IS~インフィニット・ストラトス~死神の黒兎   作:曾良

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第三十四話 終幕、そしてそれを神は赦さない

 IS学園から少し離れた海の上空。そこにあるのは三つの影だ。

 巨大な体躯を持つ二機のISとそれらに挟まれるような形で黒髪碧眼の白衣の青年が宙に浮かんでいた。

 

「う~ん、いくら千冬たちがいないとはいえあっちには戦力は揃ってるから……やっぱり攻めあぐねるか」

 

 彼の眼差しが向けられているのはその正面、その奥にある一つの小島だった。そこには世界で唯一のIS操縦者育成機関であるIS学園が建てられている。そこでは今現在、彼の仲間二人が長年開発を続けてきた無人機ISを三機ほど引き連れて襲撃をかけている真っ最中であった。

 

 一人は無人機二機とともに全生徒が集まっているトーナメント会場に大胆にも真正面から。

 

 一人は見張りの一機を連れ、もう一人が派手に暴れ回っている間にこの襲撃本来の目的を達成しようとひそかに学園に侵入していた。

 

 彼らに同行した無人機は彼が長年開発を続けてきた無人IS、その試作機である《ゴーレム》からさらに改良を加えた試作二号機である《アルマ・ハルマ》である。《アルマ・ハルマ》はその性能もさることながら、驚くべきは電波妨害や通信妨害、システムのハッキングなどといったことまで行える点だ。これによりただの戦闘用としてだけではなく、サポート役としての一面も持たせることが出来るようになった。

 今回の作戦は《アルマ・ハルマ》のそんな機能を使った一種の実験も兼ねている。世界最高峰のIS学園のシステムセキュリティを突破し、一部分ではあるがそれを乗っ取られるか、そして《アルマ・ハルマ》そのものの実戦データの採取が主な内容だ。IS学園にはその特殊な環境から世界中から最新鋭の機体が集まってくる。勿論、代表候補生などの操縦者の卵たちもだ。そんな相手に《アルマ・ハルマ》をぶつけさせ、その完成度を確かめるというのが彼の算段だった。

 

「でも、絶対宗玄さんが前に出てるよね。たぶん、《アルマ・ハルマ》には手を出すなとか言ってそう」

 

 期待していないわけではない。だが、実験は飽くまでもついでだ。実戦データ云々も採れるなら採ってみよう程度にしか思っておらず、それも失敗するだろうと彼は考えている。あの宗玄にこちらの意図を汲んで、大人しくしていろというほうが無理なのだ。宗玄はそこまで優しい性格ではない。

 

 そう言っている間にも、宗玄から通信が飛んできた。

 

「……え、それ本当ですか?」

 

『ああ。多少侮っていたようだ。俺もまだまだ未熟だな』

 

 あの無敵のような強さを誇っていた宗玄が傷を負って帰ってくる。別段珍しいことではないが、それが格下であろうはずの代表候補生に負わされた傷とならば話は違う。厄介なことにあの宗玄が敵として認めている。それはつまり、いずれ自分たちの確かな脅威として立ち塞がるということだ。それほどまでの実力者がまだ、あの学園には潜んでいたというのか。 

 

「――――凰鈴音? それって確か……」

 

 思い出すのは近所でもおしどり夫婦として評判の高かった夫婦の姿。そして、その夫婦の間にいつもニコニコと笑顔でいた一人の少女……その少女の名は確か、「凰鈴音。ああ、思い出した。だから、千冬は……」とそこまで口にして、一度その思考を手放した。今は宗玄からの報告が先だ。

『とりあえずだ。あのチビにも伝えておけ、俺は撤退するとな。一応、二機のうち一機を殿として残しておいた。詳細なデータは期待できそうだな』

 

「はは……そうですね」

 

 どうやらこちらの考えていたことはお見通しだったらしい。見事なまでに心中が言い当てられた。ついでにしっぺ返しまでついてきた。

 

「じゃあ、イドラちゃんにも撤退してもらおう。どうにも雲行きが怪しい」

 

『ふん。元はといえばルイス、お前が俺たちあてに送られてきた奇妙なメールを鵜呑みにするからだ』

 

「仕方ないでしょう、確かめてみたくもなります。IS学園のトーナメントの開催日時と場所、それに各施設の詳細な見取り図まで添付されてたんですから」

 

『これをもとに襲撃してこいと言っているようなものだがな』

 

 ルイス達に奇妙なメールが送られてきたのは街中で偶然遭遇した切り裂き魔《ジャックザリッパー》と玄兎、楯無とのコンビと激しい戦闘を繰り広げた翌日のことだった。

 その中身はお粗末なもので題名に『ルイス様御一行様へ』とあり本文はなく、先程ルイスの言っていた内容のものが添付されていただけであった。だが、その添付されていた中身が問題なのである。

 あの世界でも最高峰のトップシークレットであるはずのIS学園の施設の見取り図、そして学園で開催される催しの詳細な日時と場所であった。

 一目見ただけでも怪しいとわかるこのメールに、組織内でもかなり意見が分かれた。罠だという声もあれば、でも逆それを逆手にとれば好機になるという者、三者三様の意見が飛び交った。最終的にはルイスの鶴の一声によって方針が決定したが、確かにこれは危ない橋だったと言わざる得ない。事実、こちらの最大戦力の一角である宗玄が浅くない傷を負い、敵にこちらの手札の一枚を知られてしまった。

 

「確かに罠だったかもしれないけど、あのメールを放置するわけにもいかないでしょう。あのメールは僕たちの地上の隠れ家に、僕たち宛てに届いたんですから」

 

『まぁ、俺としてはおかげで満足できたがな。それにあそこは〝あれ〟があるかもしれない可能性が最も高い場所だろう。どのみち、こうなることは端から決まっていた。敵の思惑に上手いように乗せられたのは気に喰わんが、どちらにしろ必要なことだったと言えるのだろうな』

 

 宗玄なりの励ましなのだろうか。ルイスは少しだけ相好を崩した。

 

「ありがとうございます。この襲撃である程度、メールの送り主に確証は持てましたし、あとはイドラちゃんの結果次第ですね」

 

『ああ、そうだな』

 

 そう言って宗玄は通信を閉じた。どうやらルイスのいるこの場所へ到着したらしい。

 

「傷だらけじゃないですか!? そ、そんな傷を負った状態でよくそんなに平気でいられますね!」

 

 到着した宗玄の姿を見るなり、ルイスは叫び声をあげ駆け寄った。文字通り、空中を駆けて。

 

「ふん。この程度の傷など大したことはないさ。戦場での傷は男の勲章、褒められる覚えはあっても、怒りを買う覚えはないぞ?」

 

「日本人のその武士道? っていう精神には本当に驚愕させられます。むしろ、困惑ですよ。というか、今の時代そんなことを言っているのは宗玄さんぐらいでしょう。いい加減にしないと死にますよ?」

 

「それで死ぬなら本望さ。強い敵と戦って、己の全てを出し切って上での敗北ならば……俺は後悔などない」

 

 そう語る宗玄の表情に一瞬だけ影が差したように見えた。だが、それも一瞬のことでまたいつもの獣のような顔つきに戻っている。

 

「そもそも宗玄さんの持論って、日本特有の武士の考え方ともちょっと違うような気もしますけどね。まぁ、僕にとやかく言えることじゃないのでそのあたりはお任せします」

 

「投げやりだな」

 

「ええ、頑固な人間は相手にするだけ骨折り損だって、昔の教訓がありますからね」

 

 ――――私の気持ちなんてルイ君には一生わかんないよ! 

 

 たとえその意思がその人を破滅に向かわせるものだとしても、ルイスには止められない。止める資格がない。彼女達が破滅していく様を知りながら、孤独な存在だと知りながら、彼女達を救えず、彼女達の破滅を止められなかった彼にそんなことが出来るわけがなかった。許されるわけがなかった。だからこそ、見守るだけなのだ。そっとその決断を見守るだけで……たとえその先に何が待っているのか、知っていたとしても。

 

「違いない」

 

 宗玄はそう言って苦笑すると、肩を借りていた無人機から離れた。そして、後ろを見遣り「来たな」とだけ呟いた。

 彼の視線の先にいたのは黒い衣のようなものを纏った「何か」だ。全身を黒い衣に覆われているため顔はおろかそれが人であるかどうかすら判別できない。ただ言えるのはそれはまるで、「死神とはまさに言い得て妙だね。考えた人は天才だよ」

 

 ルイスの言葉に「それ」は反応を示さなかった。ただ、二人の前にじっと佇んでいる。

 だが、ルイスと宗玄は既に「それ」の正体を知っていた。これまで幾度となく敵対してきた相手だ。その畏敬をも感じる姿を忘れるわけがなかった。

 

「久しぶりだね、玄兎君」

 

 ルイスの浮かべた微笑みは、およそ敵に対する表情ではなかった。友と接するかのような、そんな気安さがある。

 

「といっても二か月ぶりだし、僕にはあまり久しぶりって感覚がないのだけれどね」

 

「あの襲撃はてめぇらの仕業か?」

 

 ルイスの言葉の意も介さず、玄兎は冷淡に言い放った。「そうだけど?」と玄兎とは対照的にルイスの言葉は浮かれているように明るい。

 陰と陽、それぞれ対極のような感情を表に押し出している二人の間にはこの数秒の間でいくつもの腹の探り合いが行われていた。一方はひたすら感情を殺し、一方は偽りの感情で真実を覆い隠そうとしている。言葉で揺さぶり、些細な変化にその真偽を見ようとしていた。

 

 しかし、そんな裏での攻防を理解できぬ者達もいる。

 

「相変わらず、物騒な野郎だ。そんなもんを引き攣れてきやがって」

 

 ルイスを守るように立ちはだかったのは二機の《アルマ・ハルマ》だった。人間の裏で見せる静かな攻防を理解できず、彼らはそこに割って入ってしまった。しかし、それを不躾とするのはいささか酷だろう。彼らはただ自らの主を守ろうとしているだけであって、そこに一切の感情も理性も常識もない。己に分け振られた任務を全うしようとしているだけなのだ。

 それを理解しているルイスはその行動に「やれやれ」と諦めたようにかぶりを振った。

 

「どうやらこれ以上のお喋りはこの子たちが許してくれないみたいだ」

 

 わざとらしく困り顔で肩をすくめる。「さて、じゃあ僕たちはこれでお暇させてもらおうかな。これでも結構忙しくてね」

 

「折角、こうやって会えたんだ。もうちょっとお話していこうぜ?」

 

「うーん、玄兎君みたいな美少女に言われると僕も満更じゃないなぁ……せめてその衣を脱いでくれたら考えないでもないけど?」

 

「誰が美少女だ、ゴラァ!」

 

 事情を知らない者が聞けば少々危ない会話に聞こえるが、当人たちは至って真面目な会話をしているつもりだった。しかし、こうものらりくらりと話を逸らされては悠長に話すことさえできない。彼を守ろうと立ちはだかっている《アルマ・ハルマ》は依然として臨戦態勢のままだ。こちらが動けば即座に迎え撃ちにかかるだろう。そうなればまともな話し合いなど意味を成さない。折角、滅多にお目にかからない大物に巡り合ったというのに。

 

 玄兎は一瞬の逡巡の後、「一つだけ聞かせろ」と問いかけた。

 

「お前らの目的は何だ?」

 

「これはまた直球な質問だね」

 

「回りくどいのは好きじゃないんだ」

 

「そういう大事な話をするときは大抵、前座として一つか二つほどお話をするものだけど」

 

「お前の理屈なんかどうでもいいんだよ」

 

 淡々とルイスの言葉を退ける玄兎にルイスは困ったように眉を寄せた。

 

「そうだなぁ……強いて言うなら、世界を救うこと、かな」

 

「なに……?」

 

「だから、世界を救うために僕たちは毎日精を出しているんだよ、玄兎君。君も大好きだろ? 世界平和ってやつは」

 

「妄言はウチのやつらだけで充分なんだよ。世界を救う? 笑わせんな、本気で言ってんのかよ」

 

「ああ、本気だとも。僕の将来の夢は世界を争いのない平和な世にすることなんだから」

 

「…………なら、なんでこんなことをする。お前の言う世界平和とやらのためには、幼気なガキ達を襲撃する必要でもあるのかよ」

 

 ルイスの表情はずっと笑顔のままだが、そこからは確固たる意志のようなものが感じられた。彼の言っていることがただの虚言や妄言の類ではなく、本気でそれを目指しているのだという意思が伝わってくる。 

 だからこそ、余計に彼の行いが不可解だった。その世界平和とやらのために、世界に喧嘩を売るような真似をこれまで幾度となく行ってきたのは一体どういう意味があってのことなのか。

 その疑問にルイスは不意に笑顔を崩した。「玄兎君」と静かな声音で語りかける。

 

「君はもし、自分たちのいるこの世界が偽物で、ただ神様の暇を待たすためだけに生み出されたものだとしたら……どう思う?」

 

「はぁ?」

 

 突然、何を言い出すのかと思えば……これこそ妄言ではないのか。

 

「至って真剣な話さ。例えば、この世界はその神が暇つぶしに作った世界だとして、この外側に現実の世界が広がっているとする。そして、その現実の世界を救うために、この世界から元の世界に帰還しなければならないとしたら――――君ならどうするんだい?」

 

「その現実の世界とやらを救うため、この偽物の世界を犠牲にする。だから、それがこの襲撃の理由だと?」

 

 玄兎の言葉にルイスは答えず、微かに頬を緩ませる。

 それを玄兎は肯定として受け取った。

 

「馬鹿じゃねえのか。今度こそ寝言といわれても仕方ねえ部類の言葉だぞ」

 

「馬鹿なのさ。だから今、僕は世界に喧嘩を売っている。これを馬鹿といわないで、なんというのかな」

 

 玄兎は押し黙った。彼の言っていることが真実とは限らない。例えば、もしもの話なのだ。間に受ける方がどうにかしている。

 だが、何故彼の目は今までになく真っ直ぐで、強い光を帯びていた。

 

「君はこの世界が本物であると、偽物なんかじゃないと本当にそう思うかい?」

 

「当たり前だろうが。そもそもお前の話をはじめから信じてなんかいねえよ」

 

「それはそれで悲しいんだけども……しかし、本当に君の言っていることは正しいんだろうか」

 

「……またおかしなことを」

 

「君は僕が間違っているというが、君はそれを証明できるのかい? この世界が偽物ではない、作り物ではない、神が作った物でものなければ、この外側に存在する本物の世界とやらもないと……どうやって君は証明するんだい?」

 

「……知るかよ、そんなこと」

 

 間があった。一瞬の空白があった。

 考えてしまった。

 彼の言葉の真意を、意図を。

 それが正鵠を得ているものではないかとほんの一瞬でも脳裏をかすめてしまった。

 ルイスの言葉を否定できなかった。考えることを拒絶することしかできなかった。

 そして、それは同時に彼の言葉が正しいということを玄兎自身が認めてしまったようなものだった。

 

「君が見ている景色が、果たして本当に虚構ではないと言い切れない。それは僕も同様だ。この世界にいる誰もが、自分の存在を、自分の見ている景色を、自らが歩んできた歴史を――――本物だと真実だと証明することなんて不可能なんだ。そして、その時点で既に嘘だと断じられたものは真実の「可能性」の一つにもなる」

 

「……だからなんだってんだ。そんなもん、お前の勝手な理屈だろう。それにあんま難しい話は俺には分かんねえよ」

 

「失敬失敬。久しぶりに熱くなってしまったよ。うん、反省しなきゃね、自分でも後半は抑えが利かなくなって結構意味不明なこと言っていると思うよ」

 

 そう言ってあっさり自分の言葉を否定するかのような言葉を口にする。

 まったく、よくわからない男だ。

 世界を救うなどとほざいたと思えば、次はこの世界は神が暇つぶしに作った世界で本当の現実世界は別の場所にあるなどという。

 本当におかしい話だ。

 それがもしも本当なのだとしたら、この世界には神という創造主が存在している事なり、今こうやって世界中に生きている人類すべてがその神が作った暇つぶしだということになってしまうではないか。あまりにも荒唐無稽。飛躍した話だ。

 

 なのに、何故だろう。

 

 そんなことはない。そう思っているし、彼の妄言を信じるほど玄兎の頭はお花畑ではないはずだ。なのに、なのになぜ……彼の言葉がこれほどまでに耳朶を打ち、胸に鉛を流し込まれたような感覚に陥っているのだろうか。

 

「さて、話がずれてしまったお詫び……といってはなんだけど、一つだけ君の質問に君の納得する形で答えよう」

 相変わらず律儀な奴だと玄兎は思った。敵対関係にあるというにどうしてもこうも親しげに微笑み、礼儀正しくお詫びなどするのだろうか。会えば会うたびにルイス・アッシュダウンという人間の理解不能さは深まっていくばかりだ。

 

「まぁ、実にはシンプルなことだよ。この襲撃の理由なんて、簡単なことだ」

 

 そう前置き、ルイスは言った。

 

「あの場所に、君たちがいるあのIS学園という場所に僕たちが長い間探し求めていたものがある。いや、その可能性といった方が正しいかな? それを僕たちは確かめに来たんだ」

 

「探しているもの?」

 

「正確にはIS学園のどこかにあるそれと繋がっている場所、そこにいる人物に用があるんだよ」

 

「たとえそれのせいで関係のない誰かが死んだとしてもか?」

 

「ああ。たとえ、そのために世界中の人間を殺さなければならないとしてもね」

 

 彼を以てしてそうまで言わせるものとはいったい何のか。

 

 見たこともないような財宝?

 不老不死になる古の薬?

 それともISをも凌ぐ超兵器?

 

「さて、君の質問にも答えたことだし僕らもそろそろ帰らないと。彼の治療もしなければならないからね」

 

「散々、蚊帳の外にしておったくせによくもぬけぬけと。お前のそう言うところはどうにも好きになれんな」

 

「手痛いなぁ」

 

 責めるような宗玄の言葉にルイスは困ったように頭を掻いた。本当にどうやら困っているらしい。

 そして、ルイスは今一度玄兎の方に目を向けると「それじゃあ、僕らはこれで」と言った。「追いかけてくるのは自由だけど、その子たちは簡単に通してはくれないよ?」その言葉を合図にしたかように二機の《アルマ・ハルマ》がさらに前へ踏み出してきた。もう完全な戦闘態勢に入っている。

 

「やる気満々だな、おい」

 

「彼らには僕たちの護衛、そして撤退時の敵の足止めを最優先に設定してある。彼らはその活動を停止するまで一切の妥協も、逃げもしないよ」

 

「だろうな。だが、それをお前らを逃がす理由にはならねえ。逃がさねえよ、お前らも」

 

「まぁ、君なら頑張れば倒せるよ。なぁに、『四神』さえそろえばこの子たちだって――――」

 

「だから、何度も言わせんな」

 

 ルイスの言葉に割り込むかのように、玄兎は自信たっぷりに言った。

 直後、ルイスの背後にいた宗玄が何かに気づいたように上空を見上げた。

 

「――――上だッ、ルイスッ!」

 

 だが、宗玄の言葉は一瞬だけ遅かった。

 

 その時には既に超高速で飛来する二つの影は彼らの前方を守護する二機の真上までに迫っていたのだから。

 

 蒼色の影は、その背部に搭載されている二つの高エネルギービーム砲を《アルマ・ハルマ》へと放ち――――

 朱色の影は、都合六本もの腕と刀剣と化した脚部による八刀の神速の剣舞を舞い――――

 

「だから、言ったろ逃がさねえって」

 

 ――――辛うじて反応を示した《アルマ・ハルマ》を、展開したそのバリアもろとも一瞬のうちに鉄くずへと変えてしまったのである。

 

 

   *    *    *

 

「いや、なんというか。タイミングが気持ちの悪いほどにばっちりですね」

 

「正直俺もそう思う。お前ら、ほんとはだいぶ前からスタンバってたんだろ?」

 

「助けてやった人間になんて言い草だ。そもそも登場するタイミングを見計らっていたのなら、気付かない貴様らでもあるまい」

 

「だねー。そんなわけないじゃん。これでも結構急いできたんだよ?」

 

「余計なことして気絶してなければもっと早く来れたんだろうけどな」

 

「「うっ……」」

 

 彼女らがどういう理由からかは知らないが激辛ジュースを飲み、それがもとで気絶し寝込んでいたことはナギの口から聞いている。恐らくは、この緊急事態となってからもしばらくは彼女たちの意識は戻らなかったのだろう。だからこそ、彼女たちが馳せ参じるまでこうも時間がかかった。そんな裏事情を知っている玄兎からすれば彼女たちの弁こそが、苦し紛れの言い訳であることは明々白々なのだ。

 

「まぁ、いいさ。絶妙なタイミングで間に合ったんだ。一応、感謝しとくぜ。まぁ、それでもあとからじっくりとわけを聞かせてもらうのには変わりねえがな」

 

 そう言う玄兎の表情が笑顔なのもまた恐ろしい。アリサも瑛梨もその視線から逃げるように顔を明後日の方向に背けている。

 

「いつまでも仲がよろしいことで、関心するね全く。君みたいに女の子の心をひたすら掴み続けるには一体、どうすればいいだろうね」

 

「俺に聞くなよ。俺だって自覚してやっているわけじゃないんだからな」

 

「否定するどころか、肯定するとは……中々、食えぬやつだな」

 

「事実なんだから、別に悪くはないんだけど……せめて謙遜でもしてくれると世の男性は嫉妬に狂わずに済むと思うよ」

 

 正直な玄兎の発言にさすがの宗玄も呆れたような声でそう言った。彼が言うと嫌味に聞こえないからますます質が悪い。それは彼の美少女めいた容姿が少なからず影響しているのだろうが、その美貌も含め世の男性には彼の存在はあまりにもよろしくはないと言えるだろう。

 玄兎は現在、衣を解除しその姿を露わにしている。仲間が来たことで数的にも優位に立ったからであろう。奥の手である衣は莫大なエネルギーを消費すると以前耳にしてことがある。そのため比較的追い詰められたときでなければ滅多に使用しない力だということも。使用すればどんな攻撃も受け付けない最強の防御力を手に入れるのだが、それは同時に自らが追い詰められていることを敵に明かすことにもなるからだ。そして、それとは逆にその衣を解いたということはルイス達が追い詰められているという証拠でもある。

 

「さぁて……どうしますかね」

 

「お手柔らかにしてもらうと助かるよ」

 

 この状況に置かれてもなお軽口を叩けるとは、中々大した肝っ玉の太さである。

 単純な数的優位を鑑みてもルイス達の不利は歴然としたものだ。その内訳はとても戦えるとは思えない重傷を負っている宗玄と生身とはいえぬもののこの中で唯一武装を持たないルイスである。この二人が果たして戦力としてカウントされるかどうかはいささか怪しい。

 対する玄兎達は三人ともが全てISを展開しており、その内訳は三者の三機ともが篠ノ之束が最高傑作と謳う『四神』のIS。操縦者の実力も折り紙付きと、これまた穴がない。

 真面に戦っても勝てる見込みは薄い。それどころか一瞬のうちに勝敗は決するだろう。

 打つ手がないわけではない。むしろ、追い詰められ不利な状況ではあるもののルイスにとってはそこまで悲観しなければいけないような状況でもなかった。

 戦わなければいい。戦わなければ負けることもない、元々撤退するつもりだったのだから当然の選択肢ともいえる。

 

(だけど、イドラちゃんとの連絡が取れない状況じゃ、動こうにも動けない。彼女を見捨てるわけにもいかないし……)

 

 IS学園深部へと侵入したイドラとの連絡はしばらく前から途絶えている。まさか敵の手に落ちたわけではないだろうが、それでも連絡の取れない仲間を見捨てて自分達だけがのこのこと撤退するというわけにもいかないだろう。撤退するのならせめて彼女に連絡を取り合ってからではないといけない。ただでさえ今回の襲撃計画で一番危険な役目を任せているだけに、余計な心配をしてしまう。連絡が取れない原因は恐らくIS学園の深部には何らかの通信を遮断する仕掛けでも施されているか、もしくは彼女が今現在戦闘中である可能性だ。前者ならばどうにか彼女に撤退の合図を示せればいいのだが、後者ならばこちらからはどうすることもできない。彼女が自力で脱出、もしくは離脱してくれるのを祈るしかなかった。

 

「色々聞きたいことは他にもあるが、まずは――――――今もあそこで動いているあのでっけえISを止めろ。あいつのせいでこちとらえらい損を被ってんだ」

 

「……わかった、と言いたいけれどどうやら一足遅かったようだ」

 

「あん?」

 

「ついさっきだけど、《アルマ・ハルマ》……あ、あの無人機の名前だよ」

 

「んなことはいいから、さっさと先を話せ」

 

 なぜ彼と会話するとこうもシリアスな雰囲気が続かないのだろうか。不思議である。

 

「じゃあ、改めて。ついっさき《アルマ・ハルマ》の二号機、宗玄さんが残してきた方の機体からのシグナルが途絶えました。どうやらあの子は負けてしまったようです。大方一夏君あたり、いや彼一人では厳しいから君の幼馴染も一緒かもしれませんね」

 

「にゃろう……やりがやがったか」

 

 ルイスの言葉に、玄兎は自然とその顔に笑みを浮かべた。玄兎がこの場にくる直前に後を託した二人が何とか間に合ったのだ。憂いであったアリーナ側の脅威を何とかして排除してくれたのである。恐らくは一夏と楯無のほかにもあらかじめ援軍を頼んでおいた簪やセシリアもいるはず、鈴音のことは気になるが彼女らがいれば多少のことは心配しなくても大丈夫だろう。

 

 これでひとまずは安心だ。そう玄兎が安堵した時だった。

 

「これでようやく心置きなくてめえらに集中でき――――――ッ!?」

 

 彼の背後から突如として、謎の高エネルギー反応が感知されたのだ。同時にISがけたたましい警告音を鳴らし、玄兎にその危険を伝えてくる。

 

 迫っている脅威は一つ。いや、それはまるで――――――

 

「全員、避けろッ!」

 

 ――――――アリーナを中心に円を描くように周囲一帯の空域を薙ぐ、鞭のような光の筋。

 

 しなり、うねり、破壊という概念だけを抽出したような光の奔流が容赦なく玄兎達を呑み込まんとする。

 紙一重。察知し、反射による回避行動までとその光の鞭が到達するまでに一秒のさほどもなかった。刹那の時の差で、皆はその攻撃を回避した。

 

「なんだよ、これ――ッ!?」

 

 しなる鞭は、しかしそこで終わりではなかった。標的を捉えそこなったと判断するや否や、即座に第二の攻撃へと移行したのである。

 狙いは玄兎。回避したとはいえ、まだ光の鞭との距離は鼻先をかすめるほどに近い。この距離からの第二波はかわせなかった。

 

 空間が震えた。文字通り、玄兎を鞭が捉えた瞬間に周囲の空間に振動するようにびりびりとした衝撃が生まれたのだ。それは瞬く間に纏われていた漆黒の衣と、それとは対照的な破壊の一撃が交錯したことで起こった。全てを弾く絶対防御、何者の攻撃も通さないはずの最強の鎧。しかし、「――――なッ、ァ!」受け止めた衣はびくともしていない、ダメージも全く通っていない。にも関わらず、その凄まじい衝撃だけは『玄武の衣』を以てしても吸収することは出来なかった。

 

「玄兎ッ!」

 

 目にもとまらぬ速さで海へと落下する。水飛沫が高く打ち上げられ、その衝撃の大きさを物語る。かなり上空にいたはずのアリサ達のところでさえ、その水飛沫は軽々と超えていったのだ。

 

「アリサちゃん、来るよ!」

 

 瑛梨の声にアリサはハッとして光の鞭を見た。それはまだ次なる標的を狙っている。

 すぐに離脱を試みるが、鞭がしなりこちらへ到達する方が圧倒的に早い。しかし、それよりも一瞬だけ早くアリサの前に割って入ったのは六つの刀を構えた瑛梨であった。

 

「ぐぅ、ッ!」

 

 六刀が光の鞭とぶつかり合う。瑛梨のIS『朱雀』の刀は束特製の刀であり、その切れ味は鉄さえも切り裂く。威力も強度も並のISがもつ刀とは比べ物にならないほどの名刀だが、その刀を六振り同時に相手しているにも関わらずあの光の鞭は一向にその勢いを弱めようとしない。むしろ、瑛梨の方が徐々に押され始めている。このままでは刀が砕かれ、玄兎同様に瑛梨も吹き飛ばされるのがオチだ。朱雀は玄武のように防御力がさほど高くない、あれをもろに喰らえば大ダメージは免れない。「おい、これはなんだ! また、お前らの仕業か!」アリサはこの攻撃の元凶がルイスにあると考えていた。何しろ、この光の鞭はルイス達は一切狙わずに自分達だけを狙いに来ている。

 

 だが、一方でルイス達もまたアリサ同様にこの事態に困惑を隠しきれないでいた。

 

「このシグナルは、まさか……二号機!?」

 

「どういうことだ、ルイス。二号機はその活動を停止していたはずなのではないのか」

 

「わからないでも、いやこの反応はまるで《二次移行(セカンド・シフト)》のそれとよく似ています」

 

「なんだと? おい、どういうことだ。お前まさか」

 

「《アルマ・ハルマ》はまだ二次移行《セカンド・シフト》が出来るような段階ではなかったはずです!」

 

 ルイスにもこの現象を説明することが出来なかった。彼らの目の前では今まさにあり得ないことが起きているのだ。

 

「こんにゃろぉ、ッ!」

 

 と、そこで突如として光の鞭が消失した。

 

「き、消えただと……? どうなってる?」

 

「エネルギーの収束点は二号機のシグナル反応が途絶えた地点と同一。ならやはり、二号機がさっきの攻撃を、でも」

 

「通常では考えられない、あり得ないことが起こった。ならば、考えられることは一つしかあるまい」

 

 頭を悩ますルイスの傍らで宗玄が神妙な面持ちでそう呟く。出来ることならそれだけは考えたくなかった。あれの介入だけはどうしても避けたかったというに――――ルイスは歯噛みし、彼の言葉を肯定した。

 

 

「うん。多分、ついに堪え切れなくなったね――――――アカイロが」

 

 *   *   *

 

 光のような速さで到達する三叉槍(さんさそう)の切っ先を刀の腹で受け止め、腕力任せに上へと弾く。そこからの回し蹴りは通常ではありえない反応速度によって回避される。

 

「ちょこまかとすばしっこい! 面倒くさいですね!」

 

「貴方に言われたくないかな。なんで私の速度についてこられるんですか、あれですか、おじさんのお弟子さんか何かですか!?」

 激しい剣戟の応酬。だが、その間にも軽口にも似た口論は留まる事を知らない。互いに口々に疑問や驚きを叫び、挑発行為を繰り返していく。

 互いに一歩も譲らない高速の攻防は、もはや辺り一帯の光景を変化させるほどだ。通路だったそこは瓦礫の山と化し、散乱した瓦礫から舞い上がった埃や塵で周囲は仄暗い。もはやそこは元の景観の面影は一切なかった。

 神皇が刀を振れば、少女――――イドラが三叉槍(さんさそう)、西洋ではトライデントと呼ばれるフォークのような武器によって受けきり、次の瞬間には攻守が入れ替わる。その一進一退の攻防は周囲に甚大な被害をもたらしながら、

開始から数十分が経過しようとしていた。

 

「埒があきませんね。互いに力は互角といったところですか」

 

「でも、私はまだ本気じゃないんだけど?」

 

「それは私もですよ。当たり前ですね~、貴方なんかに全力で戦っているほど私も暇じゃないのです」

 

「カッチーン、と来るね。切り刻んであげようか?」

 

「笑顔で物騒なことを言いますね、貴方は!」

 

 再び神皇が突撃、ただ一点をだけを狙った刺突だ。それをまたトライデントで受けようとし、イドラは咄嗟に身をかがめた。その直後、凄まじい速度で突進してくる神皇がその頭上を横切る。

 

(速くなっている!? 明らかに、さっきも速くなっているじゃないですか!)

 

 防御が間に合わなかった。咄嗟の判断で回避を選択したものの、あのまま防御を取ろうと動いていれば確実に彼女の攻撃の餌食になっていただろう。

 

「惜しいなぁ。もうちょっとスピード上げないといけないのかぁ」

 

「い、今のが本気ってわけですか?」

 

「いや、四割ぐらいかな。あんまり出し過ぎると、我を忘れちゃうからやりたくないんだけど」

 

「四割……あなた頭がおかしいんですか?」

 

「本気がどうのって言ったのはそっちなのに、なんで私が頭おかしいとか言われるんだろ」

 

「頭おかしいですよ。だって、貴方……怖くないんですか? そんな力を平気で」

 

「うん? ああ、出し過ぎたらちょっと厄介だけど、別に怖いなんてことはないよ?」

 

 異常だ。異常過ぎる。

 あんな出鱈目を力を使っておいて、怖くない。そんなことがあるわけがないだろう、イドラは声にはしなかったものの内心はそんな言葉でいっぱいだった。

 あの力でまた全体の四割というのも驚きだが、一番驚愕に値するのは彼女の力を使うことへの躊躇の無さだった。まるでそれを何事もないようにやってのける神皇にイドラはある意味で、恐ろしさを感じていた。

 妖刀、この力がルイスによってそう呼ばれ出したのはここ数年のことだ。それまでは一切の名もなかったこの力は、イドラにとっては忌々しいものでしかなかった。この力は深く使えば使うほど、使用者はその力に蝕まれていく。力の行使の代償といってもいい。その代償は人によって様々だが、大抵の場合はその人のトラウマを彷彿とさせるもののことが多い。イドラの周りでも全員がそうだ。故に皆、仕事でやむ得ない場合を除いてはこの力を使用したがらない。使用したとしても最小限度で抑えられるように努力している。一夏との戦いを遊びと称したイドラであっても、彼との戦闘は一割ほどの力しか使っていなかった。

 それを神皇は平気で扱い、あまつさえ怖くないと言い切るのだ。力の代償を正しく理解していないのか、またはその代償に気付いていないのか。「貴方はその力の本質を理解していない。だから、そんなことが言えちゃうんですよ」もしくはその力がある種の『呪い』であることを自覚していないのか。

 

「貴方、そんなことをしていたらいつかきっと後悔することになりますよ」

 

「ご忠告どうも」

 

 しかし、当の神皇は聞く耳すら持っていない。同類というよしみで折角忠告してあげたのに、とイドラはここまでで彼女への弁を諦めた。よくよく考えれば神皇は敵であり、今まさに自分の任務を邪魔している真っ最中だ。なのになぜそんな相手のことを心配し、忠告までしてやらなければいけないのか。イドラは思わずため気をこぼした。

 

「もうこんなやつ相手にするのも面倒になってきましたねぇ」

 

「あら、ならそろそろ投降する気になったんだね」

 

「白旗を上げるのは貴方でしょう? 何を言ってやがるのですか」

 

「じゃあ、交渉決裂っと。次はもっと速く行……く、よ?」

 

 ざわざわとした胸にへばりつくような嫌な力を感じる。神皇は一旦集中をイドラではなく、この施設の外の方へと向けた。「なにをやってるんですか、貴方は」というイドラの問いにも答えず、神皇は極限まで研ぎ澄ました五感で外の様子を感覚的に察知しようとした。

 

 そして、予兆は確信へと変わり、現実がそれに続く。

 

 衝撃、目に見えぬ力の波がどこからともなく現れ神皇とイドラを呑み込んだ。「何がッ!?」「起きてるんですかぁ、もう!」という二人の声は衝撃によって更なる崩落を迎えた瓦礫によって虚しくも埋もれていく。

 そうして、二人は瞬く間に瓦礫の下敷きになってしまったのであった。

 

 

 

 

 瓦礫を押しのけると、さんさんと降り注ぐ陽光が視界を焼いた。それまで陽の光が届かないアリーナの通路だったり学園の地下、瓦礫の下だったりしたせいか陽の光がやけに眩しく感じる。

 目を細め、手で陽光を遮りながら神皇は立ち上がった。埃まみれになった衣服をはたきながら、神皇は空を仰ぎ見た。

 

「なによ……あれ」

 

 彼女の視線の先、そこにあったものをなんと表現したらよいものか。神皇は文字通り言葉を失っていた。

 

 ある人物はそれを、天使だといった。

 

 ある人物はそれを、悪魔だといった。

 

 ある人物はそれを、神の遣いだといった。

 

 そして、誰かは言った。あれは神が作りだした狂気であると。

 

「あんなの、嫌、あれは……私と同じ?」

 

 微かに感じる自身と同じ力の波長。かつて切り裂き魔(ジャックザリッパー)やイドラから感じたものとも似ているが、〝あれ〟から感じるのはその二人から感じたものとはまたどこか違う。もっと歪で、冷たく、底の知れない闇を覗き込んでいるような本能的な恐怖をかきたてられる不快さだ。まるで身体の中を虫が這いずりまわっているような、如何ともし難い感覚である。

 

「ホント、今日はかんざしっちの応援するだけのはずだったんだけどなぁ」

 

 乾いた笑いがこぼれる。さすがにあのような巨大な化け物と戦う気力も体力も残っていない。何より、あれは自分の専門外だ。あの場にいるであろう皆に任せるしかない。

 

 その場に膝をつき、神皇は今一度〝それ〟の姿を視界にとらえた。

 

 

 

 ――――――鞭のようにしなる両腕、背中から伸びているのは伝説にある天使が持つ二対の翼、そして〝それ〟の胸部からは光の触手と思しきものが時折脈を打ちながら蠢いている。

 

 

 神々しい輝きを放ち、禍々しく悍ましきその姿はまるで――――――神が遣わした、人類を滅ぼす使徒であるかのようだった。

 

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