なんか違う尊厳裁判   作:haguruma03

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転②『逆転裁判(無理)』

 

 

「なーに考えてやがりますの!卑怯ですわ!」

「てめぇ...やっぱり『名無しの魔女』じゃねぇか!」

 

半狂乱のハンナの声が裁判所に響く。その声に続く様にアリサもまた叫ぶ。

2人の言葉の矛先を向けられた彼女は、そんなこと気にしていないように、どこか自暴自棄のような笑いを浮かべていた。

「違いますぅ。あてぃしはあてぃしですぅ!」

「信じられるか!!」

 

ココに対するアリサの返答。

それはそうだ。皆を道連れにする手を打とうとするココを『名無しの魔女』だと断定する理由としてはその考えは間違っていない行為だ。実際、投票をせず全員の処刑と裁判のやり直しを狙う行動はそうと疑われてもしょうがない。私もそう思う。

だが、ココならやりかねないという考えもある。

ココもまた他の皆と同じ様に馬鹿ではない。むざむざ悪手を打つ人間では無いことはよく知っている。だが、この裁判では命がかかってる訳では無い。つまり感情を優先した行動をとる可能性も否定できない。

 

その場合、感情論で武装したココを説き伏せる必要性があるのだが...

 

「沢渡ココ、流石にその選択は悪手だわ。せっかく今回の投票で勝てるのに、その手を打つと今までの行いが...」

「うっさい!うっさい!ならあてぃしを納得させて見ろし!!!」

 

まぁ。こうなるだろう。

ナノカの理性的な言葉はココに簡単に跳ね除けられ、オロオロと辺りを見渡している。

 

私が説得してもいいが、おそらく上手くいかない。

私のやり方は正しさと相手の落ち度を追求するやり方。記憶にある魔女裁判ならば、それでよかった。それで相手の不審な点を突き相手を逆上させ不利な証言をさせ皆の信用を勝ち取り、多数決で相手を吊る。それで解決できた。

だが、今やっている裁判はそうでは無い。吊られる投票者の了承すら得ないといけない。

まず私のやり方ではココは必ず逆上するだろう。

ならばいっそまた最初から裁判をやるのか?

ワタシはそれでもよかったが、レイアに私は任せてしまった。

ならあとは彼女に任せても...ん?

 

チラリとレイアに視線を向けると、そこにはレイアとエマが2人でコソコソと話し合っているのが見えた。

何をやっている?

疑問が湧くが、とりあえずは見守る事にする。

レイアの言葉に驚きレイアの顔を見るエマ。

そんなエマに茶目っけのあるウインクと共に言葉を続け、それにウンウンと何度も頷くエマ。

 

...嫌な予感がする。

そんな漠然とした考えが頭に浮かぶと同時にとエマが勢いよく手を挙げた。

 

「え、えっとちょっといいかな?」

 

「ん?」

 

「どうしたのですか?エマさん?」

 

皆の注目が集まり、口々に疑問の声を上げる。

突然注目が集まりエマは

 

「はい。エマちゃんどうぞ♡」

 

まるで学校や教師かの様にマーゴが楽しそうに促す。するとエマは戸惑うがこくりと頷ずいた。宣言する。

 

「ボクが、ボクが!『成り変わりの魔女』だよ!」

 

「嘘つくのはやめろし」

 

「なんで!?」

 

「エマっちの嘘下手すぎんだって」

 

秒でココに切り捨てられるエマ。

まぁ、それはそうだろう。あれほどわかりやすい人間もいまい。

それでもエマは食い下がる。

 

「ボ、ボクが自白するからボク。取引としてココちゃんにも投票して欲しいんだ!」

 

「いや、嘘っしょ」

 

「嘘じゃないよ!」

 

「嘘じゃないならエマッちに投票集めればいいんじゃね?」

 

「それだとボクは投票しないよ!裁判も終わらず最初からやり直しだよ!」

 

「あてぃしが被害に遭わないルートがあるかもしれないし、それまでやり直すのありじゃね?」

 

「そんなぁ」

 

プイッとそっぽ向くココと頭を抱えるエマ。

エマの何も解決せず意味のない虚言。何をやってるのか...

思わずため息をつき、そんなエマを焚き付けた下手人に目を向けると、彼女はスポットライトがやっと当たった主役のように会話に名乗り出た。

 

「やぁやぁ、ココ君。苦悩しているようだね」

 

「レイアっち...」

 

明らからにエマをそそのかした張本人にココは嫌な顔をする。

だか、そんなココを気にせずレイアは微笑む。

 

「それにしても、なんでエマ君が自白したのに嘘だと言って切り捨てたんだい?」

 

「だからエマっちに嘘は---」

 

「今まで成り代わられた子たちは嘘をついていたわけだけれど見破れたかい?」

 

「う...」

 

ココは口籠る。

そんな彼女にレイアは言葉を続ける。

 

「今まで『名無しの魔女』はほぼ完璧に私たちに擬装してきた。皆は違和感を抱かなかったと思う。もしかしたら成り代わられた側も自分が『名無しの魔女』だと認識していないかもしれないと思うほど完璧な成り代わりだった」

 

「...あてぃしが、成り代わられてるのに成り代わられている自覚がない可能性もあるって事が言いてぇの?」

 

「その可能性もあるって事だよ」

 

「...」

 

レイアの言葉にココは黙る。

第二回の裁判から『名無しの魔女』の存在がわかっていたのにも関わらず皆見破れる事はできなかった。それほどまでに、成り代わられた者は『いつものまま』に見えた。

レイアのいう可能性もあるかもしれない。そんな考えが出るほど、『成り代わり』を見破るのは不可能。私はそう確信している。

 

「だから、君が嘘と言ったエマ君が『名無しの魔女』である可能性も、ココ君が自覚のない『名無しの魔女』である可能性も、私達は捨てきれないんだ。」

 

そう語るレイアは悲しそうに目を伏せる。

そして辛そうに言葉を続ける。

 

「私が今見ている目の前のココ君はいつものココ君だ。だが、そうだったとしても『名無しの魔女』である可能性がある。」

 

「...」

 

「理性や感情は目の前にいる人物はココ君だと言っているが、それでも仲間を疑わないといけない。それは辛い事だ。だがその疑心暗鬼もココ君の協力があれば終える事ができる」

 

「...」

 

「辛いと思うし、申し訳ないと思う。おねしょなんて乙女の尊厳を揺がす事なんてしたくないと重々承知している。だがこの疑心暗鬼から抜け出せるなら---どうか、君を犠牲にしてしまう愚かな手段を取る私達に力を貸してほしい」

 

「うぇ」

 

そうレイアは言って頭を下げ、ココは一歩後退りした。

 

真剣な表情で頭を下げて頼み込むレイア。

吊られるものの辛さの共感、この手段を取らないといけない苦悩、そして真摯さを感じる頼み方。

 

今まで皆から突きつけられた強制ではなく、嘆願。

この二つの違いは大きい。

 

他の皆は黙り静寂の中、話の舞台に上がっているのはレイアとココのみ。

完全にレイアはこの舞台を支配していた。

ココも頭が回る人間だ。感情論を抜きにすれば、はたまた自分が犠牲にならなければこの方法が正しいと理解しているはず。

そんな状況でここまでお膳立てされてはココも断りずらいだろう。

 

実際ココは次の言葉を迷い、口をモゴモゴと動かしている。今彼女の頭の中では様々な思考が入り乱れているに違いない。

こんな状況でと彼女が答えを出せないのは、おねしょが思春期の乙女にとって凄まじく重いものであるからだろう。

 

ココは悩み、次の言葉を口に出そうとした時。

 

ポーン

そんな時、そんな彼女の背を押す軽い音がした。

 

その音は聞き慣れた音。端末から発せられる投票が行われたと言う音であった。

皆そちらに目を向ける。投票を行った者。エマはココとレイアの舞台に上がる。

 

「ボクは投票したよ」

 

エマはそう言いココに端末を見せた。

そこには『投票済み』の文字。

 

手元の端末を弄り、投票数を見る。

『桜花エマ 1票』

 

エマの端末に映し出された『投票済み』の文字と手元の投票先を見る限り、エマは自分に入れたのだ。

 

その姿にココは目を見開き、天を仰ぐ。

誰も口を開かないしゃべらない。ただただ舞台の3人を見るのみ。

 

数秒たった後、ついに壇上の主役は動いた。

 

「ぁあああ!!もう!」

ココは頭を掻きむしり、端末を取り出し操作する。

 

ジリジリとした音が端末から響いた後、ポーンとした軽い音が響き渡った。

 

手元の端末を確認する。

そこには新たな表記が増えていた。

 

『沢渡ココ 1票』

 

「感謝しろよ!おめぇら!」

 

そう言ってココが私達に向けた画面には先ほど見た画面と同じ文字があった。

 

『投票済み』

 

その表示を見たエマがココに抱きつく。

 

「ココちゃーん!」

 

「あ〜もうエマっち、鬱陶しいんだけど〜!」

 

「ありがとうココ君」

 

ココは鬱陶しそうにしながらエマを引き剥がそうとして、レイアはそんなココに礼を言う。

 

レイアの作り出した舞台にココはまんまと乗せられたわけだ。

 

とはいえココもそれは理解してるだろうし、レイアの言葉に嘘はないだろう。

 

レイアはただ、ココが受けいられる場を用意しただけだ。

 

あんな売り言葉や買い言葉が乱れ打たれていた場ではココも納得する事が難しかったのだろう。

 

実際皆あの時は頭に血が登っており議論に熱が入りすぎていた。

それを納めた『場』を作りだしたレイアは流石としか言いようがない。

 

だが、最初のエマの嘘は必要だったのだろうか?

なにか引っ掛かりながらレイアに視線を向けると、レイアと視線がぶつかる。

 

ん?

突然の事に目を瞬いてしまう。

視線を向けてから、視線がぶつかったわけではない。私が視線を向けた時にはレイアは私を見ていた。

つまり先に私を見ていた?

 

するとレイアはパチリとウインクを私に投げかけてきた。

...気軽にファンサービスをぶつけるのは正しくない。

どきりと早鐘を打つ心臓を鎮めながら私はじっとりとした視線を彼女に返し、先程まであった疑念を振り払う事とした。

 

そんな時、新たな声が耳に入る。

 

「おねしょする事に苦悩しているようだけど、本当にそうなのかしら?」

 

その声は今まで沈黙を保っていたマーゴからであった。

 

「は?何言ってんの?」

 

マーゴの言葉にココは眉を顰める。

今までの前提を覆す言葉。私も眉を顰めるが、口を出さず2人を見守る。

するとマーゴは言い聞かせるように言葉を続けた。

 

「今回の吊りで2人を吊ることで、裁判は終わるわよね。裁判が終わったら刑が執行されない可能性は?」

 

「刑が執行されるまでが裁判だから、流石に執行されるんじゃね?」

 

「すると、『成り代わりの魔女』も処されるという事になるわね?

 

「自分の仕掛けた裁判なんだから、自分が処される事になったら大人しく処されるに決まって...あー」

 

「覚えがあるでしょ?」

 

思わずココは言葉を止める。

そんな彼女をみながらマーゴも苦笑いを浮かべる。

いや、マーゴだけではない。この場にいる皆が各自表情を変えているだろう。

その表情は決して明るい表情ではないのはわかる。

 

思い浮かべるのは優しく狂った白い少女。

彼女も裁判で吊られることとなり、その刑を放棄した。

まぁ、最終的には刑が処される事になったわけだが。

 

「じゃーなに?このまま、『成り代わりの魔女』処刑しても裁判終わらない可能性あるってわけ???」

 

「裁判は終わると思うわよ?だってこの夢は私たちと勝負するため、勝ち負けははっきりと決める。そうじゃなきゃこんな事する必要はないじゃない」

 

「正々堂々ってこと?」

 

「正々堂々にしては隠し事が多い気がするけどねぇ」

 

眉を顰めるココに対してマーゴは答える。

どこか確信を持った彼女の答え。

その確信が何処から来るか。おおよそ予想はできる。

 

「うーん??」

 

「どうしたのですの?シェリーさん?」

 

「いや。なんでもないですよハンナさん」

 

首を傾げるシェリーとハンナの会話が耳に入る。

チラリと横目で彼女を見た後、私は話を続けるココとマーゴに対して口を開く事とした。

 

「2人ともまずは投票の振り分けをしよう。いつ時間切れが来るかわからないんだ。これで時間に追われて投票して、エマとココのどちらかに投票が寄って片方しか吊られなかったとなってしまってはさっきの2人の覚悟を無駄にする事になる」

 

「まぁ、確かにそうね」

 

私の言葉にマーゴは頷いた。

 

「前回の裁判と違い、誰がエマとココのどちらに投票しても結果は変わらない。だからエマにはレイア、アンアン、シェリー。ココには私、ノア、アリサで投票するようにしよう」

 

「突然仕切り始めたわね」

 

「何か?問題が?」

 

「いーえ何でもないわ」

 

思わず眉を顰め、マーゴに問うが軽く流されてしまう。

 

過去の裁判でのやり取りを思い出すようなマーゴの態度。怪しく思うが今はいい。

 

改めて周りを見渡し確認をとる

 

「この方法が正しいと思うが、どうだろうか?」

 

するとシェリーが手を挙げた。

 

「そういえば、ふと思ったのですが」

「なんだ?」

 

「ハンナさんにも投票した方が良かったりしません?」

 

-----?

 

突然の言葉に動きが止まる。

声の発する方を見るとそこにはいつもと変わらずニコニコしているシェリーがいた。

 

 

「----何言ってやがりますの???」

 

「だからハンナさんにも投票した方が良かったかなぁって」

 

「え?は?」

 

ハンナの疑問にシェリーは変わらず答え、ハンナが混乱する。

 

そんな様子を見ながらノアがうーんと考えた後、ポンと手を打った。

 

「シェリーちゃんそんなにハンナちゃんのおねしょ見たいの?」

 

そんな事は無い。

そう私が言う前にアンアンが成る程と手を打った。

 

「ここにも秘密の花園があったか」

 

「な----ななな、誰が秘密の花園ですの!?それは私達ではないですわ!!」

 

ああ、また始まった。

この尊厳裁判が始まって何度目かもわからない混沌とした議論もどきの開始を合図する『ハンナの叫び』と言う名のゴングが響き渡った。

 

「待ちなさい遠野ハンナ。まるで他にいるような言い方はやめなさい」

 

「あら悲しいわナノカちゃん」

 

「宝生マーゴ!この前から一つ一つ意味深なことを言うのは!?」

 

「火のないところには煙は...」

 

「たつに決まっているでしょう!」

 

「なんかあそこまで必死だと、実は〜ってなんね?」

 

「なんねーよ」

 

「ココちゃん。あんまり噂話とか憶測とかは。本当にやめといたら方がいいなぁっておじさん思うな〜って...」

 

「えぇ〜。まぁおっさんがそう言うなら...」

 

「そうだよココちゃん。もしそうだとしたらナノカちゃんもっとわかりやすいと思うよ?ナノカちゃんが隠し事とか出来ないと思う」

 

「...前から思ってたけどエマっちって時々毒吐くよね」

 

「え?」

 

「程々にな桜羽」

 

「えぇ!?」

 

 

各自が好き勝手話し始める。

さっきの私が吐いた『いつ時間切れが来るかわからない」という言葉を全員忘れているのだろうか?

 

思わずため息を吐く。

とりあえず皆が落ち着くまで待とうと、一息つきあたりを見渡す。

 

ん?

 

各自が思い思いの事を話している。

だが、そんな中レイアと再び目が合う。

いつもの彼女なら率先して話に入っていくだろうに、らしくない彼女に疑問が頭に浮かぶ。

 

理由を聞こうと口を開くがそれよりも早く新たなゴングがなった。

 

「ぐちゃぐちゃうるせーですの!」

 

精一杯腹から声を出しただろうハンナの声と共に証言台が叩かれる。

 

各自がそちらに目を向ける。

 

ゼハゼハと息切れをするハンナ。

そんなハンナにシェリーが声をかける。

 

「大変そうですねハンナさん」

 

「誰のせいですの!!」

 

息切れをしたハンナの叫びが放たれる。

そんなもの気にしないかのようにシェリーは首を傾げた。

 

「誰って...勝手にハンナさんが盛り上がってるようにしか」

 

「好きで盛り上がってるわけねぇですわ!」

 

「そんなにおねしょしたいんですか?したいなら投票しませんが」

 

「したいわけねぇですわ---よ?」

 

シェリーの言葉にハンナの言葉は途切れる。

ああ、なるほど、その言葉でシェリーの言いたい事は理解できた。

 

「もし次があった場合のためか?」

 

私の言葉にシェリーは頷いた。

 

「そうですね。もし次があったら吊られるのはハンナさんになってしまいますし、加えて何もできなくなります」

 

シェリーの言葉にアンアンが手を挙げる。

 

「ん?どういうことだ?」

 

そんなアンアンにミリアは答えた。

 

「今のままだともし次があったとき、ハンナちゃんを吊れなくなっちゃうんだよアンアンちゃん」

 

「何故だ?他に成り代わられる相手なんて---ああ、そう言うことか」

 

「そう、今提示されたやり方だと、全員の投票が処刑する人への投票になっちゃうから」

 

「ルール(4)か。確かにそうなると『名無しの魔女』の2票目以外の票が消えてしまうな。それにしても毎回忘れてしまうぞこのルール」

 

「痴呆が入ってるんじゃねぇのヒッキー?」

 

「馬鹿にしてるのか!」

 

2人仲良く喧嘩を始める2人としどろもどろになるミリア。

 

とりあえずそんな3人を無視して、シェリーの言葉に思考を向ける。

 

確かにシェリーの言う通りだ。

次があるとするのならば『名無しの魔女』以外の投票券は確保しておきたい。

 

「だがなぜハンナに投票を?」

 

「今回ハンナさんに2票入れておけば吊られる事もなくなるかなって思いまして」

 

「もし次があったとしても吊られるのは成り代わった『名無しの魔女』だろう?」

 

 

「吊られたとき、成り変わり先も一緒に処罰をうける可能性ありません?」

 

私の疑問にシェリーは答えた。

そんな答えにハンナは口を手に当て驚く。

 

「シェリーさん...そんなにわたくしのために...」

 

「当たり前じゃ無いですか!私達友達ですよね!」

 

「シェリーさんっ!!」

 

友情を確かめ合う2人。

そんな2人を見ながら

 

「だがそれでもハンナに投票しない方がいい」

 

「へ?」

「ん?」

 

私の言葉に2人は固まる

私は話を続ける。

 

「次があると仮定した場合、確かに今回全員がエマとココに投票する必要はない。そうだな...エマとココが自身に、そしてその他4人がエマとココに投票しつつ。残り2人が他の人に投票して、次に備えた方がいいだろう」

 

「ですよね」

 

「そしてその2票をハンナに入れた場合、次からハンナは成り代わられなくなる」

 

「はい」

 

「すると『名無しの魔女』が成り代われる先がなくなる」

 

「そうですね」

 

「基本ルール(9)成り変わった事がある人物に再び成り変わる事はできない。ただし成り代わり先がない場合、成り代わることは可能である。」

 

「...」

 

「ハンナに2票入れてしまうと、成り変わり先がハンナだけからノア、アリサ、アンアンの3人に増えてしまう」

 

「なるほど」

 

「せっかく一人に絞れていたのに、成り変わり先を絞れなくなってしまう」

 

「あちゃー、それもそうですね。次ハンナさんを吊れるようにした方が良いですね。ハンナさん吊りましょう」

 

先程と変わらぬ、にこやかさでシェリーは結論を出した。

あまりの事にハンナはポカンと口を開ける。

 

「変わり身早くありません事?」

 

「全く余計な事言いましたよー」

 

「もしかして、わたくしを助けようとする行動を余計って言いました?」

 

「大人しく吊られてくださいハンナさん」

 

「『名無しの魔女』さん聞いておりますか?次があったらぜってぇこのゴリラ女を吊ってくださいまし」

 

「あれ?『名無しの魔女』にお願いだなんてハンナさんもしかして裏切りですか?犯行の動機は?」

 

「怨恨ですわね」

 

「可愛さ余って憎さ百倍ですね」

 

「憎さ余って怨念百倍ですわ」

 

相変わらずな2人を見てため息をつく。

確かに次を考えるのならその方法がいい,

ならば、

 

「エマとココに投票しない2人をどう決めるか。」

 

「またじゃんけんでもします?」

 

「よし、今度も勝たせてもらうよ」

 

シェリーがグルングルと腕を回し、レイアはニコニコと手を構える。

 

俄然やる気の2人にどんよりとした気分になる。

本当は色々話し合って決めたい所だが、いつ時間切れが来るかもわからない。だからすぐに決めれるじゃんけんは悪い方法では無いだろう。

だがその結果、前回に引き続きまたも運に任せることになる事に、私は今日何度目かもわからないため息をつく。

 

私も覚悟を決め、手を挙げようとした時、ノアが声を上げた。

 

「これって2人から4人にするのってどうかな?」

 

「それは...」

 

ノアの声に言葉を詰まらせてしまう。

確かに、前回『名無しの魔女』は処刑先に投票しているため今回も2票目を持っていない。

故に決められた投票先と処刑先がブレる事は無い。

つまり、ノアはエマとココに2票ずつ。後の4票を1人ずつに分ければいいと言っているのだ。

 

「何か間違った事、のあ言ったかな?」

 

ノアが首を傾げ私に問いかけてくる。

間違ってない。間違っては無いのだが...

 

「突然のことで少し驚いただけだ。よく思いついたな」

 

「色は、選択肢は多い方がいいなぁ〜って」

 

「なるほどな」

 

「あと、のあもじゃんけんしたいな」

 

「...なるほど」

 

ニコニコと腕を掲げるノアに、思わず私は苦笑いをしてしまう。

するとノアが目をパチクリして首を傾げる。

そしてポツリと小声で何かを呟いた

 

「...エマオ?」

「どうしたんだノア?」

 

言葉は聞こえなかったが、その表情の変化に疑問を思った私の問いにノアは少し考えた後、ノアは言った。

 

「うん。何でもな〜い。みんなでじゃんけんしよ」

 

その言葉につられるようにまだ投票券のある皆が手を掲げた。

 

 

 

 

 

 

 

その後の結果を言うと。

 

どうやら私はじゃんけんに強いらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ます。

目の前に見えるのは天井のみ。

朧げな頭で夢の内容を思い出そうとするが思い出せない。

仮説通りなら『なんか違う裁判』を私はやったのだろうが記憶がない以上確かめようがない。

 

もし仮説通りなら夢の中の私が何とかしてくれるだろう。

そんな事を思いながら朝の身支度を始めようとベッドから私は起きる。

まずは、エマを起こそうと、ベッドを見る。

 

「む?」

 

そこにあったのは布団やシーツどころかマットレスもないベッド。

これが何を意味するか、ここ数日でおおよそ予想はつく。

 

手早く身支度を整え、部屋をでて廊下を歩き、ここ数日生き慣れた場所に足を向ける。

 

 

そしてその場所、洗濯干し場に赴こうと歩みを進める。

玄関から外に出ると気持ちの良い日差しが私をおおう。

天気は快晴、洗濯日和。

 

少し暑い日差しの下、歩を進めていると、洗濯干し場にて、彼女はいた。

干された()()()()()()()()をぼんやりと見つめている。

 

 

 

「....おはようエマ」

 

 

私の声に、彼女は振り向き微笑んだ。

 

 

「おはよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

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