なんか違う尊厳裁判   作:haguruma03

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起③『ルール』

 

こほんと咳をした後、マーゴが語り始めた。

 

「私は昨日図書室で1日こもって、今回の魔法の使用者について調べてみたの」

「だけど使用者の名前まではわからなかったの。ただこの夢の中で行われる裁判は、何度か牢屋敷内で発生していたらしくて」

「過去の資料を漁ってみると、この夢の中での裁判を乗り越えた子達の記録をいくつかを見つけることができたわ」

 

「いくつか…つまりそれなりに数があったのか」

 

「そうね大体10個ほど見つけることができたわ」

 

「10組もいたのかよ」

 

私がその数に少し驚くと、同じく驚いたであろう声が耳に入る

 

10組。決して少なくない数のグループがこの夢の中の裁判を解決してる。

決してこの苦難は乗り越えられないモノではないのがわかり少し安堵の吐息が漏れる。

だが...油断はできない。

 

「そんなに乗り越えた方々がいるなら安心ですわ!その方々と同じ様にすれば...!」

 

ぱぁと明るい声でハンナが喜んでいる。

その顔を曇らせる事に少し心苦しく思いながらも私は口を挟む事にした。

 

「いや、安堵するのは早計だ」

 

「なんでですの?」

 

「事件発生の母数がわからない以上、過去に起きたこの夢の裁判の解決率がわからないからな」

 

私の言葉にシェリーは頷いた。

 

「そうですねー。解決したグループが10組あったとしても、事件発生数が100件なら解決率は10%ですね!1000件だったら1%です!」

 

流石に1000件も起こってたことはないだろうが、その通り。一体どれだけの数のグループが巻き込まれたのか見当もつかないのだ。

私はシェリーの言葉に続ける。

 

「それにその資料があっても解決できなかったグループがいる可能性がある。なにせ、魔女化してる時のこの魔法は死んだら抜け出せない。つまり被害者は記録を残せないからな。希望は持っても安堵はまだ早い」

 

「うぅ...まぁそれはそうですの。でも、魔女化していない今なら死ぬ心配をしなくていいのは救いですわ」

 

「乙女の尊厳は死にますけどね!」

 

「うぐぅ」

 

意気消沈しているハンナに罪悪感を覚えながらも私は話を続ける事とした。

 

「それでマーゴ、その10組の資料で分かった事は何だ?」

 

「ふふ、急かさないでも言うわよ。ただ話す前にお願いしたいのだけど、進行役さん。貴方とも色々と話を擦り合わせながら話をしたいのだけど、いいかしら?」

 

「ええ、構いませんよ」

 

「そう、それじゃあ軽く前置きをして話すのだけど。私が調べた限りこの裁判のルールは基本的なルール14個と、この夢を作った『被疑者』が魔女化していない事によって起こった今回からの追加ルール4つで構成されているわ」

 

そう言ってマーゴが私たちに語り始めた。

刻々と砂時計の砂が下に落ちる速度と似た様に、その語り口は速すぎず遅すぎず、一定のテンポに沿って言葉が紡がれていく。

マーゴによる説明内容も詳細でわかりやすく、それに加えて簡潔にまとめられていたものであった。

 

こうした要領の良さからやはりマーゴは頭が回るのだと再認識する。

あの過去の裁判でマーゴに勝利する事ができていたが、もう一度やれと言われるとかなり厳しいと彼女は言うだろう。

そんな考えが湧くほど、彼女は大人びていた。

 

だが、そんなマーゴの説明でも短くない時間を要する事となり、説明が終わる頃にはこの裁判の時間切れを示すであろう砂時計は上の砂よりも下の砂の方がいつまにか多くなっていた。

 

しかしそれでも、この理不尽な夢の裁判の基本ルールがわかった。

マーゴが語った裁判のルールは基本的には12個

 

(1)参加者は1人1票の投票券を持つ。

(2)全員が投票後、最も投票数が多い者は処刑される。同票の場合どちらも処刑される。

(3)投票の時間は参加者全員が眠ってから始まり、誰かが起きるまでの間。制限時間内に全員が投票しなければ全員処刑される。

(4)前の裁判で自身の投票先が処刑された人物は、次の裁判では投票が無効票となる。(すなわち、前の裁判で処刑される人に投票を入れた人物は、その次の裁判において、誰に投票しても無効票として処理される。)

(5)『魔女』が投票で選ばれるか、『魔女』が目的を達成するまで裁判は続く。

(6)毎晩参加者の1人に『魔女』はなり変わる事ができる。なり変わりは夢が終わるまで続く。

(7)『魔女』は成り変わり先の記憶を引き継ぐ。

(8)前回の裁判で『魔女』と同じ投票先に投票した相手には『魔女』は成り代われない。ただしその投票先への投票数が5票を超えているのならその限りではない。

(9)成り変わった事がある人物に再び成り変わる事はできない。ただし成り代わり先がない場合、成り代わることは可能である。

(10)『魔女』は投票券を二つ持ち、同じ対象に投票する事はできない。

(11)『魔女』の投票が無効票になる場合、所持している二つの投票券のうち、一つのみが無効票となる。

(12)成り変わりの『魔女』は本物と明確な違いがある。だが参加者はそれを『魔女』だと確信しなければ認識できない。

 

そして追加ルールが3つ。

 

① 処刑された場合、投票権は無くなるが議論には参加できる。

②処刑された場合、『おねしょ』してしまう。

③処刑された者は、夢から覚めても夢の裁判の事を覚えている。

 

 

この他にも、リアルタイムで投票先を確認できるなどの細かなルールはあるが大体の概要は掴めた。

 

まだ把握できていないルールがある可能性もあるが、もっと詳しく調べたいものの時間もなく、それにユキ...もとい進行役は質問しなければ答えずその答えも基本的にYESか NOのみ。(エマと私にだけは少々違った反応は見せてくれる)そんな進行役に隅から隅まで聞き出してルールを完全に把握するには時間がない。

 

だが、基本的なルールがわかったのは大きな前進だ。これまでは、闇の中を歩くように何をすればいいのか、どう進めればいいのかわからなかった。しかし、この夢の中の裁判も、このルールがあれば話を進めていくことができ、魔女を追い詰めることができるだろう。

 

ただ、気になる点がある。

マーゴは基本ルールは14個と言ったのに12個しか彼女は言っていない。

追加ルールも4個と言ったのに3個しか言っていない。

ただ間違えただけならば彼女らしくないミスであるが、これが意図的だった場合...いや確実に意図的だろう。現にマーゴを怪しみ、視線を向けると、それに気がついたマーゴが微笑み軽く手を振ってくる。

その微笑みはいつもの誰かを揶揄って微笑んでいる彼女の笑みと同じだ。

もし意図的ならば、何らかの理由で喋っていないのだろう。

悪意はないはずだ。悪意があるならそもそも最初から基本ルールは12個と話をしたはずだ...

だが、悪意があろうが無かろうが嫌な予感がする。

 

マーゴにその事を追求するか頭を悩ませていると、ポツリとこぼれ落ちた様な呟きが耳に入ってきた。

 

「...何故『魔女』は昨日、宝生マーゴに投票したの?」

 

「んー?どういう事?」

 

ナノカの疑念と共につい口から溢れてしまった呟きにノアが尋ねてくる。

するとルールに頭を悩ませたり考え込んでいた皆がナノカに視線を向けていた。

 

ナノカの呟きから何の疑問なのかはわかる。

だが不明なルールがある以上話を進めるのは正しくない...が、マーゴが黙っているという事は何らかの理由があるのだろう。

過去の裁判と同じ心持ちなら、何が何でも先にマーゴに話を問いただしていたかもしれない。だが今の私は過去の裁判のように人を殺さなくて済むという安心感からか、不明なルールの詳細は後回しにしてもいいかと判断していた。

頭の中のもう1人の私が『正しくないっ!!』と言っているが一旦無視することとする。

 

私が自問自答をしているうちにナノカの話が進んでいた。

 

「『魔女』は昨日宝生マーゴに投票しなければ無効票にならない2票の投票券がこの裁判であったはず。なのに最初の投票で処刑されるのがわかっていた宝生マーゴに投票したせいで、基本ルール(4)と(11)が適応され、むざむざ1票無駄にしている。」

 

「それにより今日の裁判で最低2人最多3人は処刑でき有利になれたはずなのに、宝生マーゴに投票したせいで、今日処刑できるのが最低1人最多2人になってしまっている。この動きは『魔女』にとって不自然だと思わないかしら」

 

ナノカはそう言い切った。

 

「うーん?」

「えーと、ごめんね。ちょっと整理させて」

 

そんなナノカの話に対して、頷きながらも疑問符を浮かべるノアと未だに話を整理しきれていないエマが疑問の声を上げる。

まぁ、メモ無しの話だけでルールの把握をするのは難しかったのだろう。

彼女の疑念に応えようとしたが、私が話すより前にマーゴがそれに答えていた。

 

「ねぇエマちゃん。前の裁判で私におねしょさせたのは誰?」

 

「え...えっと...投票したのは」

 

「おねしょさせたのは?」

 

「...おねしょさせたのはボクを含めたみんなだよ」

 

「そうね。私は皆によっておねしょさせられちゃったわ♡」

 

「う、ぅううう」

 

「ああ!エマさんが顔が真っ赤に!」

 

「おい!こんな時に桜羽をからかってんじゃねぇよ!」

 

「...宝生マーゴ。桜羽エマをからかうのは後にしてちょうだい。時間がないわ」

 

「そうね。話を戻すと、昨日の裁判で私は12票の投票がされて処刑された。つまり魔女含めた12人の投票があったわ。そこまでは大丈夫?」

 

「...うん。大丈夫」

 

「それによって、魔女には

基本ルール(4)《前の裁判で投票先が処刑された人物は、次の裁判では投票が無効票となる。》

基本ルール(11)《『魔女』の投票が無効票になる場合、所持している二つの投票券のうち、一つのみが無効票となる。》

が適応されて、昨日の参加者は『魔女』以外全員、今日投票する事ができない。」

 

「つまり、マーゴくんが言いたいのは今日は『魔女』が好きな人を1人処刑...」

 

「おねしょ♡」

 

「...1人おねしょをさせる事ができるというわけだね。」

 

「でも、あてぃしの端末、投票できるボタンがあるんだけど」

 

「おそらくルール通りなら、そのボタンで投票しても、それが有効な投票にはならないだろうねココくん。君が『魔女』じゃなければだけど」

 

「お?レイアっち。あてぃしを疑ってんの?」

 

「可能性の話だよ」

 

最後は少し不穏な空気を出しながら、マーゴの説明に始まりレイアが話をしめる。

2人の説明を聞きノアはまだ何か考えているようだが、エマはポンと手を打った。

 

「...って事はそっか。昨日『魔女』がマーゴちゃんに投票しなければ今日1人じゃなくて2人に投票できたはずなんだ!...あれ?でもナノカちゃん。何で今日は最低1人最多2人なの?『魔女』の投票は1つなんでしょ?1人じゃないのかな?」

 

そんなエマの疑問にマーゴが答えた。

 

「前回の投票をしたのが、ノアちゃんではなくノアちゃんに成り変わった『魔女』による投票、とするのなら昨日投票していないノアちゃんは今日投票できる唯一の子になるわね。そこのところどうなのかしら?進行役さん?」

 

「はい、本日投票が無効票にならないのはノアと『魔女』です」

 

「あら、あってたのね。...なら何でナノカちゃんはそれを知っていたのかしら?」

 

「ただの推測よ...私を疑っているの?宝生マーゴ」

 

「やーね。ちょっとしたスキンシップよ?ナノカちゃん」

 

「それにしては随分と意味深だったのだけど。それに宝生マーゴ...あなたーー」

 

「ま、待ってよ2人とも!ちょっと落ち着こうよ!おじさんあの時みたいな、言葉で追い詰めたり傷つけるのはもう嫌だよ!」

 

マーゴとナノカに不穏な空気が流れようとした時、慌ててミリアが2人を止める。

ミリアは不安そうに視線が動き、何とか2人の空気を変えようと何か言葉を紡ごうと口を開いているが、うまい言葉が思いつかないのかモゴモゴと口を動かしている。

 

その姿は、過去…いや別の世界で殺し合った私たちの裁判がいかにトラウマで、その状況を少しでも避けたいという彼女の心を表しているようだった。

 

この場でその心と同じではない人物はいないだろう。

それはナノカとマーゴも同じ。

ナノカは不服そうにしながらも、マーゴは微笑みながら口を止めた。

 

するとうんうん考えてた、ココが口を開いた。

 

「まって…今日1人確定でおねしょさせられて、しかもそれは『魔女』かノアっちが決めて、あてぃしらにはどうしようもないってこと!?」

 

「...だな」

 

そんな淡白な返事をした彼女にココが食いかかる。

 

「だな。じゃないっての!?分かってるのヤンキー!?それも何?自分はお漏らししていいって?変な趣味してるね。あてぃしは付き合えないからよろしく」

 

「あぁ!?誰が趣味だ!!誰かが処刑されるのが確定してるなら否応がなく受け入れるしかねぇだろ!死にはしねぇんだ!」

 

「尊厳は死ぬと思うしー。あてぃしはおねしょは受け入れられないなぁ〜。そっちと違って」

 

「あぁ!?」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ2人とも!!マーゴちゃんたちみたいに盛り上がったらだめだよ!」

 

「誰が盛り上がってるし!」

「誰が盛り上がるか!」

 

「ひゃい!」

 

2回目のミリアの言葉はココたち2人を止めるには行かった。

頭に血が昇ってる二人と、あわあわと慌てる3人がごちゃごちゃと言い合いを始める。

...彼女たちは一旦おいておこう。

そう、ナノカの疑問は正しく。昨日の魔女の投票は不自然だ。わざわざ次の自分の一票を無駄にする事はないはずだ。

そんな新たに生まれた疑問に対して皆が意見を出し始める。

 

「マーゴくんに1人だけ投票しないのが不自然だからじゃないかい?この投票は投票すればリアルタイムで反映される。途中でマーゴ君以外に入れば皆怪しみ誰が入れたか気にし始めた可能性がある」

 

「でもレイアちゃん。昨日の投票中はボクだけじゃなくてみんなまたマーゴちゃんを殺しちゃうって思ってて周りを気にしている余裕なんてなかったよ?殺し合いをしていた時と同じ場所、同じ端末で誰も殺していない仲間を殺す投票をしなければならない状況で周りを見ていた余裕は皆なかったとボクは思うな」

 

「それは結果論だとおもうよエマくん。今回はたまたまいなかったけれど、もし他の奴に投票しているのが見つかっていたら次処刑されていたかもしれない」

 

「でも、この子怪しい!ってなったとしても、次の裁判の時には他の人に成り代わってるからリスクは少ないんじゃないかな?」

 

「….それもそうか」

 

エマの意見に確かにレイアが頷く。

するとアンアンが手に持ったパネルを皆に見せた。

 

『そこまで魔女が頭が働かなくて、ただ流れに乗って投票したってのはないのか?』

 

「アンアンさん。それだと自分からこんな夢の裁判を起こしておいてルールを事前に把握してないって事になりますの」

 

アンアンの意見にハンナが呆れた目をしながら返答する。

アンアンのその疑問は確かに私も一瞬考えたが、流石にそれはないだろうと切り捨てた疑問だ。

何度もこんな事を起こしていながら、自分の魔法を把握できていないなんて事はないだろう。

 

同じ事を思ったであろうシェリーが笑う。

 

「そうですよハンナさん。そんなバカな話があるわけーー」

 

「その可能性はあるわねハンナちゃん」

 

「...へ?」

 

は?

 

マーゴの一言に彼女に視線を向ける。

するとおかしそうにクスクス彼女は笑っていた。

 

「どういう事だマーゴ」

 

きつい口調になりながらもマーゴに問いかける。

するとマーゴは笑みを止めずに答えた。

 

「じつは言い忘れていたルールがあるのだけど…」

 

言い忘れじゃなくてわざとだろう。

呆れた視線を彼女に向けるもそれを彼女は無視しながら楽しそうに言葉を紡いだ。

 

 

「ーー『基本ルール14 全員が処刑されてしまい裁判が終わらなかった場合。全員夢の裁判に関係がある記憶を全て消して、裁判をもう一度最初から始める』」

 

「この『全員夢の裁判に関係がある記憶を全て消して』って部分。魔女すら記憶を失ってる可能性はあるわよね」

 

 

......は?

 

あんまりなルールに思考が停止する。

すると同じく呆然としながらもレイアが声を上げた。

 

 

「...え?つまりこの裁判は2回目の可能性があるって事かいマーゴくん?」

 

「そうね。これは推測だったのだけど、合っているかしら進行役さん?」

 

「さぁ?私が参加した裁判はこの裁判が初めてです。」

 

「...なら『魔女』も記憶を無くして、ルールを忘れて把握してなかった。その可能性はあるのかい?そもそも記憶は消えるのかい?」

 

「はいそうですねレイア。リスタートした場合『魔女』はこの裁判に関するありとあらゆる記憶が消えます。ただあるのは目的を達成しないといけないという使命感と投票によって処刑されてはいけないという危機感のみです。そのせいでルールが把握できていなかった可能性はあるでしょう」

 

「...つまり?」

 

「これが2回目なら、『魔女』もルールがわからなくて四苦八苦してた。今回でルールを把握した可能性あり」

 

「あら、大変ね」

 

「大変ね...じゃないだろう!?」

 

耐えきれなくなった私の叫びが口から放たれる。

追加でマーゴに対して罵詈雑言が出かかるがそれをグッと私は堪えた。

余計な言葉は煙と同じ、出せば出すほど議論を曇らせるだけ、正しくない行いだ。

まずは言わなければならないことがある。

 

「これ以上後出しされてはたまらない!マーゴ、知っていることを全て話せ!!」

 

これ以上、色々と後出しされてはたまらない!

後から重要な情報をポンポン出されては、議論もクソもない。それでは正しくない裁判正しくない議論が正しくなく進んでいく

さっき無視した頭の中のもう一人の私も同じ意見を叫んでいる。

 

私の必死の叫びにマーゴは手を口に当てて、驚いているような様子をわざとらしく見せる。

 

「あら…全部?」

 

「全部だっ!!」

 

「あらあら。このままだと、あなたが疲れちゃいそうだから全部、話してあげるわね」

 

はぁはぁと息が乱れる私を見ながらマーゴはおかしそうにクスクス笑った。

誰のせいだと….

 

「話していなかったことは5つ」

 

多くないか?

 

「多くないかい!?」

 

レイアのツッコミが放たれるがマーゴは気にせず続ける。

 

「1つ 基本ルール(13) 『魔女』は『2票以上自身に投票があった事がある参加者』に成り代わることができない」

 

「2つ 追加ルール(4) この裁判はあらゆる意味で『傷』が現実世界に持ち越されることはない」

 

「3つ この裁判は大魔女によって回収されなかった僅かな魔女因子の残滓が起こしたものである」

 

「4つ この魔法の使用者は魔女裁判を終わらせた私たちに憧れと挑戦したいという気持ちを持っているの。つまり私たちに勝負したい、そして勝ちたい…それが『魔女』の目的」

 

「そして5つ目は….秘密よ♡」

 

 

ーーーは?

 

今日何度目かもわからない唖然とした声が溢れる。

皆も同じなのか大体のものがポカンとしており、それ以外のものは今の話の整理を必死でしているのだろう。

 

そして——全員が一斉に喋り始めた

 

「まて…待て!つまり基本ルール(13)を使えば、議論する必要なく確実に犯人を絞れるってことじゃないか!」

 

「最初から…最初から全部話しなさい宝生マーゴっ!!」

 

「え、えーと。とりあえず現実世界でみんなが傷つかないで済むのは…うれしいなぁ。でもおねしょは…心の傷だとおじさん思うんだ…」

 

「勝負か…いいだろう!私たちが受けてたとう『魔女』君!!」

 

「だれに投票しようかなぁ…」

 

「もう誰でもいいんじゃねぇか?誰にも投票しなくて全員処刑。リスタートってのが一番まずいだろ」

 

『ノア、今のうちにわがはい達で投票先を決めよう』

 

「ほえ〜。すごい執念と勝利欲だなーって憧れちゃいますね!ハンナさん」

 

「単純に傍迷惑ですの!!」

 

「魔女因子の残滓って…ユキっちも全部持って行ってくれよぉ…」

 

「ユキちゃんが回収し損ねた魔女因子…そうだよね、ボクたちみたいに魔女因子を持って行ってもらっていたら魔法なんて…あれ?それならなんで昨日ボクたちは...?」

 

混沌。言葉の投げ合い。ドッチボール

全く正しくない議論の空間が目の前で広がっている。

それはそうだ。いきなりこんな情報後出しされてはこうもなる。

そんな混沌としたこの空間をマーゴは色気のある表情で恍惚の笑みで見つめている。

くっ…!顔がいい…っ!....ってそんなことを考えている場合じゃない。

 

追加された情報には魔女を確実にあぶり出せるルールに加えて今回の被疑者である『魔女』の気持ちまで含まれている。一体どうやって調べれたのか、それが本当なのか疑念が残る。

さらに全部話せと言ったのに1つは結局喋っていない!

 

ちらりと砂時計を見る。

まだ上部分に砂はある。まだ時間はある。

 

聞きたいこと、言いたいこと、話したいことが無数にあるが、時間制限がある以上まず今日やらなければいけないことを進めていくべきだ。

さっさとこの正しくない裁判を終わらせなければならない。

 

だから、だから正しくないマーゴに詰め寄るのは後…後にしなければ…っ

グギギと苦虫を噛み潰すしながら、「誰にしようかな 神様の言うとおり~」と呑気に1人1人数えているノアに声をかけようと私は口を開いた

 

「ノア。投票先はそんな適当ではダメだ!!」

 

Pi……

 

「今日有効な投票をできるのはノアと『魔女』のみなんだ!」

 

Pi…pi…

 

「ノアの投票先によっては、今日の処刑される人間が1人に止めることができるし、運が良ければ『魔女』を処刑することが可能かもしれない!」

 

Pi…pi…pi

 

「だから!!」

 

Pipipipi

 

「しっかりと考えて投票を…!!」

 

Pipipipipipipipipipipipipi

 

「—っ!!うるさいっ!誰だ!」

 

言葉を邪魔するように大きくなり始めた電子音に私はいい加減キレて当たりを見渡す。

だが、その電子音はどこからも聞こえるにもかかわらず発生源は一切わからない。

 

「これは…アラーム?」

 

「え?携帯?あてぃしなんかセットしたっけ?」

 

皆も辺りを見回しているが見つけられないようだ。

だがその時、何かに気が付いたかのようにエマがハッとした顔になったことに私は気が付いた。

 

「どうしたのですかエマさん?」

 

同じく気づいたであろうシェリーがエマに尋ねる。

するとエマは目を泳がせ口をモゴモゴさせながらも、言いづらそうに口を開く。

 

「え、えっとね。ほら昨日珍しく寝坊してたよね?」

 

私のことか

 

「だから、目覚まし時計の音量高くして、セットしておいてあげようかなぁって……」

 

「つまり?」

 

「もしかして、この音私の目覚ましの音なんじゃないかなって….」

 

…なるほど

基本ルール(3)制限時間は参加者全員が眠ってから始まり、誰が起きるまでの間。制限時間内に全員が投票しなければ全員処刑される。

 

……..

 

「……..ありがとうエマ。私のために」

 

「えへへ。そんなことないよ」

 

「えへへじゃありませんわ!!」

 

私の言葉にエマが照れているとハンナがツッコミをいれてくる。

…だってしょうがないじゃないか。エマが私のためにしてくれた正しいことじゃないか

 

「この音が聞こえるってことは時間制限が近いってことですの!?」

 

慌てたハンナが進行役に問いただすと、進行役はこくりと頷いた

 

「そうですね。もうすぐエマたちが起床します。朝早いですね」

 

「朝早いですね…じゃないですの!どういうことですの!?砂時計の砂はまだそこにある…」

 

「….?これはインテリアであり時間制限を示すものじゃありませんよ?」

 

「インテリアですかー。私もそんなクラシックなやつ欲しいですね!」

 

「欲しいですね!じゃねぇですの!!このゴリラ!馬鹿シェリー!!」

 

「馬鹿って、ひどいなぁハンナさん」

 

怒るハンナと何事もないかのように笑うシェリー

猫とネズミが仲良く喧嘩するアニメ作品のようなコミカルな二人に空気が和むがそれどころではない。

同じことを思ったであろう彼女が叫ぶ。

 

「漫才してる場合じゃねぇよ!!早く誰かに投票しなきゃ…」

 

「1票入りました。」

 

「はぁ!?」

 

突然の進行役による投票宣言。

慌てて端末を見るとそこには1票投票されていた。

 

『黒部 ナノカ 1票』

 

「なんで….!?」

 

ナノカが呆然とした声を上げ、ノアの方に凄まじい速度で首を動かす。

顔を向けられたノアはフルフルと首を動かし端末を見せる。

 

その画面には、まだ未投票であることが映し出されていた。

つまりこれは『魔女』の投票

自身の処刑が確定したナノカは一瞬呆然とするが、すぐに頭を切り替えて辺りを見回した。

 

「….っ!?そうだ!皆!端末を見せて!今投票している人が『魔女』だからノアがそいつに投票すれば…!!」

 

「む?わがはい、まだ投票していないはずなのに投票済みとなっておるな」

 

「アンアン君もかい?私もなんだよ」

 

「あ〜。おじさんもだね」

 

「あてぃしもだ。これって。もしかして投票権なかった人は全員そうなってるんじゃね?」

 

「そん…な」

 

ナノカの呆然とした言葉が漏れ、そしてその場に崩れ落ちた。

あまりに軽く彼女の処刑…おねしょが決まってしまった。

可哀想だが、『魔女』が先に投票してくれたのならまだ希望はある。

 

「ノア。君もナノカに投票してくれ」

 

「いいよ〜」

 

「何故!?」

 

私の指示にナノカの泣きそうな視線を向け、その視線は鋭く私に突き刺さる。

その姿に気後れするが、申し訳なく思いながら理由を私は説明する。

 

「『魔女』が先に投票してくれたおかげで、票が分散せずに済むんだ。最悪の場合1票が2人でて二人処刑される可能性があったところ。君一人の犠牲で今日を乗り切ることができる…これが正しい選択だと思う…」

 

「う….わかってる…わかってるわ…」

 

「…本当にすまないと思っている」

 

ナノカもそれが最善策だと理解しているのだろう。

だが、それでも納得いかないのは…私にも理解できる。

この年でおねしょは辛いのだ。

 

そんなナノカにマーゴが優しく声をかける。

 

「大丈夫よナノカちゃん。同じ部屋の私はあなたが何故おねしょしたのか分かってあげれるわ」

 

「それがより嫌なのよ…」

 

「昨日と同じように証拠を隠滅しましょ♡」

 

「う、うぅぅうう」

 

ナノカが頭を抱えて再びその場にうずくまってしまう。

 

すまない…すまないナノカ

私はあまりに申し訳なくなりながら投票ボタンを押す。

 

 

「投票が集まりました。黒部 ナノカ 2票。黒部 ナノカが処刑されることになりました。」

 

処刑先が決まったことを告げる進行役の言葉。

昨日はもっと時間があったはずだが、アラームによって既に目が覚めそうなのが理由なのだろうか、進行役の声と共に急速に意識が遠のいていく。

 

辺りがゆっくりと見えなくなり、聞こえるのはかすかな皆の声…

 

「処刑が決まってから、これだけ早く意識が消えるってことは…おねしょの速度も…」

 

何をいってるんだエマ??????

 

「秘密の花園….」

 

「やめて!!!!!私と宝生マーゴはそんな関係じゃないの!!!」

 

ナノカの叫びが夢の中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Pipipipipipipipipipipipipi

 

「これ…か?」

 

Pi…!!

恐る恐るエマの枕元にある端末の画面を押すとアラームが止まってくれた。

記憶には存在しているがこういった新しい電子器具には慣れない。

 

「んぅ…あれぇ?」

 

目覚めたエマがポヤポヤとした寝起きの目で私を見つめてくる。

 

「まったく。君のアラームで目が覚めてしまったよ」

 

「あぇ…?ごめんねぅ…」

 

「別に構わない。顔を洗ってくるといい」

 

私が苦笑しながら彼女に告げると、彼女はいまだにポヤポヤとした様子でゆっくりと部屋から出ていった。

 

平和で呑気な光景。

過去の乗り越えたことで得たこの光景を、私はひどく幸福なものだと思う。

 

朝からしっかりと幸せを噛み締めながら、私も身支度を始めることとした。

窓を開けるとそこに広がるのは快晴。

気持ち良い風が部屋の中に入ってくる。

 

 

ああ、いい日だ。今日は朝から洗濯でもしようか

気持ちの良い晴れ空を見ながら、私は今日もいい日になるという確信を持てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

洗濯場にいくとシーツを洗うナノカに出会った。

ナノカも図書室の住人になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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