マブラヴ グレートパトリオティックウォー   作:Eitoku Inobe

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我らソヴィエトの隼
疾風の如く空を駆ける
祖国に勝利をもたらし
その敵に死を与える!
-”我らソビエトの隼”より抜粋-


落日 ウィーン・ハイヴ攻略作戦②

ソ連軍がハイヴに突入してから早1ヶ月が過ぎていた。

 

4月20日、まだウィーン・ハイヴ攻略戦は続いている。

 

ハイヴという特殊空間において人間の適応能力が対応出来るかは個人差があった。

 

全く問題なく戦闘を続けられる者もいれば体調不良を訴える者もいた。

 

特に1ヶ月の閉所戦闘、将兵の疲労は凄まじく実際の損害はまだ許容範囲内であったがそれ以上に各突入部隊は疲弊していた。

 

これに対し第1ウクライナ前線司令官のヤゾフは一部部隊をキエフ軍管区、沿バルト前線の部隊と交代させ、疲弊を軽減させた。

 

包囲網を突破しようとブダペスト・ハイヴのBETAは各所で攻勢を掛けているがこちらは問題なく防げている。

 

突入部隊分第1ウクライナ前線が使える平野での航空戦力は減っているが、その分は白ロシア前線の戦力でカバーした。

 

それに航空支援が薄くともBETA相手には宇宙軍による軌道爆撃と地上の砲撃支援で十分だった。

 

BETAの攻勢地域全域に核を含んだ砲撃が降り注ぎ、光線属種の迎撃を超えてダメージが入る。

 

ウィーン・ハイヴ解放戦闘は日を追うごとに激化していった。

 

突入開始前の段階では連隊規模の攻勢で済んでいたが、ハイヴ突入から2週間後には師団規模に代わり、1ヶ月過ぎれば複数軍規模による攻勢にすり替わった。

 

現状第1ウクライナ前線の防衛線で防げてはいるがこのままだと流石に長くは持たない。

 

一部では第3親衛戦車軍と白ロシア前線から回された第7戦車軍が反撃として機動防御を叩き込み、それぞれ2個軍ほどを撃退した。

 

これだけやっても現状包囲網には3箇所で軍規模の攻撃を受けている。

 

突入部隊指揮の傍ら、ヤゾフ達は対応に迫られていた。

 

「第3親衛戦車軍の主力部隊は現在燃料補給中、機動防御を展開するにしても後半日は掛かります」

 

「第3親衛戦車軍には補給作業に専念させろ、終了したら第4軍と共に反撃に入れ。後は第60軍、第1親衛軍の担当地域だな…」

 

ヤゾフは地図を見ながら対応策を考えた。

 

状況としては主攻勢が第1親衛軍の担当地域であり、第60軍と共同でなんとか持たせている。

 

「予備の第9親衛軍を回しています。3個軍の同時反撃で弾き返せるでしょう」

 

リトヴィネンコ少佐の発言通り、第9親衛軍は先発隊が既に第1親衛軍に合流しており、後1日あれば反撃を開始出来るだろう。

 

ただその後の事を考えると弾き返せたとしてもだ。

 

「少佐、第2ウクライナ前線と南欧前線への要請はどうなってる」

 

ヤゾフはリトヴィネンコ少佐に尋ねた。

 

「受理されました、あちらにも準備があるでしょうから早くても行動は明日以降かと」

 

「明日かぁ……となると今日が正念場か、現状の戦線を維持出来れば…」

 

「同志元帥!第2ウクライナ前線からです!」

 

丁度ヤゾフが話していた第2ウクライナ前線からの報告をアニシモフ中佐が持ってきた。

 

報告書を片手にアニシモフ中佐は中身を読んだ。

 

「現在第2ウクライナ前線第4親衛戦車軍がハンガリー方面に対して部分攻勢を開始、敵戦線を突破しつつありとのこと」

 

「ローシク元帥がやってくれたか!」

 

アニシモフ中佐は力強く頷いた。

 

ヤゾフは敵の包囲突破戦が始まった中盤から第2ウクライナ前線に一時的かつ小規模でいいからハンガリー方面に圧力をかけるよう頼んでいた。

 

去年ブカレスト・ハイヴとベオグラード・ハイヴが陥落したことによって第2ウクライナ前線は一挙に旧ハンガリー国境まで戦線を押し上げることに成功した。

 

その為単なる攻撃であれば第2ウクライナ前線でも可能なのだ。

 

このアドバンテージは大きく、今後ブダペスト・ハイヴのBETAはほぼ4個前線分の戦力と対峙することになる、その影響が早速現れた。

 

第4親衛戦車軍は一時的にだがハンガリー国境を超えてBETAの領域に足を踏み入れた。

 

国境沿いから13キロ離れたセゲドの旧市街を奪還しその後も無理のない範囲で前進を続けた。

 

ブダペスト・ハイヴの頭脳級はこれらの攻撃を感知し直ちに包囲突破部隊を下げて守備に当てた。

 

これ以降ブダペスト・ハイヴからの包囲突破戦闘は縮小し、ウィーン・ハイヴの包囲網は安定することになる。

 

 

 

 

-日本帝国領 東京 市ヶ谷 日本国防省本庁舎-

ソ連軍がオーストリアで激戦を繰り広げる中、こちらも人事とアフリカ攻勢に備えて慌ただしくなっていた。

 

今より3日後の4月26日、現職の海軍軍令部総長と空軍参謀総長は定年の為勇退する。

 

その交代式典の用意もあったしそれとは別に並行して進めなければいけない業務もあった。

 

その1つが海軍航空隊の新型戦術機策定である。

 

現状F-15Jを導入し始めた日本空軍に対して日本海軍の航空機は依然F-4EJ改のままである。

 

アメリカ海軍がF-14を導入しいよいよF/A-18と呼ばれる新しい海軍戦術機を実戦配備した。

 

ソ連海軍もMiG-23Kに変わる新しい海軍戦術機の開発を進めており、徐々に代替わりが始まっていた。

 

流石にいつまでもF-4を使っていられない、そういう考えは当然日本海軍側にもあった。

 

かくして82年の末から新しい空母艦載型の戦術機導入計画が議論されていたのだがこれが中々難しい。

 

策定委員会が設立され一先ず可能性がありそうな戦術機が挙げられた。

 

まず一番最初に名前が上がったのはF-14、次点で間も無く実戦配備が始まるというF/A-18だった。

 

既に各所の試験戦闘でF/A-18の戦闘能力は証明されている。

 

ある日本海軍の観戦武官はその姿と性能を目にし「特徴がないのが特長」と評した。

 

つまりあらゆる点において高性能で纏まっており、手堅く強い戦術機になったということだ。

 

後世ではそれ故に見劣りするだったり凡庸などと過小評価を受けることもあったが間違いなく主力戦術機として完成し切ったが故の結果の性能なのだ。

 

例えるなら全ての評価がオールA、Sはなくともなんでも卒なくこなせる。

 

故に海軍からは「なんとかしてうち(海軍航空隊)にも導入できねえかな」という意見が強く、F-14と並んで真っ先に声が上がった。

 

次にF-15、F-16の海軍機仕様、この辺りは一応存在はしている。

 

F-15Nは構想され2機ほど海軍機用にマイナーチェンジされた戦術機がいたがF-14を推す声が強く生産は断念、F-16Nは生産され米海軍一部アグレッサー部隊が運用しているが正式採用はされていない。

 

正直F-15N、F-16Nは無難かつ一番現実的な線であった、F-15Nに関しては上手くいけば既存の生産ラインも流用出来る。

 

ただ海軍としてはこれは二番手という風潮が強かった。

 

目指すはF-14とF/A-18、15と16は二の次だ。

 

それ以降は迷走ないしとりあえず存在している戦術機を挙げていく会に留まった。

 

トーネード*1、根強い国産派*2、F-5*3、A-6*4、シュペルエタンダール*5、MiG-23K*6、F-4の改造*7結局どれも現実的ではなかった。

 

その為本命はF-14、F-15N、F-16N、F/A-18の4つに絞られた。

 

海軍側の推しはF-14、F/A-18で国防省の背広組や政治家サイドからすると望ましいのはF-15NかF-16Nである。

 

このうち早期にリタイアしたのが海軍が欲しがっていたF/A-18だった。

 

海軍も薄々気づいていたことだがF/A-18はアメリカ海軍の最新鋭機、まず海軍航空隊、続いて米海兵隊の航空隊に優先配備させたい、その為日本帝国分の生産ラインを確保するのは難しいとアメリカ側から通達された。

 

ライセンス生産の話も出たが流石にそこまで軍事に予算は割り振れない。

 

残念ながらF/A-18の調達は早期に流れ、代わりにアメリカ側はF-14を購入しないかと話を持ちかけてきた。

 

現状F-14ユーザーは世界中見てもアメリカと帝政イランの2カ国しかない。

 

帝政イラン空軍の中東における戦果でF-14の性能は不動のものとなったがコストを見ると皆足踏みをしていた。

 

少なくとも日本帝国はF-14を導入し運用することは経済的余裕を鑑みても不可能なラインではない。

 

むしろアメリカ、帝政イラン、日本帝国の3カ国で生産ラインを維持出来れば3カ国にとって利益になる。

 

機体の性能は折り紙付きだし日本海軍が保有する”伊吹”、”鞍馬”、”天城”、そして間も無く就役する日本帝国の国産空母”出雲”でも運用出来る。

 

現実的かつ海軍の要望を確実に叶えられるものだ。

 

それにアメリカとしてはここで日米貿易摩擦を若干解消させるつもりでいた。

 

二次大戦の戦後から復興を遂げた日本帝国はやがては経済面で逆転し、各所で問題が生じ始めた。

 

それはBETA大戦が始まっても解消されず、むしろ拡大している。

 

この問題は戦後になっても解消されず、日本帝国の新型可変戦術機開発計画でも若干噴出することになるのだが別の話。

 

アメリカ側の要望は分かれどF-14は高い。

 

現状海軍航空隊が保有するF-4EJ改を全てF-14に更新するとなると予算面で大蔵省が黙ってない。

 

そこでF-14の導入は決定するとしてコストを抑える為にハイ・ロー・ミックスの方向に舵を切った。

 

ハイをF-14が担い、ローがもう1機導入する機体が担う。

 

結果的にここでF-15Nの導入も流れた、F-14とF-15で艦載機部隊を編成したら何がしたいのかもう分からないからだ。

 

よって残る機体はF-16Nだけとなり、なし崩し的にこちらの導入も決まり、海軍と背広組の折衷案となった。

 

かくして日本海軍の新しい艦載機はF-14とF-16Nとなった。

 

導入は今年の9月からとなり、早速何人かの海軍将校達がアメリカに行って調整業務に従事した。

 

「…ようやく決まったかぁ……」

 

斉藤大将は執務室のデスクで椅子に深くもたれ掛かり、大きなため息をついた。

 

順調に進んだように見えて中々に海軍や大蔵省や国防省の官僚達との調整が大変だった。

 

特に大蔵省の役人達との話し合い、彼らは完全にF-15NとF-16Nで済ませるつもりでいた、F-14の導入はなんとか断らせたいという勢いだった。

 

彼らの気持ちは分かる、それになんとしてもF-14を買わせたいアメリカ側の相手も分かる。

 

それの意見のすり合わせを矢田大将から引き継ぎ、なんとか完遂させた。

 

これが前任の矢田海軍大将だったら幾分か楽だったかもしれないが斉藤大将は陸軍出身である上に後任の為事情の把握含めて諸々が大変だった。

 

「お疲れ様でした、閣下には色々と便宜を図って頂き本当に助かりました」

 

委員会に属する海軍大佐、新津信太は微笑みながら斉藤大将に労いの言葉をかけた。

 

彼は海軍出身だが航空隊所属であり、以前は空母”鞍馬”の航空隊隊長を務めていた。

 

それから新津大佐は統合参謀会議所属となり、今回の選定計画委員会にも参加していた。

 

「まあ海軍機の老朽化は早いうちに対処しないと面倒なことになる。どっかの誰かさん達みたいにF-4ばかり改造して使っていられんよ」

 

「最近じゃあ斯衛もF-15を2機くらい試験で貰ってったらしいですよ」

 

「それ本当か?あの連中に生産ライン取られるのはそれはそれで面倒なんだよなぁ……」

 

「まあ試験機なんで多分本腰入れて使うつもりはないかと。奴らは国産派が8割占めてますし」

 

国産戦術機、それ自体は悪いことではない、いずれは達成しなければならない道のりだ。

 

されど国産にばかり拘って今を疎かにしては戦時下を生き残れない。

 

その点において斉藤大将はドライである、彼は日本帝国軍が祖国防衛の職務を果たす為には必要であれば拘りを捨てられる人だ。

 

もし必要であれば斯衛軍とも嫌々手を結ぶだろう、そんな日が来るかは分からないが。

 

「まあ連中に構わず……とも言ってられんが、我々は我々の仕事をしよう。訓練生の派遣と受け取りの準備、もうすぐ前田さんも生天目さんも勇退するんだ、しっかり頼むぞ」

 

平野少佐と新津大佐は頷き斉藤大将に敬礼を送った。

 

かくしてそう遠くない未来に列島の上空を日の丸をつけたF-14とF-16Nが飛ぶことになる。

 

 

 

 

 

4月24日、ハイヴ突入部隊の編成を終えたNATO空軍の戦術機部隊がウィーン・ハイヴに突入した。

 

ソ連軍とNATO軍が合流したのが3月27日のこと、突入までに1ヶ月以上時間が掛かったのは様々な事前準備によるものだった。

 

まず27日から30日にかけて平野部のBETA掃討を行い、その後はアルプス山脈に展開するBETAの掃討戦に移った。

 

こちらは山岳部故にBETAは物量の利を活かせず、各所で遊撃する戦術機部隊や山岳歩兵達に一蹴されていた。

 

NATO軍は完全に残ったアルプス山脈の奪還と掃討戦に注力しており、当初はハイヴに戦術機部隊を展開するつもりはなかった。

 

ソ連軍だけで事足りるだろうと思っていたのだ。

 

それが1週間を過ぎても2週間を過ぎても中々進まず、3週間目で支援の提案を打診した。

 

これに対しヤゾフとアフロメーエフ元帥は指揮の混乱や補給の面から当初は乗り気ではなかったが、進捗状況と予備戦力の都合も鑑みてNATO側の提案を受け入れた。

 

ソ連軍はNATO軍の担当地域を割り当て、そちらに戦力を投入するよう要請を出した。

 

その間にNATO軍の司令部は投入する部隊を選出し、既存のハイヴ内の補給網にNATO軍専用のデポが設置され、着々と準備が進んだ。

 

諸々の準備が完了したのが4月23日の夜、部隊の投入は翌日に行われた。

 

F-15やF-16、トーネードIDSにミラージュF1など西側諸国の戦術機が次々とウィーン・ハイヴに突入していく。

 

NATO軍が到着したからといって状況が一挙に動くようなことはない、されど既に突入しているソ連軍部隊にとっては負担軽減に繋がった。

 

ハイヴ戦とは時間と戦力をかけ、1つづつ確実に駒を進めていく忍耐が問われる戦場である。

 

その分将兵は疲弊し損害も増えるが、その分の補填を新しく入ってきた練度、戦意共に上位クラスの部隊が補ってくれるのだ。

 

一挙事態は動かずとも意味はあり、着実に勝利へと近づいた。

 

NATO空軍はハイヴの制圧を進め、広間のBETAを殲滅していった。

 

NATO軍とてハイヴ突入戦は中東で経験済み、突入した衛士達はさほど手間取ることもなくBETAを撃破して広間に突き進む。

 

各所で変異種のBETAとの不意遭遇戦も報告に上がっていたが対処は進んでいた。

 

『ナイト・ブルー12より周辺の友軍へ!こちらはBETAの変異種と交戦中!直ちに増援を願う!』

 

「ナイト・ブルー12了解した、私の隊が向かうからしばらく耐えてくれ。各機フォーメーションD、相手は要撃級の変異種だ!油断せずやるぞ!」

 

『了解!』

 

ヤコブ・ヴィシコフ少佐は自身のF-15を操縦しながら部下に命令を出した。

 

彼は突入した飛行隊の副隊長であり、部隊の半数を率いて友軍部隊の支援に向かっていた。

 

3年前、リヴォフ・ハイヴ攻略の時にフレツロフ中佐と話をしていたのは彼であり、その後地上に降りて一度は中央空軍に回され、その後欧州空軍に配属となった。

 

中東攻勢でハイヴ突入にも経験があり、フレツロフ中佐ほどではないが修羅場を潜り抜けてきた。

 

今も変異種の要塞級相手に汗ひとつ垂らしていない。

 

「到着したっ!状況を報告しろ!」

 

救援要請が発信されていた広間に到着し早速変異種にAGM-65マーヴェリックを放った。

 

権勢としての意味では十分効果を発揮し、一時的にBETAが立ち止まったところへ共に突入した12機の戦術機と共に突撃級の斉射を叩き込んだ。

 

変異種の突撃級は身体の一部に突撃級と同じ装甲を纏っており、両腕も触手の有線式であるが射出出来る。

 

これで機動力は通常の要撃級より向上しているのだから困ったものだ。

 

変異種の要撃級は米軍機の接近を防ぐべく両腕を射出し周囲に振り回して接近を阻止していた。

 

『こちらは2機損傷…!残るのは俺とナイト4だけだ!』

 

救援を要請したF-16の衛士はそう報告した。

 

その間にヴィシコフ少佐のF-15がある装甲の1点に2発の120mm弾を叩き込む。

 

「損傷機を連れて離脱しろ、後は我々がやる!ホワイト5、ホワイト7はさっき私が攻撃を叩き込んだところに続けて120mm弾を撃て。残りは各自編隊長の指示に従え!」

 

ヴィシコフ少佐は部隊に命令を出すと共にワイヤーをつけた近接用短刀を触手部分に投擲した。

 

見事に突き刺さり一時的に左腕の触手が地面に固定されて動けなくなる。

 

その間に追われていた友軍機は攻撃圏内を外れ、事なきを得た。

 

ヴィシコフ少佐は短刀を戻し、攻撃がこちらに来る前に120mm弾を1発叩き込んで離脱する。

 

今の攻撃で装甲の一部が砕け、BETAの高速移動と共に一部が剥がれた。

 

「攻撃は剥がせる!行けるぞ!」

 

今度は別のF-15がマーヴェリックを発射してある部分の装甲を完全に砕いた。

 

即座にそこへ突撃砲の通常射撃を叩き込んでダメージを与える。

 

その間に別の箇所でも120mm弾とマーヴェリックの同時攻撃を喰らった影響で装甲が破壊され、数発分突撃砲の射撃を喰らった。

 

問題はこれだけ攻撃を叩き込んでも動きになんら変化がないということだ。

 

攻撃は効いているがその様子が見られない、単純にタフな個体なのだろう。

 

変異種は腕を戻して傷を回復し、後退して距離を取ろうとする。

 

「させるかァ!」

 

後退中の最中にヴィシコフ少佐のF-15から投擲されたワイヤー付きの近接用短刀が変異種から見て右後脚を切断した。

 

これによりバランスを崩してその場に倒れ込み、復帰にまで時間が掛かった。

 

『今だ!少佐のくれたチャンスを逃すな!』

 

ある大尉の意気込みで12機ほどいるF-15がマーヴェリックと120mm弾、極め付けは120mm対物砲で完全に粉砕された。

 

何機か勇気のある衛士が動けなくなった亡骸の上に立ち、生存の有無を確認した。

 

『少佐!相手を落としました!』

 

「よし、全機戦闘このまま…」

 

『少佐、全方向から反応あり、合計300体近いBETAが接近してきています!』

 

ヴィシコフ少佐はコックピットの中で舌打ちし、部下に迎撃命令を取らせた。

 

「各機穴から離れて迎撃!後続が来るまで抑えろ!」

 

その間にヴィシコフ少佐は自身の機体の残弾を確認し一応の仮予定を立てた。

 

このまま戦闘を続行しても後二、三戦は持つだろう、部下が持ってる残弾を計算してもだ。

 

『ルーク・ホワイト6、こちらスタントン・レッド6、現在そちらに急行中。もう暫く現地点を維持されたし』

 

「スタントン・レッド了解した、早く頼むぞ」

 

そうこう言ってるうちにBETAが来襲した。

 

前方から突進する突撃級はマーヴェリックの集中発射を受けて撃滅し、勢いが一時止まったところに突撃砲の斉射が叩き込まれた。

 

更に155mm無反動砲の榴弾が移動中の戦車級群を削り、進撃速度を遅らせる。

 

それでも襲来するBETAの数は増える一方だ。

 

『BETAの増援を確認っ!数800!』

 

「広間1つに固執しすぎだっつうの…!スタントン・レッドが来るまで耐えろ、まだ弾薬には余裕があるはずだ」

 

『了解…!』

 

外部に展開するBETAの数を減らしてハイヴ内に貯めていたせいか一度の反撃で広間1つに押し寄せるBETAは200や300は当たり前、1,000体を超えてもさほど珍しくはなかった。

 

尤もその度にBETAが受ける損害は確実に増している為キルレートの上では勝ってる。

 

我々(人類軍)には縦深も弾薬も十分ある、予備戦力だって待機しているのだ。

 

少しずつではあるがウィーン・ハイヴの頭脳級の命に手が掛かっていた。

 

『スタントン・レッド到着した!戦闘に入る!』

 

そう言って数機の火炎放射器持ちのF-16が戦闘に入り、襲来するBETAを炎で焼き尽くした。

 

他にも別部隊のF-15やF-16が増援として到着し逆にBETAを押し込んでいく。

 

「このまま次の広間まで突入するぞ!合衆国空軍がなんたるかを見せてやれ!」

 

ヴィシコフ少佐の先導の下、アメリカ空軍の戦術機部隊が次の広間へと押し寄せる。

 

少しづつではあるが勝機は人類に傾き始めていた。

 

 

 

 

 

 

いよいよ5月に入った。

 

この頃になるとハイヴ攻略戦の勝ちはほぼ見えてきた。

 

NATO軍との共闘でハイヴ内の7、8割方を制圧し、迎撃に来るBETAの数も徐々に少なくなっていた。

 

各所に配備していた重要塞級も要撃級の変異種もストックが底を突き、最奥に残していた警護番の重要塞級も今し方第306独立戦闘航空連隊によって撃破された。

 

ハイヴ内に存在する重要塞級は合計6体、うち3体は第306独立戦闘航空連隊が撃破に携わった。

 

流石に三度目ともなると絶望というよりうんざりという言葉が合うほど連隊の衛士達は淡々と迎撃に入った。

 

陽動と火力の集中、分散からの各個撃破。

 

重要塞級撃破に使った弾薬類を補給し、第306独立戦闘航空連隊は再び前線へ向かった。

 

各所では他の戦闘航空連隊がBETAに対して攻勢をかけ、最後の広間を1つづつ堕としていた。

 

ソ連軍やアメリカ軍が今日までこうもハイヴを堕とせてきたのにはそれなりに理由がある。

 

1つは宇宙軍を用いた事前の準備砲撃、これで上部構造物とハイヴ周辺のBETAが殲滅出来るのが大きい。

 

戦術核から戦略核、或いは”ポーリュス”にG弾と言った圧倒的な破壊の力を持つ兵器を躊躇わず投入している点も大きなアドバンテージを有していた。

 

2つ目は戦術機部隊を複数個部隊、例えばソ連軍においては数個戦闘航空師団規模で投入し、各所で組織的な戦闘と補給地点の建設が行えていることである。

 

両軍ともハイヴを攻略する為に展開する戦力、物資は凄まじいものだった。

 

ハイヴ内には常設軍規模のBETAが駐在しているのだからこちらも軍規模の戦術機部隊を投入しなければ勝てない、必要であれば時間も物資も全て注ぎ込む。

 

どうせ本来の米ソ戦争が起これば1週間で消失していたかも知れない戦力だ、出し惜しむことはなかった。

 

結果的に突入部隊はハイヴ内でも組織的戦闘と補給が可能であり、部隊全体の生存率と長期戦闘が可能となった。

 

しかもハイヴを制圧するごとに人類が得られる経験値は上昇し、3年前のリヴォフ・ハイヴ攻略戦の時よりも部隊の動きは洗練されている。

 

学習はBETAの専売特許ではないということだ。

 

こうした要因によって第306独立戦闘航空連隊のような精鋭も生まれてきている、彼らを生かし彼らに高い練度を与えたのはこうした要因あってこそだ。

 

尤もモースク1という隠れた要因も存在しているのだが。

 

モースク1が他UAVや戦術機から得た情報による予測と支援は第306戦闘航空連隊の生存率を飛躍的に向上させている。

 

なんだかんだ役には立っているのだ、よく喋ってフレツロフ中佐を困らせてはいるが。

 

デルーギン隊が広間を制圧、だがBETAの増援が来ている

 

「デルーギン、こちらから増援を出すか?」

 

『頼む、もう少し戦力が欲しい』

 

『マリロフ隊、ここはいいからデルーギン隊の増援に迎え』

 

『ハッ!』

 

フレツロフ中佐の意を汲んでオルゼルスキー少佐がマリロフ大尉の編隊を向かわせた。

 

残る12機の戦術機は急いで次の広間に向かった。

 

先行する2機のMiG-27が前方の広間入り口に152mm無反動砲を発射する。

 

榴弾搭載の弾頭は広間内部で炸裂し、展開するBETAにダメージを与えた。

 

次に後続のMiG-27がナパーム弾を発射して内部を焼き尽くし、その他のMiG-29とMiG-27が突撃砲で火力を叩き込んだ。

 

30秒ほどの集中射撃の後、マガジンを交換したフレツロフ中佐達は一挙にハイヴ内に突入した。

 

燃えるナパームの火を避けながら地表に着陸し、周辺を警戒する。

 

「各機敵に警戒しろ、次いつ来るか分からん!モースク、位置を教えろ」

 

モースク1がコックピットのモニターに座標を表示し、フレツロフ中佐は敵影を警戒しながら地図を見た。

 

ある一点に友軍機ではないソ連軍の反応が出た。

 

「メデツィーニン、こっちの座標にアンノウンがいる」

 

『今確認する、それは恐らくNATO軍だ、後20秒で合流する』

 

メデツィーニン少佐の予測通りアメリカ軍の戦術機がカウントから20秒後に広間に現れた。

 

機体はF-15、数は12機。

 

「こちらはソ連空軍所属、第306独立戦闘航空連隊ヴィクトル・フレツロフ中佐だ。そちらの所属と姓名を教えて頂こう」

 

『アメリカ空軍所属、第525戦闘飛行隊副隊長、ヤコブ・ヴィシコフ少佐だ。また会えて嬉しいよ、フレツロフさん』

 

そうF-15Cに乗り込む衛士は再会を喜んだ。

 

フレツロフ中佐は記憶を掘り起こしヴィシコフ少佐の名前を思い出した。

 

「ああ!あの宇宙ステーションの!こんなところで再会するなんてな!」

 

まだソ連軍がリヴォフ・ハイヴ攻略に従事していた時に出会ったアメリカ空軍の衛士だ。

 

元々先祖が亡命ロシア人ということで若干だがロシア語が使え、陽気な性格故すぐにソ連軍の衛士とも打ち解けた。

 

「我が連隊はこのまま次の広間に移行する。支援頼めるか?」

 

『もちろん、各機戦闘準備、ソ連のバンカーバスターに続いて我々もハイヴを堕とすぞ!頭脳級に星条旗を立ててやれ!』

 

「しばくぞ!……とにかく行こう、全機俺に続け!」

 

フレツロフ中佐のMiG-29を先頭にF-15、MiG-29、MiG-27が突き進む。

 

この時フレツロフ中佐は心の隅で若干不安を覚えていた。

 

米ソの連携についてではない、ヴィシコフ少佐はいい奴だしここまで来れるということはそれなりに腕も立つのだろう。

 

不安だったのは地点からして明らかにハイヴの最奥に近づいていることだ。

 

今回はハイヴが広く、他の隊が先に行くだろうと思っていたが若干そんなことはない気がしていた。

 

「また一番乗りはもう御免なんだが……」

 

胃がキリキリするのを抑えてフレツロフ中佐は先へ進んだ。

 

 

 

 

 

 

ウィーン・ハイヴの頭脳級は自身の側に敵戦力が近づいていることを知覚していた。

 

このまま押し返せるだけの戦力はもうこのハイヴにはない。

 

外では恐らくブダペスト・ハイヴの頭脳級が包囲突破を図っているだろうがそう上手くはいかないだろう。

 

何が不味かったのか、頭脳級は完全に諦めモードに入っていた。

 

今まで貯めていた戦闘経験のデータを伝令級に託し、密かにハイヴから脱出させた。

 

これほどの混乱、まだ一部はアルプス山脈で戦っているから一先ずザグレブ・ハイヴには辿り着けるだろう。

 

ザグレブからブダペストへ、これでなんとか2つの頭脳級が同じ情報を有して次の戦いに臨める。

 

まだ我々の大使命は終わっていない、むしろ始まりですらない。

 

そうなる前に自らが終わりへと近づくのは不本意だが、これは避けられぬ運命なのだろうとウィーン・ハイヴの頭脳級は受け入れた。

 

ターニングポイントはいくらでもあったはずだ。

 

例えばハイヴ外に展開するBETAをもっと減らし、要塞化はハイヴだけに留めるとか。

 

或いは定期的に発生していた敵対勢力の攻撃に一々部隊を出さず、やり過ごすべきとか。

 

明らかに外部のBETAが少しづつだが減らされていたのが痛手だ、損害分の補填とそれらの生産によって要塞化が一時遅れた。

 

あれがなければもう少しハイヴ内の防御構築は上手くいっていたはずだ。

 

ウィーン・ハイヴの頭脳級は初めて悔いという概念を覚えた。

 

知覚したその概念は時が経てば経つほど肥大化し、思考を覆っていく。

 

あの時ああすれば、あの判断をしなければ、過ぎ去った決断ばかり頭に過ぎる。

 

だが全ては過去、終わったことだ。

 

最後まで大使命を果たすのが自らの職務である。

 

ハイヴ最奥の大広間に数十機の戦術機がほぼ同時に現れた。

 

F-15、MiG-29、MiG-27の混成、フレツロフ中佐とヴィシコフ少佐の隊だ。

 

「よしっ!ハイヴ周辺には警護のBETAがいない!既に出し切っていたか!」

 

『このまま畳み掛けるぞ!核攻撃部隊が来るまで広間をッ!』

 

刹那、一斉に機体の警告音声が流れコックピットのモニターに攻撃予測範囲が添付された。

 

衛士達は可能な限り機体を攻撃予測範囲から逸らし、回避運動を行なった。

 

その間に頭脳級から高出力エネルギーレーザーが数十本ほど放たれた。

 

『クソッ!なんだこれはッ!?』

 

攻撃は10秒ほど続き、ゆっくりとレーザーが途切れた。

 

何機かはレーザーに触れて被弾し損傷、それでも米ソ共に撃墜された機体はいなかった。

 

攻撃を躱した機体は急いで急降下し頭脳級の射程圏内から離れた。

 

「損傷機は急いで退避しろ!各隊護衛で3機は回し指揮はデルーギンが取れ!急げ!」

 

損傷機と運搬と護衛の戦術機が大広間から離れた。

 

フレツロフ中佐は残った機体の数を数えた。

 

少なくとも第306独立戦闘航空連隊はフレツロフ中佐含めて残り10機まで減った。

 

ヴィシコフ少佐の隊も3機が被弾して退避し、護衛で2機のF-15が離れた。

 

つまり両軍合わせて10機損傷、現行戦力は当分17機だ。

 

「最悪だ!クソがッ!」

 

『中佐!ハイヴから!』

 

「ああ!?」

 

見上げるとハイヴから数十本の触手が飛び出して残った戦術機を襲う。

 

フレツロフ中佐は機体の武装を急いで長刀に持ち替え、接近する触手を突撃砲共々切り落とした。

 

その側でヴィシコフ少佐はワイヤー付きの近接短刀を振り回して迫る触手を次々と切り落とした。

 

自身を戦闘型に改造したようだ

 

モースク1は冷静に状況を分析したがフレツロフ中佐はそんなことに意識を向けている暇はなかった。

 

「こういう類のは最初のやつ(リヴォフ・ハイヴ)だけで十分なんだよ!」

 

迫る触手を何度も避けて頭脳級に向けて2発ほどKh-29を叩き込んだ。

 

あの巨体に空対地ミサイルが外れる筈もなく命中したが殆どダメージを受けた形跡がない。

 

続けて残っているオルゼルスキー少佐、ブリツェンスキー少佐、ルヴィロヴァ上級中尉も同じ箇所に空対地ミサイルを放ったが殆ど効果はなかった。

 

『クソッ!頑丈すぎる!』

 

「回避に専念しろ!場合によっては退避することも視野に入れる」

 

『我が隊の戦術核搭載部隊の到着はまだ掛かる!そっちで核を持って来れないか!?』

 

「今要請中だ!悪いが耐えてくれ!」

 

『状況は最悪だな!いつもこんな状況か?』

 

「…今日が一番最悪だよ」

 

いつもだったら頭脳球単体には攻撃能力はない、あったとしてもここまで凶暴じゃなかった。

 

ウィーン・ハイヴの頭脳級は自身の体内に攻撃用触手を有し、一部の射出口からは自身のエネルギーを凝縮して発射するレーザーが撃てた。

 

これは光線属種のレーザーとまた勝手が違う為必中効果は存在しなかったがその威力は通常の光線級よりも強力で、連射が可能、おまけに射撃モードを変更出来る。

 

その上で頭脳級全体の硬度は強化されており、遠距離はレーザー、接近すれば触手で敵を迎え打った。

 

触手の回復能力も並のBETAを上回っており、体内に戻してから僅か3秒で回復して再び発射してくる。

 

どれだけ触手を落としても頭脳級の迎撃能力は変わらなかった。

 

『フレツロフ、今戻ってきたデルーギンに核弾頭を持たせた。部隊が到着するまでの間頭脳級を抑えてくれ。到着と同時に戦術核を発射、これが一番手早い』

 

「了解、増援は」

 

『空挺軍が一隊そちらに向かっている、レーザーのことは承知してるらしい』

 

ならこちらから進言することは特にない。

 

「了解、メデツィーニン、引き続きサポートを頼む」

 

『了解』

 

通信を切り、生存に専念する。

 

この中でもまだフレツロフ中佐、ブリツェンスキー少佐、ルヴィロヴァ上級中尉、オルゼルスキー少佐、ヴィシコフ少佐達は余裕があり、部下を庇って攻撃を往なしていた。

 

とは言っても弾薬や燃料には限りがあるし、人の集中力も同様だ。

 

長期戦になれば不利になるのはフレツロフ中佐達である。

 

このままじゃジリ貧、そう思った瞬間に突如頭脳級の上空を煙幕とチャフが覆い、シールドを盾に12機のMiG-27が突っ込んできた。

 

『これが空挺軍だよ!』

 

現れたのは第98親衛空挺師団の戦術機部隊、イヴァーノフ中佐はシールドと機体の合間から長刀を突き立てて頭脳級に突っ込んだ。

 

『くたばれや!』

 

頭脳級の発射口に長刀を突き刺して1つ潰した。

 

発射口はまだ数十箇所残っているが1つないだけでもだいぶ違う。

 

それにチャフと煙幕で一時的に狙いが上手く定まらず、その間に空挺軍の戦術機部隊によって数箇所の発射口が潰された。

 

それからイヴァーノフ中佐は頭脳級の表面から降りてフレツロフ中佐らに合流し触手の掃討に入る。

 

『第98親衛空挺師団所属!イヴァン・イヴァーノフ中佐!戦闘に加わる!』

 

「助かった、こちらは306連隊フレツロフ中佐だ」

 

その間にもイヴァーノフ中佐はMiG-27を操って触手を切っていく。

 

一時的にだがイヴァーノフ中佐は触手を全て落とし、BETAを無力化した。

 

「なんだァ!?こいつは!?」

 

元よりイヴァーノフ中佐は空挺兵として高い近接戦の練度を誇る。

 

その素性は戦術機の運用にも活かされていた。

 

イヴァーノフ中佐らの参戦により状況は一気に改善し、各機にも余裕が生まれた。

 

触手を回避しつつ定期的に斬撃を叩き込んで攻撃の隙を作る。

 

イヴァーノフ中佐とヴィシコフ少佐がいてくれることによってこれらも随分楽だ。

 

少なくとも通常の衛士より動ける衛士がこの場にフレツロフ中佐含めて6人もいることは大きなアドバンテージだった。

 

頭脳級の触手攻撃を抑え込めている、問題はこちらの火力だ。

 

現有する兵器では頭脳級に傷1つつけられない、デルーギン少佐らが戦術核を運んでくるまで待つしかない。

 

ハイヴの最奥に到達してから早30分、ようやく事態は動き出した。

 

『フレツロフ!後3分でそっちに向かう、耐えられるか?』

 

デルーギン少佐のMiG-29から通信が入った。

 

彼の声を聞いたフレツロフ中佐は笑みを浮かべ、キエフ・スヴォーロフ軍学校時代からの親友であるデルーギン少佐に言葉を返した。

 

「もちろん!入ってくる時撃墜されるなよ!」

 

『誰にものを言ってるんだ?当たり前だよ!』

 

デルーギン少佐の腕はフレツロフ中佐に勝るとも劣らない凄腕である。

 

模擬戦で双方が3回戦勝負の対決すれば2対1でその日調子が良かった方が勝つだろう。

 

それくらい彼らの腕は拮抗している、故に副連隊長が務まっているのだ。

 

「全機もう暫くの辛抱だ!後少しでデルーギンが核弾頭を運んでくる!それまで耐えろ!」

 

『聞いた通りだ!勝ちが見えてきたぞ!』

 

そう言って味方に迫る触手を全て迎撃し、ブリツェンスキー少佐は味方を先導した。

 

通信より2分50秒後、デルーギン少佐と護衛のMiG-27、F-15が戻ってきた。

 

チャフと煙幕を展開して一時的に攻撃を鈍らせつつ広間に突入し、他戦術機の護衛の下広間内に展開した。

 

デルーギン少佐のMiG-29は単独で2K6ルーナを改造した戦術機運搬型の3R10弾頭を運んでいた。

 

すぐにフレツロフ中佐のMiG-29が運搬機の反対を持ち、2機で核弾頭を運ぶ。

 

『こいつは起爆までに少し時間が掛かる、どんな状況でも発射したら即座に離脱だ。メデツィーニンが言うんだから間違いない!』

 

「分かった、モースク!有効射撃地点を教えろ!」

 

モースク1は無言で頭脳級のモデリングに攻撃地点を表示した。

 

頭脳級の付け根、触手発射口の少し上辺りが最も有効らしい。

 

「信じるぜ…!デルーギン、今送った地点にこいつをぶち込む。他の機体は援護を頼む!」

 

『了解!』

 

『了解、全機あの2機を掩護しろ!合衆国空軍がいることも忘れさせるな!』

 

そう言ってF-15が何機か2機の周りに取り付き、触手を追い払った。

 

ヴィシコフ機のワイヤー付き短刀が迫る触手を落としていく。

 

他の戦術機は先んじて触手にダメージを与え、2機の進路を切り開く。

 

『行けッ!同志フレツロフ!』

 

最後に迫る触手をイヴァーノフ中佐のMiG-27が全て落とし2機は同時に発射装置を押した。

 

3R10が発射台が飛び出し頭脳級の付け根辺りに突き刺さった。

 

「全機退避!!」

 

2機のMiG-29は発射台を捨てて最大速度でその場から離れる。

 

他の戦術機も同様に大広間を離れ、可能な限り距離を稼いだ。

 

刹那、大広間では核爆発が発生し頭脳級は完全に破壊された。

 

1983年5月7日、1ヶ月以上かけたウィーン・ハイヴ攻略戦は最奥の頭脳級消失に伴い終結した。

 

数年ぶりにウィーンは人類の手に帰ってきたのである。

 

 

 

つづくかも

*1
ダメじゃあ!まず燃料の規格が合わん!航続距離も足らん

*2
戦争に間に合わん!今から独自じゃうちは一生F-4のままじゃあ!

*3
意味がないんじゃあ!結局第一世代のままじゃあ!

*4
欲しいものと違うんじゃあ!これならF-4の方がマシじゃあ

*5
古すぎるんじゃあ!何にも進化しておらん!

*6
ソ連機は論外!カ◯プはわしの魂でもアカに魂は売った覚えないんじゃあ

*7
それじゃあ変わらん!うちは斯衛軍ほど期待を込めてないんじゃあ!

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