なんか違う尊厳裁判   作:haguruma03

25 / 25
蛇足『第一審』

 

さて、迅速に謎を解いて・・・・・・・・・・・ん?

 

「・・・どうしました?」

 

 背後から困惑したメルルの声が聞こえる。

 突然立ち止まった私に驚いているのだろう。

 驚いているのは私もだ。

 

「どういう事だメルル」

 

「え?」

 

「私の知っている空間と全く違う、私たちの最初は血のバスタブだったはずだ」

 

 そう言い、改めて周りを見渡す。

 

 扉を越えた先、そこは確かにバスタブだった。

 普通のバスタブではない、自分が小人になったと勘違いする様な巨大なバスタブ。

 見上げなければならないほど高いところにあるバスタブの淵、視界の隅に映る人一人楽に入れる排水口。

 そんな排水口から血が逆流して私たちを溺れさせようとしてくるのが前の夢だった。

 

 だが今回は違う。

 

 血の代わりに大量のものがバスタブに埋まっていた。

 

 私は足首まで埋め尽くしているソレ、そんな落ちている一枚を手に取りまじまじと見る。

 横からメルルも伺う様にふわふわと移動する。

 

「これは・・・イラストですか?」

 

「ああ、『バルーン』のだな」

 

 牢屋敷の壁や床で散々見たイラスト。

 

 城ケ崎ノア、私の友人の描いたであろうイラスト、それが書かれた大量の紙がバスタブを埋め尽くしていた。

 

「これは・・・ノアの夢なのか?」

 

 妙な違和感を覚えながらふとイラストが描かれていない裏面を見る。

 そこには文字が一文書かれていた。

 

『私の絵を探して』

 

「こ・・・こんなたくさんの絵の中からノアさんの絵を探すなんて…え?」

 

 またもや、背後からメルルの困惑した声が聞こえる。

 私はメルルの独り言の途中ですでに歩き始めていた。

 

 床に散らばったイラスト達を踏まないように部屋の隅。

 まるで何かを隠すかのように山ほど紙が積まれた場所へと向かう。

 

「ど、どこに行くのですか!?ヒロさん!?」

 

「時間がない。手早く行く」

 

「手早くって・・・一体何を?」

 

「ノアの絵を見つけに行っている」

 

「それはわかるのですが・・・」

 

「できるだけ早くエマを連れ戻さなければ」

 

「そ、それもわかるのですが、ノアさんの絵はこんなにいっぱいでそんなにがむしゃらに動いても・・・」

 

「これはノアの絵ではない」

 

「へ?」

 

 ポカンと惚ける様なメルルの声。

 そんな声を聞きながら私は紙の海を進み、考えを口にする。

 

「これらは彼女の絵ではあるが、バルーンの絵であって、ノアの絵ではない。そしてそんな絵の中で自分の絵を隠すとするのなら・・・ここだろう?」

 

 辿り着いたのはバスタブの隅。妙に一箇所だけ山積みにされた紙の山。

 私は山の中に手を突っ込み漁る。

 

 見るものを魅了するようなイラスト達。

そんなイラストをかき分けて、かき分けて、かき分ける。

 

「え・・・あ・・・が、頑張ってくださいヒロさん!」

 

「メルル・・・君にも手伝ってほしいのだが」

 

「今の私には手も足もないので・・・」

 

「そうか・・・」

 

「私にできるのなんて応援ぐらいしか・・・」

 

「そうか…」

 

「ふ、ふれー。ふれー」

 

「・・・」

 

 気の抜ける応援を聞きながら私は絵を探していく。

 何十枚ものイラストをかき分けて、漁って、掘り進んだ。

 

 

 

 そして見つけた。

 紙山の底にそれはあった。

 

 

 見たこともない絵。

 だが、それが誰が書いたのか、絵柄で、色の配分ですぐにわかる。

 

「見つけーーーっ」

 

 突如背後から服を引かれた。

 今のメルルにてはないはず。驚き後ろを振り向くとそこには影がいた。

 

 先ほどまで誰もいなかったはずなのに突如現れた黒い人影。

 薄黒くまるで霧の様に朧げな小さな人影が俯きながら私の服の裾を掴んでいた。

 

 人影が見た目では誰なのかはわからない。だがソレが誰なのかはなんとなくわかった。

 

「あなたは・・・」

 

 メルルの驚いている声が聞こえる。

 

 その声に影は一切反応せず、ただ無言で私の裾を掴んだまま。

 まるで見られるのを嫌がる様に期待するかの様に恥ずかしがる様にただ掴んだまま何も喋らない。

 

 そんな彼女に私は向き直り、口を開いた。

 

「本当ならこの絵は君自身の手によって私が見るべきもの。こんな盗み見る方法は正しくない」

 

 だからと話を区切り、私は撫でる様に彼女の頭に手を置いた。

 ピクリと怯える様に人影が動くが、私は優しく語りかける。

 

「だから、この絵の感想を私は今は言わない」

 

 そう言って、手に持った彼女自身の絵を差し出す。

 

「次会う時、感想を楽しみにしていてくれ」

 

 私はその言葉と共に彼女の手に絵を置いた。

 すると彼女はおずおずと絵を手に取り、私に向かって顔をあげた。

 

「うん!待っててねヒロちゃん!」

 

 どこから聞こえたかもわからない声が辺りに響く。

 

 次の瞬間、カランと乾いた音が響いた。

 目の前の彼女、そして辺りにあった大量の紙は一瞬のうちに消え、足元に新たな鍵が落ちている。

 

 新しい鍵。

 

 次の空間へ移動するためのものなのだろう。

 私はその鍵を拾いながらメルルに尋ねた。

 

「あれは・・・ノアだった。この夢の主人はノアなのか?」

 

 そんな私の疑問にメルルはすぐに答えた。

 

「いえ・・・おそらくなのですが、あれはノアさんの残滓を吸い込み成り代わった夢の主人なのだと思います」

 

「成り代わった?」

 

「はい、この夢の主人は夢の登場人物に成り代わることができると大魔女様は言っていましたので」

 

「つまり・・・今から私たちは夢の主人と私たちの仲間の誰かが合わさった空間を超えていかないといけないわけか」

 

「たぶん・・・ですが・・・ごめんなさいごめんなさい・・・!私にも良くわかっていなくて・・・」

 

「いいや、構わない」

 

 私はメルルにそう答えながらも頭を回転させる。

 

 前と同じ様にはいかないというわけか…

 すんなり終わると思っていた状況が違っている事を認識し思わず眉を顰めてしまう。

 

 今回はノアだったからなんとかなった。

 だが他の仲間達だったのならこんなにスムーズにいくとは思えない。

 みんなを信用し信頼しているが、一筋縄ではいかない内面をしているのはお互いによく知っている。

 

 だが、ゆっくり考えている暇はない。

 

 早くエマを迎えにいかなくてはならない。

 私はそんな考えを振り払う様に拾った鍵を前に出し、回す。

 

 カチリ

 

 そんな音と共にドアが現れる。

 

「いこうメルル」

 

「はい、ヒロさん…!」

 

 私たちは扉を速足にくぐる。

 時間は有限だ。できるだけ急ごう。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

おじさんが魔女裁判に連れてこられてしまったときの話(作者:長雪 ぺちか)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

全員の顔合わせのシーンでミリアの代わりに弁護士のおじさんがいた場合の妄想を書きました。▼・プロローグ▼少女たちとおじさんの顔合わせ▼・城ケ崎ノアとの話▼ノアちゃんのイラストを見てしまったおじさんが殺されかけるも彼女のトラウマを克服させる話▼・おじさん殺人事件(下ネタ注意)▼下半身丸出しのおじさんの死体が発見されて、その犯人を探す話▼・夏目アンアンとの話▼アン…


総合評価:802/評価:8.26/完結:23話/更新日時:2026年01月08日(木) 16:13 小説情報

【完結】光を失った少年の話(作者:野口さん)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

▼*ネタバレ注意▼目が見えない少年が、それがバレないように魔法を使って牢屋敷を過ごしていくお話。▼ ▼三話で完結します。▼現在後日談を執筆中です。


総合評価:4519/評価:9.16/完結:28話/更新日時:2026年07月12日(日) 18:00 小説情報

魔法少女?ノ魔女?裁判(作者:まのさば脳焼き人間)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

ある時、魔法というものを自覚して、15歳の少女失踪事件が話題になってから牢屋敷送りになるのは目に見えていた。▼出来るなら原作キャラと関わらない世界線が良いと願ったものの、運命はそうやすやすと覆すことなどできない。▼だが、俺は原作のまのさばが好きなのであって、そこに男でオリ主たる俺がいるのは間違っている。▼俺はなんとしても原作カップリングをその目に見る為に壁か…


総合評価:3242/評価:8.44/連載:40話/更新日時:2026年01月28日(水) 12:00 小説情報

愉悦少女ノ魔女裁判(作者:保温と後光)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

苦痛や苦悩する姿に、己の生を実感する少女、言峰キレイ。▼彼女は魔女として、絶海の孤島にある牢屋敷へと連れて行かれる。▼彼女は13人の少女と、どう関わり、どう過ごして行くのか。▼ハッピーエンドか、バッドエンドか...それは未だ、分からない。▼「━━━喜べ少女。君の願いはようやく叶う」▼彼女はただ、愉悦を楽しんでいる。▼━━━━━━━━▼Fateの言峰綺礼って女…


総合評価:3056/評価:9.09/完結:96話/更新日時:2026年04月07日(火) 21:33 小説情報

そっくりさんノ牢屋敷生活(作者:蒼天 極)(原作:魔法少女ノ魔女裁判)

 氷上カレンが目を覚ますと、そこは牢獄。▼ どうやら魔女因子に適合してしまったらしく、魔女になる危険性があるため牢屋敷に隔離されたらしい。▼ 結果、牢屋敷で生活する事になったカレンだが、そこにはメルルと言う同じ苗字の見た目そっくりな少女がいて……?▼ これはどこぞの黒幕と双子と勘違いされるくらいに似てる少女、氷上カレンが牢屋敷での余生を全力でエンジョイするお…


総合評価:559/評価:8.18/連載:11話/更新日時:2026年05月10日(日) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>