット弾をパージし、再び速度を上げて目的の場所まで急ぐ。

 

なんとか空対地ミサイルは温存しているが既にロケットポッドは2つほど使い果たし、残りは肩の2つのみとなった。

 

長刀も長らく使いっぱなしである為刃こぼれを起こし、傷がついていた。

 

もうそろそろ補給を受けたいのだが未だに超戦術機級の追撃が続いており、フレツロフ大佐は全く休む暇がなかった。

 

「連隊のアイツらは……」

 

本当は部下達が心配だがこんな状況では助けに行くことも出来ない、そもそも自分の命が危うい状態だ。

 

今も超戦術機級が大出力モードのレーザーブレードを突き上げてMiG-29を消し飛ばそうとしたがなんとか回避した。

 

1回1回の攻撃が大きく、回避する度にフレツロフ大佐の神経を削っていった。

 

先ほどからモースク1による攻撃予測も予測にしては雑さを感じるほど広範囲に危険があると記されていた。

 

だが雑な判定などではなく超戦術機級は予測の幅を超える以上の攻撃を叩き込んでくる。

 

レーザーブレードの突き上げが失敗すると超戦術機級は触手によるレーザー射撃が叩き込まれた。

 

このレーザー射撃ですら通常の戦術機に命中すれば一撃で破壊出来る威力を持つ、故に超戦術機級は全ての攻撃がフレツロフ大佐からしてみれば即死級の威力を持つものだった。

 

”連隊の戦術機は戦闘を終え整備と補給作業に入っている。メデツィーニン中佐の報告では整備が終了次第君の支援に向かうとのことだ”

 

「出来れば早くして欲しいね……!これじゃあ俺だって長く持たないよ!!」

 

125mm対物砲を発射して通路の岩壁を破壊し、超戦術機級の妨害に用いた。

 

だが超戦術機級は残っている3つのラザフォード場発生装置の出力を上げ、降り注ぐ破片を跳ね除けて突き進んだ。

 

「全く妨害にならねえじゃねえか!!」

 

無法を誇る超戦術機級の性能には恐怖を通り越して怒りが込み上げてくる、いつもいつもBETAの変異種はこちらよりスペックが2、3倍高い。

 

今度は超戦術機級からレーザー弾幕射撃が叩き込まれ、通路の至る所にレーザー弾痕が残った。

 

しかも途中から弾幕射撃は1本のレーザーブレードに変化し、両腕のレーザーブレードがフレツロフ大佐のMiG-29を襲った。

 

寸前で速力を下げてレーザーブレードの合間に入ったことで斬撃で消失することはなかった、今度は超戦術機級の体当たりを受けかけることになった。

 

だがもう間も無く目的地である核を備えた部屋に辿り着くことになった。

 

「よしっ!!」

 

ブレーキをかけつつ着陸し、MiG-29は戦闘態勢に入って超戦術機級を迎え撃った。

 

超戦術機級が広間に入るとMiG-29のコックピットに3分のカウントダウンが始まり、凄まじい速度で時間が経過していった。

 

この広間に超戦術機級が侵入した瞬間から時限爆弾化した核弾頭の起爆が始まったのだ。

 

「最低でも2分はこの場で戦う、支援頼むぞ…!」

 

”了解、離脱の支援は任せてもらいたい”

 

通路から何機かのQF-4とM-21が出現し、フレツロフ大佐のMiG-29と共に3分ほど戦闘を開始した。

 

触手が周囲にばら撒かれ、入ってきた最後の浮遊砲台と共にレーザーを発射して戦術機を迎撃する。

 

フレツロフ大佐のMiG-29は冷静に1発ずつのレーザーを回避して弾幕の中を掻い潜り、超戦術機級に接近して至近距離で125mm対物砲を叩き込んだ。

 

一応本体の装甲に命中したがこれも頑丈で僅かに煤がついた程度である。

 

即座に後ろに下がってM-21やQF-4らに近接戦を任せ、フレツロフ大佐は残りの浮遊砲台を全て撃墜して回った。

 

この戦いは時間稼ぎとその場に縛りつけるという2つの目的があり、その為には時間を気にしつつある程度は本気で戦う必要があった。

 

だが本気で戦っていると3分などあっという間に過ぎていた。

 

”フレツロフ、もう限界だ。離脱しろ、残りは私がやる”

 

「頼んだぞ…!」

 

迫る触手を長刀で切断すると突撃砲に残っていた120mm弾を全て超戦術機級に撃ち込み、隙を見てフレツロフ大佐のMiG-29は広間から脱出した。

 

時間は丁度40秒ほど、MiG-29の速力であれば40秒かければ確実に安全地帯まで到達出来る。

 

当然フレツロフ大佐を意地でも殺そうとする超戦術機級であるからMiG-29を追って広間を出ようとした。

 

それを周りのM-21やQF-4が抑え、プレデターやシュメリィ-1が攻撃を叩き込んで食い止める。

 

ラザフォード場の合間を抜けて取り付く無人機を触手やレーザーブレードで撃破し、フレツロフ大佐を追いかけようとした。

 

しかしその度にQF-4やM-21が出現し、超戦術気球を広場に押し込む。

 

何機かは攻撃を行い、うち何機かは身を挺して超戦術機級を広場に留めた。

 

ほぼ1個飛行隊分の無人機の犠牲も相まって凡そ40秒という長い時間を稼ぎ切ることが出来た。

 

超戦術機級が異変に気づく頃には周囲の核爆弾が同時に起爆し、爆発と衝撃波がハイヴの大広間中を包み込んだ。

 

凄まじい熱エネルギーがラザフォード場を越えて本体にダメージを与え、やがて残るラザフォード場も全て破壊した。

 

当然だが周辺の無人機は全て消失し、超戦術機級にも凄まじいダメージが叩き込まれた。

 

爆発が治るとフレツロフ大佐は何機かの無人機を引き連れて爆発跡地である大広間に戻ってきた。

 

「仕留めた……訳ではなさそうだな……」

 

あの核爆発を喰らって驚くべきことに超戦術機級は機体の原型を留めていた、表面は黒焦げになっているが残っているだけで驚きだ。

 

”まだBETAの反応がある、あれは生きている”

 

「だろうな……様子がおかしいぜ……」

 

焼けこげた装甲が次々と剥がれて地面へ落ちていく、まるで生き物の脱皮のようだ。

 

最終的に全ての装甲が砕け、中から新しい戦術機級種が出現した。

 

今度の個体はより異質であった、戦術機級というより全てのBETAとあまりにも姿形が似ていないのだ。

 

普通醜悪さを伴う姿をしているのがBETAであるがこの個体は違う、美しい蝶のようなそんな雰囲気も漂わせていた。

 

以前の姿が死神というのならこちらは死の天使であろう、白い全身装甲に白い二枚羽、これが超戦術機級の第二形態である。

 

≪必ず、其方を始末する。我が大使命の為に≫

 

新たな姿となった超戦術機級は両翼と腕部から再び重光線級レベルの巨大レーザーを照射し、広間の一方向を焼いた。

 

寸前でフレツロフ大佐は回避に入っていたから助かったが直撃を受けたM-21とQF-4は一撃で足を二本残して消滅した。

 

そのまま超戦術機級は逃げようとするフレツロフ大佐を追い回す、明らかに速力が第一形態より早くなっている。

 

「こんなのにどうやって勝つんだよ!」

 

”展開するラザフォード場は一面的なものだ、向こうもエネルギータンクとエネルギー炉を絶たれて限界が来ている。むしろ勝ち筋が見えてきたぞ”

 

「他人事みたいに言いやがって!!とにかく作戦のプラン通り地上に引き摺り出す!野郎を砲火力で仕留めるぞ!」

 

≪いつまでも逃げ続けるな、必ず其方の命を我々の大使命の糧とする≫

 

再び巨大なレーザーブレードを放ち、超戦術機級はフレツロフ大佐を追い回した。

 

どうやらこの戦いの幕引きは彼が受け持つこととなったようだ。

 

終戦は近づいている。

 

 

つづく

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。