なんか違う尊厳裁判   作:haguruma03

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結④『名無しの魔女』

 

 

エマの声が私に突きつけられる。

今ここで無言になるのはまずい。この瞬間の沈黙は肯定を意味してしまう。

ゆえにワタシは私をトレースしなければならない。

思い浮かべるのは魔女裁判の私。

内心を隠し、偽証を思って自身を守り正しさを行おうとした彼女の姿。

 

「あまり面白くない冗談だ。私は『名無しの魔女』をずっと見つけようと行動していた。それが嘘だと?」

 

詰問するかの様な声色の強さで私はエマに聞き返す。

だが、エマはそんな声色など気にもせず返答する。

 

「全部が嘘じゃないよ。でも明らかに『成り代わりの魔女』に協力していた所がある」

 

「それは?」

 

「今回の裁判、君は最初に『最後の最後で大きなミスをしてしまった』って言ってたけれど。ミスじゃないよね。あれは故意のはずだよね」

 

「ほぅ?」

 

「一瞬でみんなの位置なんてすぐに把握できるわけない」

 

「・・・」

 

「それにノアちゃんやシェリーちゃんの提案がなければ、ボクとココちゃんに3票ずつ。ハンナちゃんに一票入れる様に誘導して、その後君の二票目とユキちゃんの一票を追加して三票でハンナちゃんを吊るつもりだった」

 

「シェリーの提案を拒否したのは私だが?」

 

「あそこで拒否しないのは、ヒロちゃんが行う行動として可笑しいから拒否しなければならなかったんだよね?」

 

「なら、エマの言う通り、ハンナに三票入るとして、謎の二票がハンナに入る事になり、次で怪しまれると思うのだが?」

 

「さっきも言ったけど、前の裁判での怪しい動きは次の裁判での投票基準にはなり得ない。それにもしそうなっていた場合、ボク達に君たちを吊る票数は存在しなくなる」

 

投げ掛ければ投げかけるだけ、間髪入れずに返答がくる。

その一つ一つの答えに淀みはなく、信念を持って回答されているのが聞くだけでわかる。

不味い。このまま問答をし続けるのは不味い。

 

ワタシはすぐに話の方向性を変える事にした。

 

「どうやら、どうしても君は私におねしょをしてほしいらしいな」

 

「そんな趣味はないけれど…君は『名無しの魔女』だから、やり返しはしたいな」

 

「随分私が『名無しの魔女』だとこだわるな・・・私が成り代わられていると?」

 

「いいやこの裁判中一回も君は成り代わられていないよ」

 

「成り代わられていない?『名無しの魔女』は成り代わるのだろう?なら私はなんなのだ?」

 

ワタシの言葉にエマはそれでもと私に事実を突きつける。

 

「君は『成り代わりの魔女』じゃなくて『名無しの魔女』だよ」

 

強情だ。頑固だ。

こうなってしまってはテコでも彼女はその主張を変えないだろう。

彼女の意思を曲げることは不可能だろう。

ならば問題はエマではない。

他の皆の意識を誘導し、エマが間違っていると思わせ票を誘導しなくてはならない。

ゆえにワタシはエマの言葉に否定ではなく疑問を突きつけた。

 

「ユキが『名無しの魔女』だったと判明したばかりだろう?」

 

『名無しの魔女』は見つかった、そして自白しているのだ。

もう裁判は終わったはずだと私は問いかける。

その言葉にココとハンナは反応してくれた。

 

「うーんぶっちゃけエマっちに日中、『名無しの魔女』が見つかったら今ボクにしたみたいに縛り上げて欲しいってお願いされたからやってんけどさぁー。あてぃしも説明よろー」

 

「わたくしも欲しいですわ。投票することになった時、誰かの投票が入るまで投票するふりをして欲しいと言われた時はなんだと思いましたが...どう言うことですの?」

 

よしっ。

二人の意見を聞き私は希望を少し見出した。

エマは芝居を他のみんなに頼んではいるが、その理由を説明していない様だ。

ならば、まだ私も皆を言いくるめるチャンスはある。

 

だがエマは、そんな私の思想も周りの声も無視する様に私だけに返答した。

 

「ルールに一言も『名無しの魔女』が1人だなんて書いてないよ」

 

ああ、くそ。彼女は今、ワタシしか見ていない。

他の声を聞かず、ワタシと議論する事に集中しているのだ。

彼女の論敵として認められている事に高揚感が湧くが、その高揚感に酔ってしまっては先ほどと同じ轍を踏む事になる。

気持ちを律して、私は口を開く。

 

「一人じゃない?それなら私以外にもいるかもしれないな」

 

そんな私の問いかけにエマは間髪入れず返答する。

 

「それはないよ」

 

「何故?」

 

「『名無しの魔女』は1人だから」

 

確信を持った物言い。

やはり彼女は気がついている。

苦しい。苦しいがまだ終わったわけではない。

会話を止めては終わってしまう。他の皆に普通に議論をしている様に見せなくてはならない。

私は口を止めない。

 

「さっきの言葉と矛盾しているぞ」

 

「してないよ『成り代わりの魔女』と『名無しの魔女』の2人で1人なんでしょ?」

 

表情がこわばるのを気合いで耐える。

自らの謎を知られ、暴かれるのはここまで苦しいものなのか。

だが、止まるな。言葉を止めるな。

そんな思いと共に私が次の言葉を投げかけようとした時、別の声が間に入ってきた。

 

「2人で1人?どういうことですか?」

 

「途中で分かれちゃったの?」

 

そんなシェリーとノアの声。

そんな二人にココは呆れる。

 

「何を馬鹿な事を言ってんの?そんなアメーバみたいに二つに分かれて行動なんてあり得るわけないじゃーん」

 

そんなココの言葉。

私はその言葉に、その疑問に同意しようと口を開く。

 

だが遅かった。

 

「その通りだよココちゃん」

 

「へ?」

 

私が声を発するよりも先にエマが同意する。

だが彼女の同意する部分は疑問ではない。

 

「それはこの裁判が2回目だから、だから『名無しの魔女』は分かれたんだよ」

 

そんな突然のエマの結論にアリサが困惑しながら彼女に疑問を投げかけた。

 

「・・・待て桜羽どういう事だ?詳しく教えろ」

 

するとエマはゆっくりと説明を始める。

 

「基本ルール6と14この二つで全部おかしくなったんだ」

 

「6と14?内容は確か・・・」

 

「基本ルール6は『毎晩参加者の1人に『魔女』は成り代わる事ができる。成り代わりは夢が終わるまで続く』」

「基本ルール14は『全員が処刑されてしまい裁判が終わらなかった場合。全員夢の裁判に関係がある記憶を全て消して、裁判をもう一度最初から始める』そうよね桜羽エマ」

 

ナノカが解説し、エマは頷いた。

だが、そこにさらにシェリーが首を傾げる。

 

「なるほど、それがなんで『名無しの魔女』が分裂することになるんですか?」

 

エマは語る

 

「今ボクたちは牢屋敷で眠っていて、その夢の中がここだよね。だけれど、さっきボク達がいた牢屋敷もまた夢なんだ」

 

「あーやっぱりです?」

 

「え?聞いてませんわよそんな事!?」

 

「え?鈍感なんですねハンナさん。幸せそうですね!よかったです!」

 

「よかったですじゃねーんですわよ!」

 

シェリーとハンナが漫才を始めるが、そんな二人をエマは見ながら説明を続けた、

 

「今のボクたち多重構造の夢の中にいる。現実で寝て、牢屋敷の夢を見て、その牢屋敷で見た夢が、今僕たちがいるここなのだと思う」

 

漫才を行っている二人の代わりに今度はミリアが答える。

 

「多重構造の夢…おじさん聞いたことがないよ」

 

「ボクも聞いたことがないよ。でもこれもルールのせいなのだと思う」

 

「ルールのせい?」

 

「まずなんだけど基本ルールを読み解くと裁判そのものの為のルールが2つあるんだ。それは①夢の裁判は夢を見る事で投票が始まる。②夢の裁判はやり直しになると記憶を無くし裁判を再開させる」

 

「うんうん」

 

「この裁判の再会が夢から覚めずに裁判を再開させるって仮定すると、まず現実で夢を見て裁判が始まる。つまり①が起こる。その後②が起こってボク達は記憶がないまま夢の中に取り残される」

 

「うん?」

 

「そんな夢の中でまた裁判が再開するのだけれど、始めるためには?」

 

「①...つまり夢の中で夢を見る必要があるっていう事?」

 

「うん。だからボクたちは夢の中で夢を見ているんだ」

 

「荒唐無稽だな。一度黙ったほうがいいんじゃないか?」

 

エマの結論に私は口を挟む。

不味い。不味い。

エマの言葉が発せられるたびに、議論が加速している。

どこかで議論をを止めなければならない。

議論を止めるため、ブレーキをかけようとする…だが

 

「黙らずとも良い。言葉を発せよ皆の衆。自由に話すが良い」

 

ワタシの言葉はすぐに取り消される。

聞き覚えのある内容、そしてその声。

だが、その内容を発したのは別人だった。

 

「ーーーアンアンっ!」

 

「犯人の言葉に支配される必要などない!思うがままに議論せよっ!...だったなマーゴ」

 

「ふふっ。モノマネは私の専売特許だったと思うけど、上手よアンアンちゃん♡」

 

過去にマーゴが行ったモノマネをさらにモノマネしたアンアンをマーゴは楽しそうに褒める。

議論は加速する。止まることはない。

 

その流れに押される様にアリサは再びエマに聞いた。

 

「夢の多重構造はわかった。だがそれでそれが何故コイツが『名無しの魔女』ということになる?」

 

その声に、エマは頷きながら答えた。

 

「やり直しになった最初の夢の裁判。やり直しが起こった裁判でその時に成り代わられていたのがヒロちゃんだったのなら?」

 

「は?」

 

「ルール14ではやり直しになった時夢から覚めるなんて一言も書いてない。そしてルール6、成り代わりは夢が終わるまで続くんだよね?」

 

「-----」

 

「君は最初から成り代わっていた。いや最初からヒロちゃんの記憶と体を持った状態で夢の裁判に参加する事になった。成り代わっている君が参加者だった」

 

そうエマは言い切り、私を再び睨み、答えを突きつける。

 

「だから、今回のこの裁判にはヒロちゃんは最初からいなかった。そうだよね?」

 

動かせ・・・何か、何かを返答するんだワタシ。

だが、だが何を言えばいい、どう誤魔化せばいい。

口が動かない。すぐに彼女の答えに返答できない。

 

そんな沈黙に入り込む様にナノカが疑問を挟む。

 

「だけれど、そうだとしても2人に分裂する理由は」

 

ナノカの疑問にマーゴが答えた。

 

「この裁判は『名無しの魔女』と参加メンバーによって始まるゲーム。『名無しの魔女』が空白だから追加したんじゃないかしら?」

 

「追加ってそんな易々と」

 

「代わりに入ったのが大魔女を含む魔女因子の残滓って考えられない?追加ルールで『この裁判は大魔女によって回収されなかった僅かな魔女因子の残滓が起こしたものである』があるからそれがって考え」

 

皆が議論を重ね回答へ近づいていく。

エマの語った言葉達は周りの皆を味方につけるには強すぎる話ばかりだ。

このままではワタシは完全に敗北する。

 

考えろ、考えろ、考えろ。

まだ生きている投票はある。ワタシたち全ての投票が入ったわけではない。諦めるわけにはいかない。

だって記憶の私は最後まで一切諦めなかった。

ゆえにあんな羨ましく妬ましい結末を手に入れることができたのだ。

なら、その記憶があるワタシにだって、何か・・・何かが・・・・

 

「宝生マーゴ、そこまで行くと推測じゃなくて妄想に近いわ」

 

ーーーそうか。

 

ナノカのマーゴへの言葉で一つ。エマの話の穴を見つける。

真実を知るがゆえに見落とすところだった。

エマの今の話達には皆決定的なものが欠けている。

まだワタシ達は勝てる。

 

ワタシは内心を隠しきり、嘲るようにエマに対して口を開く。

 

「その答えは酷く歪で一方的な押し付けだな。確かにそんな考え方も出来なくもないが、全部君の推測が入っている考え方だ。妄想、偽証とも言ってもいい」

 

そう、エマが語った事は全てエマの推測や考えが入ったもの。決して証拠ではない。

それが正解していたとしても、その正解はエマの推測によって補完されたものだ。

彼女が言ったルールも、ただそういった考え方があると言い換えることができる。

真実を知り、エマの解答が正解していたがゆえにワタシは勘違いしていた。

ーーーエマの回答は、エマ自身の推測によって補完されたものである。

その点をわたしは突く。

だがエマの表情もワタシと同じく変わらない。

エマは変わらず強気の表情でわたしに反論する。

 

「そうだね。推測、想像、そういったものがいっぱい入ってる。それでも、この方法で真実に辿り着けるとボクは知っている。君もでしょう?」

 

黒髪の少女が頭にチラつく。

彼女はエマの言葉に深く頷いた気がした。、

だがワタシはすぐに頭を振ってその幻想を振り払う。

 

「大した妄想だ。それで。それが私を吊らなければならない証拠か?」

 

「何言っているの?」

 

「何?」

 

「まだボクは君が『名無しの魔女』だという証拠は提示していないよ?」

 

「ーーーーーは?」

 

今度こそ、ワタシの動きは止まった。

何を、桜羽エマは何を言っている?

内心の動揺を表す様に呼吸は荒れ、体が震える。

だがそれでもエマから私は視線を外すことはできない。

 

今エマが語ったものはワタシの事を分析し切った決定打でもあったはずだ。

それが証拠ではない?それならば一体何が証拠なのだ。

 

「ねぇボクのちょっとした特技を君は知っているのかな?」

 

動揺し、頭が混乱していると、突如エマはそんな事を喋り始めた。

ワタシはその言葉に何も考えず返答してしまう。

 

「特技?」

 

「うん。ボク、実は人の会話を本を見返すみたいに思い出す事が得意なんだ」

 

「人の会話を?」

 

「そう会話。重要な話から些細な話まで、大体をボクは覚えている。だからね気がついたんだーーーー基本ルール12」

 

「ーーーっ」

 

背筋に氷柱を差し込まれたかの様に、強烈な寒気が体に走る。

基本(12)成り代わりの『魔女』は本物と明確な違いがある。だが参加者はそれを『魔女』だと確信しなければ認識できない。

気がついた・・・のか?これを。このルールを。

 

私は目を見開きエマを見つめる。

するとエマは指で一つ、また一つと数を数え始めた。

 

「ボクはね今回の裁判でみんなの名前を呼んできていたんだ」

 

「まず最初にアリサちゃん。次にシェリーちゃん。その次はハンナちゃん。ココちゃん、アンアンちゃん。ナノカちゃん。マーゴちゃん。レイアちゃん、ミリアちゃん、ノアちゃん、皆の名前をボクは呼んだんだ」

 

彼女は名前を言うたびに指を動かしていく。そして最後の名前が語られた時、エマの手は人差し指のみが立っている。

 

「だから」

 

その指を、エマはゆっくりと私に向ける。

 

「ボクーーー桜羽エマが聞くね」

 

そして告げた。

 

「ーーーー君の名前は?」

 

「ーーーー」

 

時が・・・止まった。

エマの言葉の一撃は、容易く私の心のガラスを叩き割り、大きな傷を作る。

 

「言えるはずがない、答えられるはずがないよね。だってこの裁判中・・・いや全ての裁判中に『名無しの魔女』も『成り代わりの魔女』も、誰も名前を呼べなかった」

 

「ノアちゃんの時もアリサちゃんの時もアンアンちゃんの時も、進行役ちゃんの時だって誰も成り代わられている時はその子の名前を言わなかった。言えなかった」

 

ーー動かせっ!

ただその思いに動かされワタシはなんとか声を作り出す。

 

「なら…ユキはどうだ。ユキの名前を今私は口にしている」

 

渾身の悪あがき。

だがその声はもう意味をなさない。

 

「あの子は進行役ちゃん、ユキちゃんじゃないんだよ。進行役があの子の本来の名前なんだ。だから前回も今回もあの子のことを進行役ちゃんと言えない」

 

「・・・」

 

「言えないよね。言えるわけがない。もし言えるのならば」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでボクたちは最初の日から一度も、君をヒロちゃんと呼んでないの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。誰もワタシを二階堂ヒロと一度も言っていない。

 

 

負け・・・か。

 

足から力が抜けその場に崩れ落ちる。

反論の余地はない。なぜならワタシは私の名前も、ワタシの名前を言えないから

エマの・・・いや、エマ達の完全勝利だ。

もう議論の余地はない。

 

思わず天井を見上げる。

ああ、いいところまでいったと思ったのだがな・・・

 

そんな事を思いながら一つだけ疑問が残っている事に気が付く。

ワタシは地べたに座りながら、名探偵に質問する。

 

「いつなんだ…君の考えを聞く限り。君はまず私を疑ってそこから推論を進め、そして『名前』の証拠に気がついた。——いつだ。いつワタシが二階堂ヒロではないと確信を抱いた。ワタシはいつ間違えた」

 

そうエマがワタシの正体を見破ったやり方。

順序が逆なのだ。エマは私を犯人だと気がつきそこから証拠を集めている。

一体どこで気がついたのか。

 

そんなワタシの質問に、エマは先ほどの鋭い視線を緩め、ゆっくりと話し始めた。

 

「ボクが君をなんか違うって思い始めたのはいつだかわからない。本当に些細な疑念だったから。でも確信を持ったのは図書館で一緒に本を返している時だよ」

 

「本を返している時?」

 

「そう、あの時に君とボクは、ボクが探している人物について軽い言い合いになったよね。その時、ボクの反論を聞いた時、君は嬉しそうにしたんだ。ボクと議論をぶつけ合うのを楽しむかのように」

 

エマは思い返す様に、記憶を反復する様に語る。

 

「それはヒロちゃんだとありえない。今のヒロちゃんはボクと言い合う事を好まない」

 

「これがボクが正しくない事をした事でヒロちゃんが叱る、またはボクと喧嘩する時に言い争うのならわかる」

 

「だけどそれを楽しむ事はないはずだよ。だってヒロちゃんはボクを本気で殺そうとした。その時の殺意をボクは覚えている。あれほど苛烈で本気の殺意をボクは忘れない。でもそれと同時にその殺意を深く後悔したのをボクは知っている。殺意を抱いた事を謝れなかった絶叫を、ボクと顔を合わさずヘリに乗ろうとしたあの時のヒロちゃんの表情をボクは覚えている」

 

「だから、喜ぶはずがないんだ。こんな魔女裁判を模したこの夢の裁判でヒロちゃんがボクとぶつかり合って、高揚するはずはないんだよ」

 

「ーーーーっ」

 

「だから、最初の間違いを指摘するのならーーー君はこの尊厳裁判を楽しもうとしていた。それが間違いだったのだと思う」

 

そう言ってエマは優しくワタシにとどめを刺した。

その声はワタシを問い詰める様ではなく、どこか申し訳なさそうに優しく諭している様な声だった。

 

ああ、なるほど

 

 

「ーーーーーワタシたち『名無しの魔女』の負けだよ」

 

そんな敗北宣言と共に、ワタシは晴れやかな気持ちで、完膚なきまでの完全敗北に酔いしれた。

 

 

 

 

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