6、
動物園の帰り、パパがオハナの父へお土産を選んだ。
『このアルマジロ・シュークリームとかオサゲ好きそう! オハナちゃん、どう思う?』
オハナに聞くと紅い鼻を揺らして、
『うん、お父ちゃん喜ぶよ!』
と答えてくれた。
パン屋を開いているあいだ、オハナの父は働きっぱなしだ。
そこで『甘いものを差し入れしましょう!』とセインの父が提案した。
パパと、ワットさん夫妻、セインの父とでお金を出し合ってシュークリームを買った。
各家庭のぶんは自腹だ。
リンリン宅もお土産は『アルマジロ・シュークリーム』。
夕ごはんは、レトルトの『わんぱくゴリラカレー』にした。栄養を気にして、パパがカット野菜で簡単なサラダもつけてくれた。
ごはんを済ませ、パパとおフロも入り、リンリンは家の縁側でキッキと涼んでいる。
薄暗いがまだ陽は落ちきっていない。
リンリンのプリズムの髪がかすかに七色にきらめていた。
リンリンの家は、小さな木造のおうちだ。
二階建てで、一階がリビングとおばあちゃんの部屋。お風呂や水まわりもこの階。
二階にはリンリンの部屋と、パパとママの寝室がある。
小さいながら縁側の外に庭もあって、ママとおばあちゃんがお世話をしている花が咲いていた。
リンリンが好きな赤いオモチャの車や、小さなころから乗っているブランコも揺れている。
「リンリン、スイカいるか?」
パパがキッチンから皿を片手に出てきた。
リンリンは振り返って、
「食べるー」
と言った。キッキもしっぽを揺らして待ち遠しそうだ。
パパとキッキ、二人と一匹で並んでスイカをかじる。
夜の風が頬をなでた。
涼しさにリンリンがとび色の目を細めていると、パパが聞いてくる。
「リンリン。何かガマンしていることとかない?」
リンリンはパパを見上げ、
「ないよー」
と答えた。実際、本当に何ひとつない。
それなのにパパは何故かしつこく、
「ホントは昼と別のものが食べたかったとかさ、おフロは泡風呂にしたかったとか……他にも何かない?」
リンリンはポカンと口を開ける。
「なーに、パパァ。ぼくはカレー好きだからおんなじでも嬉しいし、おフロはいつもどおりで文句ないよお」
「そっか……でも、何かイヤなことがあったらガマンしないで言うんだぞ」
と言った。
リンリンは『変なパパ』と呟く。
スイカを食べ終わると、パパが皮を皿に乗せてキッチンへ下げにいってくれた。
キッキへコソッと喋りかける。
「ねえねえ、キッキ。パパはどうしたんだろうねえ。帰ってきてから何かないか、何かないか、って……」
「キー」
隠れてお喋りしていたが、パパが戻ってきたのでやめた。
隣に座るパパは、ソワソワした様子でリンリンを気にしている。
リンリンは全身がくすぐったくなって何度も座りなおした。
もぞもぞしていたら、ふとパパがリンリンの頭の上に覆いかぶさってくる。
小さな声で言ってきた。
「リンリン……パパ、もっと良いパパになるからな」
パパの大きな手がリンリンの手に重なる。
リンリンは目を点にした。
「良いパパって、どうしたの。パパは良いパパじゃないの?」
「う〜ん。それはリンリンが決めて」
「えー……」
急に無茶を言われてリンリンは困る。
キッキを盗み見ても両手で頭を抱えて、まるでかくれんぼでもしているかのようだ。
仕方がないのでリンリンは『良いパパ』について考えてみる。
だが、そもそもリンリンにとって『パパ』はひとりだけ。
そこに『良い』も『悪い』もない。
ウンウン悩んだ末に、リンリンは正直な気持ちを伝える。
「ぼくは、良いパパより『だいすきなパパ』でいてほしいなぁ」
「リンリン〜……」
パパが泣きそうな顔でリンリンを強く抱きしめた。
「お前さんはいい子だよ〜!
いい子すぎて、ナンでもしてあげたくなっちゃうッ! 何をしてほしいか言ってごらん!」
「苦しいよ、パパァ。
そうだなあ……おうた唄ってよ! ギターも弾いて!」
「よし来た! 任せとけって!」
パパは飛びあがってギターを取りにいく。
弾む足取りをリンリンは見送りながら、
「仕方がないパパァ」
とキッキへ笑った。
―――第五話 おわり―――
好きなキャラクターを教えてください(原作キャラは含みません)
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リトルプリンス・リンリン
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キッキ
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オハナ
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セイン
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マリン
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ヤーブレとカーブレ
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リンリンのおばあちゃん
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リンリンのおじいちゃん