あの海のリンリン   作:つるみ鎌太朗

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第十話 クイーンの旅路(2)

 

2、

 

 空を見上げたままトントンが動かない。

 プリンプリンとボンボンは微動だにしない彼をじっと見つめていた。

 

 ランカーを自販機前に縛りつけてから、トントンとプリンプリン、ボンボンは二手に分かれて町まで車で戻ってきた。

 

 商店街も回ったが見つからず、トントンがアルトコ市の監視カメラをすべてハックしてマリンの姿がないか探している最中だった。

 

 だがトントンはたまにカクついたり、目に光がなくなったりと挙動がおかしい。

  

 ヘドロの電流とランカーによる弾丸の衝撃とでボディに相当ガタが来ているようだった。

 

「トントン……すこし、休んだら?」

 

 プリンプリンは街灯の下にあるベンチを彼にうながす。

 トントンはふらつきながら歩いてきて、言われたとおり腰かけた。

 

 だが表情は固定され、まだマリンを探しつづけているのは明らかだ。

 

「パソコンでもずっと動かしていたら負荷がかかるよな? ……大丈夫なのか?」

 

 ボンボンも心配して声をかけている。

 それなのにトントンは完全に沈黙したまま、ベンチへ人形のように背を預けていた。

 

 プリンプリンは歩み寄って彼の冷たい手を取る。

 

「トントン……いったん屋敷に戻りましょう。すこし体の調子を診たほうがいいわ」

 

 普段よりも冷ややかな人工皮膚。

 人体をカモフラージュするための発熱機能まで影響が出ているのか……。

 

 トントンの鈍色の目がぐるりとプリンプリンに向けられる。

 

「プリンプリン。マリンは……今、泣いているんだ」

 

 その言葉には深い後悔の念がにじんでいた。

 わずか二日前、マリンをひとりきりにしたことをトントンは悔やんでいる。

  

「今でないとダメなんだよ。プリンプリン……」

 

 プリンプリンはすっかり人形じみた彼の白い顔を見つめながら、目頭が熱くなるのを感じた。

 

 止めたほうがいいとわかっている。だが、きっと彼は意思を曲げない。

 

 どうすることもできずプリンプリンはうなだれる。

 

 トントンが限界を迎える前に早くマリンが見つかってほしい――。

 

 願ったら天に届いたのかトントンがゆっくり目を瞬かせた。

 

「……見つけた」

 

 プリンプリンは身を乗り出して彼に聞き返す。

 

「本当? マリンちゃんは、どこにいるの?」

「これは……公園だな。ブランコがある」

「あそこかあ」

 

 ボンボンが言った。

 プリンプリンにも覚えがある。

 

「案内できるわ。行きましょう」

 

 トントンの体をボンボンと一緒に支えながら、急いでマリンのもとへ向かった。

 

***

 

 プリンプリンたちがマリンのいる公園へ向かっている間、セインとオハナもリンリンを探していた。

 マリンと違ってリンリンには土地勘がある。迷子になることはないだろうが、セインは胸騒ぎがしていた。

 

「嫌な予感がする……」

 

 走り回って汗に濡れた水色の頭を抱える。

 店で切り分けてもらった果物をバスケットに入れ、肩に下げているからなおさら汗が噴きでた。

 隣でオハナが尋ねてくる。

 

「それって、セイちゃんのお父さんみたいなヨカン?」

「オレにはあんな予知みたいなモンはねえよ。

ただ……こんなときだろ。リンリンの性格上、ムチャをしでかすような気がするんだ」

 

 セインもオハナもリンリンとは赤ん坊のときからの付き合いだ。

 だから彼の性格はよく知っている。

 リンリンは友だちのためなら、どんな無茶でもする。

 

 リンリンがセインたちに黙っていなくなるなんてマリンが絡んでいるとしか思えない。

 

 セインは雑踏の中にリンリンの姿を見出そうとするが、行き交うのは大人ばかり。

 たまにリンリンぐらいの歳の子を見かけても必ず親がそばにいる。

 

 セインはオハナに向き直った。

 

「オハナ、買った果物をお前んちに置かせてくれ。ひょっとしたらリンリンはもう市場にはいないのかもしれねえ、他をあたるぞ」

「オハナも行く!」

「ああ、離れるなよ」

 

 セインはバスケットを持ち直すと、オハナを連れていったんパン屋まで向かった。

 

 夏休み期間中の市場は、先日からセインたちを不安がらせている事件など無関係とばかりに騒がしかった。

 

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  • リトルプリンス・リンリン
  • キッキ
  • オハナ
  • セイン
  • マリン
  • ヤーブレとカーブレ
  • リンリンのおばあちゃん
  • リンリンのおじいちゃん
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