マブラヴ グレートパトリオティックウォー   作:Eitoku Inobe

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ブレスト通りが町を通っている
つまりはこの道が我らを、
つまりはこの道が我らを、
ブレスト通りが我らを西へ導くのだ
-”ベルリンへの道”より抜粋-


プラハ・ハイヴへ

-日本帝国領 帝都京都 斯衛軍総監部-

以前より斯衛軍の参謀本部こと総監部は帝国の都たる京都に位置していた。

 

公武合体以降、かつての大日本帝国は富国強兵を旨に国軍の近代化を進め、やがては奉天会戦でロシア帝国クロパトキン軍を打ち破るまでに成長する。

 

対する斯衛軍もフランス、当時プロイセンの先進的な軍事制度を取り入れ、日本軍と並ぶ近代化を果たした。

 

総監部もその過程で導入され、斯衛軍の参謀本部としての機能を手にした。

 

少なくとも日露戦争の頃まで、彼らは城内平和を合言葉に一致団結出来ていた。

 

例えば乃木希典大将の第三軍が制圧せしめた旅順攻囲戦では斯衛第二師団が第三軍の下で激戦に参戦した。

 

当然戦死者も数多く出たが彼らは祖国日本の為に英霊として大陸の土に消えていった。

 

後の奉天戦でも当時は存在していた満州斯衛軍が参戦し、共にクロパトキン軍を打ち破った。

 

こうした協力関係が徐々に破綻するのはポーツマス条約以降、第一次世界大戦中からである。

 

基本的に斯衛軍は第一次世界大戦の戦闘には参戦せず、欧州には幾人かの観戦武官を派遣した。

 

ここで最初の亀裂が生まれた。

 

1914年に起こったドイツ帝国膠州湾租借地の青島における戦いで日本軍は勝利を得た。

 

だがこれに対しある斯衛軍の将官が「長すぎる」と批判したことが問題となったのだ。

 

圧倒的な火力戦による制圧は旅順攻囲戦から得た戦訓であるが、側から見れば臆病風とも見受けられ、その将官は「突貫精神が足りん」と批判を述べたのだ。

 

無論日本軍側からは大きな反発があった。

 

メディアから言われるのも癪だが、剰えそこに斯衛軍まで乗っかられては我慢の限界であった。

 

なおこれに対しては斯衛軍側からも先の将官の批判は不適切であり、見当違いであるとの声が上がった。

 

その将官は旅順攻囲戦には参戦していなかったが当時の斯衛第一師団長を始め、斯衛軍内部にも旅順攻囲戦に参加した者は多く、むしろ彼らは作戦を指揮した神尾光臣将軍らを高く評価していた。

 

こうした亀裂は斯衛軍側の内側からの批難もあって早々に沈静化した。

 

問題は大戦終結後である。

 

第一次世界大戦は国家の凡ゆる物を戦争に注ぎ込み、戦争を続けるという総力戦体制であった。

 

特にドイツ帝国ではプロイセン参謀本部からエーリヒ・ルーデンドルフという怪物が生まれ、彼の参謀本部独裁はドイツ帝国そのものを支配した。

 

そしてその影響は日本の特に陸軍に強い影響を与えた。

 

影響を受けたうちの1人が後の永田鉄山であり、彼は大日本帝国が総力戦を戦い抜く上で大日本帝国の武家制度と斯衛軍、何より政威大将軍という皇帝、首相らに続く3つの権力は非常に煩わしかった。

 

後に誕生する一夕会では現在軍中央を牛耳る旧勢力の打倒だけでなく、総力戦体制移行の為に斯衛軍を日本軍へ統合させよと題目を掲げていた。

 

無論斯衛軍も自らの利権を守る為に当然反発する。

 

この前段階では第二次護憲運動が始まっており、そもそも武家制度と政威大将軍制度に疑いが出始めただけでなく、斯衛軍には陸相宇垣一成大将による軍縮の波が押し寄せてきた。

 

日本陸軍は宇垣軍縮によって4個師団を削減したが、斯衛軍もまた宇垣軍縮の余波によって京都を守る斯衛第一軍から1個、東京守護の斯衛第二軍から2個師団を削減した。

 

そもそも宇垣大将は斯衛軍を日本軍のうちに取り入れ、近衛師団と融合させてさらに取り潰す気でいた。

 

3個師団削減も言わば折衷案であり、後の回顧で宇垣は「斯衛軍軍縮は半分失敗だった」と後悔を口にしている。

 

彼らの恨みによって宇垣は後に組閣に失敗する事となり、国内からの反武家感情は武家と民衆の乖離と武家の先鋭化を産む事となる。

 

一夕会は後に分裂し、永田鉄山ら統制派と荒木貞夫、真崎甚三郎ら皇道派に分かれる事となるがそれでも斯衛軍の指揮権統合は両者互いに目論み続けていた。

 

こうした斯衛軍と日本軍の対立は1982年になり敗戦を重ねた今でも残り続けている。

 

それに加えて信真ら革新派と既存の旧守派の対立、後に日本政軍関係史を研究する人々を苦しめる難敵として立ちはだかる。

 

尤も当人からすればそんなことはどうでもいいことだ。

 

我が勢力、我が家の拡大と安全が第一であり、その為なら争うことも厭わない。

 

新たに総監に就任した九條輝光大将もそうした人物の1人である。

 

輝光は斯衛軍士官学校では信真より3つほど上の学年であり、面倒見もよく部下には慕われていた。

 

戦術機導入当時、准将の地位であったにも関わらず信真と共に戦術機の操縦技術を覚え、初代斯衛派遣軍司令に就任した。

 

尤も部下の損害を出すまいとドバイに籠り、それが災いして信真と交代になってしまったが。

 

そんな輝光が斯衛軍総監になれたのは本人の実力に加えて五摂家会議で敗軍となった九條家への配慮というのが大きかった。

 

結果輝光は大将へ昇進し、斯衛軍総監として総監部に足を運んだ。

 

「九條閣下、就任おめでとうございます」

 

「おやおやこれは奥平殿、これからよろしく願いします」

 

奥平貞親中将、斯衛軍副総監の地位にあり旧守派の1人として知られている。

 

彼の側には兵務局長的部新守少将、人事副局長浅尾影哉准将がいた。

 

彼ら3人、旧守派の急先鋒であり特に人事局の影哉は局長に変わって実権をほぼ全て握っていた。

 

「少しよろしいか?2人で雑談でもしたい」

 

「私でよければ」

 

輝光の了承を受けた貞親は新守と影哉に先に行くよう命じ、2人はその場を後にした。

 

それから輝光と貞親は暫し雑談を交わしていた。

 

「就任早々、猊下よりなじられたようですな」

 

「ああ、ええ。お恥ずかしい限りです。猊下は斯衛軍時代、派遣軍として私の後任を務められましたから、思うところがあるのでしょう」

 

それでも普段の信真からすれば輝光に対する叱責はそこまで重いものではなかった。

 

声も特に荒げていなかったし、むしろこれからに期待するような発言も加えていた。

 

輝光が旧守派の中でも比較的穏健であり、革新派の意見も取り入れてくれることがそうした要因だろう。

 

「ですが九條閣下より猊下へ任が譲られた後、派遣軍は大変大きな損害を受けたと聞き及んでおります」

 

「大攻勢ですし、仕方ありませんよ。むしろ斯衛軍の高名を挙げたとも言えます」

 

「ですが軍内からは不満が出ているとか」

 

輝光は数歩歩いた所で立ち止まった。

 

そこで輝光は態とらしく返す。

 

「そんなこと、猊下が就任する前からそうだったではないですか。決まってしまったのなら我らは軍人として、武士として主君に仕えるまでです」

 

「猊下が武家に死を申し付けてもですか」

 

「その時は我ら皆で忠義を賭してお止めするまでの事、奥平殿」

 

輝光は貞親の手を握り締め、彼に頼み込んだ。

 

「その時は是非お力添えをお願いしたい」

 

「無論のこと、我ら皆で斯衛軍を盛り上げていきましょう」

 

2人は固い握手と共にその場で別れ、それぞれの場所へ戻った。

 

斯衛軍大将九條輝光、彼もまた最後の斯衛軍総監であり彼の名は1984年に歴史に刻まれる事となるのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

これはまだ、第1ウクライナ前線がチェコスロバキアの中央でBETAとの決戦に臨んでいる時のことである。

 

白ロシア前線も縦深を確保し、プラハ・ハイヴまでの攻勢作戦を開始しようとしていた。

 

当然第一梯団は第5親衛戦車軍、第7戦車軍、第16打撃軍であり、第二帝団には第3軍、第10軍、チェコスロバキア軍第2軍、ポーランド軍第2軍、第48軍、第50軍が配備された。

 

ドイツ方面からはNATO中央軍集団が押し上げており、BETAの戦線は更に狭まっていた。

 

「同志元帥、各軍ともに戦闘準備完了しました。いつでも出撃出来ます」

 

チュマコフ大佐が敬礼し、参謀長ガシュコフ大将と協議中だったアフロメーエフ元帥に報告した。

 

「直ちに攻勢作戦を開始、プラハ・ハイヴまでの道のりを切り開け」

 

「ハッ!」

 

チュマコフ大佐は敬礼して伝達の任務に向かった。

 

彼がは去ったとほぼ同時にガシュコフ大将が「9日もあれば到達出来ますかね」と尋ねてきた。

 

アフロメーエフ元帥はふと考え、彼に返した。

 

「どうだろうな、BETAも主力は第1ウクライナ前線が抑えてくれてるとはいえ、数個軍は周囲に展開してる。我が前線でも撃滅にはもう少し時間が掛かるぞ」

 

T-80らを主力とした2個戦車軍による突破能力と6個軍による波状攻撃、両者合わせてもBETAを全て撃滅するには時間が掛かる。

 

それは戦術核を使ってもであり、これほど戦力が広範囲に展開していると戦略核も投入のタイミングは今ではない。

 

時間を多少かけてもBETAを撃滅せねばならない。

 

「それまでヤゾフ元帥らは持ちますかね…?」

 

「持ってはくれるだろう、元帥は2年くらい前にもBETAの攻勢を退けてる。そろそろ反撃に入り始めたという報告もあるし、なんとかなるはずだ」

 

ヤゾフら第1ウクライナ前線を信じながらアフロメーエフ元帥は作戦室の地図を一瞥した。

 

各所には白ロシア前線隷下の軍が展開され、その前方にはBETAの大規模部隊が幾つも存在している。

 

アフロメーエフ元帥は前線の力を用いてこれらを全て排除しなければならない。

 

「長い戦いになるぞ……」

 

アフロメーエフ元帥は戦時の心持ちのまま戦闘に臨んだ。

 

第5親衛戦車軍から第199ロケット砲兵”ドレスデン”アレクサンドル・ネフスキー勲章旅団、第306砲兵旅団、第7戦車軍から第76ロケット砲兵旅団、第233ロケット砲兵”スヴィルスク”ボグダン・フメリニツキー勲章旅団、第231砲兵旅団から準備砲撃が叩き込まれた。

 

それに合わせて第26航空軍の第10独立偵察航空連隊所属のSu-24が各所に爆撃まで投入した。

 

砲撃の開始と同時に戦車部隊はギリギリまで前線に接近し、終了と同時に一斉に突撃した。

 

攻勢開始地点よりプラハ・ハイヴまで凡そ64キロメートル、白ロシア前線による縦深攻撃が開始された。

 

対するBETAは無理に数で押し返そうとはせず、むしろ人類から学んだのか各所で陣地のようなものを構築し始めた。

 

例えば各所で突撃級や戦車級が束になって穴を掘り、人間の軍隊が作る塹壕のようなものを作り出したのだ。

 

塹壕の影響で戦術核の熱や衝撃波、砲撃の破片などは幾分か軽減され、まだ損害は軽微に終えられた。

 

また大穴を掘って部隊を迂回させ、その迂回路に光線級が攻撃を加えるなど工夫をして防衛戦を展開した。

 

尤もソ連軍は元々アメリカらNATO軍と対決する為の軍隊であるが故、まだ猿知恵程度の防御陣地は簡単に突破出来た。

 

所詮は移動を妨害したり穴を掘って妨害している程度、地雷もなければ鉄条網も竜の歯もない上に、迎撃として砲や弾丸、何より核が飛んでこない。

 

まだ厄介程度で済まされる敵であった。

 

実際各所でBETA相当の為にTO-55や火炎放射兵が駆り出され、塹壕内を焼却処分し確実に制圧していった。

 

以外にもこういう制圧戦では戦術機用にTO-55らの火炎放射器を改造したものを装備した機体が活躍した。

 

上から一気に焼き尽くせる上に調整がし易い。

 

こうした火炎放射以外にも200kg、或いは500kg爆弾を落とした後にBTR-70やBMP-1に乗った自動車化狙撃兵達が塹壕内に突入してRPGや対戦車ミサイルで敵を殲滅した。

 

時間は掛かるが各所で塹壕を制圧し、BETAの防衛線を突破していく。

 

普段より多少時間は掛かっているが、それでも許容範囲であった。

 

白ロシア前線第一梯団は攻勢開始3日後にはチャホヴィツェに到達し、すぐにイゼラ川かラベ川の前まで攻め込んだ。

 

工兵隊が前線に急行している間にBMPとBTR、シュノーケルをつけた戦車隊がイゼラ川を越えて敵を追う。

 

川の手前で敵軍を押し返そうと幾つかの地点でBETAが攻撃に出たが渡河した先遣隊と急行したMiG-23、MiG-25PDSらの戦術機部隊によって押し返された。

 

攻勢の手は緩まることなく続き、イゼラ川を渡河した部隊はもう一度ラベ川にぶつかり、これも同じ容量で越えた。

 

ラベ川を越えるとプラハ・ハイヴまで後20キロメートルほどしかなかった。

 

もはやBETAの拠点は目と鼻の先である。

 

 

 

 

 

後方に設置された簡易飛行場、本格的な航空基地では前線から帰ってきた戦術機と前線へ向かう戦術機が常に入れ替わっていた。

 

基本的に各連隊ごとに飛行場は振り分けられており、余程の緊急事態でもない限り指定された飛行場に降りて補給を行う。

 

フレツロフ少佐らイレギュラーな隊も同様であり、彼らは第927独立戦闘航空連隊と同じ飛行場に割り当てられた。

 

丁度フレツロフ少佐らの中隊が出撃する前に第927独立戦闘航空連隊の1個中隊が飛行場に帰還してきた。

 

幸運なことに出撃した飛行中隊は無傷のままであり、弾薬と燃料補給の為に飛行場に戻ってきたそうだ。

 

『前線では地上軍が押してる、これは勝ち戦だ』

 

通信を繋いできた向こう側の部隊長がこれから出撃するフレツロフ少佐らの為に状況を伝えてくれた。

 

少なくとも勝っていることは今までの報告を鑑みても間違いない。

 

何より彼らが全機無事に帰ってきていることを見れば白ロシア前線が攻勢に成功していることは確かであった。

 

「それは良い報告だ、我々もこっち(白ロシア前線)で食ったウハー分の恩は返すよ」

 

『流石少佐、頼もしい。期待してますよ!』

 

「そう言ってくれると嬉しんだがね」

 

少佐はMiG-29のシステムを全て起動し、簡易掩蔽壕から機体を飛行場に出した。

 

誘導員の案内を受けて滑走路に立ち、後方にいる僚機の姿を確認する。

 

「しっかり頼むぞ、お前もな」

 

そう言ってフレツロフ少佐はモースク1との接続端末を軽く叩いた。

 

それに返すようにモースク1は”君の戦歴に敗北はない、敗北する確率は僅か5.7%だ”と返してきた。

 

必要がないと滅多に喋らないこのプログラムであるが、フレツロフ少佐側が話しかけるとよく喋るようになる。

 

『ヴィクトル、まずは渡河作業中の味方部隊に救援へ迎え。BETAの接近が確認されてる』

 

飛行場司令のサポートとして第26航空軍司令部から派遣されてきたメデツィーニン少佐はフレツロフ少佐にそう伝えた。

 

「了解した、各機まずはザーリビ近くの味方の援護に向かう。俺に続け!」

 

中隊全機に指示を出し、フレツロフ少佐のMiG-29は戦場へと飛び立った。

 

彼の背後には2機のMiG-27が続き、ガッチリ編隊を組む。

 

MiG-29とモースク1の初陣だ。

 

中隊は全速力で戦場に急行し、合流に急いだ。

 

レーダーの範囲には数キロ先に別の飛行場から出撃したと思われる味方部隊の戦術機が確認された。

 

空軍も防空軍も攻勢作戦となれば大忙しである。

 

中隊は戦場に近づくに連れて高度を下げて低空で飛行し、武器を構えた。

 

「お前らの初陣……立派な戦果を挙げたいものだな」

 

既にMiG-29の性能は実証済みである

 

「そういうことじゃない、とにかく行くぞ!」

 

フレツロフ少佐のMiG-29は容易くラベ川を越えて味方部隊に攻撃を加えようとする要撃級を一撃で撃破した。

 

そのまま接近する戦車級を突撃砲で蹴散らし、渡河に成功した車両部隊の前に立った。

 

僚機のマリロフ上級中尉とミルシェフ中尉が周囲のBETAを蹴散らす。

 

他の編隊も152mm無反動砲や積んできたKh-25や最新鋭のKh-29空対地ミサイルを大型BETAに叩き込んだ。

 

「こちらフレツロフ少佐、渡河部隊の救援に参った。今のうちに部隊を前へ!」

 

『助かった!前進してもう少し距離を稼ぎたい。まだ着いてきてくれるか?』

 

「当たり前だ、各機前へ出て橋頭堡を広げるぞ」

 

まずMiG-29に乗り込んだブリツェンスキー大尉の編隊が先行し、その後に各機が続いた。

 

BETAはどうしても川を越えさせたくないようで再び中隊、大隊規模の戦力を送ってきた。

 

BETA確認、突撃級10、要撃級22、戦車級365、要塞級主力集団の800メートル後方に7

 

「正面の突撃級をまず潰す。正面は戦車隊で抑えられるか?」

 

『任せてくれ!』

 

「では我々は左右から迂回して火力を投射、1体ずつ潰すぞ!」

 

フレツロフ少佐の命令で12機の戦術機がそれぞれ6機ずつ左右に分かれ、BETAの集団を取り囲むように接近した。

 

小回りの効く戦車級が方向転換して集団で戦術機を取り囲もうとするが担架についた突撃砲の集中砲火で次々と機能を停止した。

 

更に1機のMiG-27がナパーム弾を投下したことによって数十体の戦車級を焼き尽くした。

 

その間に正面ではT-80Bが数両ほど息を合わせて125mm滑腔砲の集中砲撃で突撃級を1体撃破した。

 

中央に穴が空き、そこへシルカやBMP-2が火力を叩き込む。

 

「モースク!前方突撃級に狙いを付けろ!対地ミサイルを叩き込む!」

 

目標を指定

 

モースク1がターゲットをロックオンし、そこへフレツロフ少佐が側面からKh-29を叩き込む。

 

放たれた2発の空対地ミサイルは突撃級の足元と非装甲部分に命中し、弱点部から爆発を引き起こした。

 

突撃級は砕け散り、それに合わせてマリロフ上級中尉、ミルシェフ中尉らが側面からKh-25を叩き込み突撃級を1体粉砕する。

 

他の編隊も同じように攻撃を叩き込んで合わせて8体の突撃級を撃破した。

 

残る1体は戦車隊の集中砲撃を喰らって爆散し、残る戦車級と要撃級の群れは車両部隊と降車して展開した自動車化狙撃兵部隊によって殲滅された。

 

稀に戦車級に乗った闘士級が降車して歩兵部隊に襲いかかってきたが、歩兵が持つAK-74とPKM、BTR-70搭載のKPVT 14.5mm重機関銃の弾幕射撃の前に斃れた。

 

「残りの戦車級は地上部隊に任せる、我々は要塞級をなんとかするぞ」

 

『了解、あれを戦術機で倒せば勲章ものだぞ!』

 

ブリツェンスキー大尉が味方を鼓舞している間にフレツロフ少佐はモースク1に尋ねた。

 

「モースク、空いてる砲兵隊はあるか」

 

確認出来ず、全戦線で他地域の支援に駆り出されている

 

「独力で倒すことになるのかぁ……面倒臭いなぁ」

 

基本的に要塞級の相手は戦術機の使命というより砲兵隊による火力投射が望ましいとされている。

 

前線部隊が足止めを行い、その間に砲兵隊が火力を叩き込んで要塞級集団を撃滅する。

 

最も損害を少なく撃破する方法であるが、肝心の砲兵隊が忙しく手が回らないのなら戦術機部隊でどうにかするしかない。

 

だが幸いにもまだ空対地ミサイルと120mm弾、152mm弾が残っている。

 

「全機よく聞け、俺とオルゼルスキー大尉とシュペーギン大尉で相手を撹乱するからその間にブリツェンスキー大尉指揮の下、要塞級に火力を叩き込め」

 

『我々が?』

 

「MiG-29の機動力なら7体の同時攻撃くらい避けられる。時間がないからとにかくこれで行くぞ!俺に着いてこい!」

 

そう言ってフレツロフ少佐は2機のMiG-29を引き連れて陽動に向かった。

 

3機はすぐに要塞級の攻撃範囲に入り、触手の集中投入を受けた。

 

素早く攻撃を回避し、要塞級の注意を引き付けつつ敵の周囲を飛び回った。

 

「モースク!我々は可能な限り回避に専念!可能な限り相手の攻撃を予測しろ!」

 

了解、攻撃予測をモニターに表示

 

モースク1が表示する攻撃予測はある程度正確で、少し工夫をすれば100%役に立った。

 

攻撃の回避に専念しつつ、時々突撃砲と120mm弾を叩き込んでダメージを与え、相手の死角に入って次弾を装填する。

 

すぐに振り返った要塞級が触手で追ってくるが、7体も列になっていればむしろBETAが盾となってくれるのだ。

 

その間に攻撃準備を整えたブリツェンスキー大尉らが要塞級に攻撃を加える。

 

『1012006、1012007は左翼中央を狙え、私と08、09は左翼の二番手、残りは最左翼に火力を集中しろ!』

 

152mm弾やKh-25が放たれ、3機のMiG-29に攻撃を集中している要塞級に直撃する。

 

特に152mmHEAT弾の効果は抜群で要塞級の装甲であろうと簡単に貫いた。

 

一気に3体の要塞級が地面に崩れ落ち、崩れ行く要塞級をすり抜けてフレツロフ少佐は残りの要塞級の懐に入り込む。

 

触手を回避し、関節部に120mm弾とKh-25を叩き込み、速やかにその場を離脱する。

 

離脱の瞬間には残る関節部を近接用長刀で斬り刻み、要塞級を1体撃破した。

 

『我々でも行くぞ』

 

『了解…!』

 

オルゼルスキー大尉とシュペーギン大尉のMiG-29が相手の攻撃を回避しながら要塞級に近づき、同じように有効火力を関節部にぶつけた。

 

残りの要塞級は2体、ここまでくればものの数ではない。

 

再びブリツェンスキー大尉率いる攻撃部隊の集中砲火を喰らって要塞級は殲滅された。

 

「各機残弾に注意しろ、まだ来るぞ!」

 

すぐに敵の第二波がやってきて、フレツロフ少佐らと戦闘になる。

 

今度は戦車級と要撃級の群れだったが先ほどより数が多い。

 

しかし彼らが時間を稼いでいる間にソ連軍の地上部隊も続々と川を越え、戦闘に合流していた。

 

後方からの125mm砲弾が要撃級を一撃で粉砕し、BMP-2の30mm機関砲と9M113 コンクルスが戦車級を潰していく。

 

フレツロフ少佐らも一旦後退して距離を稼ぎ、突撃砲でBETAを薙ぎ払った。

 

T-80Bらを先頭とする戦車隊はそのまま突撃を敢行し、BETAの増援部隊を打ち破った。

 

『少佐、我々はこのまま前進する。着いてきてくれるか?』

 

戦車隊の少佐が通信でフレツロフ少佐に尋ねた。

 

事前の報告で武器弾薬に問題がないことは知っている、であれば続く他ない。

 

「勿論、プラハまで我々で突破してしまいましょう」

 

『おう!各隊我々に続け。BETAの軟い戦線を打ち破るぞ!』

 

戦車隊は砲声と共に前進し、その後にフレツロフ少佐らも続いた。

 

プラハ・ハイヴの喉元まで、あと少しである。

 

 

 

 

 

-ソ連領 ロシアSFSR レニングラード州 州都レニングラード KGBレニングラード州局-

かつて内務省とKGBは一体だった。

 

内務人民委員部、俗に略称としてNKVDと呼ばれる組織が一挙にソ連の内務事情を担っていたのだ。

 

内務人民委員部にはKGBが持つ機能だけでなく後の国内軍、民警総局、そしてKGBに残された国境軍なども全て管理していた。

 

そして今では内務省とKGBに分かれたが両者は徐々に統合しつつある。

 

BETA大戦という国難がKGBと内務省の指揮統合を進めたのだ。

 

こうして国境軍とKGBの連携が綿密になる中、KGB側は国外からの謀略に対処する為に関係者をレニングラード州局の庁舎に集めていた。

 

会議に参加したのはまずモスクワ、レニングラード州局の局長たち、そしてバルト三国のKGB議長たちだった。

 

まずモスクワ州局長ヴィクトル・アリディンKGB大将、レニングラード州局長ダニール・ノシィレフKGB中将、次にエストニア・ソヴィエトKGB議長アヴグスト・ポールクKGB少将*1、ラトビア・ソヴィエトKGB議長ボリス・プーゴKGB少将、リトアニア・ソヴィエトKGB議長ユオザス・ペトキャヴィチウスKGB少将が控えていた。

 

その反対側にか国境軍の人間が控えていた。

 

国境軍総司令官マトロソフ上級大将を始め、政治部長ウラジーミル・イヴァノフ中将、国境軍海上局長ニコライ・コゾレゾフ少将、西部国境軍管区司令イリヤ・カリニチェンコ中将、北西国境軍管区司令アレクサンドル・ヴィクトロフ中将、沿バルト国境軍管区司令グリゴリー・モイセーエンコ少将が席についている。

 

会議を取り仕切るのはアンドロポフであり、その隣には第1総局S局長のドロズドフ中将がサポートの為待機していた。

 

KGBの場合、普段は制服ではなく私服で仕事をしている者も多々いるが、今日に限っては全員が制服を着ていた。

 

この中でコゾレゾフ少将だけは海軍の制服と同じものを着ている為、一際目立っている。

 

「同志諸君もよく知っている通り、今我らの祖国に挑戦する勢力がBETAの他に存在している。そしていよいよ彼らの手駒が動き出した」

 

アンドロポフは席を立ってゆっくりと歩きながら彼らに事情を伝えた。

 

KGB側の将校達は全てを知っている為小さく頷いていたが、国境軍の将校達は黙って話を聞いていた。

 

「まずはモイセーエンコ少将から話を聞こう」

 

「はい」

 

少将は立ち上がって彼らの前に立ち、先日起こったことを報告した。

 

「我々沿バルト国境軍管区所属の警備艦が一隻の不審船を拿捕しました。幸いにも戦闘にはならず警備艦の乗組員が突入して全員を逮捕しました」

 

国境軍が有する海上警備隊、そのうちの第4独立国境警備艦旅団が不審船を発見しこれを拿捕、その日のうちに逮捕者をリガのKGB支部に送った。

 

彼らはそこで寒く冷たい地下牢に収容され、暗さと狭さに耐えながらKGB将校が到着し、尋問が始まるのを待った。*2

 

「船内には自衛用の小銃などが所持されており、戦闘の恐れもありました」

 

「ではプーゴ少将、船内にいた密入国集団の尋問結果を報告せよ」

 

プーゴ少将は立ち上がって報告書を片手に持ち、その間にモイセーエンコ少将が席に戻った。

 

「尋問の結果、彼らは元々レニングラードを目指していたことが分かりました。レニングラードにいる仲間と合流する予定だったそうです」

 

KGBの尋問がどんなものかはご想像にお任せしよう、逮捕された彼らは尋問の末全てを自白した。

 

意識は朦朧とし、体は震えていたがそれは確かな自白であった。

 

尋問が終わると彼らは再び地下牢に戻され、冷たく硬いベッドの上で震えながら悶えた。

 

自白内容は直ちに目の死んだKGB将校達によって纏められ、今こうしてプーゴ少将が報告している。

 

「例の組織との共謀は掴めたかね」

 

「その点に関しては彼らは黙秘を貫いています。もしかしたら単に知らないだけかも知れませんが」

 

「引き続き尋問を続けろ、最悪2、3人使い物にならなくなっても構わん」

 

「分かりました」

 

アンドロポフの命令を聞いてプーゴ少将は頷き、席についた。

 

それからアンドロポフは全員に対して命令を出す。

 

「今の報告を聞いた通り、彼らは動き始めている。疑わしい船、疑わしい人物が我々の祖国に足を踏み入れようとしているのだ」

 

皆、真剣にアンドロポフの方を見て話を聞いていた。

 

「そこでまず国境軍の同志諸君、国境の守りを厳とせよ。くまなく海上を警戒し、国内に入ってくる外国籍の人間をよく調べ上げろ。鉄壁の国境警備こそ祖国ソヴィエトを守ることに繋がる」

 

「国境軍全軍に伝えます」

 

マトロソフ上級大将の発言を聞き、アンドロポフは「素晴らしい」と頷いた。

 

彼は次に反対側に座るKGBの上級将校達に命じた。

 

「そしてKGBの同志諸君、諸君らは国境軍が今まで調べ上げた入国情報を調査し、疑わしき人物の入国があるか確認せよ。もし発見すれば国境軍、或いは内務省とも協力して必ず捕え、プーゴ少将らのように有益な情報を必ず引き出すのだ」

 

彼らは全員無言で頷き、アンドロポフの命令を聞き入れた。

 

新しい命令だがやることは今までと変わらない。

 

ふとアンドロポフは後ろに控えるドロズドフ中将にも目をやり、メッセージを送った。

 

彼の命令は当然S局にも言えることであった。

 

分かっていますとドロズドフ中将も頷く。

 

前線でソ連軍が戦うように、銃後でもKGBは内なる敵と戦っていた。

 

 

 

 

 

第1ウクライナ前線が反撃に出た頃、白ロシア前線はプラハ・ハイヴの喉元までに到達していた。

 

BETAの防衛陣地を突破してソ連軍の戦車隊と戦術機が接近してくる。

 

第一梯団の各軍がある程度のところまで行くと各隊に進撃停止命令が降り、部隊はハイヴの手前で停止した。

 

それは当然同盟国のNATO中央軍集団にも伝達され、任務を終えたNATO軍は包囲部隊だけ残して撤退準備を始めた。

 

その間に第1ウクライナ前線の支援を行わず、ずっと待機していた第1親衛攻撃衛星軍が攻撃を開始する。

 

3基の”ポーリュス”がハイヴ周辺のBETAを出力40%ほどのレーザー照射で殲滅し、ハイヴ内にもレーザーを叩き込んだ。

 

この時点だと周辺に展開しているBETAはごく少数であった為、恐らくハイヴ内への照射が一番効果があっただろう。

 

宇宙空間からの攻撃に合わせてスモレンスクの第50ロケット軍がハイヴの上部構造を平らにするだけの戦略核を投入した。

 

攻撃には第40ロケット”クラスノセリィスク”赤旗・スヴォーロフ勲章師団と第49親衛ロケット”スタニスラフ=ブダペスト”赤旗師団が参加した。

 

両師団の持つR-12”ドヴィナ”は想定通りハイヴの上部構造を崩し、平らに均した。

 

『今ので最後です、これ以上の追加攻撃はありません!』

 

『よし、第308防空戦闘航空連隊前へ!ハイヴに突入するぞ!』

 

数十機の戦術機が連隊長の命に従ってハイヴ内に突入する。

 

まず先陣を切ったのはMiG-23MLDらで構成される第308防空戦闘航空連隊、彼らが最初にハイヴに足を踏み入れた。

 

『我ら第301防空戦闘航空連隊も続け!』

 

続いて第11防空軍所属の第301防空戦闘航空連隊が続き、その後に第10独立戦闘航空連隊や第151独立戦闘航空連隊ら空軍部隊も突入した。

 

フレツロフ少佐らがその報告を聞いたのは丁度飛行場に戻って休憩に入った時であった。

 

労いに来たメデツィーニン少佐から突入の報告を聞いたのだ。

 

その時のフレツロフ少佐は上着を腰に巻いて水を飲んでいた。

 

「各航空連隊、続々と突入しているらしいがさてどうなるか……」

 

「あの規模のBETAだ、多分まだハイヴの中にもうじゃうじゃいるだろう。後2週間は掛かるだろうな」

 

「君がいれば大体2日3日で終わるんだけどな」

 

「冗談はよせ、大抵俺達がアタリにぶつかるのは攻略戦の後半だ」

 

それまでの過程もフレツロフ少佐らは経験しているがハイヴの制圧戦はとにかく物資と根気、何より時間を必要とする。

 

この点に関してメデツィーニン少佐は異論はなかった。

 

彼は司令部でそんな前線部隊を繋ぐ役割を果たしており、彼には彼なりの戦場があった。

 

「まあそろそろ先発隊が会敵する頃だろう。我々も補給と飯が終わったら潜ってくるよ」

 

「気をつけろよ、どうせ今回もハイヴの最奥に突っ込むんだから」

 

「今度は他に手柄を譲るよ、時間あるか?一緒に食いに行こう」

 

「いいとも」

 

2人は整備中のMiG-29の前を離れ、食堂へ向かった。

 

フレツロフ少佐が出撃するのは後2時間後のことである。

 

その頃、ハイヴに突入した部隊はフレツロフ少佐との予想に反して全く敵と遭遇しなかった。

 

取り敢えず第一目標に指定した地点まで進むも、BETAの影すら見当たらない。

 

それでも何処からBETAが出てくるか分からない為、衛士達はひたすら警戒心を尖らせながら奥へと突き進んだ。

 

何処から出てくるか分からないという恐怖はいたずらに衛士達の心を削った。

 

こうした報告は白ロシア前線司令部にもすぐに伝達された。

 

「突入開始から3時間が経過しましたが未だBETAとの会敵は報告がありません」

 

「もしかするとBETAの罠でしょうか」

 

ガシュコフ大将の問いにアフロメーエフ元帥はすぐに答えなかったが、秘策は考えていた。

 

「例の無人機システムを使って調査しよう、全隊に一時進撃の停止を命じろ。輸送部隊には無人機用の機体をハイヴ内に投入しろ」

 

「はい!」

 

アフロメーエフ元帥の命令で直ちに無人機運用前提の戦術機とヘリコプターを輸送した。

 

そのままハイヴ内に突入させ、モースク1を起動させた。

 

M-21とMi-2が有人戦術機の代わりにハイヴの奥地へ突っ込んだ。

 

Mi-2はともかくM-21の動きは以前コシツェ・ハイヴの偵察をしていた時よりも遥かに良い動きをしていた。

 

レーダーとカメラを駆使して奥地へと進み、機体を何処にもぶつけずに進行した。

 

あまりに動きが良くなったので技術士官らが「何かしたっけなぁ」と自身の過去を振り返るほどだ。

 

ともかく、ハイヴの偵察はモースク1の無人機達によって安全に進んだ。

 

そして相変わらずBETAの姿はなかった。

 

BETAの存在が確認されていない地点まで有人戦術機部隊を突入させ、エリアを確保させた。

 

補給地点の設置も各所の整備施設設置も普段よりだいぶ楽に建設出来た、普段であれば多少BETAの妨害を受けている。

 

BETAの姿が確認されたのは白ロシア前線が中間地点と定めたエリアであった。

 

突如数十体ほどの戦車級、要撃級が確認され、不意遭遇戦が始まった。

 

モースク1はM-21とMi-2をそれぞれ4機づつ失ったが残りのBETAは全て殲滅した。

 

そのまま奥地へ向かうと突如そこには巨大な穴が広がっていた。

 

幅高さ共に176メートルほどだろうか、とにかく巨大な大穴が奥へ奥へと続いていた。

 

しかもその大穴が2つ、3つと続いていたのだ。

 

周辺域にはBETAが展開しており、各所で戦闘になっている。

 

前線司令部は直ちに実働部隊を展開し、BETAとの前面戦闘に入る。

 

BETAはまるで何かを守るかのように戦い、明らかに今までと様子が違かった。

 

『1512001到着した!』

 

数機の戦術機が到着し、戦闘に加わる。

 

対ハイヴ内の戦闘は事前に訓練を受けている為BETAが来ても撃退は出来るが、気になる点は多々あった。

 

この大穴周辺で戦闘していると時々地響きのような音が聞こえるし、地響きのすぐ後にBETAは敵が目の前にいるのに退いていく。

 

はっきり言って気味の悪い光景だった。

 

前線部隊の報告から疑問を持った白ロシア前線司令部は戦闘を既存の部隊で続け、無人機部隊をハイヴ内の大穴に突っ込ませることにした。

 

M-21が穴の奥地を探って前進するも中々最奥に辿り着けない。

 

いつしか燃料も切れ始めていた為、補給部隊を送り燃料を追加した。

 

その間無人機部隊は停止し、ビーコンのみが位置情報を送っていた。

 

「無人機部隊は停止したか」

 

「はい、ですが仕方ありません。戦術機であれば燃料も必要でしょう」

 

アフロメーエフ元帥とガシュコフ大将はモニターに映る無人機部隊の位置情報を確認しながらそう呟いた。

 

ここでガシュコフ大将があることに気がついた。

 

この大穴、既にハイヴの想定区域外に出ている。

 

しかもハイヴが広がるのではなく、この大穴だけが一直線に広がっているのだ。

 

左右上下に広間も作らず、ただ通り道かのように大穴が広がっている。

 

再びガシュコフ大将はこの特徴に気付いた。

 

「……以前発見された新種の超大型BETAは真っ直ぐ移動する」

 

ガシュコフ大将の独り言にアフロメーエフ元帥は反応した。

 

「まさかBETAがイランで発見された母艦級を用いて何処かに兵力を展開しようとしているのか…?」

 

「可能性は…」

 

いや、違う。

 

瞬時に頭の中で否定の文字が浮かんだ。

 

すぐにガシュコフ大将は作戦室の地図を見にテーブルへ戻った。

 

察したアフロメーエフ元帥は彼に着いていく。

 

「この地図だと戦術機部隊の地点は何処にある」

 

「こちらです」

 

すぐにヴァシロ少佐が要望通りに無人機部隊の位置をピンで指した。

 

「誰か定規はあるか」

 

「こちらをお使いください」

 

ある参謀から定規を受け取り、ガシュコフ大将はピンとプラハ・ハイヴの位置を線で結び、更にその先まで線を引っ張った。

 

するとその線はある地点と丁度結びついた。

 

確かにまだあったのだ、ほぼ無力化されたとはいえあの大穴の先には”()()()()”。

 

ガシュコフ大将が引いた線の先にはベルリン・ハイヴが位置していた。

 

「まさか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

つづく

*1
恐らくエストニア語ではアウグスト・ポールク、ドイツ語でもアウグスト・ポークになると思われる

*2
あそこにぶち込まれたらマジで気狂いそうになります、マジで

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