合否発表のためだけに爆豪家にお邪魔して、雄英高校から送られてきたプロジェクターを見て合否を確認する。面接の時に、何をしていたか聞かれたので正直に、理不尽に留年させられていた事を説明して。家が無いこと、知り合いの家に住んでるという嘘も交えながら、答えていき。驚かれながらも、なんとか終わったために、どちらかは予想できていない。
『わーたーしーが、投影された!!』
「オールマイト?」
家が燃やされる前は、沢山のグッズを自身の部屋に飾ってあった、日本のトップヒーロー、オールマイト。数々の事件を解決するその姿は幅広くどの年代にも人気で、平和の象徴たる人間だ。
『知っていると思うが、私がこの街に引っ越していたのは他でもない、来年度から雄英に勤めることになったからさ!』
なるほど、ラジオで言われていたのはこれが理由だったのか。廃ビルではテレビが使えないので、ラジオで情報を収集しているが、映像の必要生を改めて感じるに至った。
『さて、古明地少年、君の合否だが、あえて先に言おう!合格だ!筆記も上々だったが、実技試験も見事の一言だ!君が獲得したヴィランポイントは驚異の89!これでも大したものなのだが……もしや、君はこの試験の隠された内容に気付いていたのかな?』
一番心配だった筆記が上々ということで、少し嬉しいものであるが、それと同時に隠された内容が気になるものである。
『実はこの入試、見ていたのはヴィランポイントのみにあらず!!大小関係なく誰かを救ける、そんなきれい事を命がけで実践できるかも、ヒーローの絶対条件だ!
もうひとつ我々が見ていたのはずばり、"レスキューポイント"!それも審査制!!これによって君が得たポイントは78P!合計で167P!
おめでとう古明地少年、合格……それも首席だ!』
なるほど、確かにヒーローには必要なことだ。けどそれはあまり賛同できない面もある、僕が言える立場ではないが、加害者と被害者に五分五分で助けろというのも変な話だ。まぁこれはあくまで、怪異にかかわる事柄であるので、ヒーローにはあまり関係ないことでもあるが、人の縁というのはどこでどうつながっているか分かったものではないということだ。怪異絡みの加害者、呪を行ったものが傷つく分には僕は嫌とは思わない、人を呪わば穴二つ、自業自得というやつだ。そしてこの結果から察するに、隣で聞いていた、ヤツは苛立ちを隠せていないということだ。自身の感情をコントロールできないうちはまだまだ子供と言えるだろう。
「……やっぱテメェが一位かよ」
「君は人を助けることをしないからね、でも、今ここで手を出さないのは成長と言えるかもしれないね」
「ケッ」
「それじゃぁ、着替えも回収したし戻るとするよ、」
―――――――――
人を迷わせる気しかしない、ただただ広い敷地に足を踏み入れて、少し迷いながらも、目的の部屋、雄英高校1年、ヒーロー科A組の部屋に向けて足を運んでいる。広い廊下に高い天井、バリアフリーというやつだろう。席に着いているだろう幼馴染が周りと馴染めているか、不調和故に目的を作っているか、珍しい、自身をイジメてきたやつを気にかけて、ようやく付いた教室も、廊下と同じように大きな作りとなっていて、やはりと言うべきか、案の定というべきか、予想通り、爆豪勝己ともう一人、言い争いをしている声が聞こえる。
「机に足をかけるな!先輩方や机の制作者に申し訳ないと思わないのか!!」
「いちいち思ってられんわ面倒くせえ!テメエ何様だコラ!」
「ぼ……俺は飯田天哉、私立聡明中学出身だ!」
「ちっ聡明っつーことはエリート様かよ……まあいいぶっ殺しがいがあるってもんだ」
「ぶっ殺しって……せめて競いがいにしてくれないか!物騒だぞ!?」
いつも通り、これでも丸くなったと思えている僕がおかしいのか、元々度が過ぎているのか……いつまでも答えが出ない自問自答を諦めて、中サイトまでは行かないが、声を掛ける。
「相変わらず元気いいなぁ君は、何か、いいことでもあったのかい?」
「出久……」
「まぁ…これでも丸くなってるから言いほうか……」
「君は…」
「古明地出久、まぁ、そこにいる爆豪くんのお目付け役みたいなもんさ」
「んだコラ」
つかみは上々と言ったところか、けどあまり信用はできないかな、覚は使ってないけど、人は信用ならない。覚を使う勇気がない僕も僕だが、やはり敵意があるヴィランのほうが正直だったりもする。
「お友達ごっこしたいならよそに行け!」
「……」
寝袋に入った、手入れのされていない髪に伸ばしっぱなしの髭、清潔とは到底言えないような、人間がそこにいた。
「ここはヒーロー科だ。…ハイ、静かになるまで八秒かかりました。時間は有限。君達は合理性に欠けるね。……担任の相澤消太だ。よろしくねそして早速だが
言われるがままに、着替えてグラウンドに出る。何をするのかわからないが、入学式もせずに、何かするのであればヒーロー科が特殊の可能性がある。それに合理性、道理や効率を意識する考え、度が過ぎたことに何かあったのか、元々そういう性格なのか。
「「「「個性把握テストォォォ!!!」」」」
「入学式は?ガイダンスは!?」
「ヒーローになるならそんな悠長な行事に出る時間はないよ。雄英は自由な校風が売り文句、そしてそれは先生側も然りだ」
あまりやりたくはないが、覚を使うのもいいかもしれない、問題は信用等々と俺へのダメージ、猫が自立していたときと違って、庇ってくれるものもなく、切り離すこともできない、やろうと思えばできるが、それでは、五年前の一件が無駄になってしまう。
「爆豪、中学の時のハンドボールの記録は?」
「67m」
「じゃぁ、個性使って投げてみろ、円からでなければ何してもいい」
「死ねええぇッ!!!」
FABOOOOOOM!!!
爆風を乗せとんだボールは眼で捉えにくいほどに小さくなる。しかし、死ねか、爆豪らしいけど、それはお勧めできない気合の上げ方だ。
「785.2mまず、自分の最大限を知る」
「なんだこれ!すげー面白そうじゃん!」
「個性思いっきり使えるんだ!さすがヒーロー科!」
「……面白そうか。ヒーローになるための三年間、君らはそんな腹積もりで過ごすつもりでいるのかい?」
「ん?」
嫌な予感がする。それも五年前の猫の一件よりかはマシだがそれでも、今後を左右するべきことの可能性が高い。
「よし今決めた。このテストでトータル成績が最下位の者、ヒーローの見込みなしとして除籍処分とする」
「「「「は……?はああああああッ!!?」」」」
なるほど、何かあったな。浮かれた心、そこから来る視野の縮小、手遅れとなる、行動。六年前に感じたものと同じだ、爆豪もその一人だったから。
「ちょっと待ってください!最下位除籍って……入学初日ですよ!?いや、そうじゃなくっても理不尽すぎます!」
「残念だがこの程度の理不尽、まだまだスタートラインってところだ。事故に災害、
「理不尽…………」
理不尽、心を読める個性というだけで忌み嫌われ、避けられて、攻撃される。そんなことを、六年受けてきた僕には分かる。これは温情だと。敵意じゃない、この先で理不尽な敵意に押しつぶされる前に、理不尽をぶつけることで慣れさせる。そういったやり方だ。
「次はお前だ古明地、投げろ」
「…………」
「どうかしたかい?爆豪くん」
「いや、昼のアイツはどうなのかって」
「?」
「俺は、自分がトップだと思いてぇ、けど、アイツは別だ。この中で誰よりもやばいのはアイツだ、いくら昼に出力が落ちるとは言え、あれは、化け物だ」
「「「「「…………」」」」」
「9139.4m」
失礼な言葉が聞こえたが、今はそれを無視しよう。鬼だけで、トップに行けているが、〈無重量〉や現代機器、には、今は勝てない。良くも悪くも僕は夜の世界の住人なのだから。一位か……まぁまぁだな、怪異の王たちの力はこんなものではないのだから。
「ちなみに除籍は嘘な」
「「「「は?」」」」
「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」
「あんなのウソに決まってるじゃない……ちょっと考えればわかりますわ……」
歓喜で叫ぶ、最下位のぶどう少年。それに対して、嘘だと、考えればわかるというが、わかっていないのは、お嬢ちゃんの方である。
まぁ言わぬが花というやつだろう。