マブラヴ グレートパトリオティックウォー   作:Eitoku Inobe

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ロシアは見つめる、己が息子達を
あたかもつい昨日、戦が終わったかのように
通り過ぎる、白髪の勝利者達が
勝利は若きままに
-”勝利は若きままに”より抜粋-


1980年5月9日

-ソ連領 ロシアSFSR モスクワ州 首都モスクワ 赤の広場-

赤の広場の鐘が鳴り響く。

 

鐘が鳴ったのは時計台の針が丁度10時を指した時である。

 

確実に数百は超えるソ連軍将兵が隊列を成して待機し、赤の広場の外には戦車部隊や装甲車、戦術機部隊も待機していた。

 

5月9日、ソ連における大祖国戦争戦勝記念の日である。

 

35年前のこの日、ソ連の長い戦争が終わった。

 

5月8日にヴィルヘルム・カイテル元帥、ハンス=ゲオルク・フォン・フリーデブルク上級大将、ハンス=ユルゲン・シュトゥムプ上級大将の3人がゲオルギー・ジューコフ元帥の下で降伏文書に調印した。

 

ナチス・ドイツの最後である。

 

放送でソ連国内にベルリン陥落と降伏は伝えられ、大祖国戦争は勝利に終わった。

 

そして35年後の今日、ソ連政府は過去の戦勝と今の勝利を祝す為に数年ぶりに赤の広場でパレードが執り行われた。

 

ソ連共産党員や多くのモスクワ市民、そして様々な諸外国の人々がモスクワに集まった。

 

アメリカにイギリス、東西ドイツにフランス、中国、そして南と北の半島国家にイタリア、日本、カナダ。

 

人々の羨望の中ZIL-4104のオープンカーに乗ったモスクワ軍管区司令、ピョートル・ルーシェフ上級大将が部隊に号令を出した。

 

彼が今回のパレード受閲部隊の指揮官を務める。

 

「受閲部隊、気をつけ!頭向け左!捧げ銃!」

 

合同音楽隊指揮者のニコライ・ミハイロフ少将の指揮で音楽が鳴り響く。

 

祝典受閲行進曲『赤軍25周年』である。

 

軽快なメロディーと共に同じくZIL-4104に乗ったドミトリー・ウスチノフ元帥が姿を現した。

 

普段とは違い勲章をつけた礼服を見に纏い、直立不動のまま受閲部隊に敬礼した。

 

同じようにパレード部隊指揮官のルーシェフ上級大将もウスチノフ元帥に近づく。

 

双方、手が取れる距離まで接近しオープンカーは停止した。

 

「同志国防大臣、モスクワ駐屯部隊は大祖国戦争祝典35周年記念パレードの為、整列完了しました!パレード受閲部隊指揮官、上級大将ルーシェフ!」

 

その一言を言い終え、再びオープンカーは動き出した。

 

ルーシェフ上級大将のオープンカーはウスチノフ元帥に続き、軍楽隊からは勝利の戦車兵行進曲が流れ始めた。

 

手前で待機する部隊の前に停車し、ウスチノフ元帥は車の上から声をかける。

 

ご機嫌よう同志諸君!(Здравствуйте товарищи!)

 

ご機嫌よう(Здравствуйте)同志国防大臣(товарищ Министр обороны СССР)!」

 

将兵から返答が来る。

 

基本的な軍事パレードの定型文だ。

 

「大祖国戦争戦勝35周年をここに祝す!」

 

万歳(Ура)!!」

 

将兵の歓声が響く。

 

ウスチノフ元帥は前を向き、再びオープンカーは動き始めた。

 

オープンカーは士官学校巡閲行進曲と共に次の部隊へ向かった。

 

元帥は受閲部隊を回って声をかけ、最終的に共産党幹部が待つレーニン廟の前まで向かった。

 

あそこにはまだソ連建国の父が眠っている。

 

その頃には万歳我が祖国が流れ、演奏が終わるとウスチノフ元帥はオープンカーから降りて階段を登り、ブレジネフに報告を行った。

 

「同志第一書記、全パレード参加部隊の準備が整ったことを報告します。ソ連邦国防大臣、ソ連邦元帥ウスチノフ」

 

休め(Вольно)!」

 

同時にルーシェフ上級大将が部隊に命令を出した。

 

合間を見てミハイロフ少将がパレードのファンファーレを流す。

 

軍楽隊の洗礼された音楽が赤の広場中に伝わる。

 

「親愛なるソ連国民の皆さん、勇猛なるソ連軍将兵の同志達、世界で共に戦う国々の皆さん、私はここに35年前の戦勝、そして今日までに至る人類の勝利を祝したい」

 

ウスチノフ元帥によるスピーチが始まった。

 

最初の予定ではブレジネフがスピーチを行う案もあった。

 

されど35年前、スターリンではなくジューコフ元帥がスピーチを行ったことに倣い、国防大臣であるウスチノフ元帥に白羽の矢が立った。

 

ウスチノフ元帥は長く、淡々としていたがそれでも7分程度で終わった。

 

内容はナチス・ドイツに対する勝利より12月から5月までにおける人類の勝利のことが強調されていた。

 

ウクライナ大攻勢、ルディヤーナー・ハイヴ攻略、そしてモルドヴァ攻勢。

 

人類は数年耐え続け、そしてようやく反撃に成功した。

 

このパレードだって国民の士気向上とソ連の余裕を見せるためのものだ。

 

「我々のファシストに対する勝利を祝い、我々の次なる勝利を願い、祖国の更なる繁栄と人類文明の末永い存続を望み、ここに言葉を贈る。万歳(Ура)!!」

 

万歳(Ура)!!万歳(Ура)!!万歳(Ура)!!」

 

将兵が何度も万歳の言葉を叫ぶ。

 

その言葉は赤の広場中に木霊し、軍楽隊の演奏が入るまで決して消えることはなかった。

 

軍楽隊はソ連国歌を演奏した。

 

特徴的な入りのメロディーに人によっては聞き馴染んだ音楽、ソ連国民にとっては忘れ難い祖国の歌である。

 

演奏中、霊廟の上に立つ共産党の幹部達はそれぞれ敬礼し、受閲部隊の指揮官達も敬礼していた。

 

ソ連国歌はしっかり三番まで演奏された。

 

演奏のメロディーに歌詞がつくことはなかったが、パレードを見守る人々の中には歌詞を口ずさむ者もいた。

 

演奏が終わり、一呼吸置くとパレード開始の号令用のファンファーレが演奏された。

 

「受閲部隊、気をつけ!祝賀行進準備!」

 

ルーシェフ上級大将の命令でパレード参加部隊が動き出す。

 

「各大隊、列線兵1人分の間隔を取れ!第1大隊はそのまま、その他頭向け右!構え銃!右へならえ!」

 

ルーシェフ上級大将が命令している間に第154警備連隊の兵士が列線兵として配置につく。

 

全ての準備が整い、ルーシェフ上級大将は命令を出した。

 

全隊、前へ進め!(Шагом марш!)

 

上級大将を乗せたオープンカーがゆっくりと前へ進み、その後にはスネアドラムとファンファーレ・トランペットを持ったモスクワ・スヴォーロフ軍楽学校の生徒達が後に続く。

 

それに合わせてミハイロフ少将が指揮する軍楽隊も演奏を始めた。

 

まず1曲目は首都行進曲だ。

 

メロディーと共に次々とパレード参加部隊が人々の前を通る。

 

モスクワ・スヴォーロフ軍楽学校の次はM.V.フルンゼ名称レーニン・十月革命・赤旗・スヴォーロフ勲章軍事アカデミーの生徒達が隊列行進を行う。

 

次に到来したのはV.I.レーニン名称レーニン・十月革命・赤旗勲章軍事政治アカデミーの生徒達、その次はF.E.ジェルジンスキー名称レーニン・十月革命・赤旗・スヴォーロフ砲兵アカデミー、R.Y.マリノフスキー名称レーニン・十月革命・赤旗勲章装甲戦車兵・機械化兵軍事アカデミー、クイビシェフ名称軍事工兵アカデミーと続いていく。

 

他にも各地の軍学校からチモシェンコ名称科学防護軍事アカデミーやU.A.ガガーリン名称航空軍事アカデミー、ジューコフスキー名称航空軍事技術アカデミー、P.S.ナヒーモフ名称海軍高等学校、ジェルジンスキー名称レニングラード海軍技術学校ら軍学校の生徒達がパレードに参加した。

 

無論パレードの受閲部隊は軍学校生だけではない。

 

空挺軍、国境軍、国内軍の実働部隊がまず隊列行進を行なった。

 

特に国内軍の部隊はかの有名なF.E.ジェルジンスキー名称独立作戦任務師団からの部隊であった。

 

その頃軍楽隊は、首都行進曲に続いて祖国を守りにが流れ、分列行進曲、空軍行進曲、ナヒーモフ行進曲、求めるは勝利のみ、国境軍の兵士たち、マーラヤ・ゼムリャーが演奏した。

 

次に海軍歩兵部隊が行進しモスクワとカリーニングラードから移転したスヴォーロフ陸軍士官学校生、レニングラードのナヒーモフ海軍兵学校生が続く。

 

海軍の後には空軍と防空軍、そして戦略ロケット軍と宇宙軍が出てきた。

 

海軍歩兵部隊が赤の広場に登場すると伝説のセヴァストポリと乗組員は一つの家族が演奏され、空軍歌として空の哨兵、空の鍵、友よ、私は信じるが立て続けに流された。

 

それからモスクワ軍管区内の部隊が出てきた。

 

M.I.カリーニン名称第2親衛自動車化狙撃兵”タマン”十月革命・赤旗・スヴォーロフ勲章師団、第32親衛自動車化狙撃兵”タマン”赤旗・スヴォーロフ勲章師団、そして砲兵及び工兵旅団や鉄道旅団も参戦した。

 

我ら人民の軍、聖なる戦い、砲兵行進曲、スポーツの栄誉、そして勝利の日が流れた。

 

最後は第106親衛空挺赤旗・クトゥーゾフ勲章師団で兵士の旅路と共に隊列行進を終え、車両更新の移った。

 

ちなみにこの第106親衛空挺師団であるが、10日後にリヴォフ・ハイヴ攻略の為に前線へ送られることになる。

 

歩兵による隊列行進は終わり、いよいよ車列行進に移った。

 

装甲車や歩兵戦闘車、戦車や目玉の戦術機が赤の広場を移動する。

 

軍楽隊はソビエト戦車兵の行進曲を流し、パレードを盛り上げた。

 

次々と出てくる車両に人々は拍手で出迎えた。

 

「素晴らしい規模のパレードですな。これだけ部隊を出しても前線に影響がないとは」

 

アーサー・A・ハートマン、駐ソアメリカ大使は拍手をしながら出てくる戦車隊を眺めてそう呟いた。

 

眼前には最新鋭のT-80が3両、T-64BVが3両、T-72Bが3両、そして最後列に3両の2S3アカーツィヤ 152mm自走榴弾砲が走行していく。

 

野外アナウンスではロシア語でT-80が最新鋭ということや、戦車隊の戦果が紹介されていた。

 

「これでも戦前よりは規模が小さいですからな。リヴォフ手前まで来て前線も安定しているでしょうし」

 

隣に座るアメリカ側の来賓である総合評価局のアンドリュー・マーシャル局長はパレードに対して私感を述べた。

 

米ソ冷戦中から今日に至るまでマーシャル局長はアメリカにおける安全保障戦略の中心人物である。

 

総合評価局では長らくBETAの分析を進め、対応策やその戦略的なパターンを割り出した。

 

彼の功績は大きく、フォード政権から数えて3つの政権に属していた。

 

オガルコフ元帥の軍事における革命の理論をいち早く取り沙汰し、アメリカ軍のみならず国連軍全体に導入を呼びかける報告書を作成したのもこのマーシャル局長である。

 

その為パレード開始前に態々オガルコフ元帥やソ連軍参謀本部の将校達が挨拶に来た。

 

本人はそれほど目立ちたがりではない為若干困惑していたが。

 

「それは良かった、かつての仮想敵とはいえ”今は”仲間です。友人の身が安泰なら窓口としては安眠出来る」

 

ハートマン大使は言葉を選んだ。

 

彼は知っている、外国の来賓客の席には”()()()()()()()()()()()()”。

 

ソ連とは結局そういう国だ、手を結べない程話の通じない輩ではないが、根本的な価値観は相容れない。

 

「ええ、心配なのはBETAの側にも変化が及んでいるということです。奴らに学習能力があることは前々から知っていましたが……ここに来て大きな変化を与えようとしている」

 

「我々としては祈るばかりです。後は”そちら(軍事)”の分野ですから」

 

「まあ実務の方々に期待ですな」

 

2人がそう言っていると上空をSu-24の戦術機が編隊を組んで飛んでいる。

 

後部から赤いスモークを噴射して空に赤旗を描いていた。

 

パレードは暫く続いた。

 

1980年、大祖国戦争戦勝35周年に相応しい規模で。

 

 

 

 

-ソ連領 ウクライナSSR イジャスラフ市 最前線地域-

「撃て!」

 

2S7ピオン 203mm自走カノン砲と2S19ムスタ-S 152mm自走榴弾砲が地響きと轟音を周囲に響かせ、砲弾を放つ。

 

観測班と司令部は数キロ離れた場所に前線観測所を立てて、様子を見守っていた。

 

第998砲兵師団、第1ウクライナ前線直轄の砲兵師団である。

 

既に囮用の砲は放っており、実験の土壌は完成している。

 

「だんちゃーく!今!」

 

上空で放たれた砲弾が爆散した。

 

光線級のレーザーの影響だ。

 

光線級は囮用砲弾は破壊せず、後続の攻撃用砲弾のみを迎撃した。

 

それでも迎撃し損ねた数発が着弾し、戦車級や闘士級、要撃級を破壊する。

 

「これで3回目、やはりリヴォフ方面のBETAは陽動弾を無視するようになっています」

 

砲兵師団参謀長のユーリー・プロトニコフ大佐は双眼鏡を下ろし、状況を分析した。

 

師団長のウラジーミル・ミハールキン少将はメモに記録を取り、それを側にいた参謀に渡した。

 

「これでデータは取れた、後始末を始めろ」

 

「ハッ!」

 

ミハールキン少将の命令で再び砲撃が開始された。

 

光線級は再びレーザーを放って砲弾を薙ぎ払うがその間に遠方から狙撃されて爆散した。

 

長距離狙撃タイプの武装を備えたMiG-21によって光線級が徹底的に破壊された。

 

その間に第二射が放たれ、BETAの梯団は吹き飛ばされた。

 

「砲弾を使いすぎたな」

 

「されど成果は大きいです。やはりBETAは学習し始めています」

 

2人は同じUAZ-469Bに乗り込み、観測所を後にした。

 

周辺には護衛のBTR-80が周囲を取り巻いている。

 

車内の中で交わされた会話も先ほどの実験のことだ。

 

各軍の砲兵部隊と前線部隊から度々『陽動弾ではなく次弾の主力弾が迎撃された』という報告を受けた。

 

その為ミハールキン少将は自ら師団を率いて調査に向かった。

 

結果は白、BETAもようやく陽動と実弾の違いがつき始めたらしい。

 

「今後は砲撃も考えなければならん」

 

「陽動の砲弾も実弾にしてしまえばいいのでは?」

 

「今のところはそれしかあるまい、砲弾の消費量は増えるがな」

 

「仕方ありません。前線司令部もスタフカも認めざるを得ないでしょう」

 

2人とも新しい対策は考えていたが面白くないといった表情だ。

 

少なくともBETAは反撃で砲弾などを撃ってこないのだからまだ人類同士の戦争よりは砲兵の仕事は楽だ。

 

陣地転換の必要性が人間と戦うより少なくていい。

 

まだ砲兵からすれば楽な仕事だ。

 

2人を乗せたUAZ-469Bの反対車線を国内軍のBTR-60が通っていく。

 

「この辺はまだ制圧中かね」

 

「90%完了した、と報告を受けています。100になるまで安心は出来ないのでしょう」

 

「6月までに終わるといいのだがな」

 

ミハールキン少将は周辺に展開するBTR-60を見ながらそう呟いた。

 

 

 

 

-ソ連領 ウクライナSSR ポルタヴァ州 ポルタヴァ市 第1ウクライナ前線司令部-

次の攻勢を前に第1ウクライナ前線司令部も忙しさを取り戻していた。

 

大本営や各軍の参謀達と調整を行い、作戦をより成功出来る方向へ持っていく。

 

ある時期から参謀達は睡眠をだいぶ減らし、殆どの時間を作戦室や各軍の司令部で過ごしていた。

 

ヤゾフも基本作戦室か執務室にいけば姿を見ることが出来るほど殆どその場から動いていない。

 

参謀達の発言に耳を傾け、情報を蓄積し、より正確な判断を下せるようにしていた。

 

ローシク大尉も司令官の日程を調整する為に奔走した。

 

ポルタヴァの司令部が外から見ただけでも悶々とした近寄り難い雰囲気になるのは一週間も必要なかった。

 

今日は戦略ロケット軍と作戦の打ち合わせを行なっていた。

 

「同志ヤゾフ上級大将!」

 

「ヴィシェンコフ大将、まさかロケット軍参謀長が直々にお出ましとは」

 

ウラジーミル・ヴィシェンコフ親衛大将、ソ連戦略ロケット軍参謀長である。

 

元は空軍の所属で後々新設された戦略ロケット軍に移転した。

 

隣にいるのはヴァディム・ニェデェーリン大将、事故で亡くなったミトロファン・ニェデェーリン砲兵総元帥の甥である。

 

ネェデェーリン大将は叔父の跡を継いでほぼ意地で戦略ロケット軍に入った。

 

そんな甥っ子は今や第43赤旗ロケット軍司令である。

 

元々第43ロケット軍はウクライナに配属されていた戦略ロケット軍の一部隊であり、後方に退避して今日まで核の炎でBETAを焼いていた。

 

第43ロケット軍はRSD-10”ピオネール”を備えた部隊である。

 

指揮権は前線司令官のヤゾフ上級大将の隷下に入った。

 

「トルブコ元帥がくる予定でしたが、あいにく予定が被りまして」

 

「そうですか、ではこちらへ。ハイヴ攻略の前段階は知っていますね?」

 

「勿論、我がロケット軍と宇宙軍が軌道爆撃を実行し、上部ユニットを破壊した上で独立空挺軍を降下する」

 

少なくとも軌道上からの戦術機降下は1978年のインド戦線にて実行可能を証明済みである。

 

今回はハイヴの中に直接踏み入って制圧する方法を取る為、この軌道降下が取られた。

 

「その為地上の戦略核は予備ですが、最近の報告ではBETAが行動に変化が出ていると」

 

「というと?」

 

「従来の陽動戦術が通じないということです」

 

ヴィシェンコフ大将とネェデェーリン大将は顔を見合わせた。

 

そんなことがあるはずがないという様子ではなかった、むしろようやく来てしまったかという軽い絶望のような表情であった。

 

BETAは航空機を無力化した、この陽動戦術もいずれ見破られるだろうと砲兵達は考えていた。

 

ついにその時が来ただけだが、それでも衝撃は大きい。

 

「つまり軌道上から投下される核も陽動になる可能性ですか」

 

「ええ、幸いにもネェデェーリン大将の軍ならば十分な火力がありますから」

 

「我が軍の火力なら軌道爆撃と遜色ない火力投射が出来るでしょう。ですが進撃中の友軍に援護投射が出来なくなりますが」

 

「最悪オムスクから回された第33親衛ロケット軍に援護を要請します」

 

ヤゾフの生まれ故郷オムスク州で設立された第33親衛ロケット軍は今回の攻勢の為に使用許可が降りていた。

 

指揮権はヤゾフにあり、今回の作戦に関しては指揮権があった。

 

「向こうの司令官はコチェマソフ将軍でしたな」

 

「はい、昨日電話で話しました」

 

手回しが早いなとヴィシェンコフ大将は思っていた。

 

だが今回はお陰で速やかに調整を終えられる。

 

「装備は我が軍と同じRSD-10、BETAの野戦軍を吹っ飛ばすには十分過ぎる火力でしょう」

 

「ええ、ですが火力は血と等価交換、相手に投射する火力が強力であればあるほど我が方が流す血は少なくて済む」

 

少なくともこれはヤゾフの経験則によるものだ。

 

相手を火力で吹っ飛ばせばその敵を掃討する為に味方が余計な犠牲を払わなくて済む。

 

例えそれが暫く大地を汚す核であってもだ。

 

「こちらに連絡要員としてこのルーキン中佐を手配します」

 

ニェデェーリン大将は背後に控えさせていたアレクサンドル・ルーキン中佐を紹介した。

 

中佐は敬礼しヤゾフもその敬礼を返すと固い握手を交わした。

 

「暫くの間お世話になります」

 

「官舎の手配は済ませてある。後でこのマリィツェフ中佐が案内する」

 

「お願いします」

 

司令部もかなり大所帯になってきた。

 

既に各軍の調整役として9人の将校が駐在し、昨日は空挺軍からアレクサンドル・ベスパロフなる中佐がやってきた。

 

これで11人、少し多いが必要な人数だ。

 

「第33ロケット軍からも人員を手配するよう私から頼んでおきます」

 

「それはありがたい、お願いします」

 

そう言ってヤゾフはヴィシェンコフ大将の手をしっかり握り締めた。

 

ロケットは常に配置に就いている、故に戦略ロケット軍は常に敵に攻撃で応えるのだ。

 

 

 

 

ノヴォロシースク”は展開した戦術機部隊を全て回収し、僚艦と共に一旦セヴァストポリの軍港に身を寄せていた。

 

半舷上陸で乗組員達は一旦セヴァストポリの市街に出ていた。

 

とはいってもセヴァストポリはかつての美しい海の街ではない。

 

それでも艦の中よりはまだ開放的だ。

 

されど艦長のチェルニフ大佐と司令官のサブリン少将は”ノヴォロシースク”に残っていた。

 

数人しかいない閑散としたブリッジで2人は代用コーヒー片手に雑談を行なっている。

 

ブリッジの窓にはMiG-23Kの姿が映っている。

 

通常のMiG-23とは違い海軍航空隊仕様のMiG-23Kは青く塗装されており、装備もキエフ級に合わせたものを用いている。

 

「しかし残念ですな、リヴォフの決戦には参戦出来ないとは」

 

チェルニフ大佐は俯きながら代用コーヒーを口に入れた。

 

「リヴォフまでは海軍の管轄ではないよ、我々は暫く待機だ。地上の同志に任せよう」

 

「ですな」

 

「そういえば聞いたか?”ヴァリャーグ”の進水式」

 

サブリン少将はふと話題を振った。

 

BETA大戦勃発時はまだ少佐でしかなかったサブリン少将は今や5年前より倍近い略綬と階級を手にした。

 

本来の歴史では一介の反逆者、或いは夢を見た革命家として終わるのだから偉い違いだ

 

今や彼が乗り込む軍艦は”ストロジェヴォイ”よりも大きく、より要職であった。

 

「ええ、まあ。ついに”アドミラル・クズネツォフ”も二番艦ですか。海軍人としては驚愕のスピードですよ」

 

「あのウスチノフ元帥ですら重い腰を上げたらしいからな。新型の原子力空母も建造が始まっているらしいし、こりゃあ3年後には進水式かな」

 

「気が早いですな、まあそれまでにBETAとの戦いが終わっていればいいのですが。折角の新造艦が戦わずにお役御免となることを祈りたいですよ」

 

「ああ、全くだ。BETAのせいで停滞していた全てが動き始めた……良くも悪くも」

 

サブリン少将は複雑な表情でその言葉を呟いた。

 

明らかにこの国は戦前と比べて全てが活発化している。

 

今やソ連は停滞の時代ではなく邁進の時代であった。

 

でもそれはBETAという全人類を不幸にした侵略者による影響が大きい。

 

海軍艦艇がここまで増強されるのも、党政府がここまで活発的に動くのもBETAの影響ありきだ。

 

少なくともサブリン少将が少佐だった頃に感じたような重く、静まり返ったような祖国はなくなっていた。

 

彼からしてみれば戦前の停滞したソ連は嫌いだった、むしろ今のソ連の方が好きだ。

 

されどサブリン少将は素直には喜べなかった。

 

今のソ連がこうも変化した裏側には大勢の人の不幸が隠れているからだ。

 

今のソ連を見て変革を喜べるほどサブリン少将は無邪気な人ではなかった。

 

「どの道、我々のやることは決まっています。BETAを倒し、国連軍の一員としてソ連の力を示す。次の任務はもう決まりましたか?」

 

チェルニフ大佐は尋ねた。

 

彼はサブリン少将よりも職業軍人気質である。

 

むしろサブリン少将が特別といっても良いかもしれない。

 

彼の革命に対する情熱は二重の意味で他者とは少し違う。

 

「いや、まだだ。少なくとも”ヴァリャーグ”の性能テストが終われば我々と交代だろう。今後は黒海艦隊所属になるんじゃないか」

 

「となると次の出番はルーマニアかブルガリアの攻略ですか、当分先ですな」

 

「だが暫くはパトロールと訓練だ、特にパイロットの練度は最高まで上げておきたい」

 

キエフ級航空巡洋艦に配属される戦術機乗り達はソ連海軍航空隊の中でも特に精鋭のパイロットである。

 

元々高い練度であったがサブリン少将はそれ故に妥協を許さなかった。

 

艦載機部隊と乗組員の練度を最大限まで上げより強力の航空運用能力を確保することがサブリン少将の任務であり、部隊全体の生存率の向上にも繋がる。

 

「当分の間、我々の任務は力をつけることだ。兵達を休め、我々も存分に休んで仕事に戻ろう。ミハイロフ大佐が戻ったら我々もセヴァストポリに降りよう」

 

「ですな、なんでも司令部にいけば良いウォッカが出るらしいですし」

 

「それはいいな!」

 

2人が談笑しているとブリッジに1人の海軍将校がやってきた。

 

ノヴォロシースク”所属のブリンスキー上級中尉だ。

 

上級中尉は2人に敬礼し1枚の命令書を手渡した。

 

「セヴァストポリに移転した黒海艦隊司令部からです。なんでも総司令官からの直接命令だとか」

 

「ゴルシコフ元帥の?」

 

ブリンスキー上級中尉から命令書を受け取ったサブリン少将はチェルニフ大佐と共に内容を読んだ。

 

そこには確かに海軍総司令官S.G.ゴルシコフソ連邦海軍元帥と書かれている。

 

「1週間後、”ノヴォロシーシク”海軍航空師団はセヴァストポリより出港し、ユーゴスラヴィア軍の援護に向かえ、か」

 

ユーゴスラヴィア社会主義連邦共和国、稀代の天才ヨシップ・ブロズ・チトーが作った南スラヴの連邦国家。

 

今やスロベニアとクロアチアを完全に失い、去年は約7個軍のBETAを巻き添えにしてサラエボも放棄した。

 

国土の半分以上を失ったユーゴスラヴィアだがその分徹底してBETAを狩り尽くし、初動展開でどうしても間に合わなかった国民以外の全てを避難させた。

 

ユーゴスラヴィア軍は現在国連軍と共に強固な防衛線を展開して、BETAの南下を防いでいた。

 

既にチトーは88歳となりつつも己の身体に鞭を打ち、南スラヴの多民族を纏め上げ、ユーゴスラヴィアを導いている。

 

ソ連もBETAの危機に際してそんなチトーと和解を図り、関係は大幅に改善した。

 

ソ連軍は一部部隊をユーゴスラヴィアに展開しており、今回の航空師団派遣もその一環である。

 

「アドリア海を渡られてイタリア本土に上陸されては困りますからね」

 

「ああ、それにユーゴスラヴィアの同志達も助けなければ。出港は1週間後か……明日の半舷上陸を終えたら直ちに出港準備。全乗組員にはこの命令を伝え、速やかに向かうぞ。航行士官と補給士官を呼んでくれ、詳しい計画内容を考える」

 

「了解!」

 

当分力をつける時間だとサブリン少将は言ったがどうもそうはならないようだ。

 

世界は”ノヴォロシーシク”を呼んでいた。

 

 

 

 

-ソ連領 ウクライナSSR ポルタヴァ州 ポルタヴァ市 ポルタヴァ=キエフスカヤ駅-

戦車や装甲車を乗せた貨物列車がポルタヴァの駅を通り過ぎていく。

 

電車特有の走行音と共に貨物列車はポルタヴァから遠く離れた大都市キエフ、そしてジトーミルを目指して進んだ。

 

貨物列車の後から続く客車には数百人のソ連軍将兵が乗り込んでいた。

 

彼らは皆出身地はバラバラで普通に生きていれば付き合いなどなかった人が多い。

 

されど同じ軍隊という場所で出会い、働き、扱かれ、飯を食って戦友としての友情を深めていった。

 

客車の中で兵士達はそれぞれである。

 

ある者は疲れ果てて眠っていたし、またある者はぼーっとしながら外の風景を眺めていた。

 

別の兵士はこっそり買ってきたウォッカを飲んで酔っ払っていたし、ある集団はカードゲームをして時間を潰していた。

 

また別の兵士は元々文学系の大学出のようで真面目に本を読んでいた。

 

皆これから行く場所、起こる事をある程度想像していた為可能な限り出来る範囲で自分のやりたいことをやっていた。

 

無論その様子は外からだと殆ど見えない。

 

高速で去り行く車両を眺め、時として子ども達が手を振るだけだ。

 

それでも殆どの大人は「また兵隊さんが運ばれていく」程度の日常として捉えていた。

 

この日、ポルタヴァ=キエフスカヤ駅に訪れていたヤゾフは安堵の面持ちで前線へ向かう貨物列車を視察していた。

 

「今通過していくのが最後の自動車化連隊の便です。後から来る2両ほどが休憩と車掌交代の為に停車します」

 

第1親衛鉄道旅団隷下の第11独立鉄道大隊長、グリスチェンコ少佐は視察に来たヤゾフとローシク大尉にそう報告した。

 

少佐の言う通り後から来た1両の客車がポルタヴァ=キエフスカヤ駅に停車する。

 

客車のドアが開き、中から大量の兵士達が休憩の為に出てきた。

 

今の今までずっと狭い客車の中でじっとしていたのだ、少しは外に出て体を伸ばしたかった。

 

「この調子でいけば今日中に連隊は全戦に運び切れますかね」

 

ローシク大尉が少佐に1つ質問を投げかけた。

 

「可能だとは思われる、ここに停車するもう1両と通り過ぎていく最後の貨物列車で終わりなはずだから今日の夕方ごろにはキエフに辿り着いていると思うが」

 

「では後は補給物資の輸送か」

 

「はい、とは言っても通常のローテも維持していますので特段変わりないかと」

 

ヤゾフは軽く計算を行った。

 

輸送された連隊が装備を下ろして人員と共に配置に着くのは恐らく早くても3日、遅くても6日以内だろう。

 

その上で現在運搬中の補給物資の輸送を考えれば第1ウクライナ前線は早くても10日以内に攻勢準備を終える。

 

問題は他の前線のことだ。

 

少なくとも次の攻勢作戦に参加するのは白ロシア前線、第1ウクライナ前線、そして第2ウクライナ前線である。

 

現状準備が終わっているのは白ロシア前線であり、先の攻勢の回復も併せて第2ウクライナ前線の準備が3つの前線の中では遅れていた。

 

「大尉」

 

「はい!」

 

「グレチコ元帥と大本営に第2ウクライナ前線の物資輸送をこちらでも請け負うと提案しろ」

 

「了解」

 

命令を受け取りローシク大尉は先に大隊本部の通信所に向かった。

 

その後に続き、ヤゾフとグリスチェンコ少佐も本部に戻った。

 

これで準備はもう間も無く整う。

 

リヴォフ・ハイヴ攻略作戦、ソ連にとって初のハイヴ攻略作戦がもう間も無く始まるのだ。

 

それは5月20日、もうすぐ6月に入ろうとする季節の出来事である。

 

 

 

 

リヴォフ・ハイヴ攻略作戦、通称アステロイド作戦は1980年6月14日に実行されることが決定した。

 

作戦内容は以下の通りである。

 

まず核兵器の無制限使用を前提とした攻勢により白ロシア、第1及び第2ウクライナ前線はウラジーミル、ルーツク、テルノポリ、イヴァノ=フランコフスクまで戦線を押し上げ、前衛のBETA群を撃滅する。

 

その次に戦略ロケット軍、宇宙軍による核攻撃でリヴォフ・ハイヴ周辺の防空網を破壊し、次弾でリヴォフ・ハイヴに直接のダメージを与える。

 

更に予備としての3発目の戦略核攻撃を叩き込み、最後に対放射能防護を施された第105親衛空挺師団と第772戦闘航空連隊が軌道上からハイヴ内に降下突入し、攻略戦を実行する。

 

その間に前線の各軍は攻勢を再開しハイヴ周辺のBETAを包囲殲滅してリヴォフを奪還する算段だ。

 

この戦いで当分リヴォフ周辺は放射能汚染に見舞われるだろうがそれも織り込み済みである。

 

こうでもしなければBETA相手に国土を奪還することは不可能だ。

 

既に第722戦闘航空連隊と第106親衛空挺師団は宇宙に上がり、作戦開始を待っていた。

 

この日国防省には軌道上からの攻撃を行う空挺軍、防空軍、戦略ロケット軍、宇宙軍の総司令官が集められていた。

 

会議が終わり、宇宙軍総司令官のカラシィ上級大将は1人、国防省の廊下に出た。

 

副官には資料を纏めるよう指示を出し、この場にはいない。

 

少し国防省内を歩いて休憩を取ろうとしたがある1人の総司令官に呼び出された。

 

「同志カラシィ!」

 

ソ連戦略ロケット軍総司令官のウラジーミル・トルブコ砲兵総元帥である。

 

2人は4歳ほど歳の差があり、トルブコ元帥の方が年上であった。

 

先程まで同じ会議室にいたが元帥はカラシィ上級大将に声をかけてきた。

 

上級大将は敬礼し「どうされました」と尋ねた。

 

「少し歩きながら話そう」

 

トルブコ元帥と共にカラシィ上級大将は国防省内を歩いた。

 

最初に口を開いたのは誘ったトルブコ元帥側である。

 

「例の高出力レーザー照射衛星、2号機と3号機をもう打ち上げたそうじゃないか」

 

「ええ、本当はあれだけ打ち上げるつもりだったんですけどね。参謀本部の……GRUの連中がまた偵察衛星を打ち上げろと言われまして……4号機は後回しになりました」

 

「ハッハッハ、それは災難だったね。まあ偵察情報がなければあれも地上に撃ち用がないさ」

 

「それはそうですが」

 

だが打ち上げる側としてはたまったものではない。

 

ウスチノフ元帥は若干困ったような顔をしていたし、未だ4号機こと”ポーリュス4”はバイコヌールの宇宙軍基地で燻っている。

 

「まあ戦略ロケット軍総司令として聞きたいのはあれの”()()()()()()”だ。例のG元素とやら、2号機と3号機にも搭載されているのだろう?」

 

カラシィ上級大将は頷いた。

 

本来の”ポーリュス”は”()()()”1MWの炭酸ガスレーザーを発射するキラー衛星であり、地上に向けて発射するものではない。

 

それを超大出力で地上に向けて発射し、ハイヴを丸ごと吹き飛ばす力を得たのは間違いなくBETAの落着ユニットについていたG元素によるものだ。

 

アメリカが原子力の力を初めて世界に解き放ったのならソ連はG元素の力を初めて世界に解き放った。

 

これで対等になった訳だ。

 

「まあ今回は周辺のBETAをちょっと焼くだけなんで出力はルディヤーナーの時より抑えていますが」

 

「それでもBETAを丸ごと焼ける威力だ。今や核兵器の開発に続いてG元素に世界が目をつけてる」

 

「眼前の敵、将来の敵、それこそ”我ら守りにつかん(Стоим на страже)”というやつですね」

 

「それは我らも同じだ、むしろソビエトは常に一歩先へと言っていい」

 

米英仏中、世界の大国はBETAが運んできたそれをなんとか我が物にしようとしていた。

 

それは世界における自然の摂理と言っていい、仕方のないことだ。

 

例え手にした力が己すら傷つけてしまうものであっても手にしないという選択肢はなかった。

 

「アメリカがG元素を用いた新型爆弾を開発したというのは知っているな?」

 

「KGBが上げてきた報告書に記載されていました、まあ今更どうこういう筋合いも余裕もありませんが」

 

「それを我々も作ろうという意見が戦略ロケット軍の中から上がってきた。まだ審議中だが近いうちに予算が付くだろう。問題は作ったとして何処で実験するかだ」

 

既にルディヤーナー・ハイヴの一件でG元素兵器が地上に及ぼす影響は確認されている。

 

その為アメリカも使用に一旦待ったをかけていた。

 

何せ現状戦略核で事足りるし、何より戦略核の方が”()()()()”なのだ。

 

その問題は戦略ロケット軍も認識しており、トルブコ元帥が話しかけてきたのはそれが理由だ。

 

「そこで宇宙軍に頼みがある。開発したG元素兵器を宇宙に上げて宇宙空間で実験したい」

 

「構いませんがターゲットはどうします?実験である以上威力は確認しませんと」

 

「場所ならもうあるだろう」

 

そう言ってトルブコ元帥は国防省ビルの窓から空を指差した。

 

今日のモスクワはよく晴れており、空には薄ら”月まで見えていた”。

 

「まさか……旧月面基地を……」

 

「BETAには地球圏からご退場願いたいのだよ。奴らが持ってきた物質によってな」

 

アステロイド作戦を控えた6月、ソ連戦略ロケット軍とソ連宇宙軍は次の局面に足を踏み入れようとしていた。

 

輝夜の姫君がいない月で、戦争が始まる。

 

 

 

つづくかも

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