マブラヴ グレートパトリオティックウォー   作:Eitoku Inobe

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行くぞ 行かうぞ ぐわんとやるぞ
大和魂 伊達ぢやない
見たか 知つたか 底力
こらへこらへた 一億の
堪忍ぶくろの 緒が切れた
-”進め一億火の玉だ”より抜粋-


Victory road 極東戦役②

北海道での戦闘と同時に、ソ連極東地域でもBETAとの戦争は続いていた。

 

ハバロフスクに展開する師団は現状2つ、元よりハバロフスクに駐屯している第270自動車化狙撃兵師団と辛うじて戦闘に間に合った第81親衛自動車化狙撃兵"クラスノグラード"赤旗・二等スヴォーロフ勲章師団、そして第15親衛砲兵"ネマン"赤旗・スヴォーロフ及びクトゥーゾフ勲章師団である。

 

ハバロフスク及び現在戦闘地域となっているコムソモリスク・ナ・アムーレ周辺の防衛任務は第15軍が担当しており、特にBETAの攻勢が激しかったのがハバロフスク方面であった。

 

現在極東軍管区は主にハバロフスクに向けて戦力を集中させており、第15軍も第135自動車化狙撃兵師団をハバロフスクに急いで進めていた。

 

このうちウスリースクに司令部を構える第5軍もセルゲエフカの第227自動車化狙撃兵クトゥーゾフ勲章師団を向かわせており、もう数時間の時を必要とするが着々と増援は集まってきていた。

 

尤もこの数時間を耐えなければハバロフスクは壊滅的な被害を受けてしまう。

 

都市防衛の為に、第15軍司令官のニコライ・カリーニン中将はあらゆる兵器を以てハバロフスクを要塞化するように命じた。

 

その為に彼らは本当にあらゆるものを動員した。

 

予備装備のIS-3やT-34-85なんてまだ贅沢な方だ、例えば今年の5月9日に極東軍事博物館の展示品として飾るはずだった装備、BT-7やT-18といった戦車も市街地に配備された。

 

カチューシャとして名が知れているBM-8がいるのは当たり前だったし、1940年型107mm野砲やZIS-3 76mm師団砲、ML-20 152mm榴弾砲、BS-3 100mm野砲、M-42 45mm対戦車砲まで動員された。

 

鉄道路線を防衛する為にソ連軍が運用している装甲列車BTL-1が展開し、接近するBETAに対して戦車隊共々BETAを迎え撃った。

 

BTL-1にはT-54、T-62の砲塔やDShkM 12.7mm重機関銃などが設置され、車両内からは兵士がRPG-7などを発射した。

 

装甲列車から発射されるT-62やT-54の戦車砲、4門の重機関銃による一斉射で線路沿いに接近しようとするBETAは殲滅された。

 

少なくとも100mmを超える砲があれば要撃級までは軽く捻り潰せるし、12.7mmであれば戦車級など敵ではない。

 

こうした列車砲も鉄道路線を守る為にかなり役に立った。

 

こうした要塞化の裏で前線に展開する2個師団はアムール川を天然の要害として陣地を構築し、防衛戦を行っていた。

 

少なくとも現在のペースであるなら後1日、2日は余裕で持たせられるだろうというのがカリーニン中将の見立てであった。

 

練度はヨーロッパ地域の一線級部隊に比べると若干劣るがそれでも2個師団、その上で1個砲兵師団まで展開出来ている。

 

その上でハバロフスクの中央航空基地、バルフォメエフカ航空基地、チェルニゴフカ航空基地、二コラエフカ航空基地、ツェントラヤ・ウグロヴァヤ航空基地からソ連空軍及びソ連防空軍の戦術機部隊が救援として現れていた。

 

手厚い航空支援により、前線地域は比較的安定していた。

 

ソ連空軍第1赤旗航空軍とソ連防空軍第1赤旗防空軍の2個航空軍が定期的に襲来してはBETAを爆撃し、殲滅していく。

 

現状主戦線はヨーロッパ方面であるから極東方面にはまだSu-27やMiG-29はそれほど多く配備されていない。

 

基本的にはMiG-23M、MiG-27、MiG-25PDS、Su-24、Su-25が主力であり一部には既にMiG-31が配備されていた。

 

今も12機のMiG-31とMiG-25PDSの飛行中隊が前線に急行しつつあった。

 

「各機、陸軍の砲撃と合わせて光線級排除に移る。熱源を捉え次第攻撃を開始しろ」

 

MiG-31のコックピットからモノガノフ大佐は部隊に対して命令を出し、指揮を執った。

 

12機のMiG-26PDSとMiG-31は横並びになりながら地面の高低差を利用してBETA群に接近し、光線級の攻撃範囲から外れた。

 

『陽動砲撃来ます!』

 

BM-21"グラード"とBM-8の一斉射撃がBETA集団に対して牙をむいた。

 

これを迎撃する為に光線級が即座にレーザーを発射し迎撃を開始、発射された100%の砲弾は撃ち落された。

 

だが所詮は陽動、この間にレーザー発射の余熱で温まった光線級を広範囲に補足し、狙いを定める。

 

「沈め!」

 

モノガノフ大佐のMiG-31から数発のKh-29空対地ミサイルと両手と両兵装担架に装備された57mm狙撃砲が光線級を狙い撃った。

 

ミサイルの直撃で光線級は次々と爆散し、57mmを喰らった光線級も同じように弾け飛んだ。

 

モニターのレーダーに映る敵影を排除し終えたモノガノフ大佐は即座に機体を反転させ、低空で友軍の領域まで後退した。

 

同じように掃討に成功したMiG-25PDSやMiG-31が戻ってきた。

 

「何体潰せた!?」

 

『レーダー内に移ってた奴は全て叩き潰しました!ですが予備の数まではまだ把握できていません!』

 

「十分だ、一旦下がってミサイルを補給する。後は空軍部隊に任せるぞ」

 

モノガノフ大佐の素早い判断でモノガノフ大佐の部隊は後退し、前線に急行していたSu-24やSu-25と交代した。

 

再び接近する突撃級の群れをSu-24から発射される空対地ミサイルが迎撃し、後続の要撃級と要塞級の群れをSu-25の大火力が粉砕した。

 

生き残りは地上に展開するBTR-70やBMP-1、T-62MV-1やT-72AVといった戦車隊がアムール川沿いで食い止めた。

 

光線級が粗方片付いたことにより、砲兵師団による本格的な支援砲撃が始まり、前線のみならず後方のBETA群も甚大な被害を被った。

 

その間に後方へ下がったモノガノフ大佐の部隊はハバロフスクの中央航空基地に戻り、補給を開始した。

 

「燃料はまだある、ミサイルの再装填だけ頼む」

 

『了解、15分で終わらせます』

 

滑走路から少し外れた元はヘリコプターの駐留地点だった箇所に降り立った戦術機の補給を開始し、モノガノフ大佐は状況を確認した。

 

前線地帯の光線属種は粗方仕留めたが後方となるとまだそうではないようだ。

 

補給を終えたらもう一度光線級排除に向かわなければならない。

 

「対人戦を想定して見れば、大変なことになったな」

 

モノガノフ大佐は苦笑交じりにふと呟いた。

 

同じ頃、ハバロフスクに配置されている極東軍管区司令部では各軍の状況を確認し、対策を講じていた。

 

既に降下ユニットは仕留めたが事前に降ろされた母艦級の数が相当多いようで敵の攻勢能力が全く衰えることを知らない。

 

現状主な戦闘地域はハバロフスク前面のアムール川の手前、もう一方はコムソモリスク・ナ・アムーレを防衛するアムールスクとミィルキの都市部である。

 

戦力比でいえばハバロフスクとコムソモリスク・ナ・アムーレは7対3、ハバロフスクの方が圧倒的に多数の攻撃を受けている。

 

尤も地理的な環境状況で地上戦力や航空戦力の増援はハバロフスクの方が多い。

 

双方なんとかBETAの侵攻を防げている状況であった。

 

「二コラエフカ方面より新たに大隊規模BETA群接近中。現在二コラエフカ前面の守備隊が応戦中です」

 

「装甲列車部隊が急行中、戦闘参加まで後3分」

 

「バルフォロメフカよりSU-24飛行中隊が合流、正面戦線に合流します」

 

次々と上がって来る報告を聞きトレティヤーク上級大将は指示を出した。

 

「ソヴィエツカヤ・ガヴァ二ィの爆撃部隊を燃料と弾薬の補給が完了次第出撃させろ。BETA集団に核攻撃を叩き込む」

 

「はい!」

 

「227師団、226師団は後何時間ほどで到達するか」

 

「第227自動車化狙撃兵師団は後7時間、第226自動車化狙撃兵師団は後4時間ほどで到達します」

 

第226自動車化狙撃兵"アルチョモフ=ベルリン"赤旗・スヴォーロフ勲章師団はハバロフスクが戦場になる可能性が高いと判明した瞬間から極東軍管区の命令でハバロフスクへ移動を開始した。

 

このペースだと第226自動車化狙撃兵師団は反撃戦力の要として運用されるだろう。

 

「急がず確実に戦力を漏らさぬよう来いと伝えろ。日本の様子は」

 

「現在日米英と我が軍の海軍戦力でBETAの展開を防いでいます。しかし降下ユニットは依然として健在です!」

 

参謀の報告を聞き、トレティヤーク上級大将は困った表情を浮かべた。

 

「……洋上展開中の"ウリヤノフスク"にはまだゴルシコフ元帥がいたな?」

 

トレティヤーク上級大将は部下の参謀に尋ねた。

 

「はい、補給艦隣接の際にウラジオストクに戻られてはと提案したそうですが、海軍総司令官がBETAを前にして尻尾を巻いて逃げられるかと……」

 

「まだ留まってるか……"ポーリュス"の状況は」

 

「後1時間で発射可能だと宇宙軍は」

 

「……ソヴィエツカヤ・ガヴァ二ィの部隊は一部を温存させておこう。日米の核戦力では足りないかもしれん」

 

隣に控えていた参謀長のニコライ・キジュン中将は小さく頷いた。

 

極東での戦役、まだまだ佳境であった。

 

 

 

 

奈井江町に降下した重頭脳級は地球上に降下して初めて絶望というものを味わった。

 

何せ地球に落ちた瞬間更新出来た地球上のハイヴはたった1つ、ベルリン・ハイヴだけだった。

 

ほぼ同時に落ちた極東ソ連の降下ユニット達も次々と連絡が取れなくなり、1基、また1基と連絡が途絶えた。

 

幸いにも事前展開した通常種ユニットがいる為、戦闘自体は出来ている、だがそれにしてはユニットの消耗が激しい。

 

ひとまず重頭脳級は唯一生き残っているベルリン・ハイヴの頭脳級と通信を行うことにした。

 

ベルリン・ハイヴは重頭脳級に全てを伝えた。

 

1973年から現在に至るまでの戦争、1981年の攻勢で支配地域の9割を失い現在は包囲下に置かれていることを、辛うじて地下からの移動で伝令級を回して欧州地域だけで情報を共有していたことを。

 

少なくともベルリン・ハイヴはプラハ・ハイヴからブダペスト・ハイヴに至るまでの人類との戦闘データを全て所有していた。

 

ベルリン・ハイヴの頭脳級は包囲下に置かれている中、密かに残った資源と地下構造を拡大した時に浮いた余剰資源で失ったユニットを復元しつつ人類に対抗する為に新しいタイプを開発した。

 

ベルリン・ハイヴはある意味でヨーロッパに散らばっていた全てのBETAを見殺しにしたのだ、そして見殺しにしたことで得たデータから作り出されたあらゆるものが重頭脳級に渡った。

 

重頭脳級は淡々と送られてくる新しいタイプのBETAユニットの情報を受けて困惑した。

 

この星でベルリン・ハイヴが作り上げたBETAユニットの新種はどれも彼らが与えられた本来の大使命には則さないものだからだ。

 

例えば運搬級、改造突撃級、重要塞級、城塞級、装甲母艦級、どれも大使命を果たす為には必要のない存在だ。

 

それでも先に降り立っていた彼らは作った、我が身を守る為に、切り離された星で大使命を達成する為に。

 

重頭脳級はデータを送ると同時にこちらからも持っている情報を送った。

 

衛盾級の設計図、簡易的な重頭脳級への強化方法など。

 

既に共に降りてきた4つの頭脳級は撃破された、時間で言えば1時間も経たぬ間にだ。

 

航行中に攻撃を喰らった我々の資源を転用したと思わしき装備、あれをいつ惑星側に用いられるか分からない。

 

重頭脳級は冷静に我が身が長くないと悟りつつ、少なくとも10年間地球で生き残ったベルリン・ハイヴにあらゆるものを渡した。

 

機械的に、ただ与えられた大使命を果たす為に、報われるかも分からずに。

 

その間に北海道での戦闘は激化の一途を辿っていた。

 

少なくともまだナイエ・ハイヴにBETAを新たに生産する能力はない為事前に持ってきたBETAで対抗し、必死にハイヴ構築の為に地面を掘り進めた。

 

BETAによる攻勢は更に勢いを増し、より一層戦線を前に出そうと、特に札幌方面に向けてBETAを投入した。

 

一方の日本帝国側だがこちらも増援が次々と到着し、各所でBETAの攻勢を耐えていた。

 

まず在韓米軍の第2歩兵師団の航空旅団戦闘団が増援として到着、続いてMRLSやMGM-52”ランス”などを装備した師団砲兵隊が前線支援に合流した。

 

MRLSの長距離クラスター弾射撃が移動するBETAの集団を一撃で粉砕し、鉄の雨と共にBETAの屍を大量に作り出した。

 

更に香港に駐屯している在香港イギリス軍のうち、グルカ野戦部隊が投入され日本陸軍北部方面軍に合流した。

 

グルカ野戦部隊は旭川方面の防衛に回り込み、旭川方面にはソ連海軍航空隊と日本海軍航空隊、日本陸軍第2、第5師団と在香港英軍グルカ野戦部隊が並ぶという奇妙な現象が発生した。

 

更にウラジオストクから出港したソ連海軍第55海軍歩兵師団も小樽から北海道に上陸し、札幌から前線へ急行した。

 

こちらも日本陸軍第11、第7師団と第8師団の一部、第1空挺旅団、米海兵隊第31海兵遠征部隊が第55海軍歩兵師団と共に防衛戦闘を行い、それが在韓米軍の第2師団砲兵隊と航空旅団戦闘団によって支援されるという、こちらも大分奇妙なことが起こっていた。*1

 

T-55AMやBMD-1が三四式戦車や三三式APCの隣を走り、BETAに向けて攻撃を開始した。

 

上空には”エンタープライズ”から発艦したF/A-18が、”出雲”からF-14JとF-16NJが発艦し前線や後方のBETA群に要撃戦闘を行い、前線へ到来する数を減らした。

 

スーパーフェニックスミサイルもクラスター爆弾もBETAには特によく効く、本当にF-14J1個飛行隊の攻撃でBETAの1個旅団が吹き飛んだのではないかと見まごうほどだ。

 

そして彼らの影に隠れながらも新たな増援が到着した、斯衛軍の戦術機連隊である。

 

突撃砲や空対地ミサイルを備えた主に白い”瑞鶴”が前線地帯へ急行し、切り込んだ。

 

「全機!BETAを追い返す、かかれ!!」

 

斯衛軍戦術機部隊の最先頭にいるのは赤と青の”瑞鶴”、崇継と助六郎が動かす機体だ。

 

この2機は右手で長刀を構え、左手にはしっかり突撃砲を持ってAGM-65”マーヴェリック”を装備していた。

 

本来なら先発は別の者がやる予定だったのだが2人が自ら志願して参加し、このような流れとなった。

 

お陰で他の衛士の士気も鰻登りに上昇し、このような突撃でも止まることなく突き進んだ。

 

前線に展開するBETA群に対して”瑞鶴”の突撃砲による集中砲撃が浴びせられ、そのまま近接戦に移行し度重なる斬撃によって前線地帯のBETAを数キロ先の後方まで押し込んだ。

 

これによって一時的に前線のBETAが分断され、戦車隊の地上支援によって連隊規模BETA群が撃滅出来た。

 

ある程度まで突撃に成功すると連隊長から後退命令が降り、”瑞鶴”はBETAを警戒しながらもバックステップを踏みながら友軍陣地に後退した。

 

「先に下がれ!殿は私が引き受ける!」

 

『ハッ!』

 

この時も最後まで戦っていたのは崇継と助六郎である。

 

彼らの赤と青の”瑞鶴”は斯衛軍のみならず日本軍や前線に展開していた様々な国の兵士達が目撃した。

 

戦いが始まれば真っ先に突撃し、退く時は味方の為、最後まで敵地に踏み止まってから下がる。

 

この光景は正に人々が思い描くようなファンタジー的な侍の姿と合致し、今後数十年以降サブカルチャーにおける日本の侍はどこかに赤と青色の意匠を取り込むことが多くなるのだがそれはまた別の話。

 

少なくとも日米海軍の航空隊と日本空軍、そして斯衛軍の戦術機部隊のローテーションによって前線地帯には絶え間なく航空支援が叩き込まれ、地上での頑強な抵抗も相まって突破を確実に防いだ。

 

既にBETAとの戦いが始まって数時間近くが経過しているが戦線は僅かに後退しただけで、あまり押し込めていなかった。

 

少なくとも押し切るにはBETA側に衝撃力が足りない。

 

改造突撃級や重要塞級を再生産して数個大隊規模で投入すればもう少し前進出来ただろうがそれをやるだけの余裕と設備の構築がナイエ・ハイヴにはまだ出来ていなかった。

 

降下完了から少なくとも24時間はフェイズ1のまま、これが人類側にとってかなり大きなアドバンテージとなった。

 

少なくとも彼らは24時間以内に軌道上のアレの砲口を地球側に向ければいいのだ。

 

地球圏の軌道上で”ポーリュス”の発射体制は完了し、射原入力が始まっていた。

 

 

 

 

一方東京の市ヶ谷では対策室が北部方面軍や北部航空軍、第1艦隊から報告を基に現地の状況を分析していた。

 

少なくともBETAの侵攻は各国軍の参戦も相まって辛うじて防げている、初動対応には成功した。

 

警察や地方自治体からの話でも降下の衝撃で残念ながら多少の負傷者は出たが、今のところ民間人の死者が出たという話は出ていない。

 

これに関しては警察や自治体の職員が56年度演習で得た経験を基に、懇切丁寧に避難誘導や避難の手助けをしてくれたお陰だろう。

 

彼らの頑張りがなければ恐らくもっと犠牲が出ていた。

 

「新津大佐、避難船舶の状況は」

 

「青森、むつ、八戸に誘導させています。避難民の一部は函館にも誘導しているそうです」

 

「函館は恐らく堕ちんだろうからな……後は”ポリウス”だが……」

 

「同志コバヤシ将軍、宇宙軍司令部からの連絡で”ポーリュス1”の発射体制が整ったとのことです」

 

対策室にソ連側の連絡将校として駐日ソ連大使館から呼び出されたパヴロフ中佐は敬礼し、状況を報告した。

 

「よし!直ちに奈井江町の降下ユニットに向けて照射するようお願いします!」

 

パヴロフ中佐は小林大将の要請を聞き入れ、直接宇宙軍司令部に連絡した。

 

ソ連宇宙軍は”ポーリュス1”の射原入力位置と出力の調整を行なっている。

 

現在軌道上には機能としては存在しているが航行不能になった大量の降下ユニットが浮遊しており、国連宇宙軍はこれの掃討戦に移行している。

 

そのうち”ポーリュス1”は防衛線が突破されたタイミングで冷却と再チャージを行いつつ、砲口の反転を急いだ。

 

「”ポーリュス1”方向転換完了」

 

「エネルギー充填率80%、出力を50%まで調整」

 

軌道上のステーションで第1親衛攻撃衛星軍が”ポーリュス1”の最終調整を行い、奈井江町の降下ユニットに狙いを定めた。

 

「誤射修正マイナス5度、プラス2度」

 

「目標を固定、安全装置を解除」

 

「射線上に友軍は確認出来ず」

 

オペレーターからの最終報告を聞いた司令官のマクシモフ大将は静かに指示を出した。

 

「”ポーリュス1”、発射!」

 

”ポーリュス1”の砲口から見慣れた紫色のレーザーが地表に向けて発射された。

 

禍々しい破滅のレーザーが大気圏を突破し、青空を突き抜けて奈井江町の側に落ちたBETAの降下ユニット目がけて突き抜ける。

 

当然重頭脳級は上空から何かが降ってきたことを感じて即座に衛盾級を起動し、ラザフォード場を展開してレーザーを防いだ。

 

尤も重頭脳級はレーザーがこのままでは防げないことを知り、更にシールドの出力を上げさせた。

 

それでもレーザーは止まらず徐々にラザフォード場が押し込まれ、無理やりこじ開けられた。

 

周囲にはその衝撃波が飛び散り、大地が割れ、木々や建物が吹き飛んだ。

 

やがて衛盾級の出力が限界に達し、レーザーの侵入を許した。

 

G元素レーザーはそのまま大地を抉り、地下まで潜っていた重頭脳級まで到達した。

 

じわじわと重頭脳級の身体がナノレベルまで分解され、消失していく。

 

幸いなのかBETAに死の概念はない、ただ自らが消えていくことを認識し残存するBETAに対して徹底抗戦の指令を残して消失した。

 

これで地球上に新たにハイヴが誕生する可能性は無くなった、後は周囲に展開するBETAを防ぐのみである。

 

残されたBETAは重頭脳級が最期に遺した指令通りに戦闘を続けた。

 

その為前線部隊からすれば”ポーリュス1”が発射された後も戦闘は続き、対して状況に変化はなかった。

 

「戦車級と闘士級だ!!」

 

「撃てェ!」

 

美唄市の市街地に立て篭もる第1空挺旅団も依然として迫り来るBETAに対して戦闘を続けていた。

 

二四式小銃の7.62mmとM2ブローニングの12.7mmが弾幕を張り、BETAの接近を阻止した。

 

「擲弾投擲ィ!」

 

二四式小銃に取り付けられた擲弾筒から発射される擲弾が炸裂し複数体の闘士級を撃破した。

 

12.7mm重機関銃による集中砲火で戦車級が撃破され、その隣にいた戦車級も84mm無反動砲を喰らって吹き飛んだ。

 

尤も弾幕射撃の中を掻い潜って稀に市街地の陣地まで突っ込んで来られる個体もいた。

 

1体の戦車級が弾幕射撃を掻い潜りながら7.62mm弾を装甲で防ぎつつ、建物に体当たりして壁を打ち破った。

 

「ウワアア!!」

 

「戦車級が入ってきたぞ!!」

 

空挺隊員達は即座に武器を構えながら後ろに下がった。

 

「深谷ィ!中村ァ!擲弾だァ!!」

 

佐藤大尉に命令された深谷一等兵と村田一等兵が二四式小銃のアタッチメント式擲弾筒を同じ箇所に発射して肉体の一部を抉った。

 

その後ろで同じ班の高梨一等兵と上林一等兵が手榴弾を投げ入れて確実に戦車級を撃破した。

 

「危なかった」

 

「ボケッとしてるな中村!下がって防衛線を立て直すぞ!応戦しながら建物を出ろ!」

 

佐藤大尉は片手で二四式を撃ちながら建物から下がった。

 

市内の建物は多くがBETAの死骸や戦闘の影響で破壊されており、道端のあちこちに瓦礫が落ちていた。

 

劣悪な道路を空挺隊員達は必死に走り、接近してくるBETAを叩いては移動を繰り返していた。

 

その隣では平地を三四式戦車G型が走り、120mm滑腔砲で突撃級を撃破していた。

 

上空を数十機のF-15JとF-4EJ改が飛び去り、前線支援に向かう。

 

その中でも特段動きが良かったのがやはりF-15Jだ。

 

空対地ミサイルと120mm弾で突撃級や大型のBETAを撃破し、突撃砲やハイドラ70ロケット弾で要撃級以下のBETAを殲滅した。

 

その優れた機動力でBETAを殲滅し、ある程度の戦闘を終えると後方に下がった。

 

「あれがF-15Jか」

 

「やっぱりファントムよりイーグルだよな」

 

「最新鋭機はすごいや」

 

F-15Jの戦闘能力は中東での戦いの頃からお墨付きを貰っており、非常に評価は高かった。

 

恐らく今後もF-15Jは当分日本空軍の主力戦術機であり続けるだろうし、アップデートも続けられるだろう。

 

少なくとも前線部隊がF-4を使い続けるということはなくなっていくだろう。

 

重頭脳級の撃破から1時間が経過した。

 

BETAの攻勢能力は徐々に鈍化し、減少していった。

 

ここから逆に人類側の反撃が始まる。

 

王を失った駒がゲームの裏でどうなるか、証明される時だ。

 

 

 

 

 

重頭脳級の撃破、これが達成されれば後は日本帝国本土の防衛と残るBETAの掃討である。

 

BETAの攻勢能力の鈍化が確認された段階から札幌方面では第7師団が攻勢の為に予備戦力を基幹として攻勢部隊を編成、戦術機部隊なども取り揃えて前線を前に進める為の準備を進めた。

 

同じく旭川でも第2師団が有する第2戦車連隊と第5師団の第5戦車大隊を基幹として戦車部隊による攻勢の準備を開始した。

 

第2、第5師団の攻勢に合わせて”ウリヤノフスク”に一旦帰還して整備を行なっているSu-27K部隊を再度発艦させる準備を行なっていた。

 

衛士達は戦術機の側で軽食を取り、空腹を満たしていた。

 

彼らに用意されたのはピロシキと砂糖がたっぷり入った紅茶、サッと食べられるし何より戦う為に必要なエネルギーがしっかり摂れる。

 

パイロットとは元より体力を使う仕事だ、選ばれた屈強な者達が掴める空への道。

 

彼らはエリートであり、その上で多くの実戦を積んだ経験も備わったベテラン達である。

 

彼らは最新鋭原子力空母”ウリヤノフスク”の艦載機パイロットに相応しい者達であった。

 

その頃”ウリヤノフスク”のブリッジでは逐次本土や他国軍と連絡を取り合っていた。

 

実を言うとこの戦場で尤も階級が高いのはゴルシコフ元帥である、その為臨時の国連軍を取りまとめる役を実はゴルシコフ元帥が担っていた。

 

「うん、攻勢作戦にこちらからも再び艦載機部隊を出す。そちらも支援に艦載機を見繕ってくれ」

 

受話器を持ちながらゴルシコフ元帥は”エンタープライズ”に乗艦するアメリカ海軍側の指揮官と調整を行っていた。

 

調整を終えるとゴキナエフ少将はゴルシコフ元帥に報告を行った。

 

「間も無くSu-27Kを上げます」

 

「うむ、ソコル飛行場からも戦術機部隊の増援が到着する。サハリンと”ウリヤノフスク”、これらの戦術機部隊で我々も日本軍の攻勢を支援しよう」

 

ゴキナエフ少将とヴィセーニン中佐は頷き、エレベーターで格納庫から上げられるSu-27Kを見守った。

 

艦載機で整備を受けていたSu-27Kは最終調整に入り、全ての確認作業を終えると安全装置を解除してエレベーターに乗せた。

 

「要望通りにミサイルはKh-29の方を装備し、対要塞級には152mmを装備させました」

 

「ありがとう、それじゃあ行ってくるわ」

 

「無茶して破損箇所を増やさないでくださいよ!」

 

「オーケー、じゃあな」

 

担当の技術大尉に軽く敬礼し、ベルグロフ大佐は機体のコックピットハッチを閉めた。

 

各種システムを起動し、状況を確認するとベルグロフ大佐は最後にあるデバイスの起動スイッチを押した。

 

「無人機運用及び支援プログラムね……役には立ってるけど理屈はよく分からんな」

 

ベルグロフ大佐は出撃する前にふとシステムの内容について呟いた。

 

彼らが操縦するMiG-29K、Su-27K、Yak-41には全てモースク1との接続デバイスがデフォルトで装備されていた。

 

デバイスからモースク1はBETAの攻撃範囲予測を表示したり、各機の戦闘データを収集していた。

 

しかし”ウリヤノフスク”の戦術機衛士達のうち、モースク1から話しかけられた者は誰1人として存在しなかった。

 

どこかの誰かが特別なのか、或いは記憶元のせいで妙な執着を覚えられているのか、ともかくモースク1は彼らには興味を示さなかった。

 

エレベーターで甲板上に上げられたSu-27Kはカタパルトとスキージャンプ台の双方から発艦した。

 

今回ベルグロフ大佐はカタパルトの方を使用した。

 

Su-27Kの脚部がカタパルトの射出機にしっかり固定され、跳躍ユニットからは僅かにだがエンジンが点火した状態になっている。

 

「TuKP、間も無く発艦する」

 

『TuKP了解、ソ連邦英雄の活躍、期待してますよ』

 

返答したのはヴィセーニン中佐、彼らの期待に答える為にベルグロフ大佐はわざとらしくSu-27Kで敬礼した。

 

ブリッジに微笑が浮かび上がり、そのすぐ後にSu-27Kは”ウリヤノフスク”のカタパルトから発艦した。

 

カタパルトから射出されたSu-27Kはそのままエンジンを加速させて一気に飛び去り、先行した友軍機と共に戦場へ急行した。

 

雲を抜け、山を越え、北海道の大地を渡ってSu-27Kは戦場へ急行した。

 

恐らく多くの日本人にとって初めて生で見るソ連の戦術機はこのSu-27KかMiG-29K、Yak-41となっただろう。

 

ある者は上空を飛行するSu-27Kを撮影し、またある者は戦闘後に北海道の近くにいる”ウリヤノフスク”の写真を撮ったり、撤退中の第55海軍歩兵師団と交流することとなる。

 

ここで得られた交流や写真の数々は戦後、日本帝国の軍事雑誌などに掲載され数多くの軍事愛好家の心を掴み、中には一緒に掲載されたソ連戦略ロケット軍の写真と共に心を掴まれて大成する人もいるのだがそれはまた別の話。

 

日本人から羨望の眼差しを受ける機体を操る衛士達の心境は一刻も早くこの戦いを終わらせて帰ることだった。

 

戦場に到達すると既に第2工兵大隊と第5工兵大隊の渡河小隊が徳富川と空知川に橋をかけ、戦車部隊による攻勢準備を進めていた。

 

「各機に伝達、戦車隊の直掩は日本軍に任せておけ。我々は後方へ浸透し、敵を叩く!」

 

『了解!我々が一番槍だ、行くぞ!』

 

旭川駐屯地で補給を終えて再び前線で戦闘を行っていたミハールキン中佐のMiG-29Kと他の部隊がベルグロフ大佐の後に続いた。

 

後から補給と整備を終えたYak-41部隊も続き、まず”ウリヤノフスク”海軍航空隊による事前攻撃が始まった。

 

第2砲兵連隊及び第5砲兵連隊による支援砲撃が各所に叩き込まれ、ついでと言わんばかりに石狩湾から海軍の対地攻撃も叩き込まれた。

 

これによりBETAは更にズタボロになり、一部では母艦級の撃破も確認された。

 

それに合わせてソ連海軍航空隊が攻撃を仕掛け、BETAを各所で殲滅していく。

 

Su-27Kから発射されるロケット弾が要撃級を数体撃破し、その周囲にいる戦車級を突撃砲と腕部に内蔵されたZU-23-2連装機関砲が殲滅した。

 

Su-27、MiG-29の腕部には本来モーターブレードが搭載される予定なのだが、試験段階で「使い道がない」と多くのテストパイロットから苦情が寄せられ、機関砲やミサイルが装備されるようになった。

 

ベルグロフ大佐は今回、152mm砲2門を搭載して失った弾幕射撃能力を補う為にSu-27KにZU-23-2連装機関砲を搭載していた。

 

ベルグロフ大佐の僚機も負けじと接近する突撃級にKh-29空対地ミサイルを叩き込んで撃破した。

 

生き残りはベルグロフ大佐が背後に回り込んで突撃砲で仕留め、周辺の随伴はZU-23-2で薙ぎ払った。

 

機関砲の弾丸によって砂埃が撒き散らされた後には無惨に散ったBETAの死骸が転がっている。

 

BETA集団を殲滅するとベルグロフ大佐はバックステップを踏んで一旦下がり、突撃砲でBETAを牽制しながら後ろに下がった。

 

即座にレーダーと眼前の戦闘状況を確認し部隊に指示を出した。

 

「マリャーキン隊は 回り込んで11時方向の新手に対応。オスマノフ隊はこのまま抑えろ、我々はこのまま敵を撹乱する」

 

『了解!』

 

『了解…!』

 

即座に命令を受けた戦術機が移動し、命令通りに戦闘を開始した。

 

前線には三四式戦車G型が中核となった戦車戦闘団とF-4EJ改の主力攻勢部隊がやってきた。

 

120mm滑腔砲の一斉射で突撃級の集団が弾け飛び、周囲に展開する要撃級や戦車級といった随伴部隊は三三式APCや直掩のF-4EJ改が掃討に移った。

 

状況に応じて各師団の砲兵連隊は支援砲撃を繰り出し、砲火力でBETAを粉砕する。

 

現在のBETAは唯一の指揮官である重頭脳級を失い集団戦闘は出来ても戦略的、戦術的に有効な戦闘は行えずにいた。

 

つまり数はいてもそれが100%有効に使えているわけではなかった。

 

今のBETAは元々各自に与えられたコマンドをその通り実行しているだけに過ぎず、柔軟に動き、敵に打撃を与える人類軍の時間を稼ぐ程度しか活動出来なかった。

 

同じことは札幌方面でも起きていた。

 

第7師団と第3師団の戦車部隊を主力とし、第55海軍歩兵師団と第31海兵遠征部隊及び第1空挺旅団が側面援護を行い前進を開始した。

 

三四式戦車G型の隣をT-55AMが走り、更に三三式APCとBMD-1、海兵隊のLAV-25が支援する。

 

これらの部隊を支援するのは日本空軍のF-15J、日米海軍のF/A-18とF-14J、F-16NJ、そして斯衛軍の”瑞鶴”。

 

大型種は滑腔砲で吹き飛ばされ、小型種は機関砲で滅多撃ちにされて殲滅された。

 

後方のBETAには空対地ミサイルやクラスター弾が叩き込まれ、赤と青の”瑞鶴”が放つ斬撃と共に日本軍は前進した。

 

何分BETAの数が多い為すぐには前進出来なかったがBETAの屍を積み上げ、時間をかけて彼らは前に進んだ。

 

どんなものにも無限でない限りいつかは終わりがくる、BETAとてそれは例外ではない。

 

「前方に要塞級、時間がないから我々で仕留めるぞ!」

 

数百メートル先に展開する要塞級の集団を確認してベルグロフ大佐は味方にそう命令を出した。

 

前方の要塞級は別に前線展開してきた部隊ではない。

 

BETAの正面戦力が崩壊し要塞級が展開する地域まで部隊が前に出てきただけだ。

 

装備を突撃砲から152mm無反動砲に持ち替え、大火力で真正面から撃破する。

 

152mm弾を関節部に2発喰らった要塞級は一撃で吹き飛び、その隣いた要塞級にはKh-29空対地ミサイルと突撃砲の120mm弾を合計4発喰らって崩れ落ちる。

 

後続の戦車隊も要塞級を補足して一斉に120mm滑腔砲を発射する。

 

120mmのHEAT弾である、関節部に直撃すれば撃破は免れない。

 

そのままSu-27K部隊と戦車隊によって要塞級は殲滅され、そのまま他のBETAの掃討戦に移った。

 

所謂チェックメイト、というやつだ。

 

1984年2月22日の朝、夜明けと共に札幌と旭川から進んだ各軍は降下ユニットが落下した周囲を取り囲んだ地点で合流した。

 

BETAの組織的抵抗は完全に消失し、後は一部の部隊が追撃戦をする程度に留まった。

 

奪還した各所には日章旗が掲げられ、他にも米英ソの国旗や各軍旗か掲げられた。

 

夜は明け、朝日は昇る。

 

それはまるで人類の勝利を祝福しているかのような光景だった。

 

日出る国は39年ぶりの決戦に勝利したのであった。

 

 

 

 

石狩川の辺、北と南から進んできた各軍の将兵は互いに翻訳機を交わしながら握手を交わし、共に勝利の朝日を拝んだ。

 

皆連戦で疲弊し、疲れ切っていたがそれ故に美しい朝日が心に染み渡る。

 

国籍は違えど美しい勝利の喜びと美しい景色に心を打たれるのは誰であろうと一緒であった。

 

辺りには戦車や装甲車、戦術機が疎に停められており、その周りには数多くの多国籍の将兵が互いに勝利を分かち合っていた。

 

それはベルグロフ大佐も一緒だ。

 

樺戸川の側に機体を下ろし、コックピットハッチを開けて新鮮な冷たい空気を吸い、美しい朝日を眺めた。

 

同じように周りには米海軍のF/A-18や日本空軍のF-15J、そして赤と青の斯衛軍機、”瑞鶴”が立ち並んでいた。

 

「勝ったか……」

 

ベルグロフ大佐は微笑を浮かべ、今回の戦いも無事生き延びられたこと、被害が拡大する前に勝利を掴んだことを喜んだ。

 

恐らく本土でも極東軍管区とザバイカル軍管区の部隊が残存するBETAを掃討するだろう。

 

我々はなんとかこの星を侵略者から守り通せたのだ。

 

「おーい!そこの!」

 

下を見ると何やら誰かがベルグロフ大佐のことを呼んでいた、それもロシア語ではなく英語や日本語が入り混じっている。

 

彼らは手招きしてベルグロフ大佐を呼び寄せているようだった。

 

大佐は機体から降りて呼びかけていた将兵に合流した。

 

「米海軍所属、ワーンバイト少佐だ。あなたベルグロフ大佐だろ?ソ連邦英雄の」

 

「如何にも、”ウリヤノフスク”海軍航空隊のベルグロフ大佐だ」

 

2人は握手を交わした。

 

「やっぱりな!あの要塞級捌きを見てそうじゃないかって思ってたんだ!会えて光栄だよ!」

 

ベルグロフ大佐もソ連邦英雄の金星に相応しいエースパイロットであった。

 

しかもその戦果はフレツロフ中佐らとは違って国連軍での活躍である為、その戦果は広く知れ渡っている。

 

「そういって貰えると嬉しいよ。あなた方の新しい戦術機も中々に凄い動きだった」

 

「名前知ってますか?使い易くて良い機体ですよ、西側特権だ」

 

「ハハッ、こちらも良い機体を貰った。東側特権だね」

 

お互いにジョークを言い合いつつ、ベルグロフ大佐は他の衛士達とも握手を交わした。

 

「あなたは確か後方の」

 

「”天城”所属、相澤大尉であります!」

 

「戦車隊の直掩、ご苦労だった。良いパイロット達だ」

 

一時とはいえ共に戦った戦友達をベルグロフ大佐は褒め称えた。

 

運命が違えばベルグロフ大佐は彼らと戦うことになっていたのだから運命とは分からないものだ。

 

今度ベルグロフ大佐は”瑞鶴”の側にいる2人の若者に声をかけた。

 

「この赤色と青色の戦術機のパイロットはあなた達か?私はソ連海軍のベルグロフ大佐だ」

 

「斯衛軍戦術機部隊、斑鳩崇継中尉です」

 

「同じく戦術機部隊の真壁介六郎中尉です、お話は聞いています」

 

ベルグロフ大佐は崇継と介六郎と握手を交わした。

 

「随分若く見えるな、若いのに良い腕をしている。君らみたいなパイロットがいれば当分日本軍は安泰だろうな」

 

「お褒めに預かり光栄です。ですが私はまだ研鑽中の身、まだまだ精進せねばなりません」

 

「未来がどうなるか分からないが、1人の人間として応援するよ。出来れば末長く味方であって欲しいがね」

 

ベルグロフ大佐の言う通り未来がどうなるかは分からない、第二次世界大戦の後のように世界は再び分裂するかも知れない。

 

それでもこの瞬間だけは消えることのない確かな事実として残る。

 

この美しい朝焼けがこの場にいる全ての将兵の記憶となって残り続ける、皆でBETAの侵略を食い止めたという歴史が。

 

尤も歴史とはただ美しい話ばかりではない。

 

1984年の動乱はまだ序章である、これからまた1つ混乱が巻き起こる。

 

京都、東京、2つの大都市を巡って戦いは始まる。

 

日本帝国にとって大きな歴史の転換展を迎えようとしていることをこの時はまだ、一部の人間しか知らなかった。

 

 

 

つづくかも

*1
WGRDでバラバラのデッキ使ってる時みてえだ

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