水面に映る裁判所が光へと包まれていくのが見える。
「これで・・・終わりですね」
「はい・・・」
名残惜しそうにユキとメルルがつぶやく。
たくさん話をした。
牢屋敷の事件が終わった後のこと、過去のこと、新たに巻き込まれた事件のこと、エマ達が巻き込まれている尊厳裁判の事。
喋る事語り合うことは無限にあった。だがソレもこれで終わりだ。
私は立ち上がる。するとユキが声をかけてきた。
「あら、もういくのですか?」
「いい区切りだと思って、そろそろ行こうと思う」
「そうですか」
ユキはそう言うと懐から一つのものを取り出した。
鍵だ。
「これが最後の鍵です」
ユキはそういい鍵を手渡してくる。
これを受け取り回すだけで、お別れとなる。
そのことを本能的に理解してしまう。
受け取りづらい、もっと話していたい。
そんな思ういが胸中を支配する。
ソレを察したのだろうかユキは言葉を紡ぎ始める。
「過去の思いを断ち切ること。それがこの空間を抜け出す条件ですよ」
そう言って彼女は微笑む。
断ち切る。過去の思い出とお別れをする。もう会うことはない友達と離れる。
・・・随分と・・・最後は意地悪で、きつい試練だな。
胸の奥が重く感じる。引き止めようとしてくる。
だが、ここで立ち止まる様ならば今私はここにはいない。
私は意を決して、手を伸ばす。
ユキは微笑み、私に鍵を差し出す。
過去の思いを断ち切り、乗り越え、鍵をもらう。
・・・それは違う正しくない。
私は鍵をユキの掌ごと掴んだ。
「ヒロ・・・?」
ユキが困惑しているが、関係ない。
私は思いの丈を彼女にぶつける。
「ユキ・・・それは正しくない」
私はそう言って彼女と視線を合わせる。
「私は持っていく。背負っていくよ。もう戻れない過去への寂しさも、もう会うことができない君たちへの悲しみも全て背負っていく。」
そして私は彼女に宣言した。
「私は・・・私たち過去の思いを断ち切ることはしない。忘れもしない。君たちの事、全て背負って生きていくよ」
そんな私の宣言をユキはポカンと聞いて・・・そして笑った。
「ふふっ・・・ありがとうございます。ヒロ」
その笑みは今日見た彼女の笑顔の中で一番可愛い笑顔だった。
ユキが私の掌に鍵を握り込ませてくる。
その瞬間、あたりの風景が光に包まれ始めた。夢の終わりだ。
私はしっかりと鍵を握り締め、二人に背を向けた。
視線の先にいつの間にか扉が現れていた。
扉に向かって歩みを進めると後ろから声が聞こえる。
「ありがとうございます・・・ヒロさん。最後に話せて楽しかったです・・・!」
友人の魔女の声が聞こえる。
「エマのこと頼みましたよ」
親友の大魔女の声が聞こえる。
そんな二人の声を背に私は扉の前にたどり着く。
そして・・・私も最後の声を彼女達に送った・
「また・・・会おう」
もう会うことなのない人に送るべきではない正しくないセリフ。
だが、どうしてもこの言葉を二人に送りたかった。
それは二人も同じだったのかもしれない
「はい・・・!また会いましょうヒロさん・・・!」
「また会いましょうヒロ」
私はそんな二人に背中越しにバイバイと手を振りドアノブをひねる。
後ろを見る気はなかった。
見ると、先に進めなくなる気がしたから。
そして----最後ぐらい、綺麗な顔で彼女達とお別れがしたかったからかもしれない。
扉をくぐる。
声が聞こえてきた。
現状を良しとせず抗う声、そして頑張っている幼馴染の声。
---助けに行くとしよう。
いつもと同じ様に、そしてなにより
今、頼まれたばかりなのだから