マブラヴ グレートパトリオティックウォー   作:Eitoku Inobe

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労働者よ、農民よ、武器を固く握れ
今や神聖な義務である
奴らは犯罪者であり、犯罪を働く前に
今こそ人民が奴らの武器は砕く
今やは社会主義は世界の大国である
今や人々はもはや孤独ではない
-”公然たる進軍”より抜粋-


アクスマンを撃て

-ドイツ民主共和国領 ロストク市 在独ソ連軍管轄施設 KGB 特別防諜室-

KGB第1総局S局は”ヴィンペル”部隊支援の為に局長ドロズドフ中将らが東ドイツに訪れた。

 

本拠地はヴィスマルのシュタージ本部ではなくロストクで在独ソ連軍が預かっている施設を間借りした。

 

下手にシュタージ内に集約しては一度に全滅する恐れがあり、リスクヘッジの為に分散された。

 

基本的に全体の作戦指揮は特殊作戦局のラザレンコ中将が執り行い、ドロズドフ中将らS局とシュミット上級大将らドイツ支局はサポートに回った。

 

シュタージ関連施設には通常とはまた別の盗聴器を大量に設置し、余裕があればベルリン派の自宅にもS局が使える盗聴器を配置した。

 

これは1982年12月から行なっており、成果は12月の下旬から1983年1月辺りから出始めていた。

 

S局の用意周到かつ大規模な諜報網を全てベルリン派に向けることにより、ほぼ無制限の情報収集能力が手に入った。

 

これらで得た情報を元にドイツ支局は手始めにベルリン派に与する国家人民軍大尉を逮捕した。

 

内容は汚職と武器弾薬の不正流通、逮捕状を請求するには十分な証拠がお揃っており、ベルリン派も身内を擁護せず切り離す方向に動いた。

 

この逮捕による反響は少なかった。

 

ベルリン派は一切拘らず、知らず存ぜずを貫き通した。

 

大尉1人を生贄にしてベルリン派全体に被害をもたらすのを防ぐ方がダメージが少ないと判断したのだ。

 

反発することもなくサボタージュを行う訳でもない、大尉の逮捕は思ったよりあっさり終わった。

 

S局とドイツ支局はこれを見て諜報の効果は高いと判断、引き続きベルリン派を一網打尽にする為に防諜を続けた。

 

そして1月のある日、彼らはベルリン派を死滅へ追い込む為の鍵となる情報を収集した。

 

ある1人のKGB上級中尉が防諜室でヘッドホンから盗聴器が拾う人の声を真剣に聞き取る。

 

盗聴器の性能のせいか若干音質は悪いがほぼ毎日この仕事についていると気にしなくなった。

 

周りには同じように各部屋の盗聴器から情報を引き出そうとしている同僚が何人もいる。

 

皆己のデスクに向かって真剣に職務に励んでいた。

 

早く終わらせて故郷のモギリョフに帰りたいものだ、そう思いながら仕事をしているとドアが開く音が聞こえた。

 

部屋の主人が帰ってきたのだ。

 

帰ってきたかと本格的に上級中尉は音声に耳を傾けた。

 

彼が担当するのはシュタージのA総局、オスター大佐の執務室だ。

 

オスター大佐はアクスマン中佐と並んでベルリン派の首魁、特にオスター大佐は表向きの頭目であった。

 

彼は自分の執務室へ帰ってくるなり鍵を閉めて、デスク裏のボタンを押した。

 

これで既存の盗聴器は無力化出来るのだがS局が後から仕掛けたものは別だった。

 

引き続き室内の音声は上級中尉の耳に全て入ってくる。

 

彼は念の為メモとペンを用意し、軽く走り書きをする準備をした。

 

もしかしたら何か重要なことを話すかもしれない、こうして得られた情報はいくつもある。

 

今や上級中尉はオスター大佐の家族構成や何処に住んでいるかすら把握していた。

 

彼は室内の固定電話を繋ぎ、誰かと連絡を取った。

 

『ああ、私だ。オスターだ、アクスマン中佐はいるか』

 

上級中尉の目が一気に見開き、メモ帳には”オスター アクスマンと連絡”と時間付きで書かれていた。

 

ロストクで行われていることを一切気にせずオスター大佐は話を続ける。

 

『私だ、忙しい所すまんな。ああ、そのことだ、私も話したいことがある。うん、2月の……3日辺り、場所はミューレン池のアレでどうだ。ああ、下手に護衛を動かすと勘付かれる、少数で行こう』

 

ベルリン派 密会 ミューレン池 関連施設”と上級中尉は重要ワードを書き出す。

 

『ああ、ではミューレン池の辺で会おう。3日な』

 

そう言ってオスター大佐は受話器を置き、通常業務に戻った。

 

上級中尉も録音していたカセットを取り出して別のものを入れ、近くにいる同僚に仕事を変わって貰った。

 

「すまん上に報告しなきゃいけないことがある。ちょっと変わってくれ」

 

「ああ…早く戻ってこいよ」

 

メモとカセットを持って上級中尉は上官達の下へ急いだ。

 

別室ではドロズドフ中将が他の将校やOBらと対応を話し合っていた。

 

S局は副局長のエフィモフ少将をモスクワに残して既存業務を任せ、残りは東ドイツに足を踏み入れた。

 

「なるほど、武器の流れはそこか……」

 

「ああ、ベルリン派の規模的にこれが限界だろう。一部は自前で持ってきてるものもいる」

 

「局長!!」

 

室内にはドロズドフ中将の他に日とヴウラノフ退役中将とF部のアレクサンドル・キサレフ少将がいた。

 

すぐに上級中尉は3人に敬礼し、報告を行った。

 

「ベルリン派首脳部が2月3日、ヴィスマルのミューレン池周辺にて会合を行うそうです!数は少数!」

 

ほぼ同じタイミングで別室にアクスマン中佐の盗聴を担当していた将校が姿を現す。

 

「大体事情は分かった、複数人ではなくアクスマンとオスターの1対1なのだな?」

 

「可能性は高いです」

 

「よし、引き続き盗聴を進めろ。カセットの方は私に」

 

2人はカセットをドロズドフ中将に渡し、執務室を後にした。

 

「”()()()()”とみていいのだね?」

 

ピトヴウラノフはドロズドフ中将に尋ねた。

 

彼は静かに頷いて軍令部に控えているラザレンコ中将に電話を繋いだ。

 

特殊作戦局にとってこれは千載一遇のチャンスだ。

 

「ドロズドフだ、ラザレンコ中将はいるか。では繋いでくれ」

 

応対した者に要望を出し、ラザレンコ中将を連れて来させた。

 

『ラザレンコだ』

 

「ドロズドフだ、”()()()()()”が動いた。作戦を考えたいから作戦局のメンバーでこっちに来れるか?」

 

ドロズドフ中将の要望はあっさり通り、電話越しに『移動出来る者を連れて直ちに向かう』と返ってきた。

 

「頼む、ようやく好機が巡ってきたぞ。逃したくない」

 

そう言ってドロズドフ中将は電話を切り、今度は建物内の部下達に電話を繋いだ。

 

「私だ、直ちに嵐333号作戦立案の為の準備をしろ。会議は311を使え、可能な限りの情報資料も用意しろ」

 

ドロズドフ中将の命令で施設内は急に忙しくなった。

 

今までS局とドイツ支局が集めてきた膨大な資料の準備と会議室のセッティング、特殊作戦を実行する為の地図も用意しなければならない。

 

また作戦会議ともなれば長時間となる可能性があり、軽食の準備も始まった。

 

「”フィルマ”は引き続き東ドイツ内の流通と経済の監視を、流れさえ掴んでいればどうにでもなる。ピトヴラノフさんもよろしくお願いします」

 

キサレフ少将は敬礼し、ピトヴラノフは「任せたよ」と軽く肩を叩いて2人は執務室を出た。

 

彼らには彼らの、我らには我らの役割がある。

 

「ようやくひと段落着きそうだな、奴の仕事も」

 

 

 

 

 

-ドイツ民主共和国領 ロストク市 ロストク軍港-

ロストクの軍港に1個任務部隊の海上戦力が寄港した。

 

空母”ヴァリャーグ”を旗艦とするソ連海軍の”ヴァリャーグ”海軍航空師団である。

 

この師団はついこないだまで国連派遣軍に属し、大西洋での任務についていた。

 

ヴァリャーグ”の艦載機部隊は度々海上に漏れ出すBETAを掃討したり、陸上に派遣されてBETAと戦ったりした。

 

長い任務を終えて”ヴァリャーグ”の一団は母港レニングラードへの帰路についた。

 

ロストクには帰路のついでに寄港した訳である。

 

水兵達は久方ぶりの陸地を楽しみ、僅かばかりではあるが酒や東ドイツの食事を食べて戦争の思い出とした。

 

そんな”ヴァリャーグ”の隣には彼女と同じレニングラード行きの客船が停泊していた。

 

これが彼ら、テオドールと義妹のリィズが乗る予定の船舶である。

 

2月の東ドイツ、モスクワやレニングラード程ではないが当然寒い。

 

ヴァリャーグ”から降りてきた水兵や将校達も黒いソ連海軍のコートを着ており、人によっては制帽ではなくウシャンカ*1を被っている者もいた。

 

2人も制帽に国家人民軍のコート、それと手袋にレニングラードに行くからという理由でベルンハルト中佐よりプレゼントとして贈られたマフラーを巻いていた。

 

今回レニングラードに行くのはテオドールとリィズの2人だけ、同じ中隊の衛士達は東ドイツに残る。

 

というのも2人がレニングラードに向かうのは少々特殊任務を与えられたからだ。

 

「リィズ、寒くないか?レニングラードに着いたらもっと冷えるだろうからしっかり着てろよ?」

 

「うん、大丈夫だよお兄ちゃん」

 

リィズ・ホーエンシュタインと再会して1年が経ち、もう間も無く2年になろうとしている。

 

あの時の衝撃、そして感動は今でもテオドールの中にあった。

 

リィズと再会してからテオドールは少し丸くなり、人の言うことも以前より聞くようになった。

 

今では少尉ではありながら腕も立ち、経験もあることから1個小隊くらいはサポートがあれば率いられる状態にあった。

 

「でも船かぁ……」

 

「不安か?」

 

リィズは小さく頷いた。

 

どういう訳か彼女は幼い頃から船の揺れに弱い。

 

戦術機の揺れは大丈夫なのに船の揺れはダメなのはどういう事か分からないが、とにかく苦手だった。

 

「ダメだったら酔い止めを貰おう、それでもダメだったらお兄ちゃんがついてるから」

 

「…うん」

 

リィズは義兄の手をギュッと握り、肩にもたれかかった。

 

するとそこへ案内役のソ連軍将校がやってきた。

 

「お待たせしました、私が案内のステパン・ノヴィロフ大尉です。お二人をレニングラードまで案内するよう申しつかっています」

 

「テオドール・エーベルバッハ少尉、リィズ・ホーエンシュタイン少尉です。よろしくお願いします」

 

3人は互いに敬礼を送り、挨拶として握手を交わした。

 

このノヴィロフ大尉という男、着ているコートは黒で肩章には黄色の一本線が引かれている。

 

制帽は黒色で錨のマークが張り付けられ、コートの下には黒色のダブルの制服を着ている。

 

彼はソ連海軍の大尉であり、よく聞けば階級も陸軍式とはまた違う者だった。

 

「寒いでしょう、早速中に入りましょう。こちらです」

 

ノヴィロフ大尉に案内されて2人は客船に乗り込んだ。

 

乗客は民間人が半分、テオドールら軍人が半分といった割合でデッキや船内で屯していた。

 

「本当は個室のお部屋を用意するべきなんですが……生憎空きがあまりなく、一部屋だけでして…」

 

ノヴィロフ大尉は申し訳なさそうに呟いたがリィズの方はケロッとした表情で「何の問題もありませんよ」と返した。

 

実際2人は兄妹であるし1週間も船の中にいる訳ではない為テオドールの方も特に問題はなかった。

 

「こちらです、お荷物を置かれましたら後は自由にしてください」

 

「ノヴィロフ大尉、少しいいか?」

 

「はい、直ちに」

 

大尉は別の地上軍少佐に呼ばれて2人の下を離れ、2人は室内に入った。

 

荷物を置き、そのまま船が出るまでデッキに出ることにした。

 

デッキには同じように外の景色を眺めている人々の姿があり、2人も手すりのそばまで向かった。

 

海風は塩と共に冷たい空気を運び、身を凍させる。

 

しかしまだ船が出ていないからかリィズの方は元気だった。

 

「2人きりで旅行なんてとっても嬉しいな!」

 

「旅行って、一応任務なんだからな」

 

2人がレニングラードに向かうのは上官のベルンハルト中佐からの命令だった。

 

彼はシュトラハヴィッツ大将の切り札であり、最も目をかけられていた人物だった。

 

そんなシュトラハヴィッツ大将は暗殺未遂事件で負傷し、3日程度であるが軍病院に入院していた。

 

その時にベルンハルト中佐はお見舞いに行き、この命令を受けた。

 

レニングラードに行った娘の様子を確認に行かせる為に2人ほど人を送ることとなった。

 

ベルンハルト中佐はそこで直接テオドールに命令し、立候補したリィズと共に向かうことになった。

 

最初は乗り気のではなかったがリィズがついてくることによってテオドールも渋々だが行ってくれることになった。

 

少なくとも前線は落ち着いている、ベルリン・ハイヴも沈黙しているしレニングラードに2名ほど衛士を派遣しても問題なかった。

 

それに、たった2人になってしまってもこの光景は懐かしい帰るべき場所だ、デッキの側に立つリィズを見ながらテオドールは微笑んだ。

 

その頃ノヴィロフ大尉は船の外に出て少佐と話していた。

 

「2人の監視は最低限でいい、ベルリン派とは無関係だし脱走する可能性も低い。だが怠りはするなよ」

 

ノヴィロフ大尉は頷いた。

 

実は彼の所属は海軍関係であるがソ連海軍ではなく、国境軍海上警備隊であった。

 

しかも海上関係とはまた別の教育もしっかり施されてる。

 

「ですがあのリィズ・ホーエンシュタイン少尉、あれは大丈夫なんですか?言いたくはありませんが前の所属先は……」

 

ノヴィロフ大尉は耳打ちして不安を述べた。

 

そう、リィズの前の所属先はフェリックス・ジェルジンスキー衛兵連隊の戦術機部隊である。

 

言ってしまえば総合してベルリン派の母体、全員がベルリン派ではないにしろ疑いの目が向くことは多々あった。

 

「その点は安心しろ、彼女が元々所属していた戦術機部隊は局長が手を入れた組織だ。彼女も局長の推薦で入ってる」

 

「……なるほど」

 

「後レニングラードに着いたら家族によろしく頼むわ」

 

「忘れないようにしておきます」

 

2人は軽く握手をしてノヴィロフ大尉は客船に再び乗り込んだ。

 

暫くして客船はロストクの港を離れた。

 

テオドールとリィズを乗せ、本来あるべき運命に引き合わせるために。

 

 

 

 

 

傍聴施設の一角に用意された会議室、ここにKGBの特殊作戦局とS局の面々が結集していた。

 

ハインツ・アクスマンとクラウス・メルツ・オスターを抹殺する為、嵐333号作戦の作戦会議を開いた。

 

すでにある程度実行の流れは決まっている。

 

まず目標がいる施設に侵入して護衛を制圧、それから目標を殺害し護衛を含めた遺体を秘密裏に遺棄する。

 

この一連の動作を速やかかつ隠密に終らせる為に”ヴィンペル”は日々訓練を重ねてきた。

 

会議にはS局長ドロズドフ中将、特殊作戦局長ラザレンコ中将、サポートに回る”ゼニート”部隊隊長ボヤリノフ少将、そして”ヴィンペル”部隊長コズロフ大佐とベスコフ大佐らが出席していた。

 

「ベルリン派が密談を行う場所ですが恐らくミューレン池のここ、この建物が密談場所かと思われます」

 

「その根拠は?」

 

コズロフ大佐が目標がいると思わしき場所を指し示したT局第3課からの出向要員ピョートル・テレシェンコフ技術大佐に尋ねた。

 

「周辺の監視カメラ映像を調べ直した所、この家に度々ベルリン派と思わしき人物が訪れています」

 

「それだけではありません、周辺住宅の購入記録を確認したところ、この建物はシュタージのダミー組織が所有していることになっています」

 

テレシェンコフ大佐の発言にS局のフェドロフスキー中佐は付け加えた。

 

このダミー組織は表向きは東ドイツの平和関連団体であるが実態はシュタージが元々西側への諜報活動や情報工作を行う為に使っていた。

 

今となってはそんな余裕もない為使われる機会は減ったが、ベルリン派が名義を隠す為に度々利用していた。

 

「それで奴らは何時頃にここに訪れる?」

 

「勤務時間から鑑みて6、7時以降ですね。この辺は支局長の方で調整が取れますが」

 

「であればやるとすれば8時か9時か」

 

ベスコフ大佐は「もう少し深夜がいいんですがね」と呟いたが会談の性質上そう遅くまで待っていられない。

 

幸いにも2月であれば夜更けも早い、8時、9時でも”ヴィンペル”部隊が闇世に紛れて行動を起こすには十分な時間であった。

 

後は細かな段取りである、”ヴィンペル”部隊がどう動き、作戦終了後に全体としてどうベルリン派を一網打尽にするかが肝心であった。

 

「取り敢えずこの地形なら最悪遺体を池に投げ捨てれば当面の時間は稼げる。後はどの隊が突入するかです」

 

コズロフ大佐は池を指し示しながら課題を投げかけた。

 

「セオリー通り正面からコズロフ大佐の”ヴィンペル1”が、裏から回ってベスコフ大佐の”ヴィンペル3”を突入させるのが筋だろう。そして遅くて前日から先行偵察部隊を配置して様子を探らせておく」

 

経験豊富のラザレンコ中将は速やかに詳細な作戦を考えた。

 

これだけ言えば後の事は”ヴィンペル”の2人がなんとかしてくれるだろう。

 

大まかな道筋だけ示しておけば後は彼らがなんとかしてくれる、下手に干渉せず実行させるのが吉だ。

 

「事前偵察の方は恐らく我々が実行するよりS局の方がやりやすいだろう。頼めますか?」

 

ラザレンコ中将は周辺の特徴を鑑みてドロズドフ中将に要請を出した。

 

ドロズドフ中将は難色を示すこともなく快く引き受けてくれた。

 

「ああ、こちらから何人か出しましょう。ドイツ支局にも要請を出してみます」

 

「助かります」

 

話を聞いていたイェルガルス中佐は苦い顔をしながらも「なんとかします」と呟いた。

 

「奴には私から話してみる。元々日程として会う予定があったしな」

 

それに対してもイェルガルス中佐は苦い顔をしながら「支局長嫌がりますよ」と述べたが、ドロズドフ中将は特に気にしなかった。

 

多少雑に扱ってもなんとか仕事を完遂してくれるのがシュミット上級大将の強みだ。

 

恐らくソ連が東ドイツから手を引いて、彼がほぼ一人で橋渡し役となってもなんとかするだろう。

 

「それとイェルガルス中佐、護衛の数は予想つくか?」

 

ラザレンコ中将は話ついでにドイツ支局側の人間に尋ねた。

 

「アクスマン中佐は確定で2人出してくるでしょう。1人はミヒャエル・ゾーネ上級中尉、これは確定です。そしてアクスマンのことですからヘフテン少佐も随行員付きで連れてくるはず。更にオスター大佐も1人は連れてくるから最低4人はいるでしょうね」

 

「4人なら悟られずにやれます」

 

コズロフ大佐の発言にベスコフ大佐も大きく頷いた。

 

むしろ困っているのはイェルガルス中佐の方であった。

 

「しかし連れてくるのは尉官とはいえ将校です、流石に7人も同時に行方不明となったら怪しまれますよ…?」

 

「そこは翌日行われるベルリン派の一斉逮捕に混ぜ込んで処理しておけ。小さな隠し事は大きな行動で塗り潰せばいい」

 

ドロズドフ中将は決まっていたかのような口ぶりで冷たく言い捨てた。

 

偶々現場にいたのが運の尽き、悪いがアクスマンらを恨んでくれとでも言いたげな声音だった。

 

「そうなると遺体も遺棄場所を考えんと、流石に7人も池には捨てられん」

 

「ですな、運用する車両はどうします?」

 

「軍と警察関係は怪しまれる。普通自動車を用意するから悪いがそれを使ってくれ」

 

2人の部隊長は頷き、メモに纏めた。

 

既に各所で事前準備が進んでいるせいか会議は淡々と速やかに進行した。

 

そこには怒りも哀れみもなく、淡々と機会的に仕事を進めるある種の冷たさが介在していた。

 

ベルリン派は立場上邪魔だから消えてもらう、それだけである。

 

「では暗殺後の行動ですが」

 

「ドイツ支局の息がかかった警察部隊とこっちの覆面部隊で一気に潰す。事前に逮捕状を用意させておく」

 

ドイツ支局、S局からドイツ語の出来る連中を東ドイツ側の制服に着替えさえて、彼らの要請を基にKGB側も動くという方向性で話は進められた。

 

シュミット上級大将率いるドイツ支局もベルリン派の秘密工作を食い止めるだけでなく、親ソ派、或いは反ベルリン派を抱え込んでいた。

 

今こそ彼ら彼女らの使い時である。

 

「ドイツに入れたうち(KGB)のパイロット組の装備は届いてますか?」

 

「”ヴァリャーグ”の入港に合わせてなんとか。機体は第16航空軍の管轄基地に搬入済みです」

 

ベルリン派には航空軍出身の戦術機乗りがいる、もしかしたら戦術機を奪って逃走するかもしれない為事前に特殊作戦局が持つ戦術機部隊の衛士を東ドイツ内に入れていた。

 

「ではアクスマン、オスターらを暗殺と同時に次の日にベルリン派の主要人物を一斉逮捕、それから3日のうちに全ベルリン派を一斉逮捕ということでよろしいですね?」

 

ラザレンコ中将の発言にS局とドイツ支局からの派遣要員は全員頷いた。

 

まずは頭を取り潰し、組織としてのベルリン派を完全に抹殺する手筈だ。

 

ここまで来るのに長い年月が費やされた。

 

だがようやく終止符が打てるのだ。

 

嵐333号作戦の風がベルリン派を1人残らず吸い上げようとしていた。

 

 

 

 

-ドイツ民主共和国領 首都ヴィスマル 国家保安省ビル 長官執務室-

作戦会議の結果をドイツ支局長にも見せる為、ドロズドフ中将はKGBとシュタージの連携調整を装ってシュタージ本部へ訪れた。

 

中は普段通り、ベルリン派とも反ベルリン派とも関わりのない者が真面目に勤務していたり、ベルリン派の人物が警戒の目でドロズドフ中将を目で追っていたりした。

 

既にこのビルには何度も訪れているがルビャンカとも違う、独特の雰囲気がある。

 

やはりベルリン派がそれなりに勢力を持っているからか監視の視線は耐えないし、同盟国であるにも関わらず敵対視の雰囲気すら感じられた。

 

尤もそんなことを気にしていてはKGB中将S局長の肩書きが廃る。

 

貴様らなど眼中にないと言った雰囲気を漂わせながらドロズドフ中将はシュミット上級大将の執務室まで向かった。

 

普段通り執務室に入ると、シュミット上級大将は鍵を閉めて防音対策のシステムを作動する。

 

ドロズドフ中将は着ていたコートを掛けて制帽はテーブルに置き、鞄から1枚の書類を出してソファーに座った。

 

そして若干不機嫌そうなドイツ支局長の顔を一瞥し微笑を浮かべた。

 

スキンヘッドで色白のサングラスを掛けた彼はいつも通りの風貌だ。

 

彼と一番最初にドイツに足を踏み入れたのは1945年のこと、2人ともまだ1人の兵士としてドイツ軍と戦っていた。

 

それからまもなく38年、だいぶ遠いところまで来た。

 

肩章には大きな2つ星が、胸には数多くの勲章を示す略綬が付けられている。

 

「なあ、シュミット上級大将殿」

 

ふとドロズドフ中将は彼に尋ねた。

 

「…なんだね」

 

代用コーヒーを用意して反対側のソファーに座るシュミット上級大将はぶっきらぼうに聞き返した。

 

「我々はお互い、大分遠いところまで来てしまったな」

 

ドロズドフ中将のらしくない発言にシュミット上級大将は鼻で笑い、サングラスを取り外した。

 

裸眼のまま旧友を見つめる。

 

その目に映るのは1945年のお互いがまだ若く、シュミット上級大将にとっては本当の名前を名乗っていた頃の姿が見えた。

 

再びサングラスをかけ、目に見える分の自分の姿を見た。

 

今の彼は全てが偽物だ。

 

地位も、名声も、名前も、階級も、略綬も、経歴も、全てがエーリヒ・シュミットという存在しない国家保安省長官の役を演じているだけなのだ。

 

1人きりになった時、彼は考えることがある。

 

自分とは何者なのか、と。

 

ベルリン派も子飼いの派閥も皆自分のことはシュミットと呼ぶし、そう呼ばれるよう演じてきた。

 

同じドイツ支局の面々も平場ではシュミットと呼ぶ、そうでなくては困る。

 

では自分とは誰なのか。

 

本来の彼はKGB少将でドイツ駐在KGB代表部から発展したドイツ支局の長、そして名は。

 

ドロズドフ中将は遠いところに来たと言ったが、シュミット上級大将からすれば最早自分のいる場所もあやふやであった。

 

それでもエーリヒ・シュミットであり続けるのは祖国ソヴィエトの為、KGBの剣と盾の使命を果たす為である。

 

その為にはベルリン派を何人殺めようと、東ドイツに戦略核を何発落とそうと構わなかった。

 

「……昔話をしに来たつもりではあるまいに。だが、どうせやることは決まっているのだろう」

 

彼はドロズドフ中将が提出した書類を受け取り、一瞥するとすぐにイェルガルス中佐に渡した。

 

「第3課と第5課に回しておけ、後はザヴェルシンスキー大佐らがなんとかするだろう」

 

「了解」

 

「ここまで来た以上後は計画に沿って進めるだけだ。”ヴィンペル”が失敗するとは思えん、どうせなら残りの時間は私の愚痴でも聞いてくれ」

 

「毎回聞いている気がするが、いいだろう」

 

冗談混じりにドロズドフ中将はシュミット上級大将の言葉に耳を傾けた。

 

「君が言った通り、我々がここまで来るのには長い道のりがあった。しかも辛く険しい、長い道のりだ」

 

「知っているとも」

 

「ベルリンにハイヴが落ちてシュタージの主要幹部は全滅、生き残った有象無象を纏め上げる為に私が担ぎ上げられた」

 

「ファデイキン少将が重傷を負われて代表を纏められるのは君くらいだったからな。そのまま再編されたドイツ支局とシュタージを率いられるのは君だけだ」

 

「我が目を疑った、支局長だけでなくシュタージの長官まで兼任でやれと言うのだからな」

 

ドロズドフ中将はある程度モスクワのKGB本部の事情を知っている為シュミット上級大将とは同じ空気感ではなかった。

 

されどそれでもある程度は同じ苦労を負っている、数少ない理解者だ。

 

「最初の年なんで毎日が不安だった。存在しない政府機関のトップのフリをするのだ、いつ発覚するか知れたものではないし当時はBETAの勢いも凄まじかった」

 

正直正体が発覚するより先に戦線が崩壊してBETAに食い殺されるのではないかという不安の方が当時は強かった。

 

その頃は既に国家人民軍は若干崩壊し掛かっており、持っていたT-55もT-34も全て使い果たし、重戦力の面では在独ソ連軍に完全に頼り切りになっていた。

 

「だが幸いだったのは在独ソ連軍がいたことだ。イヴァノフスキー元帥らが抵抗を続けなければこの国は消えていた」

 

「それは否定出来ん」

 

「戦線は安定した、だが次に出てきたのはベルリン派だ。調子に乗った赤毛の小僧とオスターが我々に牙を剥いてきた。一難去ってまた一難、辛い日々だ」

 

シュミット上級大将にとってベルリン派は本当に最悪のタイミングで現れた存在だった。

 

NATOと在独ソ連軍の連携でようやくBETAの野戦軍に決定打を与え、戦線が安定した瞬間に彼らの誕生が耳に入ってきた。

 

あの日のことはよく覚えている、顔を真っ赤にして執務室の壁に思いっきり受話器を投げつけたりした。

 

衝撃というより怒りの方が彼らには強く出た。

 

「ベルリン派が勝手にシュトラハヴィッツに手を出そうとして私がイヴァノフスキー元帥とチュイコフ元帥に怒鳴られたり、同志ホフマンからは早くなんとかしろと迫られ。踏んだり蹴ったりだ」

 

「あれは驚いたよ。今後一生涯かけてもカラシニコフを持ってシュタージ庁舎に突入するソ連邦元帥2人なんて光景は見れないだろうな」

 

「笑い事じゃないぞ、あの時は正体も言ってしまいそうだった。あれ以来対処には既存のドイツ支局じゃ限界があると分かり、派閥制作に着手した。いろんな奴を目にかけ、拾い、組織化した」

 

おかげでベルリン派は今日まで派手な行動を起こせずにいた。

 

ドイツ支局とシュミット上級大将が手をかけた派閥で辛うじて防いでいたのだ。

 

BETAとの戦いにベルリン派との戦い、シュミット上級大将は二正面作戦を強いられていた。

 

「あのブレーメ少佐だってそうだ、私が取り立てた。パイロットとして腕が立ち、尚且つシュトラハヴィッツ将軍に近しいベルンハルト中佐とも縁が深い。尚且つあのブレーメの娘、上手く育てればベルリン派に真っ向から打ち勝てる人材になり得た。いや、実際なってる。ただ彼女の場合、自分が前に出るよりもあのベルンハルト中佐を立てて彼を頭目に据える方が良いと判断したのだろう」

 

「そして今ではシュミット上級大将の正体まで嗅ぎ取る見事な猟犬へと成り上がった、と」

 

「……それは言うな……何が不味かったのやら」

 

「最初から君のことは眼中になかったのだろう。あのベルンハルト中佐にゾッコンだった、そう考えれば納得が行く」

 

少なくともユルゲン・ベルンハルト中佐の名声と話に聞くカリスマは凄まじいものだ。

 

彼は次世代の英雄として西側にも顔が効く。

 

しかもベルンハルト中佐をバックアップするのはあのシュトラハヴィッツ大将だ、そしてシュトラハヴィッツ大将はイヴァノフスキー元帥らがしっかり押さえている。

 

ある意味では彼には政治的な後ろ盾がいくつもあり、気づかないうちにシュミット上級大将もベアトリクス・ブレーメ少佐を通じてその枠に取り込まれている。

 

「部下も与えて出世もさせてやった、そのベルンハルト中佐だって私がいっときは保護したんだがな……猟犬は飼いきれんか。まあ1人別個に取られたが」

 

「昔愚痴っていた件か」

 

シュミット上級大将は頷いた。

 

1人と言うのはリィズ・ホーエンシュタイン少尉のことである。

 

義兄と逸れた彼女は別の誰かが保護し、そのまま孤児として扱われた。

 

そして巡り巡ってシュタージの手元に現れたのだ。

 

「育てればそれなりに使える駒になると思った、パイロットとして腕も立つ、スパイにしても上手くやるだろう。これからと言うタイミングでイヴァノフスキー元帥が名指しで引き抜いてきたが」

 

「その件に関しては運が悪かったとしか言いようがない。たまたまレーニン勲章を受け取った少年が、義兄だったとは想像つかん」

 

「結局、私の企みはベルリン派を潰す以外は何も上手くいかなかったという事だ」

 

自嘲を込めてシュミット上級大将はそう述べた。

 

彼は立ち上がり、ブラインダーをめくって外を眺めた。

 

「ベルリン派が予定通り沈めばドイツは政治的には安定する、ベルリン・ハイヴもそう遠くない未来に堕ちるだろう。問題は戦後だ」

 

ようやく戦後の話が出来る、少なくともそれだけ余裕が出てきた。

 

だがその戦後はソ連にとって明るいものとは言い難い。

 

「党としても最優先は国内と甚大な被害を受けたポーランドやチェコスロバキア、ハンガリー、ルーマニアだろうな。国家指導者も殆ど死んだ今、このドイツは影響力だけ残して捨てるやもしれん」

 

「同志ホフマンの政権も所詮は臨時、今や政府の要職は我々か国家人民軍が占める状態だ。長続きはしないだろう」

 

これは残酷だが冷静な判断であった。

 

少なくとも東ドイツはもう維持出来ない、人も金ももうストックがないのだ。

 

ソ連政府としては影響力だけ僅かに残して自国と他のワルシャワ条約機構に注力をというのが共通見解であり、決して口には出さない本音であった。

 

もう一度ウルブリヒトを生み出されても困るし、もうウルブリヒトたり得る人材はいない。

 

「意外とその時にこの国に立つのはベルンハルト中佐やブレーメ少佐かもしれんな」

 

「君ではないのかい?」

 

「…冗談はよせ、その時は私は帰っているよ。というよりもう帰らせてくれ、ドイツ料理は食い飽きた」

 

2人とも苦笑を浮かべ、代用コーヒーで勝利を願って乾杯した。

 

エーリヒ・シュミットにとって人生の一大仕事がようやく山場を迎えようとしていた。

 

 

 

 

-ドイツ民主共和国領 首都ヴィスマル ミューレン池周辺 ベルリン派別荘-

2月3日、運命の日が訪れた。

 

ベルリン派とソ連の運命を決める決戦の日である。

 

とはいっても決戦と思っているのはあくまでソ連のKGBだけ、ベルリン派にとっては何も変わらない1日であった。

 

アクスマン中佐はこの日、通常通りに勤務して部下のミヒャエル・ゾーネ上級中尉と共にそのまま件の邸宅へ向かった。

 

今日は不思議なことに仕事が少なく、余裕を持って目的地に迎えた。

 

ヴィスマル中心地からミューレン池まではそう遠くない、10分ちょっとあればシュタージの本庁舎から別荘まで到着出来た。

 

アクスマン中佐は予想よりも1人多く、部下を3人連れて別荘まで向かった。

 

最悪何かあっても3人いればアクスマン中佐1人くらいは助かる。

 

部下であろうと上官であろうと同志であろうと他人など出世の為の道具、使い捨てなければいけないのなら容易く使い捨てる。

 

アクスマン中佐が別荘に辿り着いたのは午後5時辺り、既に周辺は暗かったが彼の行動は周囲に展開されているKGBの偵察網によって悉く監視されていた。

 

ベルリン派の別荘にはそれなりに大きな車庫があり、車を3台は止められた。

 

レジャー用に手漕ぎボートまで用意され、人によっては休日の余暇としてここを使う者もいる。

 

まずアクスマン中佐が先に降りてゾーネ上級中尉と共に別荘に入った。

 

残り2人は車を停め、直ちに警備の任務についた。

 

アクスマン中佐らが別荘に入ると既にオスター大佐の副官が待機していた。

 

「お待ちしておりました」

 

2人に敬礼し副官はアクスマン中佐を出迎える。

 

「早いな、もうついているのか」

 

「はい、ご案内します」

 

そういって副官はオスター大佐が待っているリビングまでアクスマン中佐を案内した。

 

リビングに入る前に副官とゾーネ上級中尉は別室に移動し、警備に入りつつ待機した。

 

その間にアクスマン中佐はリビングに入り、オスター大佐に敬礼して近くのソファーに座る。

 

「今日は不思議と仕事が早く終わってな」

 

「奇遇ですね、私もだ」

 

テーブルには3つ分のワイングラスが置かれ、その隣にはボトルに入った白ワインが置かれていた。

 

「となると遅いのはヘフテンだけか」

 

「奴には悪いが、先に1杯どうだ」

 

「いいですな」

 

オスター大佐はワインの栓を抜き、2つ分のグラスに白ワインを注いだ。

 

これは以前、西ドイツのギュンツェル中佐から貰ったものだ。

 

2人は注がれたワインを手にし、乾杯した。

 

本当であればヘフテン少佐が来るのを待つべきなのだろうが、先に始めているのもまた一興である。

 

2人は静かに白ワインを口に含み、甘い白ワインを味わった。

 

「いいワインですな」

 

「ああ、我々の野望が達成されればこのワインが日常に出回る」

 

「ようやくその気になられましたか」

 

オスター大佐という男はかなりの慎重派であり、アクスマン中佐と衝突することも少なくなかった。

 

それでも主導権はアクスマン中佐が握っていること、彼の名声と能力はベルリン派に必要であることから今まで切られずに済んでいる。

 

「不安要素を少しでも取り除きたいだけだ、目指すところは中佐と同じだ。6、いや7年前に君に誘われた頃から私は変わらんよ」

 

「そうですな……我々もようやくここまで来た」

 

「あの日、君に誘われなければ私は希望を失って死んでいただろう。祖国ドイツは危機にあり、しかも党幹部は壊滅して徐々にソ連に乗っ取られていく始末。衛星国と分かっていてもこれは中々堪える」

 

オスター大佐はシュタージにいたから余計に分かった、明らかに今まで見たことのないような人間が東ドイツに突然現れ、国政を担い始めた。

 

口には出さなかった、出したところでこのBETA大戦の状況が変わる訳ではない、むしろ悪化する一方だ。

 

であれば同盟国ソ連に乗っ取られても戦争に勝つしかない、そうするしかないのだと諦めようとしていた。

 

そこへ現れたのがアクスマン中佐だ。

 

彼はオスター大佐をベルリン派に誘い、こう述べた。

 

”祖国ドイツの尊厳を取り戻す時が来た”と。

 

「ようやく戦争も区切りが見え始めてきた。今こそ君があの時言った通り、ドイツの尊厳を取り戻す時だ」

 

「はい」

 

作り笑いを浮かべアクスマン中佐は同意した。

 

正直彼はそんな言葉をかけたかは覚えていない、重要なのは自分が成り上がる為に使えるかどうかだ。

 

だがそんな彼らにも報いの時が訪れる。

 

嵐333号作戦、その風はすぐそこまで迫っている。

 

 

 

つづく

*1
もこもこのあれ

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