6、
話を聞き終えたマリンは、アイリーンと一緒に応接室へ向かった。
かつてリンリンたちとブレスレットを作った部屋だ。
大きな窓から陽が入ってきている。
ひとりがけのソファに彼が座っていた。
「マリン……」
黄色い帽子と黒いスーツ。帽子から銀色の髪が覗いている。
「トントン!」
マリンは反射で彼の名を呼ぶと、その胸へ飛び込んだ。
いつもどおりの体温のトントン。彼女を優しく抱きとめてくれる……。
今度は追体験ではなく、マリン自身の心が震えた。
「よかった……直ったのね。本当に、よかった」
「まだ完全には直りきっていないけど、マリンを置いてけぼりにしたら成仏できそうにないからね」
「バカ……」
マリンへ軽口を叩く余裕もあるようだ。
ただ、マリンには返事に普段の切れ味がない。
そんなことはどうでもいいほどにトントンの無事が嬉しかった。
アイリーンの言葉になぞらえ、マリンは思う。
自分が信じなかったせいで、トントンが海の泡のように消えていかないで本当によかった。
「一時はどうなるかと思ったよ〜、もう」
向かいのソファに腰かけているボンボンが疲労を隠さずに言う。隣でプリンプリンが労うように微笑んでいた。
マリンはトントンの腕の中から彼を見やり、ペコリと頭を下げる。
「あの……リンリンのお父さん? トントンを直してくれて、ありがとう」
「ボンボンでいいよ。それに、おれがやったのは応急処置だけだから。動けるようになったらトントンが自分で修理したんだよ」
「そうなの。でも、ありがとうございました」
八重歯を見せて笑うボンボンに、マリンはリンリンの姿を重ねた。親子だけあってよく似ている。
そういえばリンリンはどうしているだろう。
ひどいことを言ってしまった……。
「そうだわ、お母さん。リンリンたちはどこ? お願いしてたハズだけど」
マリンの疑問をプリンプリンが代わりに口にしてくれる。
隣に立つアイリーンが頬へ手をあてた。
「あの子たちはね、マリンちゃんを迎えるパーティーを開くためにお菓子を買いにいったのよ。しっかり者のセイちゃんがいたから大丈夫かと思ってお願いしたの」
「あら、かわいい。待ち遠しいわね、マリンちゃん!」
二人はマリンとリンリンがすでに再会したことを知らないから、ニコニコ笑っている。
言わなくては。自分のひどい言葉でリンリンを泣かせてしまったことを。
そして早く迎えにいって、『ごめんね』と伝えないと。
マリンが口を開いた瞬間――。
「おばあちゃん、いる⁉︎ 大変なんだッ!」
セインが息を切らして走ってきた。全身汗だくで、でもそんなことは気にも留めずに部屋へズカズカと入ってくる。
後ろからオハナもついてきた。泣いたのか目が真っ赤だ。
「どうした? セイちゃん」
二人の様子からただ事ではないと感じ取ったのか、ボンボンが緊張した面持ちで聞いた。
するとオハナが火がついたように大声で泣き出す。
アイリーンが膝をつき、小さな体を抱きしめた。
「まあ、まあ。オハナちゃん、何があったの……?」
部屋の空気が張り詰めている。
セインがオハナを見やりながら、目をこすった。
彼もまた涙を浮かべているようだ。
それでもセインはその場にいる全員へ告げる。
「リンリンが――リンリンが、いなくなったんだッ! ナンでか知らないけど浜辺にスニーカーと靴下、リュックがあって……でも姿がどこにもなくて、キッキもいなくて!
あったのは、海に浮かんでいた帽子だけなんだ。だから……、
きっと、波にさらわれちまったんだよ! 海で消えちゃったんだ……それで、まだ見つからないんだよぉッ‼︎」
―――第十話 おわり―――
1周年記念:アルトコお便りコ〜ナ〜
もうすぐ連載開始から1周年を迎える『リンリン』に届けられたおハガキを紹介するページです!
主に頂いたイラストを自慢しちゃおっていう下心なんですが……(*´◒`*)
【挿絵表示】
アルトコ市ご在住:ネオン管さん((X: @neon_kan )
9話ラストでドレス姿のまま暮れなずんでいたマリンのイラストを頂きました。
当時、『モダンなドレスとは?』みたいな会話をした記憶がありますw でもプリンプリンのドレスを現代的に落とし込むとこうなる気がします。この時のマリンの心境まで考えてくださって、そんなふうに読んでもらえて嬉しいな〜と思ったのでした。
ネオン管さん、デザイン含めてありがとうございました♪
おハガキ募集中!
アル国アルトコ県アルトコ市
1979-4-2
アルトコ総合テレビ 『あの海のリンリン』宛
※↑嘘だけど(笑) 描いてくださったら嬉しいです。
許可を頂けたらコチラで紹介させていただきます〜。
好きなキャラクターを教えてください(原作キャラは含みません)
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リトルプリンス・リンリン
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キッキ
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オハナ
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セイン
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マリン
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ヤーブレとカーブレ
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リンリンのおばあちゃん
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リンリンのおじいちゃん