なんか違う尊厳裁判   作:haguruma03

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承『お昼寝』


 

「ふぅ」

 

日差しは強いものの風が気持ち良く、気持ちの良い昼間。

最後の洗濯物を干し終えるてふと一息つく。

 

青空と遠くに浮かぶ入道雲。

夏を象徴するかのような穏やかで清々しく、朝の騒動が嘘のような天気だ。

 

こんないい天気ならこのまま昼寝をしたいと思いつつも、今朝から考えていた事を実行せずには、気持ち良く睡眠を取れないだろう。

 

さて

 

「物資の中におむつはあったのだろうか?」

 

「待て。何でそうなる?」

 

ポツリと呟いた疑問。

まさか返答があるとは思わず、後ろを向くとそこにはアリサの姿があった。

 

「アリサか...ちょうどよかった。おむつが物資に入っていたか覚えているか?」

 

「いや、ちょうど良くねぇよ。話を勝手に進めんなよ。何でそんなモン必要なんだよ」

 

疑問に対して疑問で返すのは正しくない。

その思いと共に眉をひそめながら、アリサの疑問に先に返答することとした。

 

「今日の朝ナノカが粗相をしただろう?」

 

「粗相って...もうちょっと言葉を濁してやれよ」

 

「昨日はマーゴだ」

 

「話進めんなよ」

 

「2人が...その、秘密の花園だった場合は構わない」

 

「いや構え...あぁ〜やっぱ構わなくていいな。うん」

 

「だが、今回の件が精神的なものが原因だとすると、対策を考えないといけない」

 

「...精神的なもの?」

 

「そうだ。粗相が精神的ストレスの可能性も否めない。私達には解決したとはいえ、心当たりが大いにあるはずだ。」

 

「あぁ...まぁそうだな。」

 

「この牢屋敷の中にそれが原因による粗相を揶揄する者などいないのはわかっている。」

 

「そりゃそうだろウチ達の中にそんな奴いねーよ」

 

「だが聞いた話だと...粗相を見られる事の羞恥心と優しい対応をされた時の居た堪れなさは...堪らないらしい」

 

「...誰から聞いた?」

 

「朝...ナノカから」

 

「顔合わせた時か...」

 

「『理由が...理由があるの!!』と慌てる様子の彼女の姿はとても哀れで、宥める様に話を聞こうとしたら、いじけながら教えてくれたな」

 

あの時のナノカは凄かった。

目を見開き涙ぐみ内股になり、シーツを洗っている桶を必死に足で隠していた。

人は混乱するとこうなると見本にあげてもいいと称するほど見事な慌てっぷりであった。

 

私が遠い目で今朝のことを思い出していると、アリサもまた苦々しげな表情でつぶやく。

 

「...何つーか、居た堪れなさがすごいな」

 

「彼女曰く尊厳が死ぬらしい。乙女の尊厳が」

 

「...だろうなとしか言えねぇよ。」

 

「これは魔法のせいだとも言っていたが...」

 

「人におねしょさせる魔法があってたまるか」

 

それもそうだ。『人におねしょさせる魔法』なんてあったら何と恐ろしい事だろう。

 

「まぁ、ナノカは何とかして粗相を誤魔化したかったのだろう」

 

「本当に居た堪れねぇ...そういえば黒部のやつ、朝から見てねぇが宝生と一緒か?」

 

「ああ、2人で図書室にいる様だが、昨日と違って篭ってはいない様だ」

 

「どういう事だ?」

 

「時々図書室から抜け出して、元魔女の子達のメンタルケアをしてるとレイアが言っていた」

 

「メンタル抉れている奴がメンタルケアか...変わってやった方がいいんじゃねぇの?」

 

「私もそう言ったのだがな、意地でもやる様だ。一応レイアがサポートで一緒に行っていたよ」

 

思い出すのは胸を張って『私に任せたまえ!!!』と私に宣言するレイアの姿。

その姿は宝塚のトップスターの様に様になっていた。

ナルシストではあるがレイアは気がきく人間だ。

だからナノカ達の事も任せられるだろう。

苦々しい事だが、私が彼女らのフォローをするよりもよっぽどいい。

朝ナノカに出会いフォローをしたが、その結果『あなたの心遣いが苦しい...』とまで言われてしまい、人には向き不向きというものがあると本当に実感してしまった。

少しずつ直していきたいと思う。

 

「なるほどな。まぁ、蓮見なら大丈夫だろ。あいつなんだかんだ気がきくしな」

 

納得したのかアリサは黙り空を見上げる。

私もそれに釣られて視線を天に向けた。

 

所々には雲はあるものの、視界のほぼ全てが透き通る様な青。

夏真っ盛りの日。

 

 

 

 

「だから全員がオムツを常日頃から履く方がいいと思うんだ。」

 

「何がだからだよ」

 

話を元に戻してみたが、アリサからのツッコミが入ってしまう。

 

...わかってくれると思ったのだが。

アリサが理解してくれないことに私は不服に思いながら彼女になぜそういった結論になったのか説明することとした。

 

「粗相した事が他者に見つかるのが尊厳破壊の原因なのだろう?」

 

「粗相をした事自体がメンタルブレイクだと思うが...まぁ確かに1番精神的にクルのがそこだな」

 

「ならば粗相をしたとしても秘密裏に処理できる様にすれば、少しはマシになるのではないだろうか?」

 

「だからオムツか?」

 

「ああ、常日頃からオムツを履き続ける事で精神を保つ事ができるだろう」

 

「うーん。年頃のウチらが常日頃からオムツするって、

割とメンタル抉れると思うんだがどう思う?」

 

「...」

 

「おい」

 

「...これが正しい選択.....なのか?」

 

「自分自身で疑問に思ってんじゃねぇか。お前が自分の正しさ疑ったら終わりだろ」

 

呆れた目をしたアリサに見つめられる。

まぁ、わかってはいる。私も乙女だ。年頃の少女だ。

理由があって履くのはまだしも、予防として履くのは...こう、躊躇してしまうのも否めないだろう。

 

私がウンウン悩んでいると、アリサからの質問が耳に入る。

 

「それで?その話は誰かにしたのか?」

 

私はその質問に悩むことを一旦やめて返答する事とした。

 

「洗濯をした後に、その場で起きていたメンバーには話をしたな」

 

「そいつらか?」

 

アリサがそう言って視線を向けた先には数人の少女達が肩を寄せ合って木陰で眠っている。

 

「え〜と。桜羽に佐伯、夏目に城ヶ崎...沢渡もかよ珍しいな」

 

エマ、ミリア、アンアン、ノア、ココの5人が肩を寄せ合って眠っていた。

 

仲睦まじく眠っている彼女達を見ながらアリサに説明する。

 

「皆で洗濯をしているとアンアンとノアが来て、私達に一緒に映画を見ようと誘って来たんだ」

 

「ただ洗濯がまだ終わっていなかったから待っている様に伝えると木陰で眠り始めて、その後ココもやってきて昼寝を共に始めた」

 

「沢渡が?」

 

「どうやら昨日の夜に『推し』と長電話をしていて眠るのが遅くなったらしい」

 

「それはしょうがねぇが、ほどほどにしねぇとな」

 

「そうだな。注意はしておいた」

 

「まぁ、ウチも人の事は言えねぇが」

 

そうアリサは言うと、ふぁ〜と眠そうに欠伸をした。

 

「寝不足か?」

 

「実は寝てねぇ」

 

目をショボショボとアリサは動かす。

注視していなかったが、どことなく足元もふらつき目元にもうっすらと隈がある様にも見える。

 

「君は見た目に反して規則正しい生活をしてるイメージがあったのだが」

 

私の言葉にアリサは眠そうに答えた。

 

「見た目に反しては余計だっての。まぁ、何だ。何かしらねぇが目が冴えて眠れなかったんだよ」

 

「理由に心当たりは?」

 

「これといった心当たりはねぇが...強いて言うなら、おっさんに見せられた他の世界でのウチ達の事とか...か?」

 

「...それは」

 

「...まぁ気にすんな。ウチもそこまで重く引きずってるわけじゃねぇ」

 

「...そうか」

 

「ああ...」

 

「...」

 

「...」

 

「...オムツ、履くか?」

 

「何でそうなるんだよ。フォロー下手すぎんだろ」

 

「精神的ストレスなら予防をしておかないと」

 

「さっき少女の尊厳が死ぬって結論出たじゃねぇか」

 

「凄惨な(尊厳の)死よりはマシだと思うが」

 

「だとしても気軽に勧めるもんじゃねぇよ。他のやつに話したっていってたけど反応はどうだったんだよ」

 

「大体は納得してくれた」

 

「気まずそうにしてなかったか?」

 

「話をしてからエマとミリアと視線が妙に合わなくなったな」

 

「それ納得してねぇよ」

 

「シェリーも納得してくれたがハンナは怒っていた」

 

「ハエ女の意見は基本的に奇天烈だから気にすんな、というか遠野普通に反対してんじゃねぇか...ってその遠野は何処だ?」

 

「ハンナはシェリーが『確かオムツがあった気がします!」といって倉庫に向かったのに着いて行ったな」

 

「結局は取りに行ってんのかよ」

 

「『私には魔法がありますから何箱でも運べます!』ともいってたな」

 

「そりゃそうかーーってんなわけねぇだろ」

 

「ん?どういうことだ?」

 

突然のアリサの否定にポカンとして彼女を見つめるが、逆に私と同じ表情をしながらアリサは口を開く。

 

「ウチもお前もあいつも、もう魔法はねぇんだ。だから何箱もは無理に決まってんだろ。橘のやつ寝ぼけてんのか?」

 

アリサが呆れたかの様にため息をつく。

 

.........ああ、そうか。

魔法はもうないのか

 

「そう言えばそうだった。寝ぼけているのかもしれない」

 

私が苦笑すると、アリサは心配そうな視線を私に向けてきた。

 

「お前...結構疲れてるんじゃないか?さっきからなんか様子が変だし。昨日も起きてくるの遅かっただろ?」

 

「別に偶々だ」

 

「偶々がそうそう起こるやつじゃないだろお前は。無理してるんだったらウチらを頼れ...ふぁ」

 

アリサが頼り甲斐のある言葉をくれるが最後には眠そうに口から欠伸が漏れる。

よほど眠いらしい。

その姿が少し可笑しくてクスリと笑ってしまった。

 

するとアリサは恥ずかしそうにしながらも、じっとりとした視線を私に向けてきた。

 

「なに笑ってんだよ」

 

「いや、平和だなって思ってね」

 

「なんかいつもと雰囲気ちげぇんだよなぁお前。変な提案し始めたり突然笑ったり。疲れてんのか?」

 

「それは君もだろう?」

 

「まぁ、それもそうか」

 

アリサはそう言うとゆっくりと歩を進めて寝ている皆の横に腰掛けた。

どうやら彼女もここを寝床に決めた様だ。

 

「アリサ。寝るならベットで寝たほうがいいと思うが」

 

「別にいいだろ?委員長みたいなこと言いやがって」

 

「しょうがないだろう。それが私だ」

 

「まぁ、そりゃそうか。なら、お前も一緒にどうだ?」

 

アリサが寝るにちょうど良い体勢を探すために体を捻りながら尋ねてくる。

 

確かに皆幸せそうに寝ている。

魅力的な提案であるが、ここで私も寝てしまったら午後の掃除の予定が消えてしまう可能性もある。しかしそこまで長くない時間なら大丈夫なのではないだろうか?

そんな自問自答しているうちにすぐにアリサは目を閉じて喋らなくなった。

彼女もすぐに夢の世界へと入っていく事だろう。

 

予定にない昼寝など普段私がしない事、アリサもそれを承知の上での誘いだったのかもしれない。

 

だが、それにしても、皆気持ちよさそうに寝ている。

ここがついこの前までは、心休まる所などない最悪の監獄だったとは思えないほどリラックスして互いに肩を寄せ合い昼寝を満喫している。

 

ふと考える。

頭の中でこの後の予定を考える。

色々トラブルもあったがここ数日かけて行なっている牢屋敷の大掃除もかなり進展があった。今日は娯楽室の掃除予定だったが、あの部屋はそこまで汚れておらず時間の余裕はあるかもしれない。

 

ならば...

 

自問自答にケリをつけた私は寝ている皆に近寄りアリサの横にそっと腰を下ろすことにした。

 

「ん?...まさか来るとは思わなかった」

 

アリサが片目を開け、横に私が来たことを確認すると驚き目を瞬かせる。

 

「偶には、いいだろう?」

 

くすりと私は笑いアリサの横に座り彼女の肩に頭を乗せ枕代わりにする。

 

私からそんなことされると思っていなかったアリサはピクリと肩を震わせた。

 

その揺れで頭のいい位置が外れてしまい、私はまた定位置を探す羽目になるムスッとしてしまう。

 

「アリサ。あまり肩の位置を動かさないでくれ」

 

「な!?おま...はぁ。やっぱりお前何かいつもとちげぇんだよ」

 

アリサから呆れた様な声が聞こえる。

しょうがないだろう

 

「今だけさ」

 

「今だけなら...まぁ...いいか」

 

アリサは眠そうに返答すると再び目を閉じた。

その姿を見てから私も目を閉じる。

 

「おやすみ」

 

「ああ、おやすみ」

 

私の言葉にアリサは答えた。

澄んだ空気。

木陰でも少し暑い気温。

それを鎮める風。

目を閉じた事で強く感じる様になったそれらに身を任せていると、隣から規則的な寝息が聞こえる。

それはまるで子守唄の様に私をさらなる眠りへと誘ってくる。

 

気持ちの良い風が私を包む。

辺りから聞こえる皆の呼吸音。

周りに仲間たちがいる安堵を感じる。

 

ゆっくり、ゆっくりと意識が朧げになるのを感じる。

 

どうかこんな落ち着ける穏やかな日々が延々と続くと願い、私の意識はゆっくりと夢の中へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「延々と続いてはダメなんだ!!!!!」

 

私は叫びながら証言台に手を叩きつけた。

前回と同様の夢とは思えぬほどのリアルな痛み。

今日もまた、前回と同じ悪趣味な裁判が始まってしまった。

 

周りの皆も殆どが同じ様に頭を抱えている。

 

まさか昼寝でも裁判が発動するとは。

考えればその可能性はあった。

あったが記憶がない以上対策のしようがないからどうしようもない。

 

「なぁ、おい」

 

苦々しげに眉を顰めていると、アリサの声があたりに響く。

そちらに視線を向けると何か考え込んでいるアリサの姿があった。

 

「どうしたの?アリサちゃん?」

 

エマが伺うと、彼女は少し悩んだ後再び口を開く

 

「もしかしてだが...ウチ一回裁判飛ばしたか?」

 

「え?...それってもしかして」

 

訝し気なアリサの言葉にエマは、いや皆は確信しただろう。

 

なるほど、前回はアリサだったか。

 

「という事は前回『魔女』に成り代わられていたのはアリサだったという事だな」

 

「成り代わられた?どういう事だ?」

 

「しょうがないな、わがはいが1から前の裁判で起こった事を説明してやろう」

 

ふふんと小柄な体を張り、自信気に彼女は言う。

 

一旦説明は彼女に任せよう。

それよりも裁判だ。

今回も前回と同じ...

 

 

...いや...違う前回よりも最悪だ。

 

私はある事に気がつき血の気が引く。

周りにも私と同じく顔を青ざめている皆の姿があった。

恐らく気付いたのだろう。気が付かないわけがない。

 

「...ちょっと確認ですの」

 

そんな時、ハンナが手を挙げた。

その姿にシェリーはニコニコと返答する。

 

「何ですか?ハンナさん?」

 

「私達寝る前何してましたっけ?」

 

「皆でお洗濯ですね!」

 

「その後」

 

「私とハンナさんはオムツ探しに行きました!」

 

「その次」

 

「帰ってきたら皆が集まっていて木陰でお昼寝してましたね!」

 

「...それで?」

 

「私達も一緒になって寝ました!」

 

「最...悪ですわ」

 

ハンナがその場で崩れ落ちる。

その様子をシェリーは笑顔で見ながら、話の総括を行った。

 

「つまりお昼寝している私達全員同じ場所で肩を寄せ合いながら寝ているって事ですね!」

 

ヒッーー

 

息を吸う様な悲鳴が耳に入る。

その方向に目を向けるとエマが口に手を当て怯えていた。

するとエマはワナワナと怯えながら言葉を口にする。

 

「こ、この状況で処刑されちゃったら...」

 

「みんなの前で、いや、真横でおねしょですね!」

 

お昼寝メンバーの殆どがその場で崩れ落ちた。

 

最悪だ。

 

悪夢だろうか?悪夢だったな

あまりの事態に頭を抱えてしまう。

マーゴやナノカの時の様ならば、粗相を隠すこともできた。

だが、今回は無理だ。

今回処刑されてしまうと、全員の前で粗相をするという公開処刑が待っている。

 

「前回前々回と比べて、処刑による尊厳破壊レベルバカ上がりじゃね???」

 

ココの呆然とした声に、お昼寝をしていた一同皆呻き声をあげる。

 

するとクスクスと笑う声が聞こえた。

誰かは半分確信を持ちながらそちらを向くと、やはりマーゴが楽しそうに笑っていた。

 

「ごめんなさい。まさかみんな仲良くお昼寝してるとは思わなくて」

 

「なら笑わなくてもいいだろう」

 

私は目尻が険しくなったのを自覚しながらマーゴを見つめる。

するとマーゴは薄く笑った。

 

「あら怖い。ちょっとした嫉妬よ」

 

「何のだ」

 

「私達もお昼寝の仲間に入れて欲しかったのよ。ねぇナノカちゃん」

 

「...私を巻き込まないで」

 

「つれないのねナノカちゃん」

 

ナノカにそっぽ向かれても、マーゴは楽しそうに微笑む。

 

本当に楽しいのだろう。

いつもは内心を読めない不適な笑みを浮かべている彼女が満面の笑みで微笑んでいる。

 

「マーゴちゃん...本当に楽しそうだね」

 

同じことを考えていたであろうエマがマーゴに問いかけるとマーゴは満面の笑みで答えた。

 

「もちろん♡」

 

...彼女の趣味嗜好は一旦置いておこう。

何せ時間がない。

昨夜はエマのセットしたアラームで予想より早く裁判が終わってしまった。

今回もそうなる可能性は大いにある。

アラームはないにしろ私たちは昼間の外で眠っているのだ。いつ目が覚めてもおかしくないだろう。

早く議論を進めるべきだ。

だが何から話し始める?

 

頭を悩ませていると、視界の端に動くものが目に入る。

シェリーが元気よく手を上げ手を振っている。

誰に向けてだ?

向いている方向的に私...か?

あ、私だな。私の視線に気がついて手が勢いよく振られ始めた。

 

そして私が返事をするより前にシェリーは喋り始めた。

 

「1つお願いしてもいいですか!?」

 

「なんだ?」

 

「今日は、処刑される人と今後成り代わられないために2票以上入れられる人が現れると思うんですよ」

 

「そうだな」

 

「でもどうしても、投票数が1票以下で『魔女』に成り代わられる可能性があって、今後処刑される可能性が出てくる人はいると思うんですね」

 

「そうだな」

 

「倉庫にあったオムツ、全員分なかったんですよね」

 

「そうなのか?」

 

「だから今日処刑された人は、今後処刑される可能性がある人にオムツを勧めてもらってもいいですか?」

 

「...」

 

「...」

 

「...全員に勧めるのではなく、特定の人物だけにオムツを勧める?」

 

「そうですね!何たって全員分オムツはありませんし、誰が処刑される可能性があるかこの夢の裁判の記憶がある人しかダメですし!」

 

「...正気か?」

 

「オムツを勧めることは、あなたがそもそも決めた事ですよね?」

 

「...それもそうか」

 

「それもそうかじゃありませんわ!!!!」

 

ハンナの絶叫があたりに響く。

 

もう何が何だかわからない。

わからないが...

 

周りの数人が何かを心に決めた表情をしているのがわかる。

 

おそらく彼女達も私と同じ事を考えているのだろう。

 

それは

 

今回の裁判だけは処刑されたくない

 

 

そんな乙女心の叫びだった。

 

 

 

 

 

 

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