あの海のリンリン   作:つるみ鎌太朗

51 / 68
第十一話 リトルプリンスの帰還(1)

 

1、

 

「緊急ニュースです! アルトコ市の海岸で男の子が一人、行方不明との速報が入ってきました!

男の子は単独で海に入った模様……いや、今しがた入った情報によると猿と一緒だったそうです! 男の子の名前はリンリンちゃん、八歳。地元に住む男の子で……、

エーッ⁉︎ 十数年前、世間を騒がしていたあのプリンプリンちゃんのお子さんなのォ⁉︎ あらあらあらあらァッ、懐かしいですねッ! ワタクシが彼女たちを追っていたんですよォ。

って、それどころじゃなァ〜いッ! これは、由々しき事態! いや、そーでなくても大変なことですが!

二次創作的に原作の続編のつもりで書いておいて、その子どもをですよ、しかもコンな小さな子をですよ。退場させちゃァダメでしょッ! まったくヤんなっちゃいますよねぇ、勝手なことを書かれちゃァ。

ファンってこれだから……」

 

 夕方のニュース番組で、やたらクチビルの大きなアナウンサーが暴走していると、カメラ外から彼とよく似た女性のアナウンサーがフレームインしてきた。

 

「お兄ちゃん、メタ発言はよしなさいよ。マジメな話なんだから!」

「あッ、またボクの番組にしゃしゃり出てきて。

こういうのは助かるって相場が決まってるのよォ〜しかも、この二次創作の主人公なんでしょ? そりゃバイアスもかかって何かしらの奇跡がパーっと起きて、大団エェ〜〜ンってなモンさ」

「ネタバレしちゃダメでしょッ! もういいから、引っ込んでなさい!」

 

 緑色の髪をひとつにまとめた妹と思われるアナウンサーが、男性アナウンサーを押しやる。

 男性が黒い髪を振り乱して怒っていた。

 

「アーッ、何をする! やめなさい、やめなさい!

こうなったら出番が終わるまで喋りつくしますけどね、ナンですか? アルトコ総合テレビって!

コンプラ的に『アル中テレビ』は令和ではマズいってェ〜?

知りませんよ、『プリンプリン物語』は昭和のテレビ番組なんですからッ! 再放送でもテロップ入ってるでしょ、ナゼ無関係の二次創作で配慮せにゃならんのですかッ!

こらッ、ニュース番組風のはじまりで書いてみたかった……って。でもニュースそんなに聞いてないからわかんなかった、って⁉︎

もォォォォォ〜、書くならしっかりリサーチしてからにしなさいよッ! シュミだからってテキトーすぎるよッ!

ア〜〜〜〜ではでは本編に戻ってどうぞッ! 花のアナウンサ〜〜〜ァァアア〜〜でしたァッ!」

 

2、

 

 陽がかたむきだしたアルトコの海には捜索船が何隻か出払っていた。

 ふらつく体でナンとか立ち、プリンプリンはその船を目で追う。

 手にはリンリンのセーラー帽が握りしめられていた。

 

 かたわらで母親のアイリーンが支えてくれている。

 

「プリンプリン……リンリンは、きっと大丈夫。あの子は『虹の祝福』を受けた子。

こんなに皆さんが協力してくれているのだから、見つかるわ……、そうに決まっているわ!」

 

 彼女にとってもリンリンはかわいい孫。娘のために気丈に振るまっているのは見て明らかだった。

 

 アイリーンの優しさに応えるべくプリンプリンも無理に笑う。

 

「ええ、そうね。お母さん……わたし、リンリンやみんなを信じるわ」

 

 中年の男性二人組がドタバタと駆け寄ってきた。

 頭のてっぺんがつるつるな小太りの小さな男と、対照的なモジャモジャした髭と髪でノッポの男だ。

 

「プリンセスさまぁ〜、聞きましたよ。息子さんが行方不明、って!」

「リンリンが〜赤ちゃんだったころ、おれ覚えてるなぁ〜〜! まんまるいおててがかわいくって、もう悪いコトしない〜〜って、誓ったんだよお〜〜!」

 

 ノッポのほうが擦り合わせた両手を頬に寄せる。

 小太りが厚い胸を叩いた。

 

「俺っちたちができることなら、ナンでもしやすぜ! 救命ボートもかっぱらってきましたし!」

「そうだよ〜〜〜騒ぎになってるからァ、簡単だったんだ〜〜〜」

 

 祖国を探していたころ、なぜだか旅についてきたシドロとモドロ。現在はアルトコ市で職業を転々としながら気ままに暮らしている。

 プリンプリンはたまに顔を合わせるが、改心したようでも過去の悪癖がなかなか抜けないことは知っていた。

 苦笑いで釘を刺す。

 

「あなたたち……気持ちは嬉しいけど窃盗はダメよ。返してきなさいな。持ち主には、ちゃんと謝ってね」

「え〜〜〜! せっかく舟があるのに」

「でも〜プリンセスさまが仰るなら〜〜〜謝ってきまァす」

 

 二人はくるりと踵を返し、怒られにいった。

 プリンプリンは彼らの背中を見送ると、またため息をつく。

 

 リンリン。愛しいわが子。

 いったい、あなたはどこにいるの……?

 

 青い海がすこしずつ金色に染まりかけていた。

 

***

 

「見せ物じゃないでございますですよッ! 現在、捜索隊が鋭意捜索中。野次馬はご遠慮いただきたいでございますですよッ!」

 

 気落ちしているプリンプリンから離れ、ボンボンは捜索隊の報告を受けにいっていた。

 背後では、かつて旅の仲間だった通称・軍曹がロープから身を乗り出す野次馬たちを追い払っている。

 ツノのついたヘルメットを被る彼は、警備の仕事をしながらアルトコ市に落ち着いていた。このたびも騒ぎを聞きつけて群がる市民たちを他の警備員とともに押さえている。

 

 おかげで捜索隊の調査報告をじっくり聞くことができた。

 しかし、まとめると進展なし。手がかりも見つからないとのことだ。

 

「ボンボン君。小生の推理によると、リンリンちゃんは海でマリンちゃんのペンダントを探していたんやないかと思うんだが、どうかね?」

「おれもそう思う……」

 

 一緒に聞いてくれた赤毛のシャーレッケ・マイホームの推測にボンボンもうなずく。

 先ほどマリンからも経緯を聞かされたが、それしか考えられない。

 

「リンリンちゃんはキミに似てムチャしよるからなぁ……」

「普段はプリンプリン似でのんびりしているんだけど、とたんに突拍子もないことをしでかすから。それに友だちを大事にする子だ」

 

 プリンプリンのもとへ戻ろうと歩き出せば、マイホームとは反対隣のオサゲ……オハナの父親で、ボンボンの友人……が尋ねてきた。

 

「ボンボン……きみ、大丈夫?」

 

 ボンボンはオサゲに答える。

 

「ダイジョウブ……ではないよな。でも、プリンプリンのためにも、おれがへこたれちゃダメだから」

「無理しないでください。ワタシたちもいますから」

 

 もう一人の友人、カセイジンも駆けつけてくれた。

 メガネを押さえながら申し訳なさそうに背を丸める。

 

「残念ながらナンのヨカンもまだありません……」

「いいよ別に。何かあったら頼むぜ」

 

 集まってくれた仲間たちに感謝しながらもボンボンはリンリンの安否が気になって仕方がなかった。

 もちろん無事を信じたい。だが、海はひろすぎる。

 リンリンの小さな体はあっという間にさらわれてしまう。

 

「リンリン……」

 

 愛息子の名前をぽつり、呟いた。

 

 

好きなキャラクターを教えてください(原作キャラは含みません)

  • リトルプリンス・リンリン
  • キッキ
  • オハナ
  • セイン
  • マリン
  • ヤーブレとカーブレ
  • リンリンのおばあちゃん
  • リンリンのおじいちゃん
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。