カサマツの2番星   作:美涼

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宣戦布告

「……見間違いだよね?」

 

「いや、どっからどう見ても豪邸だよレイ」

 

 

えー。メイクデビューから一週間。私とスズは何故か豪邸に呼ばれました。オグリさんは一緒に呼ばれていたけれど会議やその他雑務があって来れなくなった。どうしてオグリさんはいて欲しい時に限っていないのよ。

 

事の発端は昨日。スズがとある人物に話しかけられた事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スズノミレイさん。少しお時間いただけますでしょうか」

 

 

私とスズがいつも通り食堂でお昼を食べていると、不意に後ろから話しかけられた。

振り向いた先にいたのは、長い栗毛のウマ娘。その所作には、隠しきれない上品さがあった。

 

 

「え、あ!はい!なんでしょう!」

 

「そこまで緊張されなくてもいいんですよ。さて、スズノミレイさん。次の週末は空いていますでしょうか」

 

「次の週末…ですか?確か何もなかったと思いますが」

 

「よかったです。スズノミレイさん、次の週末に私の家にいらっしゃいませんか?貴女のトレーナーも連れて、です」

 

 

そんな話をしていたから、私は困惑するスズを横目にコーヒーを飲んでいた。

うぇ、苦っ。カッコつけてブラックコーヒーなんて頼むんじゃなかった。でも残すのも勿体無いし全部飲んじゃわないと。

 

 

「そ、それならレイ…ファントムレイダーも連れてっていいですか!?」

 

 

急に何を言い出すんだスズは。コーヒー吹きかけたじゃねえか。思いっきりむせちゃったしさ。

お前は何を言ってるんだって視線をスズに送ると、完全に混乱しているようでほっといたら変な事を言い出しそうな雰囲気だった。だから私はスズの頭に1発拳骨入れて、栗毛のウマ娘に話しかけた。

 

 

「悪い。混乱してるからコイツは回収しとく。迷惑かけたな」

 

「…貴女が、ファントムレイダーさんですか?」

 

「そうだけど、なに?」

 

「いえ、貴女も来ていただきたいな、と」

 

 

拳骨入れてごめんスズ。今スズの対話力が必要っていうかこの状況を理解できる同士がものすごく欲しいわ。

私は頭を抱え、少し悩んでから話しかけた。

 

 

「俺の悪評は知らねえとは言わせねえぞ」

 

「ええ。もちろん」

 

「その上で聞こう。お前、さっき何つった?」

 

「貴女も私の家に来ていただきたいなと」

 

「正気か?」

 

「ええ。とっても」

 

「……返事はコイツ通して後でする。じゃあな」

 

 

そう言って私はその場を後にした。

なんなんまじであの人。怖えよ私の悪評知った上で家に呼ぶとか。なに、私公開処刑でもされるん?

 

まあ、行ったとてよっぽど悪いことにはならないだろうから、私たちはその誘いを受けることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その結果がこれだよ!!!!なんだよこれ見たこともない豪邸なんですけど!?

あかん。最底辺の私と上流階級の暮らしの差で眩暈がする。

あとスズ、何でお前はそんな平気そうなんだよ。一応お前も地方出身だよな?

 

 

「おばあちゃんの別荘の倍くらいありそう…広いなぁ…」

 

 

コイツも基準バグってんのかよ。

いや違えわ。普通に一緒に中央編入してたから忘れてたけど、いくらスカウトされてたとはいえ中央って本来バカ金かかるんじゃん。それをポンって出せる家って、そりゃあ金持ちだよな。

 

そんなことを考えつつ、バカでかいお屋敷に向かって歩いて行く。

警備の人には誘われた事を伝えたらすぐに通してくれた。警備が緩いのか厳しいのかわからん。

 

玄関であろうところの前に着くと、そこには栗毛のウマ娘が立っていた。

 

 

「ご足労ありがとうございます。スズノミレイさん、ファントムレイダーさん。どうぞゆっくりしていってくださいね」

 

 

ゆっくりはできそうにないですねー。そんなことを考えていると、視界の端に見知ったウマ娘がいた。バレると面倒なので、とりあえず全力で目を逸らしておく。

 

 

「ん?あの人…」

 

 

スズ、気づくんじゃない。絶対後々面倒なことになるから。間違っても声かけるような真似はやめろよ。やった瞬間殴るから。

 

おい。やめろ。私に気づくんじゃない。一瞬驚いた後満面の笑みを浮かべるんじゃないよ。腕ぶんぶん振ってアピールするなよ、気づいてるから。気づいた上で無視してんのこっちは。やめろこっちに歩いてくんな貴女との関係バレると面倒すぎるんだよ。

 

そんな心の叫びは聞こえるはずもなく、そのウマ娘はこっちに歩いて来た。

 

 

「ファントムレイダー!先週ぶりだな、元気だったか?というか何故ここ…に……」

 

 

現URA会長シンボリルドルフ。私のメイクデビュー戦で、トレーナー代理をしてくれたルドルフさんが、そこにいた。

てかルドルフさんがここにいるって事はここシンボリ家かよ。つまり目の前にいるのはシンボリの後継者と。

 

何で私らこんなやつに目つけられてんの?

 

 

「ルドルフさん…?」

 

「メ、メサイアか。久しぶりだな、元気にしていたか?」

 

「ルドルフさん、もう隠したところでバレているので意味はないのでは…?」

 

「ッ〜〜〜!!」

 

 

わあおルドルフさん顔すごい真っ赤。シンボリ家の中ではクールで通してたんだろうか。まあ尻尾ぶんぶん振ってるとこ見られたら恥ずかしくもなりますわな。

 

 

「てか俺お前の名前聞いてなかったけど、メサイアっつうのか」

 

「ええ。改めて自己紹介を。シンボリ家の次期後継者、シンボリメサイアと申します。以後お見知り置きを」

 

「と、というかメサイアは何でファントムレイダー達を連れて来たんだ?」

 

「そういえばお伝えしておりませんでしたね。私が貴女方を招待したのは、先日のレースの感想を聞きたいという理由。そして…」

 

 

メサイアさんはひと呼吸開けて、私の方に挑発的な笑みを浮かべながら言葉を続けた。

 

 

「史上最悪のウマ娘に、宣戦布告を」

 

「……へぇ。自分、潰される準備は万端みたいやなあ」

 

 

そう言ってしばらく私とメサイアさんは睨み合っていた。少しして、ルドルフさんが手を鳴らし、一旦お屋敷の中に入ろうということになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在私は、シンボリ家やなんか凄そうなの面々が揃っている中に混ざっています。助けてください。

 

何で誰も一言も発しないんだよ。せめて誰かなんか言ってくれよ。スズは笑顔で一見大丈夫そうだけど確認したら意識なかったし。

 

少しして、ルドルフさんが立ち上がり話し始めた。

 

 

「本日は集まってもらってありがとう。ではシンボリ家の定例会を始めるとしよう。」

 

「あー。その前にひとついいか?」

 

「どうしたんだファントムレイダー」

 

「俺の耳が腐ってなけりゃあ今シンボリ家の定例会って聞こえたんだが。俺らみたいな部外者がいたところで邪魔なだけだろ。なんでわざわざここに連れてきた?」

 

「メサイアが宣戦布告するというなら、シンボリ家全員居た方が話が早いからだ」

 

「俺だとしても俺要らねえだろ。わからんだろうけどスズは気絶しとるし。そういうのは本人同士かそれプラスアルファでやるもんだろ」

 

「正直100%の正論なんだが、メサイアがどうしてもと言ってな。申し訳ないが、少し付き合ってくれないか」

 

 

ふっざけんなよ!!ここで大声出さなかった私を誰か褒めて欲しい。てか褒めろ。

演技じゃなくて本気で睨みながら、メサイアさんの宣戦布告とやらを聞く。

 

 

「私には夢があります。全てのウマ娘が、夢を叶えられるようにするという夢が。ファントムレイダー。言葉を選ばずに言うのなら、貴女は邪魔でしかないのです。なので私は貴女を、完膚なきまでに叩きのめします。2年後、ジャパンカップ。そこで貴女に土をつけましょう」

 

「…色々言いたいことはあるけど。やれるもんならやってみろや甘ちゃんが」

 

 

その場の空気はもの凄く悪くなったが、今は関係ない。

まさかシンボリ家の後継者が、しかも救世主(メサイア)の名を持つウマ娘が、ここまでの夢想家とは思わなかった。

 

こんな夢想家にタダで負けるわけにはいかない。そんなことを考えつつ、私は部屋を後にした。

 

 

 

あっ。スズ部屋に置いてきちゃった。まあいいか。

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