あの海のリンリン   作:つるみ鎌太朗

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第五話 完璧なパパがほしい(2)

 

3、

 

 午前は落下事件のためにパパとキッキの診察でつぶれてしまったので、動物園の食堂でお昼を摂ることになった。

 

 三人とも、アルトコ動物園名物『わんぱくゴリラカレー』。

 野菜をたっぷり煮込んだ真っ黒いルーがゴリラの毛並みのようで「きみもゴリラのように強くなれ!」と看板にあった。

 黄色い皿にゴリラの絵が描かれており、ゴリラの顔が描かれた小さな旗も立っている。

 

 キッキはワットさんにもらった果物を詰めたお弁当。リンゴやブドウ、イチゴまで入っていた。

 

 親子連れが多い中、何とか席を確保してテーブルに着くことができた。

 

「パパァ。ケガはどう?」

 

 リンリンが前に座っているパパへ聞く。

 

「ん。大丈夫だよ」

「おじちゃんって、どうしてそんなに体が丈夫なの?」

「話の都合上ね。過去の冒険の名残かな」

「パパァ。また四次元のドオンブリカまで行ったときのお話をして!」

 

 リンリンはパパから冒険のお話を聞くのが大好きだ。オハナもそうらしく、父親に話をよくせがむと聞いている。

 

 カレーを食べる間、パパは身振り手振りで話してくれた。話すたびに内容がすこし違うのはご愛嬌である。

 

 食べ終わってからはせっかくなので動物園を見て回った。

 

「入園料また値上げしたのか。世知辛いねえ」

 

 パパはそう言いながらも、いちばん楽しんでいた。

『ゾウに餌をあげよう!』のコーナーで はゾウの鼻息がスゴいとみんなではしゃいだ。

 キッキもゾウの鼻に勝手にぶら下がり、飼育員さんに叱られるほど舞い上がっていた。

 

 キリン、カンガルー、かわいいパンダ!

 いろんな動物を見てから、歩き疲れたリンリンたちはベンチで休憩することにした。

 

「キッキ、リンリンたちが危なくないように見守っているんだぞ」

 

 ソフトクリームを買いにいく前にパパがキッキに言いつける。

 こんな時、キッキの存在は頼もしい。イタズラもするが基本的にはリンリンとその友だちを守ってくれるからだ。

 

 ベンチで足をブラつかせながら、リンリンたちはパパの帰りを待っていた。

 

「オハナちゃんは何の動物がいちばん好き?」

「オハナはねえ、イルカさん!」

「ぼくは……みんな好き!」

「エ〜?」

 

 お喋りで盛りあがりながら、いい子に座っている二人と一匹。

 そこへ一人の飼育員がフラっとやってきた。

 

「こら、ダメでしょ! 猿を野放しにしちゃァ」

 

 丸い顔につぶらな瞳だが、言葉はすこし強い。

 リンリンたちはびっくりして飼育員を見あげた。

 

「ちがうよ、ちがうよ! キッキはぼくんちのお猿だよ」

「なに言ってるの。猿を飼うなんて、よほどのお金持ちぐらいだよ!

とにかく、勝手に猿を連れ出しちゃダメ。元いたオリへ帰しなさい!」

 

 説明しても飼育員は聞いてくれない。キッキを抱きあげて連れていこうとする。

 

「キー! キキッキィ」

 

 飼育員の腕の中で喚くキッキ。

 

「ホントです! キッキは、リンリンのおうちの子です」

 

 オハナが勇気を出して後押ししてくれるも、飼育員は、

 

「ダーメ! 猿はオリん中!」

 

 である。

 リンリンはほとんど泣きそうになったが、涙を飲んでキッキをがしっと抱きしめた。

 

「ダメーッ!! キッキは、ぼくの親友なの! 連れていかないでーッ!」

「わわッ……危ないから放しなさい!」

 

 リンリンの勢いに飼育員も慌てている。

 騒ぎが大きくなる前に向こうから声が聞こえた。

 

「やいやいやいやいやいッ! なに、勝手な真似してやがる!

そっちこそウチの子から手を放せ!」

 

 パパだ。

 ソフトクリームはお店の人に待っててもらい、腕まくり急ぎ足でやってくる。

 パパの威勢の良さに飼育員もたじろいだ。

 

「えっ……でもコレ、猿ですよ?」

「お前さん、園内の猿と他の違いもわかんないのか〜? 園の猿を一匹ずつ数えてみな! 間違いなく全部いるよ。

それともウチからキッキが赤ん坊のときの写真でも持ってこようか?」

 

 パパが飼育員の手をこじ開け、キッキを自由にしてくれる。

 よたついた飼育員はその場で踏みとどまると『イテテ』と手を押さえた。

 

「乱暴な……ンン!? 待てよ、あんたの顔どっかで見たことある……

――ああッ! 大昔に馬鹿力で私を押さえつけた子ども!」

 

 言われてパパも飼育員を指さす。

 

「アッ、おれも覚えてるよッ! モンキーはプリンプリンの猿だって言うのに全然ハナシ聞かないトーヘンボクッ」

「コラコラ! 誰がトーヘンボクだァ!」

「人の話を聞けないヤツはそうなの!

まーったく、まだ人んちの猿をオリに入れようとしてんのかよ。ウチの家族にナンかしたら今度こそ許さないからな!」

 

 キッキをしっかと抱きかかえると、パパは飼育員を睨みつけた。

 つりあがった碧い目に飼育員が震えあがる。

 

「ううっ、ヤッパリ大人になってもロクなモンじゃない。子どもがいるなんて信じられないよ!」

「なーに言ってんだい! いいから猿の数を数えてこいよ!」

「ウッ……ひどい、このチンピラ!

数が合わなかったらあんたんチまでその猿を回収に行くからなーッ」

 

 そそくさと猿がいるオリへ走っていく飼育員。

 パパはその場で仁王立ちしてその背中を見送っていた。

 

 そんなパパへリンリンがしがみつく。

 

「パパァ! キッキを取り戻してくれて、ありがとう!」

「当たり前さ。キッキはウチの子だもの。なー?」

「キィ~♪」

 

 キッキがパパへもたれかかった。

 安心したような顔のオハナもパパに、

 

「キッキ連れてかれなくて、よかった! おじちゃん!」

「そうだよー。家族は一緒にいるものだからね! あんな飼育員なんかにやんないぞ!」

 

 パパはリンリンやオハナ、それからキッキをまとめてギュウと抱きしめる。

 温もりがみんなを包んだ。

 

「こうしてみんなでいることが大切なんだ。離ればなれになるなんて、考えられない。

リンリンやキッキはモチロン、オハナちゃんだって誰だって、一緒にいればみんな家族……」

「ばっきゃろー! 家族だから、ってナンだ! 家族じゃなかったら、オレのことなんてどうでもいいってーのかよーッ!!」

 

 パパの感動的なセリフをかき消す大声。

 声のした方向をみんなで見やれば、カピバラのオリの前に見覚えのある水色の頭がふたつ。

 

「ありゃ、カセイジンとセイちゃんじゃないか。何かあったのかな?」

 

 パパがリンリンたちに目配せする。

 リンリンも突然のことに目をぱちくりさせるばかりだった。

 

 

好きなキャラクターを教えてください(原作キャラは含みません)

  • リトルプリンス・リンリン
  • キッキ
  • オハナ
  • セイン
  • マリン
  • ヤーブレとカーブレ
  • リンリンのおばあちゃん
  • リンリンのおじいちゃん
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