マブラヴ グレートパトリオティックウォー   作:Eitoku Inobe

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戦う者の歌が 聴こえるか
鼓動があのドラムと 響き合えば
新たに熱い 生命が始まる
明日が来たとき そうさ明日が
-”民衆の歌”より抜粋-


エルベ川の戦い ハイヴの守り作戦②

これは時が少し前に遡った1984年6月末のことである。

 

オーデル川のソ連軍が突破され、徐々にポーランド国内へ後退している時のことだ。

 

BETAの大攻勢に対してNATO軍もWTO軍同様に大苦戦を強いられていた。

 

戦術機級と超重突撃級の凄まじい戦闘能力に押され、軌道爆撃も封じられてBETAの物量をほぼ全面に受けることとなった。

 

一応航空攻撃やMLRSのような物は通じる為まだやりようはある、ただし損害はその分大きかった。

 

初動の戦いでNATO軍は包囲網から圧倒的に戦線を押され、6月末の時点で戦線はエルベ川の辺りまで後退していた。

 

特にNATO北部軍集団は戦線をエルベ川まで下げることを正確に決定して命令として隷下の各軍団に通達、主力部隊は後退戦闘を行いながらエルベ川まで退いた。

 

これでも数日は稼げた為、オーデル川同様にエルベ川も陣地化が進み、平地で戦うより守りやすくなっていた。

 

追撃する最先頭はBETAの戦術機級群、しかも殆どが四脚の騎兵型で周りに通常の突撃級を連れていた。

 

戦術機級が追っていたのは後退援護の為に前線から飛び出ていた戦術機部隊で米英独蘭白の多国籍空軍部隊であった。

 

主にトーネードIDSやNF-5、F-16やF-15によって構成されており、緊急展開された寄せ集めである為指揮権は現場の最上位階級者が握っていた。

 

『突撃砲の120m弾を敵の足元に撃て!その後ナパーム弾を投下していったん足を止める!』

 

『了解!』

 

この時指揮を取っていたのはオランダ王立空軍の少佐であり、オランダのF-16に搭乗していた。

 

命令を受けた何機かの戦術機が同時に突撃砲の120mm弾を発射し、突撃級の足を粉砕して動きを止める。

 

戦術機級にも命中はしたがせいぜい装甲を剥がす程度で中身には直接ダメージを与えられなかった。

 

それでも足を破壊されて横転した突撃級が戦術機級や後続の突撃級と玉突き事故を起こし、更なる被害を与えた。

 

『今だ!ナパーム弾投下!』

 

丁度敵部隊の足が止まったところにナパーム弾を投入してBETAを焼いた、火炎放射やナパームによる焼却攻撃がBETAに有効なのは知っている。

 

案の定動けなくなっていた突撃級に火がついて全身を焼き始め、じわじわと体内の機能を奪っていく。

 

こうして突撃級に関してはどうにか出来たのだが問題の戦術機級は全く持ってなんともなかった。

 

燃え広がる炎の海から後退し、助走をつけながら凄まじいジャンプ力でナパームの効果範囲内を次々と飛び抜けて行った。

 

そのまま全速力で戦術機部隊を追い、最後衛にいるトーネードIDSを手に持つランスで串刺しにして破壊した。

 

別のNF-5が反転して応戦しようとしたが後続の戦術機級が触手を飛ばして足に突き刺し、そのままNF-5を地面に叩きつけた。

 

その間に回り込んだ別の突撃級がランスでコックピットを潰して確実にトドメを刺す。

 

次々とナパームの攻撃範囲を迂回、或いは飛び越えた騎兵型の戦術機級が合流し集団突撃の隊形を維持して前進してくる。

 

巨大な足音とその突撃隊形、正にBETAの騎兵と呼ぶに相応しい存在だ。

 

騎兵という存在はあらゆる理由によって存在が何か別のものに代替され、華々しい正面戦闘では姿を消した。

 

だがその理由を超えられる力があれば騎兵は復活する、この騎兵型戦術機級のように。

 

防御側の高火力は全て装甲で防ぐことが出来るし、陣地に張り巡らされている有志鉄線も龍の歯も騎兵型戦術機級の突撃を止めることは出来ない。

 

その上でレーザーやランスなど十分な火力があり、衝撃力を与える為の十分な速力もある。

 

最早誰もこの戦術機級を止められる者はいなかった。

 

『無理に戦闘するな!間も無く我が軍の防衛ラインだ、最大加速でそこまで後退するぞ!』

 

『了解!』

 

『少佐、援軍です!米軍のA-10!』

 

何機かのA-10が戦術機部隊の撤退援護の為に前進して戦術機級に対して十分な火力を投入した。

 

AGM-65マーヴェリックにGBU-24まで投入し、突撃砲と両肩のガトリングにロケット弾を同時に発射する。

 

凄まじい火力に前衛の戦術機級は何機かがペイブウェイⅢの直撃を受けて撃破され、度重なる戦闘とマーヴェリックの威力によってシールドが破損し、本体の装甲も破壊された個体がいた。

 

だがただやられる戦術機級ではない、レーザーを放って出現したA-10を何機か撃墜し、攻撃をものともせず前進した。

 

結果撤退中のオランダ王立空軍のF-16とNF-5が2機と4機、イギリス王立空軍のトーネードGR.1が3機ほど喰われた。

 

だがこれまでだ、突撃級は地雷原に突入したことでいったん足を止め、遠隔操作で爆発する地雷をシールドで防いだ。

 

同時にエルベ川の反対側からは展開する地上部隊が発砲を開始し、戦術機級に対して戦闘を開始した。

 

丁度この地点を守備していたのはイギリス第1軍団とベルギー第1軍団であり、周辺にはイギリス陸軍のウォーリアやチーフテンMk.10、ベルギー陸軍のM113の改造車両やレオパルド1が待機している。

 

発射される105mmや120mm砲に加えて、ウォーリアからは30mmラーデン砲が発射され、M113からも12.7mm重機関銃が叩き込まれる。

 

この程度では戦術機級は撃破出来ない、せいぜい危険なのは105mmや120mmだ。

 

シールドで攻撃を防ぎながら戦術機級はレーザーを放って応戦する。

 

飛んでくるレーザーは殆どが外れたが稀にチーフテンやM113に命中して一撃で大破まで追い込んだ。

 

今もレーザーによって歩兵の近くで戦っていたチーフテンMk.10がレーザーの流れ弾を喰らって装甲が溶解し、一撃で爆散した。

 

周りにいる兵士達は地面に伏せて震えている。

 

「軍曹!味方の戦車が一撃でおじゃんです!」

 

「落ち着け!俺たち歩兵には降ってこねえよ!」

 

河岸の部隊が食い止めている間にイギリス第1軍団のMLRSとM109A2 R.A.の砲兵部隊が地雷原で足止めを喰らっている戦術機級に対して一斉砲撃を撃ち出した。

 

まず最初に発射したのはM109A2 R.A.の自走砲兵隊であり、その次に数両のMLRSがクラスター弾を同時に発射した。

 

当然戦術機級も発射された榴弾砲は検知している為、バックステップを踏んで後退しながらシールドを構えつつレーザーで迎撃する。

 

弾幕射撃で大多数の砲弾は叩き落としたが数発は迎撃に失敗して榴弾の雨を喰らい、その次にクラスター弾による鉄の雨を食らった。

 

地上部隊は相変わらず煩わしく銃撃を続けており、このどちらかに気を取られた戦術機級はどちらかの対処が疎かになり、クラスター弾をもろに喰らってしまった。

 

シールドで防げた個体も多かったがその結果シールドがズタボロになって使い物にならなくなり、そうではない個体は非装甲部に致命打を喰らって両腕がもげた。

 

だがこれはNATO軍側からしたら衝撃の結果であった、榴弾とクラスター弾を叩き込んでもなお半数以上が戦闘可能状態だったのだ。

 

「レコン3より本部へ、BETA戦術機の殆どは戦闘可能な損傷。繰り返す、BETA戦術機の殆どは戦闘可能な損傷」

 

この報告を聞いたイギリス陸軍第1軍団司令部のある参謀は地図の置かれている机に向かって大きく拳を振り翳した。

 

「クソッ!ダメかッ!」

 

「通常兵器じゃ火力不足なのか!?やはり核弾頭だ!ありったけの核砲弾を戦術機や野戦砲兵隊に配れ!」

 

実際アメリカ軍からMGM-52ランスを借りてきてW70核弾頭を投入した場合は戦術機級だろうと半数が確実に撃破され、壊滅するケースも見受けられた。

 

MLRSによるクラスター弾の範囲攻撃も十分効果があったが、この状況下では敵を減らせないと困るのだ。

 

即座に後方からやってきた増援の騎兵型戦術機級と通常の戦術機級、若干通常とは様子の違う突撃級がやってきて先頭に合流した。

 

他の戦術機級は味方の盾となって周りの地雷を焼きつつ前進し、突撃級は体から2本の触手を出して損傷した戦術機級を2機で後方まで引き下げた。

 

戦術機級はBETAにとっても貴重な存在である為、回収して修復に充てるというのがセオリーであった。

 

増援として現れた戦術機級はうち何体かがレーザーで地雷原を薙ぎ払い、シールドで攻撃を防ぎながらエルベ川まで突き進んだ。

 

しかも厄介なことに戦術機級はホバー移動であるから川であろうと泳ぐことなくそのまま渡ってしまう。

 

地雷原を突破した戦術機級は突撃級や要撃級、防空要員の光線級を背中に乗せた戦車級らよりも先にエルベ川の反対側に突入した。

 

足蹴りで周囲に水飛沫を浴びせて視界を奪うと同時に長刀を振るい、レーザーを放って周りの車両を撃破する。

 

果敢に接近してきたウォーリアは30mm砲をシールドで防ぎつつ長刀で切断し、反対側から接近するレオパルド1A5とM113に対しては少し長めのレーザーを照射して一気に薙ぎ払った。

 

レーザーの他にも腕から触手を出して地面に叩きつけ、後退する歩兵数人を一度に殲滅した。

 

だが近くにいた対戦車班には気づかず、顔面にミラン2対戦車ミサイルを喰らってしまった。

 

直撃と共に顔の周囲に爆発が広がり、数秒すると煙は引いていき状態が分かる。

 

戦術機級はまだ軽傷といったダメージの範囲であり、4つ目のうち左下の目が破壊されて僅かに体液が流れ出ていた。

 

「クソッ!」

 

「退避だ!」

 

戦術機級がトドメを刺そうとすると正面から120mm弾とロケット砲が放たれ、妨害された。

 

増援の戦術機部隊だ。

 

主にイギリス王立空軍のトーネードGR.1とベルギー空軍のF-16であった。

 

トーネードGR.1とF-16からは即座にマーヴェリックが放たれ、散開して一斉に散った。

 

マーヴェリックは数発同時に刺さると今までの攻撃もあってか辛うじてシールドを破壊し、戦術機級の第一の防御を破壊した。

 

無論これだけでは戦術機級は死なない、手持ちの盾を失った程度では赤子とて死なぬのと同じだ。

 

大地を蹴ってその場から離れホバー移動で動きながら、レーザー射撃で相手を牽制しながら一気に接近してショルダータックルを繰り出す。

 

衝撃で動けなくなった戦術機を長刀で刻んで撃破し、増援の戦術機が放つ突撃砲を全身の走行で防ぎつつレーザーで撃墜した。

 

シールドを失ったことで逆に身軽になった戦術機級は場合によっては予備の長刀も出して二刀流でNATO軍の戦術機を刻んだ。

 

無論戦術機級とて無傷だったわけではない、トーネードGR.1が持ってきた155無反動砲の直射を喰らって全身装甲が一撃で破壊され、その衝撃で打撃を負った個体もいる。

 

しかもそこへF-16の突撃砲弾が叩き込まれ、その戦術機級は撃破された。

 

キルレートでは戦術機級1に対して人類側の戦術機が5、最悪の場合は8という計算が出ていたが倒せない敵ではない。

 

しかも難点は他にもあった、通常種がハイスペック機である戦術機級と超重突撃級の性能についてこれないのだ。

 

後続の突撃級、要撃級、戦車級の群れは回り込んできたアメリカ軍のA-10とトーネードIDSによって爆撃され、壊滅した。

 

戦術機級が現れ、超重突撃級が出現したとしても結局中間種の性能がそのままでは軍として限界があった。

 

この間戦術機級は正面での戦闘に集中しており、友軍を助ける余裕がなかったのだ。

 

これによりエルベ川付近で戦闘中だった戦術機級達は突如ベルリン・ハイヴより後退命令が出され、大人しく周辺にレーザー弾をばら撒いてエルベ川を渡って後退して行った。

 

このレーザー射撃によってまた何両かのM113やウォーリア、F-16らが破壊されたが、ひとまず脅威は去った。

 

本来なら追撃するべきなのだが戦術機部隊も損耗しており、そんな兵力を出す余裕がない。

 

去っていくBETAを黙って見ているしか出来なかった。

 

「今のうちに陣地を再構築しろ!どうせまたすぐに来るぞ!」

 

戦闘を生き残っていた英陸軍の歩兵中隊長が部下達に指示を出して戦闘配置につかせた。

 

まだ残敵の戦車級や要撃級が残っていたがミラン2を担いだ対戦車班や生き残りのウォーリアがそういった個体を蹴散らした。

 

後方からは増援部隊が送られ、その間に負傷者はトラックなどに乗せられて後送される。

 

戦術機部隊も一部を除いて一旦飛行場に下がり、補給を受けに戻った。

 

こうして一度破れかかった戦線を修復し、再び敵が来ても守り抜けるように防備を固めるのだ。

 

「マグデブルクのBETA群は後退を開始、ヴェルベン周辺域では再び新種を含んだBETA1個旅団戦闘団が攻勢を仕掛けて来ました」

 

「ピットカウでもBETAの突破阻止に成功、ですが守備隊の戦力は半減しています」

 

全体を統括するNATO北部軍集団司令部では次々とエルベ川での防衛戦成功の報告と再び敵が来た報告が交互に現れた。

 

恐らくエルベ川での阻止戦も持って2日、3日の話だろうと司令官のバグナル大将は認識していた。

 

前任のマイケル・ゴウ英陸軍大将がそうであったように、北部軍集団司令官はイギリス陸軍ライン軍団司令官が兼任することとなっており、このバグナル大将も同様である。

 

バグナル大将はザーパド作戦の際には第1軍団長を務めており、ここ数年はずっと欧州での戦場にいた。

 

その為BETAの戦いには他の将軍達同様冷静に対応していたが、同時に限界も認識していた。

 

「ペスター中佐、英本土と米本土からの増援はいつ頃到着する予定だ」

 

バグナル大将は参謀のペスター英陸軍中佐に尋ねた。

 

「英米の海兵隊に関してはブレーマーハーフェンとハンブルクに到着したと報告がありました。恐らく今日中には合流するでしょう。北アイルランド司令部の3個旅団は確実にもう少し掛かるかと」

 

「具体的には」

 

「1、2週間は掛かる可能性が高いです。正直米本土の部隊も大体は同じ時間になるかと」

 

確実にエルベ川の防衛線では1週間は持たせられない、少なくともこの時点で諦めはついた。

 

恐らく今一番期待が出来るのはフランス軍だ、少なくともアフリカに展開していた主力は本土に戻っており、確実に米軍より早く戦場に来る。

 

何よりフランス軍即応部隊は既にドイツ国内に展開して北部軍集団と中央軍集団の間でBETAと交戦していた。

 

これらの即応部隊は第4空中機動師団、第6軽装甲師団、第9海兵師団、第11パラシュート師団、第27山岳歩兵師団を主力とし、独自の兵站旅団に加えて第19砲兵旅団と第68砲兵連隊、第28通信連隊によって構成されている。

 

指揮官は陸軍中将(軍団将軍)のジルベール・フォレイが務めており、この他にもフランス空軍の戦術機部隊が戦闘に合流していた。

 

同時に本土に残るフランス第1軍も出動準備を進めており、こちらは後3日もすれば戦線に到着するだろう。

 

現状即戦力として敵を阻止出来るのはフランス軍だ。

 

「最高司令部にはこのままではハノーファーどころかビーレフェルトまで下がる可能性があると伝えろ!無論そこまで下がるつもりはないがブラウンシュヴァイク、ハノーファーまでの後退は覚悟しろ、この辺りで総力を持ってBETAの攻勢戦力を削ぎ取り、フランス軍と英米本土の部隊で総反撃に出る」

 

バグナル大将の決断は奪還した西ドイツ領を相当の距離を失うことになるが勝てる可能性は一番高い。

 

少なくとも1981年以前の戦線に戻すことはしないとバグナル大将も司令部の参謀達も、各軍団長も確実に思っていた。

 

ソ連軍がオーデル川で苦戦している間にNATO軍もまた、エルベ川で苦戦を強いられていた。

 

 

 

 

苦戦を強いられているのは中央軍集団も同様であった、こちらはハレからフランクフルトまで前進する攻勢軸と6個軍を持ってドレスデンまで前進しようとする攻勢軸の2つを受け持っている。

 

ドレスデンの守備はアメリカ陸軍第7軍団が担当しており、ライプツィヒ、ハレ方面はアメリカ陸軍第5軍団とドイツ連邦陸軍第3軍団防衛線を展開している。

 

ドイツ連邦陸軍第2軍団はチェコスロバキア=オーストリア間の国境から移動し、即座に3個軍団の支援に入った。

 

一方周辺諸国はというとオーストリア軍は陸軍部隊をチェコスロバキア方面の国境線とドイツ連邦方面の国境線に結集させ、防御線を構築した。

 

イタリアでは南ヨーロッパ連合陸軍司令部の命令でイタリア軍にも動員がかかり、一部の戦力は予備としてドイツ方面へ送られた。

 

オランダ、ベルギー本国でも国境線の戦力強化と一部部隊のドイツ全面展開が行われ、フランス軍はアフリカから帰ってきた大規模遠征軍をそのままドイツへ送る決断を行なった。

 

まず本国のフランス軍第1軍が司令官であるシャルル・ジョゼフ・ド・ランビー大将(陸軍将軍)指揮の下、ドイツ本国に入って先行していた即応部隊に合流した。

 

フランス第1軍は3個軍団を基幹とする野戦軍であり、これで西側は合計12個軍団での戦闘が可能となった。

 

フランス軍の本格介入で多少状況は改善され、中央軍集団はライプツィヒ、ドレスデンのBETA軍に対応出来るようになった。

 

とは言っても正面に展開する合計6個軍は今までの戦力ならともかくとして正面に超重突撃級と戦術機級を有する強力な集団である。

 

相手の損耗に対してこちらは相当数の犠牲を必要とされる、このままでは先に押し切られるのは我々だとパットン4世は内心自覚していた。

 

しかもソ連軍が守備するポーランド国境が破られた為、ゲルリッツからもBETAの支攻勢軸が作られてしまった。

 

両方からの圧力でドレスデンの守備隊は苦しい状況に追い込まれている。

 

ただ中央軍集団には利点もあった、彼らの背後に展開するソ連軍白ロシア前線の砲火力と戦術機の航空支援が受けられることだ。

 

これらのお陰でゲルリッツの攻勢は沈静化しつつあった、それでもまず正面の攻勢をどうにかしないと戦争には勝てない。

 

「辛うじて航空攻撃は通っていますが損害が大きすぎます、このまま続ければ連合空軍は後2、3週間で壊滅します」

 

「第2騎兵連隊がゲルリッツの部隊を完全に押し退けました!現在側面は第79歩兵師団の部隊が抑えています!」

 

「キャスは陸の航空隊に一任して残りは全て阻止攻撃に回せ。第7軍団にはもう少し戦線を前に押し出すように命じろ、支援の砲はソ連から借りてくるよう私が掛け合う」

 

多少ソ連の力を借りることになっても今はやむを得ない、チェコスロバキアを解放した時に手を貸してやった恩を今返してもらう気概でいた。

 

こうして一部白ロシア前線の砲兵旅団がNATO軍に手を貸すこととなり、152mm榴弾砲やウラガーン、スメルチといった多連装ロケット砲弾が前線地帯に降り注いだ。

 

これだけしても通常種は仕留められても超重突撃級や戦術機級を退けるのは難しかった。

 

レーザーによる弾幕で粗方の砲弾を叩き落としつつ、迎撃が間に合わなかった弾頭は全てシールドで防いだ。

 

その間に前線地帯のM1エイブラムスが120mm滑空砲を戦術機級や超重突撃級に向けて発射した。

 

放たれた戦車砲は戦術機級の全身装甲を破ることには成功したが、即座に戦術機級がシールドを正面に構えて二弾目を弾き、レーザーを数発放ってM1エイブラムスを撃破した。

 

エイブラムスの装甲を持ってしてもレーザーには耐え切れず、装甲が溶解してそのまま爆散した。

 

近くの塹壕では潜んでいたブラッドレーIFVがブッシュマスターと共にTOW対戦車ミサイルを放ったが命中する前にシールドで弾かれ上空で爆散した。

 

その間に先行していた超獣突撃級がレーザーでブラッドレーを吹き飛ばし、前線の陣地を荒らす。

 

後方で火力支援を行っていたオントスの106mmも物ともせず突進で引き潰し、レーザーは別の地点にいたヴルカンを撃破する為に使われた。

 

するとF-16とF-15の混成部隊が突如やってきてかつて前線地帯だった場所に爆弾を落とした。

 

その爆弾に見覚えがあった戦術機級と突撃級は急いでその場から後退する。

 

そしてこれ以上の後退が無理だと悟ると装甲を合わせて伏せ、完全な防御形態に移行した。

 

それは明らかにアメリカ軍がよく使っている核爆弾そのものだった。

 

起爆した核爆弾は前面にいた超重突撃級を飲み込み、強烈な衝撃波で前線地帯にいた戦術機級と超重突撃級にも大きな被害を与えた。

 

当然そこはかつてNATO軍が展開していた地域であるから僅かな生存者もいたが仕方のない犠牲としてカウントされた。

 

全てのエネルギーが放出されるとそこには焼けた大地が広がり、ボロボロになった戦術機級や超重突撃級がいた。

 

シールドは耐久値を超えて破損し、衝撃波が強すぎて破壊された個体もいる。

 

流石の損耗にBETA側も後退を開始したが逃すまいと即座に自走砲兵隊による砲撃が叩き込まれ、左右から新たな戦車隊が投入されてBETAの追撃を開始した。

 

ここまで損耗してしまえば戦術機級にも超重突撃級にも120mm滑空砲は有効になる。

 

数輌のM1エイブラムスが同時に120mm滑空砲を放って戦術機級を仕留めた。

 

別の箇所では自力のジャンプ力で跳躍した瞬間にブラッドレーのブッシュマスターとM163ヴルカンの20mmガトリングガンによって撃墜された。

 

米ソ双方このようにして強力なBETAに対して戦線を維持し、時には前進していた。

 

戦線は維持出来てもその損耗率は今までの比ではなかった。

 

前線を預かる将軍達の思いは一つ、せめてこの新型BETAさえ消えてくれればだった。

 

軌道爆撃が通じないのは悩ましい事実ではあるが、軌道爆撃がなくとも敵は倒せる、そうなるとやはり厄介なのは新型であった。

 

あれを撃破する為に数輌の戦車が撃破され、被害がバカにならない。

 

それはハレ周辺で防衛線を展開するドイツ連邦軍第3軍団も同様であった。

 

この時の軍団長は前任のアルテンブルク中将から交代したハンス=ヨアヒム・マク中将が務めていた、キースリング将軍が退役しなかった為彼はまだ第3軍団長であったのだ。

 

彼の軍団も手痛い被害を喰らっていた。

 

レオパルト2A4を持ってしても戦術機級、超重突撃級には勝てず、多くの戦車がマルダーと共に撃破されていた。

 

それでもハレ前面の防衛線を維持出来ていたのはドイツ連邦軍将兵のこれ以上祖国を失いたくないという思いがあったからだ。

 

時によって人は自発的に自らの命を軽くして投げ打ってしまう。

 

とても賞賛されるような行動ではないが、彼らの犠牲が今日まで戦線を維持していたのも事実であった。

 

時は1984年の7月に入り、BETAの攻勢はさらに苛烈さを増していた。

 

この段階でソ連軍のオーデル川防衛線は突破され、ポーランド国内にBETAが侵入してポーランドでの対BETA戦に移行していた。

 

一方西側のエルベ川も北部軍集団の防衛に限界が生じ、ジリジリとエルベ川から西へ後退し始めていた。

 

在独ソ連軍もこれに合わせて後退を開始、その余波はフランス第1軍とNATO中央軍集団にも現れていた。

 

BETA軍の猛攻により中央軍集団の戦線はライプツィヒ方面では134キロほど後退し、後数日でライプツィヒの市街地で交戦する結果となった。

 

既に若干の復興がなされていたライプツィヒでは都市部に陣地化が施され、アメリカ陸軍の第4歩兵師団が展開していた。

 

一方のドイツ第3軍団も展開したドイツ2軍団と共にハレや周辺の建物に籠って抵抗を続けており、反撃の為に敵戦力を釘付けにしていた。

 

アメリカ陸軍第7軍団は依然としてドレスデン周辺に展開している、それでも戦線はラーデブルクまで後退しており厳しい戦いが続いていた。

 

「このままドレスデンで市街地戦をやるのはやむを得んな……」

 

「ええ、ハレ、ライプツィヒ、ドレスデンの市街地で敵を引き寄せて削り、攻勢が止まったところで反撃をかけるしかないでしょう」

 

少なくとも市街地でのアドバンテージは歩兵にある、路地に入ってきたところをどこから現れるか分からない歩兵の攻撃で叩くのが有効だ。

 

超重突撃級や暴れる戦術機級で市街地は無茶苦茶になるだろうがこうなっては諦めるしかない。

 

「閣下、ソ連軍からです。第1ウクライナ前線がポーランド方面に展開し数週間以内に反撃に入ると」

 

「どこからだ」

 

「オポーレと言っていますのでヴロツワフに向けてです」

 

参謀は持ってきた地図を指差して攻勢地点をパットン4世に教えた。

 

もしこの攻勢が上手くいけばポーランド側の圧力は減り、中央軍集団としても反撃の機会が増える

 

「ソ連軍に期待するのは癪だが……彼らの攻勢が上手くいくことを願おう。状況によっては我々もポーランド国境沿いから反抗を行うぞ。機甲戦力を今のうちに温存しておこう」

 

「了解」

 

手詰まりというほどではないが打開策もないこの状況下では嬉しい知らせだった。

 

こんなところで皆負けるつもりはない。

 

生命が持つ諦めの悪さをベルリン・ハイヴは認識していなかった。

 

 

 

 

7月10日、戦線は更に後方へと下がっていた。

 

ポーランド側では中央攻勢部隊がついにポズナンまで前進することに成功し、同都市では市街地戦が始まっていた。

 

一方シレジア攻勢部隊はようやくレグニツァを突破し、徐々にヴロツワフに向けて進軍していた。

 

恐らく明日にはヴロツワフは陥落するだろうというのが前線を担当する第39軍司令部の見立てであり、オワバを起点として第二線を構築しつつあった。

 

一方西側ではBETA側が北部軍集団の守るマクデブルクを突破、そのまま前進を続けて州境を突破しヒルデスハイム、ザルツギッター、ブラウンシュヴァイクで交戦中であった。

 

この防衛線も数日持つか怪しいという見立てであり、ハノーファー周辺が決戦舞台となるだろうと北部軍集団は予測していた。

 

中央軍集団はハレ、ライプツィヒ、ドレスデンで市街地線を始めBETAをなんとか戦線に拘束していた。

 

一部はフランス軍の加勢を受けており、ハレでは独仏の部隊が共に肩を並べて戦っている光景も見受けられた。

 

やはりこの中で一番安定していた戦線は北部の在独ソ連軍と国家人民軍であろう。

 

ここに投入された戦力は全体で見ると一番少数の5個軍であり、苦戦はしても他の集団のように大規模な後退には至っていなかった。

 

戦線はヴェンセンベルクの辺りで膠着しており、BETA側も在独ソ連軍はあくまで拘束するだけで十分という様子であった。

 

しかしそもそも在独ソ連軍の担当地域は縦深が他の担当地域よりも短く、これ以上前進されると守ることが難しくなる。

 

その為どこの前線も厳しい状況であるのは変わりなかった。

 

最悪の場合戦線のどこかしらが崩壊し、1981年の戦線は愚かドイツ領から完全撤退する可能性すらある、NATO欧州連合軍最高司令部はそう判断を述べていた。

 

故に西ドイツの首都ボンではヘルムート・コール首相が官邸に閣僚を集めて非常事態の決断について考え合っていた。

 

「総監、戦闘の推移はどうなっているかね」

 

コールはドイツ連邦軍総監、ヴォルフガング・アルテンベルク大将に状況を尋ねた。

 

アルテンベルク大将は元々ドイツ連邦陸軍第3軍団の司令官であり、ザーパド作戦での功績が認められて大将に昇進の上ドイツ連邦軍総監に抜擢された。

 

彼は包み隠さず全ての状況を伝えた。

 

「相変わらず悪いです、ひとまず各軍は持ち堪えてはいますがその分の損害は計り知れません。ですが今すぐ戦線が崩壊するというレベルではないかと」

 

「そうか」

 

「はい、私としてはボンを捨てての亡命はカッセルが陥落した後に決断された方がよろしいかと。少なくとも今はまだその時ではありません」

 

アルテンベルク大将の発言にマンフレート・ヴェルナー国防大臣も賛同した。

 

「アルテンベルク将軍の言う通りです。少なくともそう遠くないうちに英米本土から増援が来て今ならドイツ国内で反撃が可能です。続々と後方のNATO諸国軍も我が国に展開していますし逆襲も夢ではありません」

 

「そうか……分かった」

 

ヴェルナー国防相はコールを勇気づける為にそう述べたがアルテンベルク大将からすればそこまで楽観的には考えられなかった。

 

せめて軌道爆撃が使えるようになれば、恐らくはNATO宇宙軍、NATO空軍の全将校がそう思っているだろう。

 

「どちらにせよ前線からは数十万人単位の避難民が安全圏内に退避しています。このまま戦線が後ろに下がるようでは避難民の数は増大します」

 

そう述べたのは内務大臣のフリードリヒ・ツィンマーマンであった。

 

1981年にBETAから取り戻した地域には今や民間の技術者などが移って復興作業に従事しており、それなりに民間人がいた。

 

彼らは軍の命令に従って安全地域に退避しており、その数はツィンマーマン内相の発言通り数十万人規模であった。

 

これらの対応に関する見解をコールが述べようとした瞬間、彼の秘書官が扉を開けて入ってきた。

 

当然だが顔色は青ざめており、血相を変えてと言うのが相応しい様相であった。

 

「閣下大変です!民間の通信回線にベルリン・ハイヴを名乗る者の通信が入ってきました!」

 

「何!?」

 

閣僚達は一様に騒然とした、もしこれが本当にベルリン・ハイヴからならBETAが初めて人類に対してコミュニケーションを取ってきたことになる。

 

「で、なんと言ってきたのだ!?」

 

「情報局が解読した内容を読み上げますと……『我々は君達にBETAと呼ばれる存在である。我々は回答に応じない場合全戦力で同胞の地域を全て制圧する。代わりに我々に対して戦争行動を停止すると確約する場合は我が領域より東に700キロメートル、西に600キロメートル、北に610キロメートル、南に420キロメートルの地域を我々の領域とする条件の代わりに我々も一切の戦争行動を停止すると確約する』だそうです……」

 

「は?」

 

タチの悪い悪戯だろうか、だが少なくとも電波の送り先はベルリン・ハイヴからと言うのは判明しているのだ。

 

今あの地域に当然だが人間はいない、ともなると送り主はやはりベルリン・ハイヴの重頭脳級ということになる。

 

だが、であるならば余りにこれは酷い内容であった。

 

ベルリン・ハイヴはこれを一応降伏勧告のつもりで送っていた、戦果を出している間にこういうものを送れば人類側は戦闘を停止すると雑に学習してしまったのだ。

 

これはベルリン・ハイヴなりの降伏勧告であり外交文であった、人類を学習したと言っても所詮は上辺だけで交渉術もこの程度だった。

 

これに憤慨したのは外務大臣のハンス=ディートリヒ・ゲンシャーであった。

 

「降伏勧告とでもいうのか?これが?ふざけるな!奴ら外交をなんだと思っているんだ!」

 

外交とはお互いの国家をかけて譲れないものをぶつけ、その上で妥協点を見出すものだ。

 

BETAの外交文にはそんなものはない、一方的に自分達の言い分と欲しいものだけをぶつけて要求を飲めないのなら潰すと書いている、所詮は出来の悪い掘削機械のやることだ、これが限界なのだろう。

 

だが領土を蹂躙されている西ドイツの閣僚達からすれば当然そんなことは認められなかった。

 

「……返信だ、ベルリン・ハイヴに伝えろ」

 

怒りに震えながらコールはかけていたメガネを机に下ろし、一呼吸置くと机を叩いて興奮したように叫んだ。

 

「我がドイツ連邦共和国は1インチたりとも国境線を変えるつもりはない!!我が祖国ドイツにおいてBETA占領地域など認めない!!必ず血の制裁を受けることを覚悟しろ!」

 

「はい!!」

 

コールは久しぶりに声を荒げて怒った、これは祖国に対する屈辱であり人類を見下している証拠だ。

 

そのことが堪らなく許せなかった。

 

「ヴェルナー国防相!アルテンブルク将軍!」

 

「はい!」

 

「ハッ!」

 

「何があろうと私はボンを離れん、仮にカッセルを堕とされようとここにBETAが来ようと私は首都を枕に死ぬ。そうならぬよう我が軍にはより一層の奮闘をするよう伝えろ」

 

その剣幕に押されてヴェルナー国防相は頷き、アルテンブルク大将も敬礼した。

 

いくら分断国家の片割れとはいえ、前の大戦の主犯格とはいえ矜持や意地はある、少なくともコールにはあった。

 

ベルリン・ハイヴのこうした意味不明の通信は米ソや欧州の周辺諸国全てに伝わっていた。

 

あらゆる無線に対してほぼ無軌道に同じような文言を流している為キャッチしやすかったのだ。

 

当然だがイギリス政府は鉄の女マーガレット・サッチャー首相が女王陛下の名においてBETAの勧告に対してNOを叩きつけた。

 

フランスにおいてもフランソワ・ミッテラン大統領が降伏勧告を蹴飛ばして公式として「ナチ崩れの宇宙人どもに真のヨーロッパ世界の自由を叩きつけてやる」と宣言した。

 

スペイン、ポルトガル、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、オーストリアも立て続けに徹底抗戦を宣言、東側諸国もこれに同調した。

 

まずはポーランド、次にチェコスロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、アルバニア、ブルガリアと立て続けにBETAに対する徹底抗戦を宣言した。

 

そして残すはアメリカとソ連の二カ国である。

 

丁度この時政府高官がホワイトハウスに集まっており、国務長官や国防長官、統合参謀本部議長らと共にベルリン・ハイヴのふざけた文章を聞いた。

 

全てを聞いた上でレーガン大統領はベルリン・ハイヴの文言を鼻で笑った。

 

「高々新型のBETAを出して馬鹿でかいレーザーを撃った程度でアメリカが戦争に屈すると考えているらしい。BETAは本当に歴史を知らないようだ」

 

レーガンに続いて同じように高官達も嘲を込めた苦笑を浮かべる、これでもう意地でもBETAに負けられなくなった。

 

「ドイツとポーランド丸々2国引き渡す代わりに戦争をしないでやる?そんな文言に乗せられる者はアメリカの男ではない!ましてや大統領などではない!連中には”NUTS!”とだけ送ってやれ!」

 

「了解!」

 

アメリカはアメリカらしいの方法で降伏勧告を断った、ではソ連は。

 

丁度この時のクレムリンでは大本営の会議が行われており、国防相、参謀総長、外相も含んだ状況でこのことが発表された。

 

当然だがウスチノフ元帥もオガルコフ元帥もグロムイコ外相も皆怒り心頭、絶対にBETAを叩き潰すという気概で溢れていた。

 

「どこから来たかも分からん寝言に付き合っている暇はない、1973年にベルリンが占拠された時からやることは同じだ。ベルリンにもう一度赤旗を立てる、だが連中には降伏文書など署名させてやらん」

 

ブレジネフは立ち上がり、たった一言だけ奴らに送るよう命じた。

 

目には目を、血には血を

 

BETAが奪った分の血は必ずBETAに償わせる、今一度世界が憎しみの下に結集しつつあった。

 

 

 

 

 

7月11日、BETAとの戦闘はどこも膠着状態になっていた。

 

一応北部軍集団と沿バルト前線の戦闘地域は数キロほど後退が確認出来たが、主攻地域以外の戦いはほぼ固定化されていた。

 

既にNATO、WTO双方戦術機級と超重突撃級相手に18日間戦い続けており、一部では鹵獲される個体も発生して分析が進んでいた。

 

特に戦法に関してはまだ先例されておらず、犠牲も伴うがある程度対策が確立されつつあった。

 

元より戦術機の運用に関しては元より地上部隊と共闘することが多く、連携は以前より重要視されていた為地上部隊との連携で戦術機級相手に勝つこともあった。

 

何より核弾頭を完全に封じられた訳ではないのが救いだった、これにより阻止攻撃や核を前提とした戦闘が続けられたのが大きい。

 

前線にはよく核砲弾や核爆弾を搭載した戦術機が到来し、容赦無く前線地域の戦術機級に対して核弾頭を投入した。

 

各国の陸軍部隊も死に物狂いで戦い、未だにハノーファーもライプツィヒもドレスデンもポズナンも陥落していない。

 

ベルリン・ハイヴの攻勢は東西に200キロメートル進んだ時点で膠着していた。

 

流石にこれにはベルリン・ハイヴも焦ったのかハイヴ内で修復中の超重光線級を修復次第前線に投入する予定でいた。

 

核攻撃に曝される可能性はあるがその為に大量の光線級を待機させており、最悪の場合は衛盾級もいる。

 

各地の戦線に巨大レーザーを発射して部隊を文字通り消失させ、そこへ野戦軍部隊を投入すれば確実に戦線は再び動き出すはずだ。

 

しかし出力100%のレーザーを二連射したダメージは相当強いようで修復には後数日掛かるのは間違いなかった。

 

その間に人類側は反撃の手を打ち出そうとしていた。

 

既に英米本国の部隊はオランダのロッテルダムやハーグに上陸しつつあり、間違いなく後1週間で増派予定の戦力が戦線に投入される手筈となっていた。

 

そうなる前に人類軍は反撃の手を打とうとしている。

 

戦線の北側を守る在独ソ連軍は早期からBETAの攻勢が他と比べてそこまで強くない為まだ余裕があった。

 

基本的には戦線の維持に努めていた在独ソ連軍であったがこの状況を鑑みると維持ではなく打開に動き出した方がいいと考え始めていた。

 

ヴィスマルの司令部では既に反攻作戦に向けた作戦準備が進められていた。

 

「現状BETAはシュチェチンを占拠しましたが部隊はゴレニュフで止まっています。恐らくBETAの攻勢を頓挫させるにはここを叩くのが一番でしょう」

 

ヤクーシン大将が指し示したのはグラムツォーとペンクンのラインだった。

 

「今の余裕がある我が軍ならここを2個軍で叩くことも可能です。この移動経路を確保すれば前進する攻勢部隊は孤立し、沿バルト前線の反撃も可能になります」

 

「そうだな……左翼の第1親衛戦車軍、後詰の第20親衛軍に命じろ。全力を持ってパーゼヴァルクからグラムツォーに攻勢を仕掛けろ。出来ればBETAの移動経路も絶てと伝えてな」

 

「了解!」

 

「我々の11年を決して無駄にはしない、この戦争は我々の手で決着をつけるのだ」

 

イヴァノフスキー元帥は何度も何度も見た地図を前にそう断言した。

 

同じように反撃に着手しようとする集団は西側にもう1軍あった、本国より派遣されてきたフランス第1軍である。

 

前線地域で最初にベルリン・ハイヴの怪文書を入手したのは実は彼らの通信部隊であった。

 

当然だがこれを聞いた将兵は皆激怒し、絶対に自らの手でBETAを葬ってやると誓った。

 

現状フランス第1軍はハルツ山地を正面の防壁としながら敵の主力を山岳地帯で迎え撃ち、左右から展開する兵力は通常の野戦部隊で防いでいた。

 

BETAは相変わらず山岳戦が得意ではない、どうしても狭い山地の道では物量を活かせず火力を叩き込まれるケースが多々あった。

 

正面の戦力はフランス軍即応部隊に任せつつ火力支援は第1軍が行い、主力部隊はブランシュヴァイク、ヴォルフスブルクに向けた攻勢を準備中であった。

 

フランス第1軍は第1軍団、第2軍団、第3軍団の3個軍団編成であり、この軍団も主に装甲化された3個師団によって構成されていた。

 

中でも第1軍団が主軸となってBETAに対する攻勢を計画しており、前線にはAMX-30B2や本来は試作品であったはずのAMX-40が結集し、BETAに対して勝利を掴まんとしていた。

 

「ハノーファーに迫るBETA群を横合いから殴る、第1軍団はまずブラウンシュヴァイクの奪還を最優先とせよ」

 

第1軍司令のシャルル・ジョゼフ・ド・ランビー大将は反攻作戦に合わせて詳細な指令を各軍団に伝えていた。

 

「第2軍団は前面の即応部隊を援護しつつ一部師団は第1軍団と共にハノーファーの解放に向かわれたし。第3軍団はこのままドイツ第3軍団と共にハレを死守」

 

「了解」

 

「連中には誰が真の地上最強か叩き込んでやれ、戦術機を真似た程度では我らを打ち倒せんとな!」

 

「はい!」

 

参謀は笑みを浮かべて指令を伝えに行った。

 

一兵卒から将軍に至るまで、皆BETAに対して怒りを持ち、祖国に対して必ずBETAを打ち倒すという誓いを持っていた。

 

BETA大戦はフランスのナショナリズムと国家形成にも新たな影響を与えた。

 

シャルル・ド・ゴールから始まった第五共和政に欧州と世界の為に戦う栄光のフランスという新しいナショナリズムが授けられたのだ。

 

アルジェリア、インドシナでズタボロになっていたフランスからすればBETA大戦とは久方ぶりに訪れた栄光ある戦いだった。

 

よってフランスではボナパリズムが再び勃興してきた、戦争の時代において伝説的な皇帝にして将軍ナポレオンを縋りたいという思いが強かったのだ。

 

それにフランス軍はルーツを辿れば欧州を席巻した伝説の大陸軍だ、どれだけ衰退したとしてもこの矜持だけはずっと残り続けている。

 

大陸軍は地上最強、三色旗の下に欧州の新時代は生まれた。

 

BETAが地上を蹂躙する最強の生物、馬鹿げた冗談だ。

 

地上最強は我々(フランス大陸軍)だ、決して異星人どもではない。

 

兵達は愛する祖国の為、愛する者の為にフランスの男として戦場に立った、この内の何割かが死ぬとしても男達は戦地へ行った。

 

元帥杖とは誰の背嚢の中にもあるわけではない、誰もがナポレオンになれるわけではない。

 

だがナポレオンになろうと努力することは出来る、その努力は必ず勝利に繋がりBETAに対して一撃となるだろう。

 

「総員前進!前へ!」

 

大隊長の命令でAMX-30B2やAMX-40が前進し、その後ろに援護のAMX-10Pが続いた。

 

フランス軍は前進する、大地をBETAの地で潤し、隊列を組み武器を取った市民の軍が前へと進む。

 

いつだって時代は三色旗の旗の下に進んできた、この戦いもそうだ。

 

人類の反撃はフランス軍から始まった。

 

 

 

 

 

国連宇宙軍はいつにも増して手が余っていた。

 

基本的には地上の監視に従事し、対地攻撃が出来るようになるまでひたすら耐え忍んできた。

 

それと同時に各宇宙軍はどうにかして地上のシールドを破れるのか考え続けていた。

 

衛盾級の存在は当然人類側は知っていた、だがラザフォード場がどういう理屈で展開し、どういう仕組みなのかは完全に理解していなかった。

 

だが少なくともシールドにはある程度の負荷を与えれば破れる、サクロボスコも奈井江もそうやって無理やり打ち破った。

 

つまり無理やり破る方法はあるのだ、だがその為に核弾頭を用いるのは流石にアセットの無駄使いだ。

 

ではどうやってコンパクトかつ簡単に破るのか、このことに全宇宙軍将兵が考えを巡らせていた。

 

「BETAのシールドは基本的に軌道上からの降下物に対して反応しているようです」

 

リチャード・マイヤーズ大佐はアメリカ宇宙軍司令部で司令官のヘレス大将に対して報告を行なっていた。

 

少なくともラザフォード場によるシールドは核弾頭ではなくとも軌道爆撃ならある程度反応するようで、試しに撃ってみた通常弾頭もシールドが防いでいた。

 

「となると軌道上からの降下物なら別になんでもいいのか」

 

「恐らくは、問題はシールドに重大な負荷を与えられるだけの質量をどうやって落とすかです。そもそもそんな質量兵器を我々は保持していませんし」

 

宇宙技術が異常発展しているとはいえ宇宙空間で居住可能な巨大スペースコロニーを持っている訳ではないし、隕石を用いた質量兵器を常に持っている訳でもない。

 

基本的には核弾頭を地上に落とす方式を取っており、こうした質量兵器は今まで何も持っていなかった。

 

「弱ったなぁ……せめてシールドさえこじ開けられれば軌道爆撃でどうにか出来ることはあるんだが……」

 

どうしようもない事態をぼやきながらヘレス大将はステーション司令部の窓際に向かい、窓から外の様子を眺めた。

 

周辺には偵察衛星や攻撃衛星が展開しており、少し遠方にはソ連宇宙軍の人員居住用宇宙ステーションも見えた。

 

別の方向を見るとまるで一本の線かのようなものが軌道上に転がっている、あれは4、5ヶ月前に襲来したBETA大船団の残骸だ。

 

BETAの大船団は撃破出来たはいいがかなりの数が残骸として残っており、片付ける方法もないので放置されていた。

 

無論中身のBETAは全滅しているが単純に宇宙デブリとして邪魔な存在であった。

 

だがこれが目に入ったことによりヘレス大将に1つの方策が生まれた。

 

「マイヤーズ大佐、BETA船団の残骸だが……中身は生きていないんだよな?」

 

「はい、中身は頭脳級から通常種の全てが死んでいます。それが何か?」

 

ここでヘレス大将の方策が確信に変わった、後はどうにかして実行に移すだけだ。

 

「ある……あるぞ大佐!大量にあって地上に落としても摩擦熱で溶解しない質量兵器が!」

 

「はあ……ええ、まさか…?」

 

マイヤーズ大佐は薄々理解して顔を顰めた、確かにいい方策だが流石に不安が優ったのだ。

 

「BETA船団の残骸を軌道上から落とすんだ!それを数十発くらい叩き込めばシールドには確実に負荷が掛かる!これなら破れるかもしれんぞ!」

 

ヘレス大将は確信し、部下達を集めた。

 

「参謀と手の空いている戦術機部隊の指揮官を全員集めろ!出来ればソ連宇宙軍の奴もだ!地上に掛かっているシールドを破るぞ!これで地上の味方を援護出来るようになるかもしれん!」

 

「了解!」

 

無茶苦茶な方法かも知れんが一番期待と希望がある方法ではあった。

 

人類の反撃はあらゆる方法でなされようとしている。

 

BETAの反撃ももう間も無く終わろうとしていた。

 

 

 

つづく

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