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でもオグリ少ししか知らない
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なら主人公変えればいいじゃん
でできた小説です。
よろしくお願いします
Let's begin the Generation.
「印象に残っているウマ娘、か」
オグリキャップはその答えを出すまでに、多くの時間を必要とした。
カサマツトレセン学園から中央トレセン学園への編入を果たし、スーパークリーク、イナリワンと共に「永世三強」。そして「カサマツの星」「芦毛の怪物」と称されるウマ娘。
彼女の残した功績は大きく、その最たるものがクラシック登録制度に関してだろう。
また、それ以外でも重賞を6連勝するなど、彼女の異質さは計り知れない。
彼女はトレセン学園卒業後、トレーナーになった。
トレーナーになってから十数年、数々の優秀なウマ娘を育てたとして現役時代以上に名を残している。
そんな中で受けた雑誌の取材で、そう聞かれた。
「やっぱり、私と共に『永世三強』と呼ばれたスーパークリークやイナリワン。
あと、タマ…タマモクロスはやっぱり入れたいな。今でもよく連絡をしているんだ」
シンボリルドルフさんはどうですか?と記者に聞かれ、オグリはハッとする。
「そうだ。ルドルフもいたな。ルドルフも強かった。下手をすれば負けるのではないかと思うこともあった」
ただ、とオグリは続ける。
「ただ、トレーナーとして育ててきたウマ娘をあげるなら、1人だけになる」
そう言うとオグリは目を瞑り、僅かに笑みを浮かべる。その表情は、かつて自らが育てた教え子との思い出を懐かしんでいるように見えた。
「記者の人。今日は時間はあるか?」
オグリにそう聞かれ、記者は頷く。
「じゃあ、今日は彼女の話をしよう。『スピード狂』『道化師』、そして…」
一息空けてから、オグリは続ける。
「『第二のオグリキャップ』と呼ばれたウマ娘。ファントムレイダーについて」
*
私は、いわゆる転生というものをしてしまったらしい。
死んだ記憶はない。なんなら一番最後の記憶は友人と電話をしていたタイミングだったはずだ。
しかし、気がつけば幼女になっていた。明らかに人間ではない耳と尻尾がついている、「ウマ娘」なる種族として。
ウマ娘とは、基本的な身体構造は人間とほぼ同一であるものの、時速60kmを超える速さで走れる等の、驚異的な身体能力を持った種族のようだ。
しかも私は前世の人間としての記憶も残っている。
本来混乱するところなんだろうけど、なんか情報量が多すぎて一周回って冷静になってしまった。
とりあえず私は、ウマ娘として新たな人生…いや、ウマ娘だからバ生の方が良いのか?を歩む事になった。
*
ウマ娘は、本能的に走りたい、勝ちたいという意欲が強いらしい。
なぜ急にそんな話をしたかというとだな。
「走りたい…もうどこでもいいからとりあえず満足するまで走りたい…」
現在進行形でその本能に悩まされているからなんですヨネー。
私が転生してから、10年の時が経った。
私は両親に捨てられていたらしい。物心ついたころには、孤児院で暮らしていた。
ここはウマ娘を育てるのは初めてらしく、私も職員さん達も試行錯誤しながら生活していた。
ウマ娘の規格外の食欲や身体能力に、最初は苦労したけれど、今はもう慣れっこだ。
ただ、この走りたいという欲望だけは、どうしようもなかった。
どこか走りに行くにしても、私1人の為だけに職員さんの手を煩わせるわけにはいかない。けれど、ランニングマシンを買う金銭的余裕なんてとても無かった。
だから、ずっと我慢していた。ただ、食欲を我慢したところで、いずれ限界が来るように、日に日に走りたいという欲望だけが溜まっていった。
そして、ある日。
私は我慢できずに、夜中に施設を抜け出した。
向かったのは、孤児院からそう遠くない位置にある団地。山を削って作ったらしく、坂が割と急だったりする。
日付が変わるころにこんな所に来た理由は1つ。
「あ?なんでこんなとこにガキがおんねん」
「ここは子供の遊び場やないんや。早く家帰り」
道路の真ん中で屈伸をしたりして体をほぐしていたであろうウマ娘達が、私に気づいて、そう声をかける。その威圧感に少し緊張したけれど、私は堂々と言った。
「今日のレース、私も出させて」
「「はぁ?」」
この周辺は夜中になると人1人出歩かなくなる。更にいえば、車も全く通らない。だから、ここで毎週、ウマ娘達がレースをしているのだ。
更には、このレースではお金を賭ける人もいる。正規のレースでは賭けれないから、こういうレースでギャンブルする人もいるらしい。
準備運動をしていたウマ娘達が、私を見て、お互いを見て、また私を見る。
栗毛の長い髪をした人が、ため息を吐きながら私に問いかけてきた。
「親はどうした」
「いない。孤児」
「トレセン学園に入っとらんのか」
「そんなお金ない」
「……今まで全力で走ったことは」
「ない。大人に迷惑かけられないから」
栗毛の人は、もう一度深いため息を吐いた後、私に背を向けて、このレースの主催者であろう人に声をかけた。
「おいヒトミミ。参加者追加だ。このガキ入れとけ」
「急になんじゃホーク。ここはガキの遊び場ちゃうんやぞ」
「わーっとるわんなもん。コイツには賭けなし。順位はコイツ除いて決定。これなら文句ないやろ」
ホークと呼ばれたウマ娘は、主催者であろう人とそう話すと、私の方に向き直り、話し始めた。
「これから好きなだけここで走りゃあいい。その代わり、誰にもここのことは言わんこと。ええな?」
若干脅しも入っていただろうが、その時の私は、脅しよりも好きなだけ走れる喜びの方が勝っていた。
「はい!これからよろしくお願いします!」
「おう。ええ返事や。ちなみにお前名前は?私はナイトホーク」
「ファントムレイダーです!よろしくお願いします!」
*
夜中にレースをするようになってから、3年経った。
院長さんは私が夜中にどこかへ行ってることは気づいているみたいだけれど、深く追求はしてこなかった。
院長さんに心配かけてるのは申し訳ないけど、この事がバレなくてホッとしている自分もいる。
いつも通り夜中に孤児院を抜け出して、いつもの場所に向かう。
そこには、やっぱりナイトホークさんがいた。小走りでホークさんのとこに近づいて、挨拶だけしておく。
「おーレイやっと来たか。はよアップせえよ。10分後開始や」
「りょー。今日のレートは?」
「私1.5、レイ1.2、あと新人ちゃん4.2やな」
「新人来たん?」
「おう。そこでアップしてるポニテの芦毛や」
ホークさんがそう目で指した先には、確かにそのウマ娘がいた。背格好から察するに、もう大人にはなっているみたいだ。
しかし、大人がこんなレースに参加するなんて初めて見た。まあ関係ないか。
「新人おるでコースの確認するで集まってやー」
主催者の人の声が聞こえて、アップを切り上げ一箇所に集まる。
「今日はいつものコースな。一番でっかい道を通ってって、坂下った先にあるバス停がゴールや。ぶつかるんも斜行もなんでもあり。ただいっちゃん早いやつが勝つっちゅうレースや」
主催者の人が軽く説明した後、レースを始めるために横一列に並ぶ。
昔は負けてばっかりだったこのレースも、今ではほぼ勝てている。新人さんには悪いけど…。
「よーい、スタート!」
苦渋を舐めてもらおうか!
*
スタートと同時に、何人かが転びかける。
アスファルトの上だから、スタートからスピードを出そうと力を込めすぎるとかえって減速してしまう。
新人さんは…お、ちゃんと着いてきてる。新人さんは4番手、ホークさんは2番手、私が先頭だ。
「このペースでこの坂着いて来れるかな!」
挑発も兼ねてそう言った後に、私は加速し始める。
後半の下り坂は長いから、全員スピードが出て順位はほぼ変わらない。だから今のうちに加速して後続を引き離していく。
「相変わらずのハイペースやなぁ!レイ!」
「なんで着いて来れんねんキッショ!」
軽くホークさんと小言を言い合いながら、坂を駆け上る。ふと後ろを見ると、そこには新人さんがいた。
新人でこのペースについて来れるのは少ないのに、凄いな。でも、このペースでスタミナ持つかな?
私は減速せずに坂を駆け上っていく。
カーブを過ぎて、100mくらいの平坦な道がやってくる。順位が変わるとしたらここだけど、ホークさんは序盤から私のハイペースに合わせて走っていたから、スタミナが足りずに抜かせないはずだ。
このままなら勝てる。そう思っていた時。
「は?なん、でっ、お前!」
ホークさんがそう言った。普段から熱くなることはあっても取り乱すことはないホークさんの、驚愕と畏怖が混ざったような声。どうしてそんなふうに言ったのか気になり、走りながら後ろを振り向いた。
それとほぼ同時に。
「お先」
それだけ言って、新人が私を抜かした。
「はっ?」
一瞬呆気に取られたが、すぐに切り替えて、目の前の新人をいつ抜かすかを考える。
平地で一気に加速してきた。そんでもって坂を登ってきてスタミナも落ちてるはず…。なら勝負仕掛けるのは…。
「坂8割登ったとこ、そこで抜かす」
私は2バ身ほど離れた後、新人にペースを合わせて、スタミナが切れたように振る舞う。そうすれば余裕ができたと思ってペースを落とすはず。
ペースを…落とす…はず…、なのに。
「なんで、ペース一切、落ちんのや、クソッタレ」
新人さんは、私を抜かしてからペースを一切変えずに走り続けた。ペースが機械みたいに一定だ。厳密には違うのかもしれないが、その時の私にはそう見えていた。
更にいえば、ペースが落ちる前提で走っていたから、この差を巻き返せるだけのスタミナが残っていない。
完全に、してやられた。
*
「一着は今日来たばかりの新人、アイオーンだ!二着のファントムレイダーとは大差がついた!」
「はぁ…はぁ…どんだけ、スタミナあんねん…」
完敗だ。
下り坂に入ってから加速しようともしたが、完璧に私の前につけられた。しかも、このペースで走っておいて末脚を残してるってのが笑えない。
「君、いい走りをしていた。凄いな」
ゴールになっているバス停で息を整えていると、新人…アイオーンが話しかけてきた。
「何それ。嫌味?」
「ああいや、嫌味とか…そういうのではなくてだな!ほら!その、上り坂ばかりだっただろ?なのにあのペースで走れていたから、あの…素直に凄いと思ったんだ!」
「ふふっ。一着で私より早いペースで走ったくせに、スタミナを褒めるんや。面白いね」
私が半分冗談で嫌味かどうか聞いたら、割と本気で焦った返事が返ってきた。その様子が、孤児院で暮らす小さい子が言い訳するのと重なって、少し笑みが溢れた。
「ああ。君のスタミナは、
「地方はともかく中央は無理無理。どんだけハードル高いと思ってんの」
「いや、中央でも通用するだろう。現に君は私に離されることなくついてきていた」
アイオーンはそう続ける。けど、何言ってんだろ。ローカルシリーズなら私の走りも通用するかもしれないけれど、中央のレースなんて無理に決まっている。
地方の緩いレースの比じゃない。一度テレビで中央のレースを見たことがあるけれど、まさしく戦場って感じだったから。
「ってか、なんであんたに着いていけたら中央で通用するって言えんの」
「む、そういえば名前を話していなかったな。後は見た目も変えていたから、気づかないのか」
そう言い終わると、アイオーンは結んでいた髪を解き、菱形が繋がったような髪飾りをつけた。
「待って、その髪飾りって」
私の中に、1人のウマ娘が思い浮かんだ。
カサマツトレセンから中央に移籍。その後中央で数々のレースに勝利し、永世三強と呼ばれる、『芦毛の怪物』…。
競馬に全く興味がなかった前世の私でも、唯一名前を知っている馬、いやウマ娘。
ははっ。私はこんな化け物とレースしてたのかよ。思わず自嘲してしまう。
「改めて、自己紹介を。アイオーン改め、オグリキャップだ。よろしく頼む」
セリフにちょくちょく関西弁が混じってるのは、岐阜の方言がそんな感じだからです。
でも言葉のイントネーションは関東と同じなんですよね。