この文は、『異常値達ノ創造祭』で分布したコピ本の内容となります。
このお話は、魔法少女の魔女裁判だけでなく、『なんか違う尊厳裁判』のネタバレを含みます。
なので、本編を読んでから読まれてください。よろしくお願いします。
蛇足『仲間はずれの彼女達は動き始める』
ここは?
気がつくとそこは真っ白な世界。
天も地も見渡す限り白、白、白。
くすみや濃さも含めて全て同色の白で埋め尽くされた世界がそこには広がっていた。
ここまで全てが同色だと、自分が立っているのか浮かんでいるのかわからなくなる。
気がおかしくなりそうだ。
自分の服装の赤色と黒色だけが、自分がここに居ると認識させてくれる。
・・・いや待て
すぐに違和感に気がつき、自らの服装を見る。
「なぜまたこの服を・・・」
視界に映るのは黒と赤を基調とした服。
現実ではわずかな時しか着なかったが、記憶では長い時を共に過ごした服。
牢屋敷の時の服を私は着ていた。
この服は家に保管してはいるがこれを着て寝るなんてことはしていない。
ならばなぜこの服を今私は・・・
「どうしました?ヒロさん」
「ーーー!?」
背後からの声に驚く。
その声は聞き覚えがあるが聞こえるわけがない声
「メルーーーーっ!?」
振り返りその名を口から出そうとしたがその名前は最後まで紡がれることはなかった。
なぜならば、そこにはあまりにも奇妙な光景が浮かんでいたからだ。
白い人魂だ。
日本画、映画、漫画、挿絵、イラスト、さまざまな媒体で描写されている、浮かんでいる火の玉。
そんな空想の産物が私の目の前で白い炎を揺らめかせ、ふわふわと浮いていた。
「お久しぶりですヒロさん」
人魂が私にお辞儀をする様に空中を上下する。
その声は紛れもなく、氷上メルルの声だった。
「・・化けて出たかメルル」
「えぇ!違います!化けて出てなんか・・」
私の言葉に忙しなく震える人魂。
これは・・・慌てているのか?
読めそうで読みづらい人魂の反応に困惑するが私は話を進めた。
「じゃあその姿はなんだ」
「こ、この姿は、残滓だと体を形成する事ができず…」
「残滓・・・?」
「私はメルルの魔法だったものです」
「だったもの?」
「はい、大魔女様のお使いでヒロさんをお迎えに」
「ユキが?・・・ユキは生きているのか?」
私はメルルの言葉に目を見開く。
ユキ。私の親友はあそこで死んだはずだ。
まさか・・・生きていたのか?
そんな私の希望にメルルは首を振った。
「いいえ、大魔女様も私と同じ残滓、この夢が終われば夢へと溶けて消えます」
「そう・・・か」
メルルの言葉に私は落胆する。
わかっていたことではある。眠り目が覚めると普通ではない空間にいて、そこに死んだはずの仲間がいた。
夢でなくてはなんと言う。
それに、こんなに意識がはっきりした夢は普通の夢ではないことは明らかだが、メルルの言い方からすると、この夢もまた魔法の名残によるものなのだろう。
現実ではない夢、幻。
だとしてもだ。
「たとえ夢だとしても、また君と出会えたことを嬉しく思う」
「・・・あんな事をした私をですか?」
「確かに言いたい事は山ほどあるが、今は再開を喜ぶだけにするさ」
私がそう告げると、メルルは申し訳なさそうに、それと同時に嬉しそうに体を揺らした。
表情が見えないが、わかりやすい彼女に動きに思わず微笑んでしまう。
このまま、彼女ととりとめない会話を続けたいところだが、そうもいかない。
「メルル、君は自分をユキの使いと言ったな。ユキは何を求めている?」
私の問いにメルルは答えた。
「エマさんとこの夢の主を出口まで連れてきて欲しいとの事です」
「エマもいるのか!?」
「はい。大魔女様曰く、出口の一歩手前で右往左往しているから早く連れてきてほしいと」
「右往左往?」
「そこは大魔女様にもわからないらしく…でも、あまり長くこの夢に滞在するのは良くないとも言っていました」
「良くない?」
「そろそろこの夢自体が終わってしまうらしく、終わりに巻き込まれてしまうと夢に取り残されてしまうと・・・」
「明らかな緊急事態だな。ユキ自身はどこに?」
「やる事があると」
「だから私とメルルに代わりにやれと?」
「はい・・・できるだけスピーディーにとの事です・・・早ければ早いほど良しと・・・・」
メルルが申し訳なさそうに揺らめく。
顔を合わせもせず、好き勝手に言ってくれる。
突然の事態と突然の頼み事に眉を顰めてしまう。
よくもこんなに好き勝手言ってくれたものだ。
色々言いたい事はある。
・・・あるがそれを伝言役のメルルに突きつけても意味はなくそれは八つ当たりで正しくない行動だ。
それにエマに危機が迫っていると言われては、頼み事の真偽など考えている暇はないだろう。
私は口にしたい様々な言葉を飲み込み、メルルに質問した。
「エマを連れてこいと言われても、私には出口なんてどこにあるか」
「これです」
すると人魂の目の前に小さな鍵が突如現れる。
その鍵はふわふわと空中を浮かんだ後、突如重力に惹かれる様に落下し始める。
「おっと…これは鍵?」
地面に落ちる前にキャッチして、その鍵をまじまじと見つめる。
見たところなんの変哲もない鍵…これが出口?
「はい、この鍵があれば出口が現れます」
「出口が現れる?」
「その鍵を持って、鍵を開ける様に動かしてみてください」
私はメルルの言うがままに、鍵を前に突き出し動かす…ん?
カチリ
目の前には何もないはずなのに、独特な感覚が腕から伝わってくる。
そうまるで、扉の鍵を開けたかの様な・・・
次の瞬間、目の前にそれは現れた。
木造の扉、なんの変哲もない扉だけが目の前に現れたのだ。
めちゃくちゃだな・・・
ここが夢であることを再認識しながらも、昔と同じ様にエマの腕を引くためにドアノブに手を伸ばす。
だがその腕を阻む様に人魂が遮った。
「ん?何だメルル」
「ちょっと待ってくださいヒロさん」
「私はエマを連れてこなくてはならない」
「そ、それはそうなんですが….エマさん達を見つけないといけないのですが、夢を潜る必要があります」
「夢をもぐる?」
「はい、過去にヒロさんが体験しているらしいのです。覚えてはいないと思うのですが」
「ああ、牢屋敷に来る前に見た夢か」
「えぇ!?」
人魂がボワっと驚く様に一瞬だけ燃え広がる。
彼女は私が覚えている事に驚いているのだろう。驚くのも無理はない。
とは言っても、こうしてメルルを会話をしていて朧げに思い出しただけだ。
牢屋敷にくる前、夢の中でエマ、ハンナ、マーゴ達と体験した夢の牢獄。
おそらくこれもそれと同一のものなのだろう。
それならば簡単だ。
「もう夢の潜り方は覚えている」
「そ、そうなんですね…大魔女様から覚えていないと思うと言われていたので驚きました」
「君はその夢の内容は知っているのか?」
「いえ、私は聞いただけで内容はさっぱり」
それならよかった。最後の空間に行くには最低二人必要だ。
「なら、私についてくるといい」
「助かります・・・!」
私の言葉にメルルはフラフラと空中を揺れながら私の後ろをついてくる。
さて、ユキが何を考えているのかはわからないが、早くエマともう一人を連れて帰らなければ。
私はそんな思いと共にドアノブを握り、ひねった。
ガチャリ。ギギギ
無機質な音とモノにドアが動く。
覚えているのは血のバスタブ。
その光景も進み方も覚えている。
謎がわかっている謎解きなどただの時間の無駄だ。
私は早足で扉をくぐり抜ける。
夏コミ 1日目東2-ナ-51b。そして『異常値達ノ創造祭2』に参加することとなりました。
なので、宣伝も兼ねて本日から、夏コミ(C108)に向けて、更新していこうと思います。
よかったら遊びに来てくださいね。