あの海のリンリン   作:つるみ鎌太朗

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第十一話 リトルプリンスの帰還(4)

 

4、

 

 シドロとモドロがかっぱらってきたボートを借りられることになった。夕焼けの中でボンボンがオサゲやカセイジンと共に海へ出る準備をはじめている。

 

 持ち主から『ガソリンのことは気にしないで。先日いれたばかりだから』と聞かされた。

 子どもの遭難と聞き、持ち主も痛ましいと同情したのかボンボンたちに協力的だった。

 

 準備の間、プリンプリンは母親や来てくれたワット博士と話している。

 

「プリンプリン。貴女も行くの?」

 

 母のアイリーンが不安そうな声で尋ねてきた。

 隣のワットも丸メガネの奥の目が落ち着きなくキョロキョロしている。

 

「そうよ、危ないわ。リンリンちゃんが他で見つかる可能性だってあるし、ボンボンくんたちに任せて待ったほうがいいんじゃない?」

 

 二人に諭されてもプリンプリンは首を振った。

 

「わたし、リンリンを早く抱きしめてあげたいの。あの子、我慢づよいけど本当は甘えん坊だから。

きっと寂しくて泣いているわ……」

 

 そう言われてしまうとアイリーンもワットも何も言えない。

 二人はプリンプリンを囲み、無事を祈った。

 

 一方、船に乗り込んだボンボンへはシドロとモドロ、マイホームが励ましの言葉をかけている。

 

「ボンボン! リトルプリンス様を早く見つけてくれよな」

「そうだよお〜〜〜ボンボンに似てるけど、ボンボンと違ってすっごくかわいいんだから〜〜〜。おれ、リンリンに早く会いたいなあ〜〜〜」

「おれがかわいくないは余計だよ。ったく、こんな時ぐらいマトモに送り出せねえのか」

 

 シドロとモドロに悪態をつくボンボン。

 ベレー帽を被ったマイホームが腰を叩きながら呼びかける。

 

「小生の推理がなくて心細いやろが、持病の腰痛がな……船が揺れるたびに痛うて敵わん」

「いいよ、マイホームさん。トシなんだから色々と程々にしときなよ」

 

 ボンボンが送り出されている横で、オサゲとカセイジンも家族から見送られていた。

 

「オヤジ、リンリンのこと絶対に見つけてやってくれよな!」

 

 セインが船のへりから乗り出して、カセイジンへ告げる。先ほどまで泣いていたから目が腫れぼったい。

 その肩をカセイジンの妻が抱いている。

 

「あなた、ムチャしちゃだめよ。水泳もニガテでしょ?」

 

 甘い声で気遣う。

 カセイジンは息子と妻へ告げた。

 

「確かにニガテですけど……いざという時のための浮き輪もあります! リンリンも泳げませんから、ワタシが使う事態にならなければよいのですが……。

いいえ! 何かあるならきっとヨカンがあるハズです。前もって心の準備はできます! では、いってきます!」

 

 カセイジンが決意表明すると同時にオサゲも家族を抱きしめていた。

 

「お父ちゃん、リンリンはきっと見つかるよね?」

 

 オハナがオサゲにぶら下りながら聞いている。

 オサゲは娘をぎゅうと抱き返した。

 

「ああ。ボンボンがあんなに張り切ってんだもん、きっとナンとかなるよ。じゃあ行ってくるね!」

「とうちゃあ〜ぼくも〜」

「わたしも〜」

 

 下の双子も抱っこをせがむので順番に抱きあげる。

 最後に妻を抱きしめてからオサゲは家族へ手を振った。

 

 皆がそれぞれ家族に見送られている中、また一人、船へ近づいてくる。

 

「私も行こう。……機能は完全に回復していないが、遠視ぐらいならできる」

 

 トントンだった。

 ボンボンは仲間と一緒に彼の姿を見つけると、ニヤリと笑った。

 

「お前さんがいるなら百人力だぜ」

「ああ。恩は返すつもりさ」

「あっははは! お互いさまだろ」

 

 ボンボンの手を取り、トントンがボートへ乗り込む。

 あとはプリンプリンを待つだけだ。

 

 その矢先のことだった。

 

 人垣をかき分けてマリンが飛び出してくる。

 

「待って、わたしも一緒に連れていって!」

 

 泣き腫らした目に強い意志を宿して駆け寄ってくる。

 皆が呆気に取られ、静まった。

 

 マリンはボートの前で立ち止まり、胸を抑えてなおも言いすがる。

 

「リンリンがいなくなったのは、わたしのせいなの。リンリンはわたしのペンダントを見つけようとしてくれたの!

わたしが行かないといけないの! お願い、連れていって‼︎」

 

 頭を下げて懇願する彼女にボンボンは一歩引いた態度だった。

 碧の瞳がどこか冷めている。

 

「気持ちはわかるけど……ボート、もう狭いんだよ。それにきみは子どもだし自分で責任は取れないだろ。

申し訳ないけど、ここでセイちゃんたちと待って」

「いいじゃないボンボン。マリンちゃんも乗せてあげましょうよ」

 

 ボンボンが断ろうとするのをプリンプリンが止めた。

 さえぎられたボンボンがギョッとしたように見やる。

 

「でも……」

「マリンちゃんはリンリンに負い目を感じてる。残すのは酷だわ」

「だからって……」

 

 渋っているとトントンからも食い下がられる。

 

「ボンボン、マリンの責任は私が持つよ。彼女は行きたがっているんだ、どうか一緒に乗せてやってくれないか?」

「……」

 

 残る二人からも『乗せてあげないの?』というような目で見られ、ボンボンが唸った。

 迷っている時間はない。彼はすぐに答えを出す。

 

「ああ〜……わかった、わかった。これで最後! もう定員オーバーだからなッ」

 

 マリンが顔をあげると、プリンプリンが手を差し伸べた。

 

「それじゃあ行きましょう、マリンちゃん。早くしないと日が暮れるわ」

 

 マリンがその手を両の手でギュッと握りしめる。

 

「ありがとう……!」

 

 こうして、プリンプリンたちはリンリンを捜しに海へ出たのであった。

 

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  • リトルプリンス・リンリン
  • キッキ
  • オハナ
  • セイン
  • マリン
  • ヤーブレとカーブレ
  • リンリンのおばあちゃん
  • リンリンのおじいちゃん
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