マブラヴ グレートパトリオティックウォー   作:Eitoku Inobe

55 / 73
母より生まれし我ら英雄は
ボスニアを守り抜く
歌えボスニアよ 敵に知らせよ
我らは簡単に諦めないということを
歌えボスニアよ 敵に知らせよ
我らは簡単に諦めないということを

サラエヴォ、ロガティツァ、ヴィシェグラード、ヴラセニツァ
いつも私の心のそばに
ズヴォルニク、トゥズラ、カレシヤ、デヴェタクにキセリャク
兵士は皆陽気な奴等だ
-”ボスニアの砲兵”より抜粋-


南スラヴの大地で

-ユーゴスラビア社会主義連邦共和国領 マケドニア社会主義共和国 首都スコピエ-

南スラヴの大地に生まれた連邦共和国、ユーゴスラビア。

 

ヨシップ・ブロズ・チトーという男が作り上げた人工国家はBETA大戦で傷つきながらも辛うじて命を繋げていた。

 

スロベニアもクロアチアも陥落し、ボスニアとセルビアも半分以上がBETAの手に落ちたがBETAの侵攻速度が著しく低下し、山岳部を活かした防衛戦を展開していた。

 

元よりユーゴスラビアには国軍たるユーゴスラビア人民軍が存在し、総兵力60万人を有していた。

 

そして予備役約200万人が今次戦争で動員され、ユーゴスラビア人民軍だけで260万人を超える兵力を前線に展開している。

 

そこへ一部はギリシア軍やアルバニア軍、ブルガリア人民軍が加わり、国連から命を受けたソ連軍南欧前線が広く展開していた。

 

初期はひたすらBETAの猛攻を受け続けていたユーゴスラビア軍であるが今や巻き返しの時であった。

 

ユーゴスラビア軍とソ連軍はクロアチア、ボスニア、セルビア間に展開し各所でBETAの出血を強要しつつ、少しずつ前へ進んでいた。

 

また第2ウクライナ前線がルーマニアを解放したことにより、戦況は大きく変わった。

 

単純に兵力の余剰が生まれただけでなくルーマニア側からベオグラード・ハイヴの側面を脅かせるようになったのだ。

 

そして年代は1982年9月、ソ連国防省はユーゴスラビア人民軍、ワルシャワ条約機構軍らと合同でのベオグラード・ハイヴ攻略作戦を10月中から開始すると決定した。

 

調整の為に国防相ウスチノフ元帥とオガルコフ元帥、クリコフ元帥、グレチコ元帥が現在首都とされているマケドニア内のスコピエに訪れた。

 

彼らはユーゴスラビア軍の儀仗隊より歓迎を受け、ユーゴスラビア大統領チトーに謁見。

 

先程までユーゴ側の国防相ニコラ・リュービチッチ上級大将と参謀総長ブランコ・マムーラ海軍大将らと会談を行なっていた。

 

会談は大体がベオグラード・ハイヴ攻略に関する話題であり、作戦の確認と前線地域の情報共有、そしてソ連側とユーゴ側の意見のすり合わせだった。

 

ユーゴスラビアとソ連の関係はかつては最悪だったが今となっては蜜月という言葉が正しい関係となっていた。

 

無論そこにはBETAという共通の敵の存在が大きく影響していた。

 

ソ連としてはここでユーゴスラビアも陥落して南欧全体がBETAの支配圏になると黒海は完全にBETAの支配権となり、最悪トルコからアルメニア・ソヴィエトから侵攻されてカフカス地域にまで被害が及ぶ。

 

ユーゴスラビアとしては純粋に祖国防衛を完遂する為にはソ連の力が必要だった。

 

全ては生き残る為、BETAとの戦いの末にこの地球に二本の足で立っている為だ。

 

会談が終わると彼らは会議室を出て、暫く会議室の外で雑談を交わしていた。

 

この中でクリコフ元帥だけはブルガリア人民軍とルーマニア人民軍視察の為に即座にユーゴスラビアから移動した。

 

ウスチノフ元帥は日程として暫く前線とユーゴスラビア軍を視察する予定があった為、暫く国防相のリュービチッチ上級大将と雑談を交わしていた。

 

「ソ連側からの兵器供給には大変助けられました」

 

「それは良かった、国内の軍需工場は上手くいっていますか?」

 

ウスチノフ元帥はリュービチッチ上級大将に尋ねた。

 

ユーゴスラビア人民軍の使用するT-72Mや戦術機のL-15M、L-17KことMiG-21は何割かはソ連から供給されたものだ。

 

チトーはこれらの兵器の国内生産による長期的な戦争の遂行能力獲得を指針として掲げた。

 

それがL-15MやL-17K、後にM-84と呼称されるユーゴスラビア産の兵器だ。

 

こうした取り組みだけでなく、チトーは西側との交友関係も活かして国産戦術機開発計画などを立ち上げ、ユーゴスラビアという国が自立した安全保障を獲得出来るよう戦時中でも努力した。

 

ソ連軍と協力しつつも自国で出来ることを増やす、この二足の草鞋体制が今日までユーゴスラビアを存続させていた。

 

「幸いにも安定供給は出来ています。新型戦術機の開発は難航していますが……」

 

ユーゴスラビアはフランスが開発中の新型戦術機に一枚噛む形でユーゴ空軍の新型国産機を開発しようとしていた。

 

とはいえ現状上手くいっておらず、少なくとも今回の攻勢作戦には間に合わないと結論づけられた。

 

「折角です、我が軍のSu-27かMiG-29はどうですか?新型機ですが各所で高い活躍を見せています」

 

「悪くない提案ですが計画を捻じ曲げる訳にはいきませんから。それに既存の兵力でも戦線の維持は出来ます」

 

半分冗談本気半分で出されたウスチノフ元帥の提案は同じく冗談半分本気半分でリュービチッチ上級大将に断られた。

 

現状Su-27、MiG-29の運用ユーザーはソ連空軍とソ連防空軍だけであり、当面はソ連国内に普及させていかなければならない。

 

だがいずれはソ連だけでなくワルシャワ条約機構の同盟諸国や、ソ連以外の第三国にも輸出して生産数を稼がねばならないのだ。

 

例えばポーランド、例えばチェコスロバキア、ハンガリーにルーマニア、或いは東ドイツ。

 

戦術機と言っても所詮は兵器、詰まる所工業製品である。

 

量産され、生産ラインを維持する為には安定して供給される必要があり、少数精鋭になればその分1機の単価が高くなる。

 

安く使い易くその上で強い機体を大量かつ安定して、これが何より重要なのだ。

 

結局のところその国の予算との兼ね合いもある訳で、例えば年間30機程度しか作れないスーパーファイターなど誰も求めていないのである。

 

質と量を兼ね備えた兵器を作り、顧客を広く求め、多数のユーザーによって生産ラインを維持することが強靭な防衛産業なのだ。

 

「ただ空軍内部では貴国の最新鋭機に期待を寄せる者も多い。実際南欧方面で活躍する貴国の戦術機部隊でも最新鋭機はよく活躍していますし」

 

「であればハイヴ攻略戦にご期待下さい。MiG-29を備えたハイヴ攻略専門部隊が間も無くこちらに派遣されます。連隊長のフレツロフ中佐という人物が特にやり手でして」

 

「話に聞くハイヴに4回も突入したパイロットですか」

 

フレツロフ中佐の名前はそれなりに広がっていた。

 

ソ連邦英雄にして稀代のエースパイロット、ハイヴに4回も突入して生きて帰ってきている。

 

プラウダやクラースナヤ・ズヴェズダーにも載ったし、名前だけなら西側の衛士にも広まりつつあった。

 

「新設の連隊ですが上手くやってくれるでしょう」

 

ウスチノフ元帥も心からの期待を込めてそう述べた。

 

実際連隊が出来てからまだ3ヶ月しか立っていないが、既に第1ウクライナ前線らの空軍司令部からの評価は高かった。

 

既にフレツロフ中佐はMiG-29で2つもハイヴを堕としており、機体の性能は置いておいてもMiG-29は既にBETA大戦における英雄の証となりつつあった。

 

ここで戦果を上げれば冗談半分だったMiG-29のユーゴ購入案も7割本気の話になるかも知れない。

 

兵器とは時に性能の前に信用が重要になったりするものだ。

 

その点でMiG-29は十分な信用を稼いでいた。

 

「任せますよ、我々といえどハイヴ戦となれば手がつけられない領域だ。ベオグラードが帰ってくれば同志チトーの心労も少しは和らぐでしょうし」

 

その言葉にウスチノフ元帥はその言葉にどこか引っ掛かりを覚えた。

 

リュービチッチ上級大将の発言は最高指導者の話をするにしては少し声音が変だったのだ。

 

「チトー大統領はそんなにお身体が優れないのですか?」

 

ウスチノフ元帥はふと尋ねた。

 

「我々や国民の前では気丈に振舞っておいでですが、数年前からお身体がずっと優れないのです。それでも一時期よりは大分回復されましたが」

 

リュービチッチ上級大将は心配そうな表情のまま小声で呟いた。

 

1980年、ソ連がリヴォフ・ハイヴを攻略する裏でチトーは実は体調を崩していた。

 

しかもかなり調子が悪く、もしかすればとも医者からは言われていた。

 

されどチトーは死の淵から蘇り、今でもユーゴスラビアの指導者として人々を導いている。

 

尤も完全に回復したわけではなく、今でも不調になる時はある。

 

何せチトーは今年90歳だ、あそこまで元気でいられるのが異常であった。

 

「そうですか……」

 

「この戦争も早いうちに終わらせたいものです。もうそろそろ10年、この戦争は長過ぎる」

 

「同感ですな、その為にもまずはベオグラードを」

 

リュービチッチ上級大将は頷き、握手を交わした。

 

同じスラヴの民は同じ敵を前に、再び団結した。

 

 

 

 

-ユーゴスラビア社会主義連邦共和国領 セルビア社会主義共和国 ヤゴディナ 第4親衛戦車軍司令部-

前線から40キロほど離れたところに第4親衛戦車軍の司令部は設置された。

 

セルビア内においてルーマニアやウクライナ・ソヴィエトでやったような大規模な突破戦闘はまだ行なっていない。

 

基本的に前線の各部隊は師団ないし旅団規模のBETAにちょっかいを掛けて引き付け、閉所まで誘い込んで叩き、全線が弱体化したところに攻勢をかけて少しずつ領土を奪還するという方法でいた。

 

無限に近い物量を持つBETAといえど結局は無限ではない。

 

特に山岳部が多い南欧諸国の領域でBETAは大打撃を被っていた。

 

例えば1980年頃に発生したアレクシナツ=クルシェヴァツ会戦においてもベオグラード・ハイヴが送り込んだ4個軍近い攻勢戦力も、結局山々に勢いを阻まれ狭い領域に入ったところを火力の集中投入で殲滅された。

 

あの頃の前線地域は南モラヴァ川の近く、ゴルニャ・トポニツァであったから今の前線地域はそこから122キロも前進した。

 

現在ユーゴスラビア=ソ連連合軍はヴェリカ・プラナからヴァリエボ、ペトロヴァツまで戦線を押し上げ、ベオグラード・ハイヴ攻略を目指していた。

 

前線地帯の各軍には新しい装備や追加の補給物資、人員が配備され着々と大突破の準備が始まっている。

 

そして第4親衛戦車軍司令部にも今回限りの新しい追加要員がやってきた。

 

ヤゴディナの司令部前にUAZ-469が1台停まり、そこから1人の少佐が出てくる。

 

少佐はそのまま第4親衛戦車軍の司令官がいる仮設の建物に向かった。

 

中に入り名簿を確認し、警備の将校より許可を貰う。

 

そのまま作戦室に入って敬礼し、司令官であるローシク元帥に挨拶をした。

 

「第1ウクライナ前線より派遣で参りました、ブラート・リトヴィネンコ少佐です」

 

「よく来た、私が第4親衛戦車軍元帥のオレグ・ローシク戦車兵元帥だ。遠いところ態々ご苦労」

 

2人は握手を交わし、その場にいた他の参謀達とも握手を交わし挨拶をした。

 

リトヴィネンコ少佐が第4親衛戦車軍司令部を訪れたのには幾つか理由があった。

 

まず第4親衛戦車軍ら前線の軍司令部は大規模な作戦行動を行う為に前線司令部に参謀の増派を求めた。

 

第2ウクライナ前線司令部としても参謀に関してはそれほど余裕がある訳ではない為、あくまで期限付きで借りるということで現在戦力回復に努めている第1ウクライナ前線や白ロシア前線、沿バルト前線に声をかけた。

 

そこでローシク元帥は息子の義父である第1ウクライナ前線司令官のヤゾフに直接声をかけ、何人か参謀を派遣して欲しいと頼み込んだ。

 

ヤゾフとしても目をかけている参謀達に前線司令部以外の経験も積んでほしいとの意を込めてリトヴィネンコ少佐を派遣した。

 

リトヴィネンコ少佐は元々自動車化狙撃兵出身であり戦車戦力による突破戦闘を特に目に焼き付けて欲しかった。

 

諸兵科を理解しそれをどう運用するのか、どう補佐するのかを学び身につけるのが将官への道だ。

 

リトヴィネンコ少佐なら決断力を持ったいい将官になれる、ヤゾフはそう期待していた。

 

「作戦の概要はある程度頭に入っているね?」

 

「はい、第4親衛戦車軍はドナウ川渡河を含めた約76キロ地点まで前進しBETAの戦線を突破せよでしたね」

 

ローシク元帥は頷いて置いてあった指揮棒を手に取り、リトヴィネンコ少佐の説明に付け加えた。

 

「その通り、そして我が第4親衛戦車軍は第一梯団の最先鋒。止まることなく突破戦闘を行うのが肝要だ」

 

この点についてはリトヴィネンコ少佐も前線司令部の作戦室で頭では理解していた。

 

第3親衛戦車軍は常に先鋒を務め、装甲戦力による大突破によって前線の道を切り開いている。

 

「そして地図の上に記載されているのが我が軍が入手した全てのBETAの展開図だ。正面に2個、後方に2個、合わせて4個軍と対峙する可能性がある。さて、ではどう攻めるか」

 

地図上にはかなり丁寧にBETAの展開位置がマッピングされていた。

 

これらは全て偵察戦術機や地上偵察、宇宙軍の衛星偵察によって確認されたものだ。

 

凄まじい労力によってこれらの情報は判明している。

 

「少なくとも我が軍の両脇には第8戦車軍と第13軍がいる。我々が集中すべきはこの2個軍、これをどう突破するか、君の意見を聞かせてくれ」

 

「主力はモラヴァ川の左側に配置し最優先で突破、右は側面援護に徹しつつ前線を押し上げて後は第二梯団の各軍に任せるという感じでしょうか」

 

「流石は前線参謀だ、地形を見ての判断が早い。だがBETAのこの数を相手にするとなると戦力を分散させるのすら惜しい。故に、だ」

 

ローシク元帥はモラヴァ川を挟んで右側に展開するユーゴスラビア軍の2個師団を指し示した。

 

兵科記号で1個は戦車、もう1個はソ連軍でいうところの自動車化狙撃兵となっている。

 

「右側の側面援護は今回だけ指揮権を譲渡されたユーゴ軍の2個師団に任せる。我々は全力で川の左を突破し、ドナウ川の奥へ向かう。これが使命だ」

 

「右翼をユーゴ軍だけに任せて大丈夫でしょうか?」

 

リトヴィネンコ少佐は思わずローシク元帥に尋ねた。

 

するとローシク元帥は快活に笑い彼に返した。

 

「ユーゴの戦車師団長は私がアカデミーの校長をしていた頃の教え子だ、しかも彼の師団の連隊長達の面倒も私が見ていた。何の心配もない」

 

「同志元帥の教え子でしたか」

 

「ああ、平時のままだったら育てるだけで終わったんだがな。今は有事だ、我々の学びを活かす時が来た。来たまえ」

 

ローシク元帥は彼を連れて一旦外に出た。

 

司令部から暫く行くとそこには大型トラックで運ばれる大量の戦車の姿があった。

 

車両は全て最新鋭のT-80B、しかも爆発反応装甲がついたT-80BVである。

 

数は凡そ1個戦車中隊ほど、その背後にはT-80BではなかったがT-64BVの姿もあった。

 

砲と装甲を備えたソ連軍の硬く鋭い刃が次々と前線へ向かう。

 

「これが我が軍の主力、我々の中核だ。装甲と火砲、戦場に必要なものが全て揃ってる」

 

「ですな、私も戦車隊には何度も助けられました」

 

「同志ヤゾフに君のことは任されている、私も息子を彼に任せている以上相応に鍛え上げなければな」

 

前線へ向かう戦車隊の車列を見ていたローシク元帥は振り返り、リトヴィネンコ少佐に明言した。

 

「私とヤゾフで君に将軍として必要な全てを叩き込んでやる。ソ連軍の未来は君らに託したぞ」

 

ローシク元帥は彼の肩をしっかり掴み、そう語りかけた。

 

リトヴィネンコ少佐は確実に成長している、多くの将軍達の希望を背負って。

 

彼が将官になるのはもうそう遠い話でもないのだろう。

 

 

 

 

 

-イタリア共和国領 フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州 イゾンツォ川周辺 イタリア戦線地域-

イタリア軍を含めたNATO南部欧州連合軍はイゾンツォ川周辺を防御陣地としてスロベニアから迫り来るBETAを防いでいた。

 

現在も旧ゴリツィア市街地に凡そ1個旅団規模のBETAが押し寄せていた。

 

前線地域を支えるイタリア陸軍部隊はこれと交戦、各所で戦闘が勃発している。

 

市街地とイゾンツォ川周辺には対BETA用地雷が散布されており、これでかなりの足が止まる。

 

河川に近づけば重機関銃やロケット砲を積んだフィアット 6614やTOWミサイルを積んだAR 76に迎撃される。

 

山岳部でずっと防衛戦を続けていたイタリア軍にとって1個旅団であろうとこの戦いは慣れたものであった。

 

正面突破を図ろうとするBETAは中央展開しているSIDAM 25とレオパルト1が火力を集中して突破を阻止する。

 

こうして初動防衛部隊が侵攻を阻止しているとすぐにイタリア空軍のトーネード A-200が現地に到着し、戦闘に加わる。

 

BETAに対してまず後続のBETAに低空で侵入してクラスター爆弾を投下する。

 

戦線に穴が空いた所にトーネード部隊が展開して突撃級の背後を撃って数十体ほど撃破した。

 

他にもAIM-9Lなどが要撃級を撃破し、レオパルト1が接近する突撃級に集中攻撃を浴びせて撃破する。

 

ルチニコには防衛戦闘を行なっている騎兵旅団”ポッツォーロ・デル・フリウリ”の司令部があった。

 

前線地域ということで特別に戦車戦力まで配備され、今日までのイゾンツォ周辺の防衛線を維持していた。

 

司令官ヴィットリオ・スタンカ准将は野戦服姿で司令部の作戦室で指揮を取っている。

 

「空軍の戦術機部隊が到着、戦術機用の補給地点はここに設置しました」

 

参謀の1人が赤ペンで丸くマークを描き、補給地点を指し示した。

 

「NATO軍の戦術機部隊は」

 

「現在アメリカ空軍の戦術機部隊が接近中です。後10分で到着するかと」

 

「10分か、前線の様子は」

 

「第一陣は抑え込めそうですが残りの第二陣は後10分ほどで到着するかと」

 

スタンカ准将は考えた。

 

彼ら騎兵旅団”ポッツォーロ・デル・フリウリ”でもBETAを押し返すことくらいは出来る。

 

だが押し返した後が肝要だ。

 

「海軍司令部から伝令です。米海軍F-14部隊が増援として接近中、BETAの後続部隊の接近阻止を行うそうです」

 

通信士官から報告が入り、スタンカ准将の考えに決着がついた。

 

「米空軍の到着と同時にチェンタウロ部隊を投入しゴリツィアから奴らを押し出せ。正面の部隊は一部を前に出して同時に押し込め」

 

「はいっ!」

 

防衛線の左翼側に展開していたチェンタウロ装甲偵察戦闘車部隊はBETAの接近を阻止しつつ、反撃用に残していた橋を防衛していた。

 

本来チェンタウロはもう少し後の時代に生まれる車両であるが、度重なるBETAとの戦闘の結果開発が早められた。

 

その影響は輸出戦車にも出ている。

 

イタリアが開発したOF-40はアフリカ戦線や中東戦線での重戦力需要によって思った以上に売れている。

 

得られたデータも数多く、そのデータはイタリア軍の最新戦車開発に役に立てられていた。

 

援護のチェンタウロ隊が105mmライフル砲を叩き込んでBETAを撃破する。

 

そして後方からは反撃用のチェンタウロ隊が登場し、早速橋を渡り始めた。

 

「各隊に通達する、大型BETAは足を潰して動けなくしろ。後で戦術機がやる、残りは殲滅しろ」

 

各車両から『了解』と報告が入り、指揮車両型を戦闘にチェンタウロが橋を渡った。

 

足の速いチェンタウロは戦車よりも早く橋を渡りイゾンツォ川の向こう岸に辿り着く。

 

砲塔を向けて接近する要撃級を撃ち抜き、残る戦車級の群れは橋を渡ってきたSIDAM 25と渡河したSIDAM-25が殲滅した。

 

後に続くフィアット6614が歩兵を下ろして橋頭堡を確保する。

 

「前進!」

 

チェンタウロ隊は圧倒的な機動力でBETAの戦線を食い破り、各所に穴を開けて損害を与えた。

 

突っ込んでくる突撃級はすぐに回避して装甲のない肉の部分に105mmライフル砲を叩き込み、戦車級の群れには後続のSIDAM 25が対処する。

 

勝てっこないのに接近する闘士級は7.62mm機関銃を叩き込み、タイヤで踏みつけた。

 

タイミングよく前線にはアメリカ空軍のF-15やF-16が到着し、イタリア空軍と共に前線を押し上げる。

 

BETAは右側面からチェンタウロ部隊の強襲を喰らい、正面は突破出来ずに損害を出した。

 

そして米空軍の執拗な攻撃によって各所で戦列が瓦解する。

 

後続から到着するはずの増援部隊も山岳部を盾に光線属種の車線を切って突っ込んできたF-14によって殲滅された。

 

補給を受けて戻ってきたイタリア空軍のトーネード A-200のクラスター爆弾によって再びBETAの戦線に穴が開き、そこへチェンタウロとイタリア軍の車両部隊の強襲を受ける。

 

後方からは連続して波状攻撃を仕掛けるはずの増援が到着せず、結果的にチェンタウロ部隊とトーネードらに後方を塞がれて袋叩きにされた。

 

砲に迫撃砲に、最後は司令部直轄のMLRSのクラスター弾まで叩き込まれて3,000体ほどいたBETAは全滅した。

 

残る後方の3,000体ほどのBETAも戦術機部隊の攻撃によって壊滅し、組織的な攻勢能力を失った。

 

戦闘は丸1日ほど続いたが1日ちょっとで旅団規模のBETAをほぼ丸ごと打ち倒した。

 

すぐに死体の回収がなされ、各所で防衛線は維持しつつ復旧作業が進められた。

 

彼らからすれば本当に慣れた光景であり、疲れてはいるが態々喚くほどの光景ではなかった。

 

どうせすぐに連隊でも師団でもBETAが増援として到着するだろう。

 

それをまた今回と同じように迎撃し、祖国への侵入を阻止する。

 

それが前線地域のNATO軍の日常であった。

 

旅団長スタンカ准将は今後の作戦や復興計画を立てる為に前線視察に赴いた。

 

旅団長は略帽のベレーを被り、首から双眼鏡をつけていた。

 

川の側をスタンカ准将と幕僚達が歩きながら様子を見つめた。

 

「撤去にはもう1日掛かりそうですな」

 

「ああ、今月で旅団規模の攻勢が3度目、前線地域全体で言えば12回も奴らは来ている。辛い戦いだな」

 

どんなに上手く防衛を行なったとしても犠牲は必ず出る、兵は疲れる。

 

高い戦意を誇っていたとしてもこうも連続して戦いが続けば士気は下がる。

 

BETAがそうであるように人も戦争の為だけに生まれた存在ではなかった。

 

「ソ連軍はベオグラード・ハイヴを攻略するそうですが」

 

「我が軍が楽になる為にはクロアチアのザクレブ・ハイヴの方を堕としてもらわないとな。まあ当面は無理だろうが……」

 

各所で厳しい戦いが続いている。

 

一歩づつ勝利へ向かっているとはいえ厳しい戦いであることに違いはなかった。

 

そこまで耐えられるかは別問題であるが。

 

 

 

 

 

-ユーゴスラビア社会主義連邦共和国領 ボスニア社会主義共和国 ゼニツァ周辺-

9月の終わり、ユーゴスラビア軍はソ連軍と合同でボスニア社会主義共和国の首都、サラエヴォの奪還作戦を発動した。

 

多くの者にはベオグラード・ハイヴ攻略の為の前段階と見做されており、ソ連軍との連携を再確認するものだとされた。

 

作戦部隊はユーゴスラビア地上軍第4軍団を中心に郷土防衛部隊を加え、ソ連軍南欧前線第12軍も参加した。

 

第12軍には山岳部攻略の為に多数の山岳狙撃兵師団が編入され、ボスニアの険しい山々を踏破し、BETAに奇襲を仕掛けた。

 

目指すはサラエヴォ、ロガティツァ、ヴィシェグラード、ヴラセニツァ、ボスニア人の心にある都市の数々である。

 

既にロガティツァとヴィシェグラードは奪還した為、当面はヴィシェグラード、サラエヴォを目指した。

 

既に度重なる攻勢の失敗とイタリアにまで手を回したことによりBETAの守備戦力はそう多くはなかった。

 

今回の奪還作戦も積極的に前へ進むというより引き付けて叩き、弱体化したところを押し込むという形であった。

 

こういった戦闘で特に活躍したのが戦術機である。

 

山々を易々と踏破し、歩兵や車両以上の火力を持ち、尚且つ目下の脅威である光線属種も山々によって射線を防げる為圧倒的に戦術機に優位な環境だった。

 

通常航空機の代替として航空作戦で運用される戦術機であるが、今回ばかりは”歩行”戦闘機の面が役に立った。

 

そこには結成されたばかりの第306独立戦闘航空連隊もいた。

 

第306戦闘航空連隊は結成から派遣の3ヶ月間訓練を重ね、練度を高めた。

 

元々戦闘経験豊富な衛士で構成されている連隊であるから元々精鋭であり、フレツロフ中佐は衛士個人の腕よりも連隊による連携の訓練を重視した。

 

そしてついに連隊は実戦に送り込まれた。

 

MiG-27や隊長機のMiG-29が機動力を活かしてBETAを易々と撃破し、突入部隊の進路を切り開く。

 

連隊はパレに突入する部隊に同行し、ついに市街地に入った。

 

「各機市街地には注意しろ。射線は切れるが山岳部ほどではない!」

 

前方に光線属種を検知、数10

 

「各機低空飛行して突入!恐らく10体は光線級がいる!」

 

地面スレスレまで機体を近づけ、27機の戦術機が突入した。

 

パレの市街地に突入した。

 

目につく戦車級や要撃級は徹底的に破壊し、光線級を探す。

 

安定した航空攻撃を行う為には対空の撃破は間違いなく必要であった。

 

『3060103ついて来れてるか?』

 

『問題ありません』

 

前方360メートル先に光線級確認、数1、右

 

フレツロフ中佐は先行し、周囲をカバーするようにブリツェンスキー少佐とルヴィロヴァ上級中尉も続いた。

 

「そこっ!」

 

突撃砲1発で光線級を撃破し、後方にいた突撃級2体はブリツェンスキー少佐とルヴィロヴァ上級中尉が潰した。

 

周囲に展開していた戦車級や闘士級らにルヴィロヴァ上級中尉のMiG-27が火炎放射器を用いて火を放つ。

 

彼女のMiG-27は開発局の試験装備が多数搭載されており、小型火炎放射器もその1つだ。

 

他にも武装は突撃砲ではなくGSh-30-2を2門設置したガトリング装備であり、可動式兵装担架に弾薬ベルトが繋がっていた。

 

無論突撃砲も装備しているが基本的には予備の武装である。

 

本来はSu-25用の武装であるが通常の戦術機にも使えないかと試験兵装として装備していた。

 

「モースク、光線級の位置割り出せるか」

 

数は確認出来るが位置は不明だ

 

ならば強制的に割り出すまでだ。

 

「3060206、07、指定した範囲に榴弾の152mm砲を放て。光線級を燻り出す」

 

『了解!』

 

合計4発ほどの榴弾が放たれ、それを検知した光線級がレーザーを放って迎撃に出た。

 

射撃位置を特定

 

「各機急げ、送った座標に奴らはいる」

 

『了解!各機行くぞ!』

 

デルーギン少佐の中隊が先行し、指定座標に攻撃を仕掛けた。

 

12秒の間に移動し光線級を発見し突撃砲を叩き込む。

 

10体いた光線級を一先ず殲滅し、残るBETAの掃討に出た。

 

「メデツィーニン、味方部隊はどうだ」

 

『後5分後に到着する。司令部からは手が空いたら指定した座標に向かえとお達が出てる』

 

「了解した」

 

『補給物資を送ったから戦闘終了後に受け取れ』

 

「助かるよ!」

 

パレに展開していた大隊規模BETA群は地上部隊が到着する頃には半分近くが打ち倒されていた。

 

すぐに到着したBVP M-80AとM53/59プラガに機関砲を搭載した車両が入ってくる。

 

歩兵部隊が市街地に突入し、占領を開始する。

 

連隊は後退して補給物資の落下地点に向かった。

 

「よぉし、とっとと取ってさっさと戻るぞ」

 

必要な分の弾薬を確保し、消耗の激しい武装は交換した。

 

『あと少しでサラエヴォだ、勝利は近いぞ!』

 

ブリツェンスキー少佐が味方を鼓舞している間にフレツロフ中佐はメデツィーニン少佐やモースク1と話をしていた。

 

『司令部からの命令でサラエヴォ突入は30分後だそうだ。まず市街地に支援砲撃を叩き込んで後方の重光線級集団に戦術核を投入する。通常の戦術機部隊はそれと同時に突入する』

 

「攻撃方法は?」

 

『砲撃と軌道爆撃、機動爆撃に関しては米軍のも混じってる』

 

ユーゴスラビアは社会主義国家でも第三の道を選んだ国家である、故にアメリカとの繋がりもあった。

 

何にせよ攻撃が多く叩き込まれるのはいいことだ。

 

「モースク、市街地内の光線級は爆撃で何割やれそうだ」

 

数からして45%

 

妥当なところだ、今回の爆撃と砲撃は光線級のみを狙ったものではない為生き残りが多くても仕方ない。

 

どれだけ砲を撃っても生き残る個体は出るのだから割り切る他ない。

 

「各機これよりサラエヴォ内に突入する。市内には多数の光線級が確認されているから各々注意して進め。南スラヴの同志のためにBETAからサラエヴォを取り戻すぞ!」

 

フレツロフ中佐自身でも連隊の士気を上げ、戦場へ向かった。

 

最小のエネルギーで戦場まで向かい、サラエヴォの手前まで到着した。

 

その場には先行していたユーゴスラビア空軍のL-17Kの部隊がいた。

 

「第306独立戦闘航空連隊だ、状況は」

 

『変わりありません、BETAども完全に守りを固めてます』

 

『砲撃開始まで残り5分、各軍警戒せよ』

 

作戦に参加する全部隊に連絡が届いた。

 

「そちらの隊は弾薬足りてるか」

 

『お気遣いありがとうございます、十分ありますよ』

 

「そうか、では共に行こう」

 

ユーゴ空軍のL-17Kは頷き、攻撃のタイミングを待った。

 

少しすると数個編隊のSu-24が低空で侵入し、サラエヴォを迂回するように山岳部を飛行した。

 

数十秒後、Su-24が展開した地域に幾つかの光が広がり、そのすぐ後に大きなキノコ雲と衝撃波をあたりにばら撒いた。

 

「始まったか」

 

そのすぐ後に後方から風切り声と共に飛行機雲が現れ、真っ直ぐサラエヴォの方に落下した。

 

すぐにサラエヴォから噴き出た青白いレーザーによってほとんど迎撃されたが刹那、天より降り注ぐ鉄の雨が大地に直撃した。

 

砲撃も第二陣が叩き込まれ、市街地に粉塵が立ち込める。

 

「各機突入用意…!」

 

MiG-29や27らが武装を構え、命令を待つ。

 

1分間の準備砲撃が終了し、全部隊に突入許可が降りた。

 

「306独立連隊、前進!」

 

『各機連隊長に続け!進めぇ!!』

 

2機のMiG-29が先行して突入し、その後に他の戦術機が続いた。

 

生き残った光線級は即座に応戦してくるが数が少なく、突入を止め切れなかった。

 

「モースク!撃ってきた地点はマークしておけよ!」

 

射撃地点を表示

 

「上等!」

 

2機のMiG-29と1機のMiG-27が市街地の通路を抜け、目についたBETAを片っ端から排除していく。

 

あれだけの砲撃を撃ち込んだがやはりまだBETAは生きていた。

 

装甲の剥がれた突撃級が一度に数体程突っ込んでくるが即座に回避して背後にロケット弾とルヴィロヴァ上級中尉のGSh-30-2機関砲を叩き込む。

 

一瞬のうちに突撃級が壊滅し、住宅地を無理に突破してきた突撃級も去り際をMiG-29の短刀で致命傷を負うほど切り刻まれた。

 

「チッ!思ったより取りこぼしが多い!」

 

『中佐、前方より突撃級来ます。数8!』

 

さてどうするかと考えているとすぐに上空を飛び越えてやってきたオルゼルスキー少佐の隊が8体の突撃級を撃滅した。

 

背後に隠れていた戦車級や要撃級も殲滅し、BETAの集団を殲滅する。

 

『ご無事か連隊長』

 

コックピットの中でスキットルを煽りながらオルゼルスキー少佐は尋ねた。

 

「ああ、ウォッカの件は黙っててやる。オルゼルスキー隊はミリャツカ川を渡って奥まで進撃しろ。すぐに我々も続く。デルーギン隊は暫く制圧を頼む」

 

『了解!』

 

『了解、各機俺に続け』

 

オルゼルスキー少佐と新しい中隊の政治将校が乗るMiG-29が先行し、川を易々と渡ってサラエヴォの中心地に向かった。

 

サラエヴォ市街には四方向から述べ4個連隊が突入し、制圧戦を開始した。

 

BETAは砲撃から立ち直って反撃に出た個体もあれば、そのまま絶命した個体も存在した。

 

市街地というフィールドは戦術機にとっては光線属種の攻撃を可能な限り減らせるが、BETAにとっても奇襲攻撃を行えるチャンスであった。

 

建物の残骸に隠れていた戦車級が接近した戦術機に数体で飛び掛かって機体を損傷させた。

 

突然建物をぶち抜いて現れる突撃級に撃破される戦術機も少なくなかった。

 

こうした状況で頼りになったのがソ連宇宙軍の衛星画像による情報だった。

 

要撃級以上の大型種であれば大抵の場合、衛星画像で発見し地上部隊に情報を共有した。

 

尤もフレツロフ中佐の場合はそうしたデータをモースク1が勝手に持ってくる為、側から見ればやたらに勘のいい奴だと思ってたが。

 

前方500メートルに光線級、正面攻撃に注意

 

「任せろ!」

 

腕部に取り付けた対地ミサイルを叩き込んで周囲のBETA ごと光線級を撃破し、通り過ぎる。

 

3機とも川を渡り妨害に来る戦車級の群れをルヴィロヴァ上級中尉が皆殺しにする。

 

『いいぞ上級中尉!いい腕だ!』

 

「ああ、このまま一気にっ」

 

刹那、フレツロフ中佐のMiG-29の真上を胴体を真っ二つにされたMiG-23が飛んでいった。

 

3人は本能的に回避し、彼らがいた場所に触手を叩き込みながら1体のBETAが突っ込んできた。

 

牽制で突撃砲を放ちながら距離を取り、状況を確認する。

 

『あれはっ!?』

 

「ヴロツワフとオストラヴァ辺りで見た改造BETAだ!装甲が厚い上に触手を飛ばしてくるから気をつけろ」

 

すぐにフレツロフ中佐は左手の武装を長刀に切り替え、接近する触手を叩き切った。

 

改造突撃級は触手を振り回しながら突進し、3機を襲った。

 

3機で倒すには面倒な相手だが、今ここで増援を呼ぶ訳にはいかない。

 

『フレツロフ、こっちからBETAの変異種と戦闘してる姿が見えるが増援を要請するか』

 

心配したメデツィーニン少佐が尋ねてきたがフレツロフ中佐は断った。

 

「いや、このデカいのは俺たち3人で抑える。残りは全部市街の制圧に回せ!制圧戦の現場指揮はデルーギンに!」

 

『了解、死ぬなよ』

 

「まだ飛んでいたいんでね!」

 

触手を全て避け切り、Kh-25ミサイルを叩き込む。

 

改造突撃級の装甲を1枚破れたがもう1枚残っていた。

 

「増加装甲かっ!厄介なものをっ!」

 

だが即座にブリツェンスキー少佐が120mm弾を放ってもう1枚破り、本体の部分を露出させた。

 

更に足元にもう1発放って一時的に足を止めさせる。

 

「よし!」

 

その隙を逃さずKh-29空対地ミサイルを叩き込み、直接ダメージを与える。

 

だが恐ろしいことに改造突撃級はまだ生きていた。

 

『あれで倒せないのか!』

 

「ダメージは通ってる、もう何ヶ所かに叩き込めば倒せる!」

 

変異種を過去データと比較、1.5倍ほど巨大化している

 

3Dグラフィックの改造突撃級を表示し、そこに赤線で2本ほど赤線が引かれた。

 

しかし肥大化の結果この赤線の部分のみ装甲が展開出来ていない

 

「なるほど!ここに切り込めってか!また無理を言う!」

 

触手を3本ほど切り落とし、短刀を投げてルヴィロヴァ上級中尉に迫る触手も先端を落とした。

 

『助かりました!』

 

”君の腕なら成功率は80%だ”

 

「80か……60%越えながらやってやるよ!各機、変異種の注意を引け。俺が非装甲部になんとか攻撃を叩き込むからそれまで頼むぞ!」

 

『…?了解…?』

 

『ハイヴ4回墜した連隊長のいうことだ信じるぞ!』

 

ブリツェンスキー少佐とルヴィロヴァ上級中尉は散開して命令通りに改造突撃級の注意を引き付けた。

 

GSh-30-2でも改造突撃級の装甲は破れないが注意は引き寄せられる。

 

接近してきたところを回避際に火炎放射器で炙ってダメージを与え、その間にブリツェンスキー少佐のMiG-29が対地ミサイルを叩き込む。

 

『上級中尉!射撃は任せるぞ!』

 

『了解…!』

 

ブリツェンスキー少佐は装備を長刀と短刀に持ち替え、接近する触手を全て切り裂いた。

 

一時的にほぼ全ての触手が切り落とされ、体内に戻された。

 

「ここだ!」

 

フレツロフ中佐は最大速度で改造突撃級に接近し、体の上に飛び乗る。

 

接近する触手は全てブリツェンスキー少佐が切り落とし、ルヴィロヴァ上級中尉がKh-25で足を1本吹き飛ばした。

 

揺れ動く中、装甲の隙間に突撃砲を捩じ込んで連射し、弾が切れると長刀で何度も斬撃を加えた。

 

斬撃の末、改造突撃級の身体が切り落とされ大量に体液を排出した。

 

「おしまいだよ!」

 

トドメに腕部のKh-25空対地ミサイルを全て発射し、内側から吹き飛ばした。

 

『変異種の撃破を確認!』

 

「友軍に合流する、行くぞ!」

 

すぐに武器を切り替え、フレツロフ中佐のMiG-29は前線に戻った。

 

これより1時間後、サラエヴォ内のBETAは掃討され、市内の奪還が発表された。

 

ベオグラード・ハイヴ攻略戦の前哨戦でユーゴ=ソ連連合軍は勝利を収めたのだ。

 

 

つづく

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。